第弐話 女神
「いいわね、シンジくん。まずは歩くことだけを考えて。」
ミサトが発令所からモニター越しに、敵を目の前にしてはあまりにもあんまりな命令を下す。
(今思えばほんととんでもない命令だよね。敵を目の前にして、歩け、だなんて。ほんと実戦では使えない人だな。今現在一人しかいないパイロットをなんだと考えてるんだろうね。って復讐の駒か。)
(とりあえずここはおとなしく従っておこうか。どうせやられなきゃならないんだし。)
今のシンジにとってサキエルを倒すのは一瞬で終わるのだが、先ほどのこともあり、この場はおとなしくしていようと決めた。
そこでミサトに指示に従って、初号機を一歩進ませる。
「
おお〜〜・・・!
」
シンジの元に発令所からのどよめきの声が届く。
(前回は気づかなかったけど、僕、こんな人たちの下で戦ってたんだよね。動くかどうかも分からないようなものに乗せて喜ぶなんて。しかも実戦の場で。さっきのミサトさんの指示にも誰も異議を唱えなかったし・・・)
モニターから何か聞こえてくるが、呆れていてシンジは全然聞いていない。
すると、何かに頭と腕を捕まれる感覚があった。
目の前にはサキエルの姿があった。考えているうちにサキエルのすぐそばまで来ていて、さっきから聞こえていた声は警告の声だったらしいことにようやく気がついた。
(あれ、全然気づかなかったなぁ。エヴァのシンクロが低いから感覚が鈍っちゃったのか。ちょうどいいか。操縦に不慣れなパイロットぽくて。)
(あんまり痛いのは嫌だから、ちょっとシンクロ率下げとくか。シンクロを操作するのって秘密を知っとけば結構簡単なんだよね、
母さん嫌いだから
。)
「ぐあああぁぁ・・・!」
初号機の腕が握りつぶされるのと同時にシンジの叫び声が発令所内に響き渡る。
「シンジくん、落ち着いて、それはあなたの腕じゃないのよ!」
「ううっ・・・」
「エヴァの防御システムはどうなってるの!?」
「だめです、シグナル作動しません!」
シンジの声とともに発令所内は一気に喧騒にあふれ出した。
「リツコ、何とかしてよ!こんなんじゃまともに戦えないわ!」
「まさか、ありえないわ。戦闘中にシンクロレベルが変化しているとでもいうの?マヤ、初号機のフィードバックレベルを一桁下げられる?」
「はい、やってみます!」
ミサトのヒステリックな声を受けて、リツコは何とか打開策を探ろうとマヤに指示を飛ばす。
「がっ!」
叫びの種類が変わり、皆がモニターを方を見ると、そこには持ち上げられて、サキエルの腕から伸びるパイルに頭部を打ちぬかれようとしている初号機の姿があった。
「だめっ!シンジくん、逃げて!!」
(ははっ、それってギャグ?この状況で素人が逃げれる方法があるなら、ぜひとも教えてもらいたいものだねぇ。)
ガキィン、ガキィン、ガキィン、
ガキィーン、ドカァン、ガン
ガクゥン・・・
ブシュゥーーーーー
パイルによって頭部を貫かれた初号機は、そのままビルへ激突し、頭を力なく下げる。
目に当たる部分には大きな穴が開いており、そこからは血のような赤い体液がおびただしく噴出している。
その様子をミサトは呆然と見ていた。
「初号機活動停止。」
「モニター反応ありません。」
「パイロット生死不明。」
「初号機、完全に沈黙しました!」
その言葉に我に返ったミサトがあわてて指示を出す。」
「はっ・・・。作戦中止、急いでパイロットを救出して!」
「だめです、完全に制御不能です!」
「なんですって!!!」
シンジは暗闇の中にいた。
それは、まさしく闇。どんな光さえも―――太陽でさえも吸い込んでしまいそうな暗闇だった。
「さてと、どこにいるのかな。」
シンジは何かを探しているようで、辺りを見渡しながら闇の中を歩いていた。
「おっ、いたいた。」
目的のものを見つけたようで、ゆっくりと歩いていくと、そこにはぼんやりとした、薄い光を放つ何かが二つ存在していた。
一つは、何かを守る、というよりは監視をしている、といった感じでもう一方の方に集中しており、もう一方は・・・何かに張り付けられていた。まるで、処刑された神の最期のように。
監視をしていた方は近づいてくるシンジに気がついたのか、ゆっくりと振り返った。
「あなたは・・・?」
「お前には用はない。どっかへ消えろ。」
「キャ!」
シンジによって吹き飛ばされて、悲鳴を上げながらどこかへ消えてしまった。
「生きていこうとする意志があればどこだって天国になる、か・・・。あそこはどこまで行っても地獄だったよ・・・。」
そうつぶやいたシンジの瞳は、普段見せることのない、悲しみと憎しみが交じり合った、とても悲しい色をしていた。
しばしの間女が消えていった方を見つめていたが、やがて残された者―――少女だろうか―――へと向き直って、声をかけた。
「やあ、生きてるかい?」
そう言ってかけた声こそ飄々としたものだったが、その目にはケイジで初号機に向かって見せたものと同じものが浮かんでいた。
声に反応して、張り付けにされていた少女がゆっくりまぶたを開ける。
「あなたは・・・?」
「ちょっと待っててね。今降ろしてあげるから。」
少女の問いかけには答えず、少女を台から降ろす。
すると、目が覚めて意識がはっきりしてきたのか、何かに驚いたように口を開く。
「!あなたは・・・、いや、あなた様は!!」
突然様付けで呼ばれたことにシンジは疑問の表情を浮かべるが、すぐに表情を戻すと、
「ごめんね・・・、遅くなって・・・。」
そう少女の耳元で囁くと、少女を力いっぱい、それでいて優しく抱きしめた。
すると少女の体から淡い光があふれ出し、シンジは驚いて体を離した。
光がゆっくりと少女の体へ収まると、少女は目を開き、優しい声でシンジに話しかけた。
「・・・お久しぶりです、シンジ様。」
先ほどまでと同じ声なのに、どこか違った響きを持つその声を聞き、シンジは目を見開いた。
「君は・・・」
「おや、もう声をお忘れですか?」
内容とは裏腹に、優しく慈しむような声でシンジに尋ねる。
「忘れるものか!君は、あの初号機だね?でもどうしてここに・・・?しかもどうやって?」
「あの後、あなた様をこの世界に送った時、私に力はほとんど残されておりませんでした。しかしわずかに残った力で何とかシンジ様の魂について行くことができました。ですが、ついて行くのがやっとでしたので、ずっとシンジ様の魂の元で仮死状態のまま眠っておりました。」
「じゃあ、どうして今こうして僕の前に?」
「おそらくはこの時代の私の魂に触れたことにより融合できたのだと思われます。シンジ様と同じように。ですから、こうしてお話しすることができているのです。」
本当はシンジにとって、そんな説明など、どうでもよかった。ただ自分の事を最後まで見つめていてくれた、その人に会えたそのことが嬉しかった。
「君のことは分かった。でも、どうして僕のことを”様”をつけて呼ぶの?前のときもそうだったけど。それに融合する前の”君も”同じように呼んでたけど。僕としては普通に呼んで欲しいんだけど。」
「そのような大それたことできるわけありません!」
それまでとはうって変わって突然大声で言い始めた初号機にさすがのシンジも少し引いてしまう。
「ど、どうして?」
「はっ、もっ、申し訳ありません。」
そんなシンジの様子に我に返り、気持ちを落ち着けて再び話し出す。
「コホン・・・、では・・・。あの、失礼ですが、今シンジ様がどのような存在であるか、理解していらっしゃいますか?」
「へっ?それは・・・。どうも普通の人間ではないらしい、ということは自分でも分かってはいるけど・・・。」
すると初号機はため息をついて少し呆れたように話し出した。
「はぁ〜、やはり分かっていらっしゃいませんでしたか・・・。分かりました、お教えいたしましょう。今のシンジ様は私などとは次元の違う存在、神に一番近存在なのですよ。神がいらっしゃらない今の世では最も力を持つ存在なのです。」
無言
えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
シンジの叫び声が暗闇に響いた・・・・
「そ、そうだったの?」
「はい、今のシンジ様ならこの星を消し去ることなど造作もないことでございます。」
それを聞いてシンジは冷や汗を流す。
「で、でも今までそんな力があるようには感じなかったけど?」
「それはおそらく、シンジ様自身が無意識のうちにセーブしていたのと、私がいたからだと思います。」
「君の存在が?」
「はい。力を失おうとも私自身も高次の存在です。シンジ様の魂の近くにいることでシンジ様の力を抑える、いわばリミッターのような役割を果たしたのではないかと。」
「そっか・・・。」
シンジはそんな言葉を噛みしめる様につぶやく。
そして笑いながら―――優しい瞳で話し出す。
「たとえ僕がそんな存在だとしても、やっぱり普通に呼んで欲しいな。話すときも敬語じゃなくて。」
「ですが・・・」
「いいから。僕が許すって言ってるんだから。」
「・・・一つ聞いてもよろしいですか?」
「何?」
「今私が少し声を変えていますのでお気づきになりませんかもしれませんが、その・・・」
言いづらいことなのか少し口ごもる。
「いいから。」
だが、シンジにうながされ、重い口を開く。
「私の中にはずっと碇ユイがいました。その影響でしょうか、声があの女そっくりなのです。それでもよろしいのでしょうか?」
そういうと、うつむいて黙ってしまった。
シンジは初号機の独白を黙って聞いていたが、やがて優しく語りかけた。
「そんなのかまわないさ、君は君だろ?あの女とはまったく別の存在なんだから。声がどんなに似ていようとも君が悪いわけじゃない。もし僕が気にするとしたら、それは僕が悪いんだ。だから君の声を聞かせて欲しい。」
ずっと渋っていた初号機だが、やがて、
「・・・ありがとうございます。」
その声は確かにユイに似ているものの、シンジには全く別の声であり、まだかつて、彼が母を大好きだったあの優しい声よりもはるかに美しい声に聞こえた。
「せっかく声も戻したんだから、敬語もやめてね。」
「分かりました。では。」
コホン、咳払いを一つすると、
「いや〜、正直敬語使うのって結構疲れるんよね〜、あんまり使うことないんで。いや、シンジがそう言ってくれてほんと助かったわ〜。」
「へっ?」
それまでの仰々しいまでの敬語を使い、控えめな様子だった声から一転して、標準語に近いながらも、どこか関西風のイントネーションが混じった言葉遣いにシンジは完全にフリーズしてしまった。
その様子に、やはりシンジが自分の声を不愉快に感じたと思ったのか、
「あの、やはり気に入りませんでしたか?」
上目遣いにそう元の声と言葉遣いで聞いてきた。
シンジは慌てて、
「う、ううん、そんなんじゃないよ。ただ、今までと全然話し方が変わったから、ちょっと驚いただけ。」
「そ、そう?」
シンジの言葉に、ほっと胸をなでおろす。
そしてシンジは初号機に近づくと再び抱きしめた。
「!?えっ、あっ、あの!?」
「・・・君は約束を守ってくれたね。・・・ありがとう。」
その声はかすかに震えていた。
約束―――それは昔―――あるいは未来―――において初号機が口にした言葉。
(私はいつでもあなたのそばにおります。)
(ああ、この人はどれだけ復讐に身を焦がそうとも、優しさを忘れはしない。)
The Origin
しばしの間二人は抱き合っていたが、やがて、二つに別れた。
「さて、いつまでもこうしてはいられないな。そろそろここから出ないといけないんだけど・・・。僕がここに来てどれくらい時間が経った?」
「外とは時間の流れが違うからほんの数秒だと思うわ。」
「じゃ、僕はでるけど、君はどうするの?」
一緒に出てくれないかな、とかすかに期待するものの、そうはしないだろうともシンジは思っていた。
結果はシンジの予想通りで、
「そのことなんだけど、わたしは、ここに残ろうと思う。」
やはり。分かってはいたものの、落胆は隠せない。
そんなシンジを見て慌てて付け加える。
「あ、そんなに落ち込まないでよ。シンジのそばを離れるわけじゃないわ。」
「どういうこと?こっちに残るんでしょ?」
「そうなんだけどね。肉体を現実世界で構成することはできるんだけど、シンジの心に引っ付いてようと思うの。」
「心に?」
「そう、シンジの心、というか魂に引っ付く形でシンジの力のリミッターとなるの。それでも他の使徒並みの力はあるわ。本来なら肉体を構成してもリミッターの役割はできるんだけど、まだ力が回復してないから無理なのよね。」
「それで?」
シンジが続きを促す。
「そうすると色々メリットがあるのよ。魂の半分はこっちに残すわけだから色々とマギをごまかせる。多少なら遠隔操作もできるわ。限りはあるけどね。シンジとは常にシンクロしている状態に近くなるわ。」
だから安心して。約束を破るわけじゃないから。、そう言っているようにシンジは聞こえた。
「わかった。それで頼むよ、ミナモ。」
「ミナモ?」
「そう、君の名前。全ての母なる存在、源(みなもと)。つまりは僕の源でもある君の名前だよ。いつまでも初号機じゃ嫌だろ?」
じゃあね、そういい残してシンジは光の方へ進んでいった。
「もはやこれまでね。」
(お父さん、ごめんなさい。仇討てそうもないわ。)
ミサトをはじめ、発令所の全員――― 一部を除いて、が諦めたその時、初号機の目が輝きを放った
グォォォーーーーーー!!!
全ての生命を凍て尽くすような雄たけびが第3新東京市に響いた。
「しょ、初号機再起動!」
「顎部ジョイントを自ら引きちぎりました。!」
「シンジくん!?」
ミサトが再起動し、声を上げる。
「エントリープラグ内モニターできません。」
「だめです、初号機完全に制御不能!」
「そんな・・・初号機の残存エネルギーはゼロなのよ。動けるはずが・・・。!?まさか・・・!?暴走!?」
リツコの言葉とともに初号機は第3新東京市を駆け抜けた。
「勝ったな。」
「ああ。」
真実を知らない、愚か者のつぶやきであった。
「サキエル。さっきの攻撃はちょっと痛かったよ。どうお返ししてくれようか。」
サキエルをにらむシンジ。サキエルのほうは、自分がどういう存在に手を出したのか気付いたのか、おびえているように見えた。
そこから先は一方的な虐殺だった。圧倒的な力で腕をちぎり、足をもぎ、頭をつぶす。やっとコアをつぶそうとしたとき、最後の足掻きであろうか、サキエルは自らを自爆させた。
発令所の皆がその光景に恐怖し、身を強張らせて見つめる中、そんな足掻きも空しく炎の中から無傷の初号機が姿を現した。
「くっ、くく、ふふふ、ははっ、
あーはっはっはっは!!!
。」
全ての通信が途絶されたエントリープラグの中で、シンジの笑い声だけが鳴り響いた。
「知らない天井ってわけでもないか・・・。」
病院のベッドで目を覚ましたシンジはまた目を閉じて昨日のことを振り返ってみる。
戦闘の後、シンジは緊急入院させられた。外傷も何も無く、いたって健康体だったのだが、外から見ていた分には使徒にやられて初号機が暴走して勝った事になっているから、とミナモに言われてやっと自分がどういう状況で初号機の内部に入っていったのか思い出したシンジは気を失ったふりをしていたのだ。
ただずっと気を失ったままでいるのは退屈だし、逆に疲れるから、運ばれるベッドの上で目を開けたのだが
「脳や神経に負担がかかっているから。」
という言葉によってそのままベッドに寝かされ、長々と検査を受けさせられる羽目になってしまった。
そしてこちらでの住居がまだ無い、というのと検査ですっかり遅くなってしまったのでそのまま病院で一夜を過ごすことにしたのであった。
(久々に思いっきり暴れて少し疲れてたしね。)
うぅぅ〜〜ん。
そう思いながら伸びをしていると、ミナモが話しかけてきた。
(おはよう、シンジ。)
「ああ、おはよう、ミナモ。」
(私と話すときは考えるだけで声を出さなくてもいいよ。私の声はシンジにしか聞こえないし。)
(了解。)
会話をしながら、ふとシンジは気になった。
(考えるだけで伝わるってことは僕のプライバシーって無いんじゃ・・・。)
(それなら大丈夫よ。私に話しかけようとしなかったら私には聞こえないから。)
それを聞いてシンジは、ほっと安心した。
やはり、人をはるかに凌駕した存在であっても、元は人間、そこらへんは気になるのだろう。
(それでこれからどうする?)
(ん?どうするって?)
(私という枷を外せばゼーレなんか潰すの簡単だけど。)
(ああ、そのことか。ミナモ分かってないね。僕はこの一年間を楽しみたいんだよ。そんなに簡単に潰しちゃったら面白くないじゃないか。)
(じゃあどうするの?)
(しばらくは前の歴史通りにする。基本的には人としての能力だけで過ごしながら。ちょこちょこっといじりながらね。)
(なんで?)
(想像してごらんよ。ずっと自分の思い通りにいってる、と思ってたら最後の最後でひっくり返された時の相手の顔を。)
そう言ってゲンドウばりのニタリ笑いを浮かべる。やはり親子か、と思うところだが、シンジの方は元々優しい顔立ちなのでなおさら邪悪に見える。
(ぷぷっ、確かに面白そうね、そっちの方が。)
うまいこと想像できたのか、吹き出すと、こちらも負けず劣らずのニタリ笑いを浮かべる。
ミナモの姿は見えないが、顔の整った紅い瞳の二人が実際に顔を突き合わせてニタリ、としている様子は傍から見るとかなり怖いものがある。
その時、部屋の前に誰かいる気配を感じ取ったシンジは瞳の色を黒に戻し、普段から張り付けている笑顔を身につけた。
そのすぐ後にノックもせずに入ってきたのはミサトだった。
「やっほー。具合はどうかしら。」
「ええ、問題無いですよ。」
「そう、よかったわ。もう退院許可も下りてるから本部に行きましょう。あなたの今後について伝達があると思うわ。」
「分かりました。すぐに着替えます。」
そういうと、ミサトを部屋の外に出し、着替え始めながら一人ごちた。
「心配してくれているのは分かるんだけどねぇ・・・」
着替え終えたシンジは待たせていたミサトとともに歩き始めたが、その先から蒼銀の髪を持つ少女―――綾波レイがベッドで運ばれてきた。
その紅い瞳はシンジを見つめていたがシンジはちらっ、と一瞥しただけですぐに前を見るとそのまま歩き続けた。
「えっ、一人!?」
住居について説明がなされたときそう答えたのはシンジ・・・では無く、ミサトだった。
「はい、本部内に個室を用意しているのでそこに住むようにと。」
「まだシンジくんは中学生なのよ。一人だなんて・・・。シンジくん、あなたはそれでいいの?申請すればお父さんと一緒に暮らすことだってできるのよ?」
自分の事なのにまるで興味の無い他人の話を聞いているかのように何も言ってこないシンジ話を振ってみる。
「かまいませんよ。ずっと一人でしたし、一人の方が気が楽ですしね。」
(というか一人じゃないとやりずらいしね。)
そんな考えはおくびにも出さずシンジはミサトに答える。
そのシンジの様子にミサトは顔を下にして考え込み、顔を上げるとシンジの方へ口を開こうとしたが、
「僕はミサトさんのところに住むつもりはありませんよ。」
シンジの言葉に遮られてしまった。自分の言いたいことが分かっていたかのように。
「ど、どうしてよ?」
これから言おうとしていたことを当てられ、少し動揺しながらもシンジの言葉に納得のいかないミサトはシンジに問い返す。
「ミサトさん、あなたはご自分の立場を分かっていますか?」
「どういうこと?」
シンジに笑顔のまま自分の職務のことを問いかけられ、少しむっとして問い返す。
「あなたは僕の上司になるわけですよね。戦場で状況によっては死ね、と命令されることになる人とは住めませんよ。」
「そ、そんなことするわけないじゃない!」
シンジから死、という言葉が突然出てきて、しかもそれを言うのが自分だと言われ、慌ててミサトは反論する。
「ええ、僕もそう願いますよ。でも可能性が無いわけじゃない。それにあなたには他にやることがあるでしょう?」
「なにかしら。」
きつい口調でミサトが返す。そこにはそれまでの必死で住居のことに文句をつけていた雰囲気は無かった。
「実戦での指揮能力の向上です。失礼ですが昨日の戦闘中、まともな指示は出せていませんでしたよ。」
相変わらず笑顔のままミサトを避難するシンジにミサトは怒りに身を強張らせる。
一方シンジは話は終わりだといわんばかりに住居の説明をしていた男に振り返った。
「住居のことでお願いがあるのですが。」
「なんだ?」
「できればジオフロントの外に住みたいんですが。ずっと地下の中にいるのは嫌なので、それと最新のパソコンが欲しいんですが。」
「わかった、相談してみよう。」
「ありがとうございます。それじゃ失礼します。」
そう言ってシンジはその場を後にした。
シンジの希望はすぐに通り、その日のまだ明るいうちに新居に来ることができた。
家具類もあらかたそろっており、一人で住むには申し分ないところだった。
家に入るとすぐにパソコンのスイッチを入れた。
(なにをするの?)
(ちょこっとマギをごまかすのさ。)
ミナモの問いにシンジはディスクを取り出しながら答える。
パソコンにディスクを入れてプログラムを起動させ、しばらくキーボードを叩いていたが
「これでよし。」
そういうと、席を離れた。
ミナモは何をしていたかよく分かっていない。
それに気付いたシンジは
「ちょっと覗き屋さんをかたずけようと思ってね。」
そう言いながらかばんの中から何かを取り出して組み立て始めた。
しばらくかちゃかちゃ、という音がしていたが、やがて立ち上がったシンジの手にはリボルバーマグナムが握られていた。
「僕がこの十年何をしていたのか見せてあげるよ。」
そういうと窓に向かって一発の銃弾を放った。
(な、何をしたの?)
「なに、戦自あたりの人間が監視してたようだからね。ちょっとお空を散歩しに行ってもらったのさ。幸いここらは僕のほかに誰も住んでないしね。間が空くと腕が鈍っちゃうし。」
(ほぇ〜〜。シンジってそんなものまで身につけてたんだ。)
「まあね。僕にあんな力があるとは知らなかったから。」
シンジのした行為とは真逆のほのぼのとした日常的な雰囲気がそこにはあった。
その頃マギにあった映像にはベッドにうつぶせて涙に枕をぬらすシンジの姿が記録されていた
後書き(らしきもの)
やっ〜〜とできました、第弐話。前回よりも短くなったものの、やはり思いのほか長くなってしまいました。しかも会話がやたら多い。
ますます自分の文才のなさに落ち込んでいるこの頃でございます。
今回の話ですが、やっと初号機が出てきました。ミナモの言葉遣いなんですが、自分の地元の街中の方で使われているものをイメージしています。田舎の方へ行くと結構方言が強かったりするんですが、中心部では結構標準語に近く、言葉の端々に関西のような感じがある・・・と自分が勝手に思ってます。
こんな言葉遣いしねーよ、などとは突っ込まないでください。
もうすぐ9月が終わり、大学の夏休みが終わってしまうんですが、そうすると結構忙しくなったりしてなかなか更新ができなくなるかもしれません。10月になるとたぶん月1くらいまで急激に落ちるかと・・・。まことに申し訳ありませんです、はい。できるだけ早く次の話を書き上げたいと思いますので、気長に待っていただけるとありがたいです。
言い訳させていただければ10月から工学部なんで専門が多くなり、プラスバイトにも行かないといけないという状況でして。
・・・愚痴ってしまいそうなのでこれくらいで
読んでくれた方、一言でもいいので感想を送っていただけると嬉しいです。非難の言葉でもいいので待ってます。ただし、誹謗・中傷は無しでお願いします。
SEO
AD
[PR]
花
ローン比較
再就職支援
バレンタイン
無料
レンタルサーバー
SEO