第六話  思い



「グアアアァァァァァァーーー!!」


シンジの叫び声が響く。


「シンジくん!!」


ミサトは半ばパニックに陥っていた。勢い込んで初号機を射出したのはよかったが、特にこれといった作戦を考えておらず、何か作戦を、と考えていたところに使徒の先制攻撃を食らってしまった。

そのため今すべきことも頭に浮かんでいなかった。

これは発令所のほかのメンバーも同様である。皆優秀ではあるが、まともな軍人は居らず、とっさのことに対処できないのだった。


「ぐううぅうう・・・!」


回線から聞こえてくるシンジのうめき声にリツコがはっと気付く。

モニターを見てみると、初号機は何とかぎりぎりのところでATフィールドを張って加粒子砲を防いでいる。


「は・・はや・・・く・・・。」


リツコは完全に我を取り戻した。


「初号機を戻して!早く!!」

「は、はい!!」


マヤにすぐさま指示を出す。ミサトや他のオペレーターたちもリツコの言葉に引きずられるように我に戻り、慌しくキーボードを叩き始める。

時間にしたらほんの十秒程度だが、その間にもシンジは還ってきて以来最も追い込まれていた。


(くそっ、もうもたない!)


シンジの脳裏に一瞬かつての苦しみが蘇るが、フィールドを破られる前にカタパルトが下がり始め、何とかラミエルの攻撃を防ぎきった。


先ほどまで初号機がいた場所に加粒子砲が突き刺さり、激しい爆発が起きる。

しばらく何の行動も起こしていなかった使徒だが、正八面体のちょうど真下に当たる頂点から何か棒のようなものが下りてきて地面を掘削し始めた。


「敵は何を始めたの!?」

「地面を掘削し始めています!敵ボーリングマシン、まもなく第一装甲板に接触します!」


ミサトの質問にマコトがすばやく答える。


「初号機とシンジくんの状態は!?」


リツコがマヤに尋ねる。


「両腕に多少の損傷が認められますがそれ以外は特に問題はありません。初号機パイロットは意識、呼吸ともに正常。両腕に炎症と脳波に若干の乱れが見られますが、許容範囲内です。」

「そう。」


マヤの報告にほっと一息を吐くミサト。


「とりあえずケージに救護班を用意させて頂戴。」

「了解。」


状況は予断を許さず、使徒戦が始まって以来の初めての敗北になるが、最悪の事態を免れたことに発令所には安堵のため息が満ちた。





(やはり、今の状態じゃラミエルはきついか・・・。)


シンジは背もたれに体を預けながらさっきの戦闘を振り返っていた。

元々シンジもいきなりラミエルを倒せるとは思っていなかった。

ラミエルは機動性こそ無いものの、攻撃力と防御力に関しては使徒の中でもトップクラスなのだ。

確かにシンジは普通の状態でもATフィールドは張れるし、使徒としての力は有しているがそれほど強いものではない。

神としての能力は未だ封印しているし、初号機のほうもS2機関は持っていない。

いくらシンジが以前よりも強く、経験があり、さらにはミナモがいるといっても太刀打ちは出来ない。

おまけにミサトにいきなり射出しないよう進言しようと思っていたが、レイのことで頭がいっぱいで発令所の様子に注意を払っていなかった。


(ちょっと今のはやばかったね〜。)


言葉の割にはのほほんとした様子でミナモが話しかける。


(うん。ミナモはなんとも無かった?)

(ちょっと腕が痛いけどたいしたことは無いよ。)

(そう。よかった。)


お互いの無事を確認しあったところでちょうどケージに到着し、初号機から降りてくる。


(やっぱり葛城さんは葛城さんだな。どうも使徒戦になると周りが見えなくなってる。)


どうやってお仕置きしてやろうかと考えているとシンジの視界がゆがんだ。


(!?)

(!?シンジ!?)


駆け寄ってくる救護班を見ながらシンジの意識は闇の中へと落ちていった。










作戦室



初号機のバルーンダミーを出したときの様子や、独式自走臼砲の攻撃の様子が中央のモニターに映し出されている。

どちらもあっという間にラミエルの加粒子砲によって一瞬で藻屑と化した。


「これまでに採取したデータによりますと、敵は一定範囲内に入った対象に攻撃を加えるものと推測されます。」


ミサトの副官である日向マコトが映像に説明を加える。


「敵のATフィールドは?」

「健在です。位相空間を肉眼で確認できるほど強力なものが展開されています。こりゃ生半可な攻撃じゃ泣きを見るだけですね。」


場の空気を和まそうとしたのか、冗談ぽい口調で話す。

ミサトはボールペンを弄りながら作戦を考える。


「攻守ともにパーペキ。まさに要塞ね。」

「白旗でも揚げますか?」

「ナイスアイデア。でもその前にやっておきたいことがあるのよね〜。」


かなり切羽詰った状況にも関わらず冗談を言うマコトにミサトもまた冗談で返しながら不敵な笑みを浮かべた。






総司令室



「目標の射程外からの超長距離射撃かね?」

「はい、先ほど採取したデータによりますと近接戦闘は危険すぎます。目標のレンジ外から高エネルギー収束による一点突破。これしかありません。」


冬月の確認に自信たっぷりに答える。


「マギはなんと言っている?」

「スーパーコンピュータマギは賛成2、条件付賛成1を回答しています。」

「勝率は8.7%か・・・。」

「最も高い数字です。」


冬月のため息に近い呟きにも胸を張って答えるミサト。

その時口の前で手を組んで一言もしゃべらなかったゲンドウがはじめて口を開いた。


「反対する理由は無い。やりたまえ、葛城一尉。」




「しかしまた無茶な作戦を立てたものね。」


エスカレーターの上でリツコが呆れたように声を出す。


「無茶とは何よ。無茶とは。時間内で実現可能、おまけに最も勝率が高いときてるのよ〜。」

「そうは言ってもね・・・。」


ため息を吐き出したリツコの前には開発途中のポジトロンライフルがあった。


「うちのポジトロンライフルじゃそんな大出力に耐えられないわよ。」

「決まってるじゃない。借りるのよ。」

「借りるって・・・。まさか!」

「そ。戦自研のプロトタイプ。」


笑顔で言い放つミサトにリツコは今度こそ呆れたと額に手を当てて天井を仰ぎ見た。




つくば戦略自衛隊研究所



ミサトが徴発礼状を前に出し、高らかに宣言する。


「と言うわけでこれはネルフが徴発いたします。」

「し、しかし・・・。」


研究員が突然のことにうろたえながら異議を唱えようとするが、ミサトの言葉に阻まれた。


「ご心配なく。なるべく原形をとどめて返却するよう努力しますわ。レイ〜、いいわよ。持って行っちゃって。」


ミサトが叫ぶと天井をはがしながら零号機が姿を現した。


「精密機械だからそ〜っとね〜。」


ゆっくりとライフルを持ち上げるとそのまま姿を消した。


「しかし目標のATフィールドを破るのに必要なエネルギーは最低でも一億八千万キロワット。どこからそんなエネルギーを集めるんです?」


マコトのもっともな疑問にもにっこりと笑って答える。


「日本中よ。」





ライフルを持って移動しながらレイは思考に埋没していた。


(あの人は何者・・・?私の秘密を知っているようだった。

・・・本当に?あれだけで判断は出来ない。

でも彼は碇司令のシナリオにとって危険な気がする・・・。排除すべき?現状では出来ない。私だけでは使徒を倒すことは出来ない。

でも報告はすべき。)


結論がでたところで顔をあげるが、再び考え込む。

レイの頭には病院の廊下でのシンジが浮かんでいた。


(・・・どうして彼のことが気になるの?彼は碇司令の子供。でも司令が私のことを話していたとは思えない。

なのにどうしてあんな表情をしていたの・・・?)


レイにはまだ感情が理解できていない。他人はおろか自分のでさえも。

しかしレイにも具体的ではないものの、おかしいと感じさせるほど複雑な表情をあの時シンジは浮かべていた。

シンジ自身も気付いていなかったが、廊下でレイを一瞬見つめた瞳には憎しみと喜びと悲しみ、そして懐かしい者に会ったときの様な複雑な、泣きそうな色をしていた。









He had felt hatred,
but he noticed his real thought











(ここは・・・どこだ・・・?)


シンジは何かの中に浮かんでいた。

浮かんでいる、ということは水の中のはずなのだが、どういうわけか息が出来る。

周りの色も色がついていないことからLCLの中でも無さそうだ。なにより血のにおいがしない。


(そうか、夢を見てるのか・・・。)


自分で夢と自覚するのもおかしな話だが、確かにシンジは夢を見ていた。

辺りは暗く自分以外何も見えないのだがどこか心地よかった。

まるで誰かに抱かれているような・・・


(そういえば、この感覚どこかで・・・?)


遠い昔、どこかで感じたことのある感覚。

どこだったかと頭をひねって思い出そうとするがどうしても思い出せない。

しばらく考えていたが、


(まあ、いいか・・・)


この暖かいものに包まれているとそんな些細なことはどうでもよくなってくる。

シンジは思い出すのを諦めて心地よさに身をゆだねた。

どれだけ時間が経っただろうか・・・。

目を閉じ、シンジの意識が再び落ちそうになった時、誰かが近づいてくるのを感じ、シンジは目を開いた。

目の前には赤毛の女の子が立っていた。


「アスカ・・・。」


正面に立つ少女―――アスカと呼ばれた―――はうつむいて立っていた。

下を向いているのと前髪によって表情は分からない。

ゆっくりとシンジの方へ歩み寄ってくると、だらん、と力なくたらされていた腕を上げた。


(!!)


ゆっくりと伸ばされた腕はそのままシンジの首へとかけられ、猛烈な力でシンジの首を締め上げ始めた。

必死でシンジも腕を払おうとするも、少女の腕はびくともしない。


「ぐ・・・が・・・あ・・・。」


その時、少女はおもむろに顔を上げた。


(!)


シンジの表情は驚愕に染まった。

初めて見た少女の顔は右目がつぶれており、般若の様相でひたすら首を絞める腕に力をこめる。

いつの間にか口の中には血のにおいのする液体が入っていた。

首にかかる腕が4つに増えた。

そこには同じく鬼の形相をしたトウジの姿があった。右足は・・・無い。

どんどん腕が増えていく。

ケンスケ、ヒカリ、マコト、シゲル、マヤ、ゲンドウ、ユイ・・・・・・

見知った顔が増えていき、意識を手放しそうになるが、その時、彼らの後ろの方に蒼銀の髪の少女の姿が見えた。

レイは無表情に、だが、どこか悲しそうにシンジを見つめていたが、ゆっくりと口を動かしていく。


「いかり・・・くん・・・。」





「うわあああぁぁぁぁぁーーーーーー。」


絶叫とともにシンジは跳ね起きた。

全身は汗でびっしょりになり、目の焦点は合っていない。

呼吸を整え、辺りを見渡してここが病室だと気が付くと大きく息を吐き出して、ベッドに倒れこんだ。


(ああ〜びっくりした。)


ミナモが目をぱちくりさせながら話しかけてきた。


(ミナモ・・・)


シンジにとってこの声を聞けたのが嬉しかった。あのままどこかへ行ってしまいそうだったから。


(もう、驚かさないでよ!もうちょっと静かに起きられないの!?)


頬を膨らませながら言ってくる。普段年上のような落ち着いた雰囲気を放つ彼女だが、子供っぽい仕草で怒るのを見てシンジは笑いをかみ殺した。


(シンジ!分かってるの!?)

(ごめん、ごめん。ちょっと夢を見ていてね。)


苦笑しながら答えるシンジ。

じと目で見ていたミナモだったが、ふぅ、と息を吐くと再び話し始めた。


(でも本当にびっくりしたんだからね。さっきの話じゃなくて倒れたとき。)

(うん、ごめん。どのくらい寝てた?)

(2,3時間かな?)

(使徒の方は?)

(前回とほぼ一緒ね。ヤシマ作戦になりそうよ。)

(そっか・・・。でも何で倒れたんだろ?)

(う〜ん、それなんだけどね。シンジが寝てる間考えてみたんだけど、たぶんエネルギーの使いすぎかなと。)

(使いすぎ?)

(おそらくね。シンジもATフィールド張ったでしょ?しかも全力で。今まで使ったこと無かったのに急に全力で張ったから今の限界以上にエネルギー使ったんじゃない?それに私ともシンクロしてたんだし。)


そこまで話したとき、部屋のドアが開いてレイが食事を乗せたカートを押して入ってきた。


「綾波・・・。」


シンジは目を逸らした。先ほどの夢がまだ鮮明に記憶に残っている。

ミナモはそのシンジの様子にレイが何か夢で関わったのだと気付いたが何も言わなかった。

レイの方は気にした様子は無い。


「食事。食べるでしょ?」

「う、うん・・・。」


食事を乗せたトレーをベッド備え付けの台の上に置くと、ポケットからメモ帳を取り出して読み上げ始めた。


「これからの予定を伝達します。

本日1700に碇、綾波両パイロットはケイジに集合。

1800に移動開始。1830現地到着。

以降別命あるまで待機。」


淡々とスケジュールを読み上げていく。


「・・・分かったよ。食事ありがとう。先に行ってて。」

「分かったわ。」


視線を逸らしたままレイに告げ、レイも返事をするとそのまま出て行った。

しばらくシンジはこの後どうするか考えていたが、やがて決意したように顔を上げるとテーブルの上に置かれた食事を口に運び始めた。


「・・・血の味がする・・・」






そのころネルフ本部では慌しく作戦準備が行われていた。


「ポジトロンライフルの方はどう!?」

「技術二課の名にかけても後3時間で形にしてみせますよ!」


ミサトの確認に技術部の男が答える。


「送電システムの方は!?」

「現在予定より2%ほど遅れていますが、作戦開始30分前には完了します。」


マコトがキーボードを叩きながら返事をする。

「後はパイロットだけね。」

「でも彼、素直に乗ってくれるかしら。先の戦闘で彼を殺しかけたものね。下手をすれば私たち彼に殺されるわよ?」

「おおげさねぇ。ただの中学生に何が出来るのよ。」

(おおげさでもないと思うけど・・・)


内心リツコが呟く。


「さっきまで気を失ってたんだから文句くらいは言ってくるかもしれないわよ?私たちもさらに嫌われたでしょうね。」


苦虫を噛み潰したような顔であえてリツコの言葉を無視する。


「双子山決戦、急いで!」






日本中から電気が消えていく。

衛星からのその映像はどこか幻想的でもあった。

第三新東京市からも明かりが消え、暗闇に浮かぶのはラミエルと、遠く離れた決戦の地双子山付近。

そこで、作戦の伝達が行われていた。


「これから作戦の役割を発表します。シンジくん。」

「はい。」

「初号機で砲手を担当。レイは初号機の防御をして。」

「はい。」

「これは初号機のほうがシンクロ率が高いからよ。この作戦にはより精密なオペレーションが必要なの。」


ミサトが一通り説明した後、リツコが補足する。


「シンジくん、陽電子は地球の自転、磁場の影響を受けて直進しません。それを補正するのを忘れないように。」

「・・・分かりました。」

「レイはそこの盾で初号機を加粒子砲から防御。これはSSTOのお下がりで、電磁コーティングしている種類だから敵の砲撃にも17秒もつわ。」

「私は初号機を守ればいいのね。」

「ええ、そうよ。」


一同を一瞥した後、ミサトは満足そうにうなづいた。


「では準備して。」


だが、リツコはどこか違和感を感じていた。

リツコの予想では今までのシンジの行動から何かしら言ってくると思っていたのだ。

しかし実際、シンジは特に何も言ってこない。


(私の考えすぎかしら・・・?)





エヴァンゲリオン仮設ケイジ


シンジとレイは少し離れて座り、未だ特に動きを見せないラミエルを見つめていた。

するとシンジはごそごそ、とプラグスーツの中から何かを取り出し始めた。

何か箱のようなものを取り出し、そこから一本抜き取ると口にくわえ、一緒に入っていたライターで火をつけた。

すうっ、と大きく吸い込むとゆっくりと煙を吐き出した。

吐き出された煙がゆったりとした動きで暗闇に吸い込まれていく。

その様子をレイがじっと見ていた。

その様子にシンジが気付いてにっこりと微笑みながらレイに話しかける。


「これ?タバコを吸ってると何も考えなくてすむんだ。」


だがそれはいつもの貼り付けられただけの仮面だった。


「・・・未成年の喫煙は禁じられているわ。身体への悪影響も大きい。」

「へえ、心配してくれているの?」


分かってはいたがあえて聞く。

レイは何も答えなかった。

そのまま時が流れていく。


「何故・・・」


おもむろにレイが口を開いた。


「ん?」

「何故、貴方はそんな目をしているの?」

「君の目の方が珍しいと思うけど?」

「・・・。」

「分かってるよ。またその質問かい?」


こくん、とレイが無言でうなずく。


「前にも言ったように僕は自分がどんな目をしてるのかなんて分からない。ただ、僕の中にある感情については分かってることがある。」


そこまで言って再びタバコを吸い、紫煙を吐き出す。


「憎しみだよ。」


それだけ言うと空気が一変する。

冷たい空気があたりに満ちて何者の存在も許さない。レイでさえも体が震えてくるのを感じていた。ただし彼女はその理由が分からなかったが。


「大丈夫だよ。まだこの場で君をどうこうしようとは思っていない。色々と面倒だからね。」


そう言うとまたゆったりとした雰囲気に戻る。

そして紅い瞳を覗き込む。


「でも、すぐに君を無に還してあげるよ。」


レイは大きく目を見開いた。と同時に体の奥から震えてくるのを感じていた。それは先ほどのものとは違う震えだった。しかし、別のどこかで悲しみも感じていた。レイ自身は自覚していないが。


「どうして・・・」


レイが言いかけたところでピピッ、とアラームが鳴った。


「時間だね。それじゃあ。」


一言そう言うと、初号機の中へ入っていった。

レイの方も零号機の方へときびすを返した。







日付が変わり、ヤシマ作戦が実行される。


「これよりヤシマ作戦を開始します。」


指揮車でミサトが作戦の開始を告げる。


「電圧上昇、圧力限界へ」
 
「全冷却システム、出力最大」
 

双子山の道路に所狭しと並べられた送電システムが低い音をたてて稼動を始める。


「陽電子流入、順調」
 
「第2次接続」
 
「加速器、運転開始」
 
「全電力、ポジトロンライフルへ」
 
「撃鉄、おこせ!」
 

日向の声に、初号機は右手で撃鉄を引く。
 

「電圧、発射点に向けて上昇。あと15秒」
 
「14秒」
 
「13秒」
 
「12秒」
 
「11秒」
 
「10秒」
 
「9秒」
 
「目標に高エネルギー反応!」
 
「何ですって!」


ラミエルの中央のスリットからわずかに光が漏れている。


(くっ・・・。しかしやつより先に撃てば勝機はある。)


ポジトロンライフルへの充電が終わる。


「撃てぇーーーー!!!」


ミサトが叫ぶのとラミエルが光ったのはほぼ同時だった。

だがシンジはあえてミサトの声より遅れてスイッチを押した。

二つの光の矢が相手に向かって飛んでいく。

しかし、お互いに干渉しあい、ブゥン、と低いうなりをあげて弾道は逸れていった。

指揮車内を激しい振動が襲う。


「きゃああぁぁぁーーー!」


ガラスが何枚か割れ、ミサトたちに降り注ぐ。


「しくった・・・」


現状を確認すると、すばやく指示を出す。


「すぐに第二射の準備を!シンジくんは移動して少しでも時間を稼いで!」

「ヒューズ交換!ポジトロンライフル再充填開始!」


マコトたちがすばやく作業に取り掛かる。

だがシンジだけはその場を動かない。


「シンジくん?どうしたの?場所を変えて!」


シンジからの応答は無い。初号機はライフルを構えたままじっとしている。

ミサトがプラグ内の様子を確認しようとしたとき、最悪の報告が入る。


「目標内部に再び高エネルギー反応!」

「まずいわ!!ポジトロンライフルは!?」

「充填完了まで後17秒!だめです、間に合いません!」

「だめ、逃げてーーー!」


ミサトの叫びとともに光が初号機を襲う。

シンジには分かっていた。絶対に当たらないことが。

予想通り、零号機が初号機の前に立ちはだかる。

盾にあたり、光が当たりに拡散していく。

加粒子砲をそうしてしばらく防いでいたが、徐々に解け始める。


「まずいわ。盾がもたない。」

「後何秒!?」

「完了まで後11秒!」

「くっ・・・」


指揮車の焦りをよそにシンジは笑みを浮かべていた。

今目の前では零号機が加粒子砲に溶かされていっている。

これこそがシンジの狙いだったのだ。

二射目で確実にラミエルは倒せる。だがシンジにとってもはやレイの存在は邪魔だった。

少なくともシンジ自身はそう思っている。

今現在の力でレイを殺してしまうと後々面倒なことになる。しかし作戦中ならどうか?レイを見殺しにしてしまっても誰も文句は言えない。

二人目のレイが死んだら三人目が地下のプラントから出てくる前にクローンたちを全て壊してしまえばいい。

今ならそれくらいは造作も無いことだ。

だからこそ作戦の伝達時に何も言わなかったし、一発目の発射をわずかに遅らせたのである。


(これでいい、これでいいんだ。)


シンジは自分に言い聞かせるように呟く。

だが、どこか引っかかりを感じていた。


(なんだ、この感じ?


ざわざわする。


落ち着かない


僕は綾波が憎いはずだ。そうだろ?


消し去ってしまいたいほどに憎いはずだろ?


ずっと復讐だけを誓って生きてきたじゃないか。


なのに・・・


なぜこんなにざわつくんだ?


なぜ涙が止まらない?


なぜこんなに―――ココロガイタム?)



(シンジ、これでほんとにいいの?)


頭の中にミナモの声が響く。

その時、盾が全て融解した。

それにも関わらず、零号機は両手を広げ初号機を加粒子砲から守る。





アナタ、ダレ?



お父さんのこと、信じられないの?



貴方は死なないわ。私が守るもの。



碇君の、においがする・・・



これは・・・碇君と一つになりたい私の心・・・



たぶん私は三人目だから



だめ、碇君が呼んでる



希望なのよ



いかり・・・くん・・・



シンジの頭にかつてのレイが蘇る。

そして最後に微笑んだ




その瞬間、シンジの中で何かがはじけた。



「うわあああぁぁぁぁーーーーー!!!!」


(!・・・シンジ!?)


ミナモが驚いて声をあげるが、シンジには届かない。


(!?リミッターが外れる!いけない!シンジ!!!)


ミナモが必死に抑えようとするも次第に押されていく。


(くっ!だめ、レベルが違う!こんな力が・・・!)


しかし急速に力が収まっていく。


(シンジが自分で制御してるの!?)


シンジの方はというと必死の形相で前を見つめている。

零号機の前にはATフィールドが展開され、加粒子砲を全て防いでいる。

その光景に指揮車もレイでさえも呆然としていた。

長く感じられた使徒の砲撃が終わる。

その瞬間、使徒は炎を上げながら第三新東京市に沈んでいった。

双子山から放たれた一本の矢。さながら屋島の戦いのように寸分の狂いもなくコアを貫いていた。







「はあ、はあ、はあ・・・」


荒い呼吸をしながらシンジは呆然としていた。

ズズゥゥン・・・

零号機が倒れる音にはっと気付くと、零号機のプラグを無理やり排出し、一目散に零号機に走り寄る。

加熱されたレバーを躊躇なくATフィールドで切り裂くとLCLがあふれ出る。

足元のLCLからは湯気が上がっている。


「綾波ぃ!」


プラグの中のレイはぐったりとして動かない。


「綾波、綾波!」


必死で呼びかけるシンジ。するとゆっくりとレイが目を開く。


(誰・・・?碇司令?)


だがそこにいたのは涙を流すシンジの姿があった。

出撃前のシンジはそこにはいない。


「碇・・・クン。」


そう呟くとシンジが突然抱きついてきた。

レイには理解できない。何故抱きつくのか、何故泣いているのか。


「ごめん、ごめん・・・綾波。」


涙でくぐもった声で謝り続けるシンジ。


「どうして泣いているの・・・?」


「う、ぐすっ・・・綾波が生きていてくれたのが嬉しいんだよ。」


「なぜ・・・?貴方は私を無に還してくれると言ったわ。」


「君は、無に還ってはいけない。君は幸せになるべきなんだ・・・。」


「無に還ることが私の望み。」


「違う!そんな望み間違ってる!もっと君はいろんな物を望むべきなんだ。」


「・・・・・・」


「君は今まで人並みの幸せというものを知らなかった。いや、教えられてこなかった。


でも知れば君の世界はもっと広くなる。僕は君にもっと周りのことを知ってもらいたい。それが僕の傲慢だということも分かってる。それでも君は幸せになるべきだ。」


「・・・・・・」


「僕は・・・君の事をよく知ってる。君にスペアがあることも、君が純粋に人とは違うことも。」


「!!!」


「でもそんなこと関係ない。君が人でありたいなら、人であろうとするならば、誰がなんと言おうと君は人だよ。」



涙でぬれた顔を上げるシンジ。そこにはいつもとは違った笑顔があった。


「君は人形じゃない。ゲンドウの操り人形じゃない。自分でどうするか決めるんだ。そうすれば君は立派な人間だよ。

それに、僕は君が本心では何を望んでいるのか知っている。だから・・・」


そう言って手を差し出す。


「僕が最初の君の本当の絆になってあげる。」


微笑むシンジ。

レイを暖かいものが包み込む。

レイの両目から一筋の雫が流れ落ちた。


「これは涙・・・。そう私、嬉しいのね。」


だがレイの表情が曇る。


「綾波?」


「ごめんなさい、こういう時どういう顔をすればいいかわからない。」


シンジはかつて同じ場面で言った台詞をもう一度口に出す。


「・・・笑えばいいと思うよ。」


月が優しく二人を照らし出す。

美しい微笑を女神と満月が見守っていた。









懲りずにキャラコメ



シンジ:ホントは僕はレイが憎くはなかったんだね。


作者:いや、憎しみも確かにあるんだけど、心から憎んではいなかった、てところかな。


レイ:・・・でもLRSの人はハラハラだったと思うわ。


シンジ:確かにね。


作者:でも最後のやり取りとかなんも浮かんでこなくて適当に書きなぐった感じが否めないんだよな・・・


ミナモ:それは貴方の力不足。もっと精進しなさい。


作者:ゲッ!


シンジ:やあ、ミナモ。


ミナモ:レイちゃん、こんにちは。


レイ:・・・こんにちは。


作者:どうしてお前がここに!?


ミナモ:貴方が無謀なことを始めたを聞いたからよ。


シンジ:確かにね。ギャグセンスのかけらも無い作者がこんなこと始めたって誰も読まないと思うよ。


レイ:貴方用済み?


作者:ううぅ・・・(いじいじ)


ミナモ:ところで


作者:はい?


ミナモ:私の出番が少ないのはどういうわけかしら?


シンジ:そういえばそうだね。最初から出てる割には結構地味だよね。


ミナモ:ゴインッ!(シンジを殴った音)地味は余計よ。


(頭から煙を出して倒れるシンジ)


レイ:私も最初出番が無かったわ。


作者:だって特にカップリングのこだわり無いもの。


シンジ・ミナモ・レイ:は?


作者:シンジ復活早いな・・・。コホン。どちらかと言えばLRS派だけど絶対、というわけでもない。あくまで主役はシンジだから。


シンジ:そうなの?


ミナモ:じゃあ私たちはどうなるわけ?


作者:予定ではレイやアスカは特に悪い扱いはしないつもり。これからもそこそこ出番はある。もしかしたらどっちかがシンジとひっつく可能性も無きにしも非ず。


レイ:(ほっ)


ミナモ:私は?


作者:ずっとこんな感じ


ミナモ:ほぉ〜


シンジ:あ・・・やば


レイ:(さりげなく離れる)


作者:(汗)な、何でございましょう?


ミナモ:・・・さよなら


作者:へっ?


パシャ


シンジ:あ〜あ、やっちゃった。


レイ:?何をしたの?


シンジ:アンチATフィールドを使ったんだよ。で作者は無に還ったと。



ミナモ:こんな作者ですが感想なんぞを送ってやってね〜。


シンジ:よろしくお願いします。


レイ:・・・よろしく







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