第八話 太平洋にて
「・・・、・・カ、アスカ!助けてよ!僕に構ってよ!
ねえ、ねえ、
アスカァ!!」
「みんな怖いんだ・・・。ミサトさんも、綾波も・・・。だから、アスカじゃないとダメなんだ!だから、
僕に構ってよ!!
」
コンフォートマンションの一室。
シンジはアスカに向かって叫び続ける。
一方アスカは椅子に座って下を向いている。シンジの叫びに黙したまま一向に反応する様子は無い。
その間もシンジはアスカにすがり続ける。
アスカは下を向いたままである。その為、表情はうかがい知れない。
そんなアスカに痺れを切らしたシンジはアスカに近づき、強引に振り向かせる。
「アスカ!!」
ようやく顔を上げたアスカ。だが、その目には全く光が灯っていない。
そのまましばしの時が流れ、ようやくアスカはぽつりと、しかしはっきりと呟いた。
「・・・いや。」
パシャン
その瞬間、アスカがいた場所には紅い水溜りが出来ていた。
椅子の上からぽたり、ぽたりと雫が音を立ててフローリングに落ちていく。
シンジの掌にはまだアスカの肩の感触が残っていた。ぬくもりは無かったが。
「うわあああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」
絶叫とともにシンジは跳ね起きた。
荒い呼吸とともに心臓が激しく脈打っているのが分かる。
寝汗がべっとりと肌にまとわりつき、シャツはぴったりと肌に張り付いている。
荒い呼吸のままシンジは部屋を見回した。
すでに十分に見慣れた自分の部屋。
しばらくの間、放心状態のまま壁を見つめていたがようやく呼吸が落ち着き始める。
ここで初めて先ほどの光景が夢であるとシンジは悟った。
ぐっしょりと濡れたシャツが急に気持ち悪く感じ始める。
「はあ・・・。」
大きく肺から酸素を吐き出すと、汗を流そうとシャワーを浴びに向かおうとする。
立ち上がろうとした時、暖かいものに包まれた。
「シンジ・・・。」
「・・・汚いよ・・・。」
だが、ミナモはそんなシンジの言葉を無視して、ゆっくりと抱きしめる力を強くしていく。
シンジの気持ちが急速に落ち着いていく。
後ろから伸びた白い腕。
そんなミナモの腕をゆっくりとなでながら、シンジはそっと呟いた。
「・・・ありがとう・・・。」
シンジの掌には暖かさがあふれていた。
そのままシンジは再び深い眠りに戻っていった。
バラバラバラバラ・・・
ヘリのプロペラの回転する音がけたたましく響く。
シンジは先週に引き続きヘリの中にいた。
ただし、今回は先週と違うことが二つほどある。
一つはリツコが今回はいないこと。
もう一つは眼下に広がるのが汚れきった旧東京の街並みではなく、見事なまでに青が広がり、地平線がかなたに見えることである。
「ごめんね、シンジくん。こんなところに連れ出しちゃって。せっかくの休みなのにね。」
「いえ、構いませんよ、葛城さん。休みといっても特にすることもありませんしね。」
にっこりと笑ってミサトに返事をするシンジ。
(もうミサト、て呼んでくれないのかしら・・・。)
そう思うとふうっとため息をついた。
ここのところミサトの中でシンジの評価は再び上昇を始めていた。
第五使徒戦の時、特に自分に反論することも無く、特にトラブルは起こしていない。
それに加え、先日のJ.Aの時にわずかに見せた洞察力。
リツコの様子を見てすぐにそれに気付いたことに対してミサトは感心していた。
自分が使徒を倒すために何とかシンジを懐柔したいと思っている。
それほど魅力的であると気付いたのだ。
内心で再びため息を吐きながら、徐々に大きくなるオーバー・ザ・レインボーを見つめていた。
ヘリが艦に着き、パイロットに礼を告げて降りる二人。
何故かパイロットはミサトだけではなく、シンジの笑顔にも顔を赤らめていたが。
乗艦した二人に声が掛けられる。
「ヘロ〜、ミサト、久しぶりね。」
「久しぶり、アスカ。すっかり大人になったわね。」
「そっ、他のところもちゃんと女らしくなってるわよ。」
その時、強い風が黄色のワンピースを着た少女―――惣流・アスカ・ラングレーのスカートを捲り上げた。
白い下着が露になった。
アスカは待ってました、とばかりに手を振り上げてシンジに迫った。
長いこと船で生活してたのだ。船の上が風が強いというのは十分分かっている。
乗船して間もない頃こそそのことに思い至らず、意図せずして他の兵士に自分の下着をお披露目してしまったが。
それなのにこの場で敢えてスカートをはいていた目的はただ一つ。
ぽっと出のサードチルドレンに対して精神的に優位に立つためである。
一発痛いのをお見舞いして今後のペースを握る、ただその為に。
エースは誰なのかを今後示しやすくし、使徒殲滅を自分中心に遂行する。
ずっと訓練してきた自分がこんな奴に負けるわけにはいかないのだ。ましてや、大きな顔をされるわけにもいかない。
だが、振り上げられたその手が振り下ろされることはなかった。
シンジはひたすら自分と戦っていた。
奥からこみ上げてくるどす黒い感情と。
夕べはミナモのおかげでぐっすりと眠れた。
寝起きもそう悪いものでもなかった。
だが、時間とともにアスカに対する想いが膨れ上がっていくのが自分でもはっきりと分かった。
出会う時が近づくにつれてその感情は加速度的に強くなっている。
そして、今、目の前にそのアスカがいる。
アスカの声を聞き、姿を見たときには思わず飛び掛ってしまいそうだった。
紅い海で最も自分を拒絶した存在。
赤、赤、
紅、紅、紅、
アカ・アカ・アカ・アカ・アカ・アカ・アカ・アカ・アカ・アカ
シンジの視界が真紅に染まる。
それとともに瞳も紅に変わる。
歯を食いしばる。
分かっているのだ。
アスカは自分と同じ仕組まれた存在であり、深層では自分とひどく似通っていたことも。
どうしてアスカを責めることが出来ようか。
自分は何もしなかった。
アスカが自分を受け入れてくれなかったように、自分も綾波を受け入れることが出来なかったではないか。
だが!
それでも・・・
シンジは戦っていた。
ミナモに見守られながら。
アスカは戸惑っていた。
シンジを叩こうとしたが、そのシンジは下を向いて小刻みに震えていた。
何かに耐えるようにじっとその場にうずくまっていた。
アスカは何が起きているのかいまいち掴めない。
よく分からないが、どう考えても下着は見て無さそうである。
振り上げた手が所在無げにさまよっていた。
ミサトもすぐシンジの異変に気が付いた。
ヘリの中では別段おかしなところは無かった。
下を向いているので顔色などは分からないが、具合はかなり悪そうに見える。
「シンジくん、どうしたの?大丈夫?」
シンジは返事をしない、いや、出来ない。
「ヘリにでも酔ったのかしら。とりあえず横になれるところに行きましょうか。」
シンジをつれてミサトが移動しようとした時、弱々しくシンジが答えた。
「だ・・・だいじょ・・うぶ・・・です。」
そう言って顔を上げたシンジの額には大粒の汗が光っていた。
「ちょっと気分が悪くなっただけです。もう大丈夫ですから。」
にっこりと笑うシンジ。
「そう?気分が悪くなったら言ってね。じゃあ、とりあえず紹介するわね。この子がセカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレーよ。」
「そ、惣流・アスカ・ラングレーよ!
アンタがサードチルドレン?
ハン、情けないわね。ヘリなんかに酔うなんて。アタシが来たからには使徒なんてお茶の子さいさいよ!アンタの出番なんて無いわ!」
シンジは笑顔を浮かべて手を差し出した。
「初めまして、惣流さん。碇シンジです。これからよろしく。」
だが、アスカは手を取らず、プイッと踵を返して歩いて行ってしまった。
「やれやれ、相変わらずね、アスカは。じゃシンジくん、私達も行きましょうか。」
「葛城さんは先に行っててください。僕はもう少し風に当たって行きますから。」
「そうね。わかったわ。私は提督に挨拶しないと行けないから。場所はあそこよ。」
そう言って艦の一番高いところにある部屋を指差した。
「分かりました。」
「それじゃね。」
ミサトがいなくなった後シンジは近くにあった壁に背中をあずけ、息を吐き出した。
息が荒くなり、額にはまた汗が浮かんでいる。
(よく耐えたわね。)
(なんとかね。)
(だいぶ疲れたみたいね。)
(やっぱりなかなか許せそうに無いよ。)
(そう・・・)
(でも、憎むわけにはいかないっていうのも分かってる。)
(・・・)
(時間をかけて自分の気持ちを整理するよ。)
(レイを許せたんだもの。アスカも許せるわよ。)
(そうだね・・・)
「ふん、あんなおもちゃを運ぶのに太平洋艦隊が勢ぞろいとは、ずいぶんと豪勢なもんだ。」
提督がミサトのIDを見ながら強烈な皮肉を言う。
ミサトはそんな提督の皮肉にも顔色一つ変えず答える。
「エヴァの重要度を考えると少ないくらいですが。」
「いつから我々は宅配屋に転職したのかな?」
「某組織が結成されてからと存じます。」
提督がそばにいた副官に聞くと副官も淡々と皮肉を返す。
「ではこちらの書類にサインをお願いします。」
ミサトが弐号機引渡しの書類を渡そうとすると
「まだだ!海の上は我々の管轄だ!」
ミサトの顔がわずかに引きつる。彼女は基本的には気は長くない。
ここまで皮肉に耐えただけでもミサトにしてみれば努力しているのである。
なんとか怒りを堪えてミサトが口を開こうとしたとき
「早めに引渡しをしたほうがよろしいかと思いますよ、提督。」
背後から流暢な英語が聞こえてきた。
一同が振り向くとニコニコしながらシンジが立っていた。
「なんだね、君は。」
「失礼しました。初めまして、あのおもちゃの初号機のパイロットをしています碇シンジといいます。」
「君がかね。色々と話は聞いているよ。そうか君がか。」
「はい。それで引渡しのことですが。」
「ここは先ほども言ったが私達の管轄なんでね。申し訳ないが君の申し出は受けられないよ。」
「ですが、通常兵器では敵に襲われたときダメージを与えられません。
もちろん貴方方をないがしろにしているのではありません。そちらの素晴らしい戦績は存じていますし、純粋な戦闘力ではネルフは貴方方の足元にも及ばないでしょう。
ですが、今僕たちが戦っているのは特別な敵なのです。ここは僕たちに活躍の場を譲っていただけないでしょうか?」
「ううむ・・・」
「そちらも何も出来ないわけではありません。ここは貴方方の管轄。僕たちにとっては不慣れなところです。色々と問題が生じるかもしれません。そのときのためにそちらに経験を生かしてサポートしていただきたいのですが。」
シンジの言葉に少し考え込んでいたが、提督は顔を上げた。
「分かった。君の提案を受け入れよう。」
「ありがとうございます。
すみませんね。ずいぶんと礼儀知らずの組織でして。何せトップからしてあの髭ですから。
ずいぶんと傲慢な男ですからね。自分達だけで何でも出来ると思っている人間が多い組織ですし。」
「はっはっは。面白いな君は。いいのかね、君の言う礼儀知らずの組織の人間がいるところでそんなこと言って。」
「構いませんよ。トップの男は僕に輪を掛けた臆病者ですからね。何も出来ませんよ。」
シンジがそこまで言うと再び提督は笑い声を上げた。
「ところで、君とどこかで会ったことは無いかね?どうも君に見覚えがある気がするのだが。」
「・・・いえ、無いと思いますよ。それではサインをお願いします。」
「葛城さん、書類をお願いします。」
シンジは呆然とやり取りを眺めていたミサトに声を掛けた。
「え、あ、ああ。はい。」
言われるがままにシンジに書類を渡す。
「ではお願いします。」
「うむ。」
さらさら、とサインをするとシンジに書類を返した。
「ありがとうございました。では。」
敬礼をしてミサトのほうに振り返る。
「葛城さん、終わりましたよ。」
だが、ミサトは未だ現実復帰できていなかった。一連の出来事にあっけに取られている。
傍らを見ればアスカも呆然としていた。
「葛城さん。」
「あ、うん。ありがとう。
シンジくんすごいわね。英語話せたんだ。」
「一時期外国にいたことがありましてね。そのときに覚えました。
それよりも葛城さん、もうちょっと他の組織との関係を良好にしたほうがいいですよ。」
「うっ・・・。」
ミサトはばつが悪そうに頭をかいた。
一方アスカは不機嫌そうにシンジを睨んでいる。
その時
「よっ、葛城。」
聞き覚えのある声にミサトは冷や汗を掻きながらギギギ、と変な擬音を立てながら振り向いた。
そこには見覚えのある男の姿が
「か、加持ぃ!?」
「よっ。」
「加持さぁ〜ん。」
露骨に嫌そうな顔をするミサトに嬉しそうに猫なで声で走り寄って行くアスカ。
対照的な二人である。
Asuka&Shinji
「どうだ、食堂にでも行かないか?なんかおごるぞ。」
加持が提案してきた。
「行く行く。早く行きましょ〜。」
アスカがいち早く賛成する。ミサトは渋い顔のままである。
「なんでアンタがここにいるのよ。」
「アスカの随伴でね。」
「うかつだったわ。十分考えられることだったのに・・・。」
うなだれるミサト。
「いいですよ。じゃ、先に行っててください。ちょっとトイレに行ってきますんで。場所は分かりますから。」
「分かった。よし、じゃあ行くか。」
シンジを除いたメンバーは加持に連れられて食堂へと向かった。
相変わらずミサトは微妙にへこんだままだったが。
シンジは皆が見えなくなるとトイレとは違う方向へと歩き出した。
人目に付かないところに着くと呟いた。
「さてと・・・。じゃ、よろしく。」
「今、付き合ってる奴いるのか?」
食堂に着き、適当に注文をすると加持はいきなりそんなことを聞き始めた。
「別に。アンタには関係ないでしょ。」
「つれないなぁ。」
ミサトの冷たい返事にも特に堪えることなくへらへらと笑顔を浮かべている。
「どうも、遅れました。」
「やあ。とりあえずコーヒーを注文しておいたけどいいかい?」
「構いませんよ。ありがとうございます。」
シンジが食堂に到着して椅子に座るとまもなく注文しておいた品物が運ばれてくる。
「改めて自己紹介させてもらうよ。俺は加持リョウジ。ネルフドイツ支部からアスカの随伴をしている。よろしくな、碇シンジくん。」
「ええ、こんにちは。加持さん。碇シンジです。よろしくお願いします。」
「君の活躍は聞いているよ。何の訓練無しにいきなり初号機を動かしたサードチルドレン。すでに三体の使徒を倒している。」
「たまたまですよ。」
「偶然でもいいじゃないか。運も実力のうちだよ。」
加持の賞賛もシンジには何の思いも浮かんでこない。
顔色一つ変えることなくコーヒーを飲んでいる。
アスカは加持がシンジをほめることが面白くない。
「ハン、最初の奴は暴走して勝ったんでしょ?次の奴もかなり苦労してるじゃない。あんな奴ら私ならあっという間に倒してみせたわ。」
「はは、アスカはずっと訓練してきたからな。アスカとシンジくんを比べるのはフェアじゃないさ。」
「でも〜。」
「アスカには日本に着いてから期待しているよ。」
「そうね。見てなさい。アンタの出る幕なんてないわ!」
そう言うとアスカはビシッ、とシンジを指差した。
「うん、期待しているよ、惣流さん。」
ニコニコ笑いながら答えるシンジ。
アスカはどうもペースが掴めない。
(さっきからずっとニコニコ、ニコニコしちゃってさ。何考えてんのかしら。こんなのほほ〜んとした奴に負けてられないわ。)
誰もいない加持の船室。
ぱっと見なんでもない入り口には実は厳重なロックが掛けられていた。
その扉が開く。
入ってきたのは加持―――ではなく、中高生くらいの少女だった。
紫がかった髪に女性用士官の服を着ており、幼さを残す顔にどこかミスマッチな印象を与える。
「さて、ちゃっちゃと片付けちゃいますか。」
そう独り言を言うと、ベッドにおいてあった黒い頑丈そうなトランク―――ではなくてクローゼットを漁りだした。
いくつもある同じ色形のトランクの中から一つのトランクを取り出す。
「私からこいつを隠すっていうのは無理な話なのよね〜。」
場の空気にそぐわない明るい声でそう言うと、突然自分の右腕を切り落とした。
しかし、傷口から血が噴き出すことはない。
すると切り落とした箇所からずぶずぶ、と再び腕が生えてきた。
何事も無かったかのように作業を続ける。
「ふ〜ん、ふん、ふん、ふん、ふん、ふん、ふん〜♪」
自分の右腕が転がっている部屋で鼻歌を歌いながら幼さの残る少女が隠してあったトランクを開ける。
かなりシュールな光景である。
厳重なロックと仕掛けが施されたトランクを何の苦も無く開けると、そこには硬化ベークライトで固められた生物の幼虫のようなものが入っていた。
それを掴むとあらかじめ準備しておいたトランクに入れ替え、切り落とした右腕を掴むと目を閉じた。
その瞬間右腕であったものが徐々に形を変えていき、ついにはトランクに入っていたものと全く同じになった。
それを開けたトランクに戻すと、元々施されてあった仕掛けをして元の位置に戻す。
「はい、しゅう〜りょう♪」
入り口にも同じ仕掛けをして少女は姿を消した。
甲板ではアスカと加持が風にあたっていた。
「あんなのがサードチルドレンなんてサイッテ〜。」
「しかし、初搭乗ではシンクロ率は30%後半を記録しているぞ。」
「うそっ!?」
(自分でも初めての時は20%行くか行かないかくらいだったのに。)
ギリッ、と歯軋りをさせるとアスカはさっきまで居た食堂のほうへと走り出した。
今、シンジの目の前には紅い機体とそのパイロットである少女がいる。
先ほどから何やらアスカが説明しているが、あまり聞いてはいない。
そもそも弐号機が制式な量産機だからといって初号機より優れているということは無い。
だが、そう言ってもアスカは信じないだろう。
彼女が信じている事実。それこそが真実であると思い込んでいる。
巧妙に操作された情報を与えられ、信じ込まされ、性格を誘導されてきた少女。
それが惣流アスカであった。
シンジも十分にそのことを知っている。
心の似通った二人。心の奥底で常に同じものを望んでいた。性格の違いはただ単に周りの環境の違いだけである。
アスカはまわりを、母親を振り向かせようと望み、そのきっかけを与えられた。セカンドチルドレンという。
シンジは捨てられた後、きっかけが無く、預けられた先でも冷遇された。
それが二人の違いである。
理解が出来ても感情は違う。
先ほどよりも幾分落ち着いてアスカを見られるようになったシンジだが、まだ深層では憎しみはくすぶっている。
しかし、それと同時に助けてやりたいとも思う。
このままいけば必ず以前のようになってしまう。
自分の中の相反する感情にシンジは思わず苦笑いを浮かべてしまう。
(愛と憎悪は紙一重、か・・・。誰が最初に言ったんだろうね。)
「ちょっと!!アンタちゃんと聞いてんの!?」
「ごめんごめん、ちゃんと聞いてるよ。いかに君の機体がすごいか、だろう?」
「そうよ!零号機と初号機は所詮試験機と試作機。何の訓練もしてないアンタなんかがいきなりシンクロするのがそのいい証拠よ!」
「はあ、そういうものなのかい?」
「そうなの!!」
アスカが肩を上下させながら叫ぶ。
(なんなのよ、こいつは・・・。疲れるわね・・・。)
アスカが頭を上げて何か言おうとした時、衝撃波がシンジたちを襲った。
「水中衝撃波!?近いわ!」
そう叫ぶと軽い身のこなしで弐号機から駆け下り、デッキのほうへ走っていった。
「・・・来たか。」
シンジの呟きを聞いたものはいなかった。
アスカがデッキへ到着すると他の艦の周りで大きな水柱が上がっていた。
「敵襲!?」
「使徒だね。」
その声に振り向くとシンジが笑顔で立っていた。
「使徒!?あれが!?」
そう言ってまた視線を海上に向けると再び水柱が上がる。
それを見てアスカは誰にも聞こえない声で、しかし嬉しそうに言った。
「チャ〜ンス。」
そしてくるりと踵を返すと自分の部屋のほうへ走りながらシンジに声を掛けた。
「ほら、サード。アンタも付いてきなさい。」
やれやれ、といった表情で何も言わずにシンジはアスカの後ろを追っていった。
その後階段のところでアスカに言われて待機していると、プラグスーツに着替えたアスカが出て来た。
シンジに自分のスペアのプラグスーツを差し出しながら
「はい。」
「何?」
「決まってんでしょ?あんたも一緒に乗るのよ。」
やっぱりそう来たか、と思い懐かしさに思わず苦笑する。
「なによ。気持ち悪いわね。」
「ごめんごめん。予想通りだったからね。」
「ふん。ま、いいわ。早くアンタも着替えなさいよ。」
「いや、遠慮しとくよ。」
「なによ、せっかく人が華麗な操縦を間近で見せてやろう、て言ってんのよ。つべこべ言わずにさっさと着替えなさい。」
「折角だけど、まずは惣流さんの腕前を外から見てみたいしね。それに僕が乗ったらノイズが混じるんじゃないの?」
「そんなのは私にとっては関係ないわよ。多少のノイズなんて気にならないわ。」
「でも、僕が乗ると惣流さんの足を引っ張るかもしれないからやっぱりやめとくよ。」
「はっ、情けないわね!」
「情けなくても構わないよ。それより早く行ったほうがいいじゃない?」
何とかエヴァに乗せて自分の腕前を見せ付けたかったアスカだが、シンジが挑発に乗ってこなかったため諦めて一人でエントリープラグに入っていった。
アスカが完全に乗り込むのを見届けると、乗ってきたヘリへと向かいパイロットに元の艦に戻るよう頼んでミサトたちの下へ戻っていった。
オーバー・ザ・レインボウの指令所の中は怒号が飛び交っていた。
「テンペスト沈黙!」
「くそぅ、いったい何が起こっているんだ!?目標にありったけの魚雷をぶち込んでやれ!」
次々と水中を高速で移動する目標に魚雷が命中するも全く効果が見られない。
「なぜ沈まん!?全弾命中のはずだぞ!?」
「提督!」
そこにミサトが走りこんできた。
「あれは使徒の攻撃です。目標に通常兵器は効きません。」
「やはりそうか・・・。」
そう言うと提督は姿勢を正してミサトに向き合った。
「葛城一尉、現時刻を持って指揮権、及び弐号機の引渡しをする。」
ミサトも敬礼をして応じる。
「分かりました。」
短くそう告げると周りに大声で指示を出す。
「急いで弐号機の起動準備を!」
「もう準備できてるわよ!」
マイクから元気な声が飛び込んできた。
「アスカ!?」
「今からそっちに行くわ!ケーブルの用意をしといて!」
「分かったわ!ケーブルの準備を大至急して!」
ミサトの言葉に部屋にいた船員達が慌てて動き出す。
弐号機を覆っていたカバーをマントのように羽織ながら弐号機が艦の上に立つ。
使徒―――ガギエルが弐号機を目指して突進してくるがそれを間一髪で避け、別の艦に着地する。
間一髪では無いのかも知れない。シンジに余裕を見せ付けるためか。それとも使徒を挑発しているのだろうか。
内部電源に余裕が無いのになかなか移動しないのはその両方だろう。また一つ船が沈んだ。
その様子をシンジはデッキで苦々しい表情で見つめていた。
船の上をさながら義経の八双跳びのように移動していく弐号機。
残り時間わずかのところでオーバー・ザ・レインボーに到着するとすぐにケーブルを装着し、肩からプログレッシブナイフを取り出して装備した。
「さあ、どっからでもかかってきなさい!」
そう言うとアスカは不敵に笑った。
水を切り裂きながらガギエルが弐号機の方へ向かってくる。
そして弐号機に飛び掛った。
初めてその巨体を日の元にさらす。その体長は巨大な軍艦一つを丸々覆ってしまいそうな大きさである。
その巨体を生かした体当たりを弐号機に食らわせる。
だが何とかアスカはそれを受け止めた。
その衝撃で艦が激しく揺れる。
「くっ!」
しかし、その攻撃を受け止めた拍子に唯一の武器であるナイフを落としてしまう。
艦に突き刺さり、そばにあった戦闘機をあっさりと真っ二つにする。
受け止めたものの、その重量に徐々に押されていく。
「・・・そろそろかな。」
誰もいなくなったデッキでシンジはそう呟くと目を閉じ、集中し始めた。
「ぐっ・・・!」
アスカは徐々に焦り始めていた。
受け止めたのはいいが、武器を落とし、均衡状態に陥っている。
しかも徐々に押され始めている。
そのとき弐号機の足がエレベーターにかかった。
だがそれを踏み抜くことは無かった。
足の下には六角形の「壁」がほんのりと光り輝いていた。
「アスカ!コアを攻撃して!」
ミサトがマイクに向かって叫ぶ。
「コアってどこにあんのよ!」
「体の表面には見当たらないから恐らく口の中にあると思うわ!」
「くちぃぃ!?」
「どうしたの、惣流さん?君ってそんな程度?」
突然横から聞こえてきた声にミサトは振り向くと、いつの間にかシンジがマイクを握っていた。
瞳がわずかに紅くなっているのにミサトは気付かない。
「ちょ、シンジくん、何を・・・」
「僕ならもうちょっとあっさりと倒せるんだけど?」
ミサトの声を無視して話し続ける。
アスカのほうは突然聞こえてきたシンジの声に激昂していた。
「な、な、な、何ですってぇ!」
「さっきは自信満々だったけどこの様子じゃたいしたこと無いみたいだね。僕が戦った奴はもうちょっと強かったよ?」
アスカの顔が真っ赤に染まっていく。
「やっぱり僕が一緒に乗ってサポートしてあげたほうがよかったのかな?」
いちいち癇に障るように言うシンジについにアスカはキレた。
「・・・アンタ、ちょっとそこで待ってなさい・・・」
静かにそうシンジに告げると、ガギエルの口に手を掛ける。
(簡単だね。)
(あっさりと挑発に乗るものねぇ・・・)
「くおぉぉんちくしょぉぉぉっ!!!!!」
絶叫しながらガギエルの口を大きく開く弐号機。
「サード、待ってなさいよぉぉ!!」
そう叫ぶと一気に口の中にあったコアを握りつぶす。
そして沖のほうへガギエルを投げ飛ばした。
ゆっくりと沈んでいくガギエル。
それを見届けるとアスカは艦に向かって叫んだ。
「サード!今からそっちに行くからそこで待ってなさい!」
だが聞こえてきたのはミサトの声だった。
「シンジくんならもうどっかへ行ったわよ・・・。」
「なんですってぇ!」
無事新横須賀に到着し、船から降りるとシンジが笑って立っていた。
「やあ、惣流さん。お疲れ様。」
「アンタ、アタシを乗せたわね。」
「まあね。」
「ふん、いいわ。どうだったかしら?アタシの操縦は?」
「うん、すごいと思うよ。性格を除けばね。」
その言葉にカチン、と来る。
「・・・なにが言いたいのよ。」
「余裕をみせすぎってところだね。敵はできるだけ速やかに殲滅すべきだよ。」
「どういうことよ。」
シンジは紙を取り出し、それをアスカに渡した。
「何よ、これ?」
「今回の戦闘の犠牲者の数。君がのんびり敵を待ってて攻撃された船に乗ってた人たちの数と、君が足場にした船に乗ってて踏み潰された人たちの数だよ。」
そこに記されていたのは三桁にも上る死亡者の数だった。
「犠牲者はなるべく少なくするもんだよ?」
そう告げるとシンジはその場を去った。
アスカは顔を青くして立ち尽くしていた。
「やれやれ、大変な船旅でしたよ。」
薄暗い部屋の中で加持がゲンドウにトランクを差し出す。
ロックを解除し、トランクを開くと「創られた」生物らしきものがあった。
「特殊ベークライトで固められてはいますが、確かに生きています。
補完計画の要ですね。」
にやりとゲンドウは笑いながら言う。
「そうだ。最初の人間、アダムだよ。」
shin:いや〜、やっと終わったぁ〜。
シンジ:また間が空いたね。
shin:先週はやたら忙しくてな。ほとんど書く時間が取れなかったんだ。
ミナモ:その間に二万ヒットいっちゃったわよ。
shin:そんなこと言われても無かったものは無かったんだ。
ミナモ:いいわ。次もさっさと仕上げなさいよ。
shin:へ〜い。
シンジ:あれ、綾波どうしたの?
レイ:・・・私全く出てない・・・。
shin:そりゃしょうがないさ。本編でも全く出てなかっただろ?
レイ:・・・
shin:大丈夫。また次回から出番あるから。といっても大体本編に準拠していくから少ないだろうけど。
レイ:(頭をたれる。)
ミナモ:今回は私が結構活躍してるわね。
シンジ:そうだね。色々裏方役みたいだけど。
ミナモ:・・・(ドゴッ)
shin:(汗)まあ、今回はどうしてもアスカメインになるからな。
レイ:・・・この後どうなっていくの?
shin:さあ?
シンジ:さあ、て・・・
shin:まあ、少しずつアスカを導いていきたいとは思ってるけど。
ミナモ:でもシンジも私も結構殺しを楽しんでたみたいだけど?
shin:基本的にシンジ達は自分達に関わったやつしか殺さない。邪魔するやつしかね。
シンジ:ふ〜ん、そうなんだ。
shin:そうなの。じゃあ今日はこの辺で。
ミナモ:読んだら感想をお願いしますね〜。
レイ:よろしく・・・
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