第壱話 第3新東京市
2015年 第3新東京市
「本日、東海地方を中心とした、関東、甲信地方の全域に特別非常事態宣言が発令されました。付近の皆様は速やかに指定のシェルターに避難して下さい。繰り返します。本日、東海地方を中心とした・・・・」
非常事態を告げるアナウンスが響き渡る中、リニアの駅の前の公衆電話のところに一人の少年が荷物を持って立っていた。
女の子のような中性的な顔立ちをしており、特別美少年、というわけでもないが、そのままでも十分女の子にもてそうな顔立ちで、その上、とても柔らかい笑顔をずっと浮かべていて、その笑顔がさらに少年の持つ空気を和らげていた。
「ついにここまできたんだな・・・。」
少年がそうつぶやくとともに、顔から笑顔が消え、その瞬間、先ほどまで纏っていた優しい雰囲気は反転し、瞳が真紅に染まると同時に全てを凍えさせるような空気があたりに立ち込めた。
しかしそれもほんの一瞬のことで、次の瞬間には人懐っこい笑顔の少年がその場にいるだけであった。
ふと少年が道に目を向けると、そこには蒼銀の髪を持った少女が居り、地面から立ち上る陽炎に姿が揺らいでいた。
「ふふっ・・。綾波・・・、残念だけど君の想いには応えることはできないよ。僕の目的はいかにこの一年を楽しく過ごすかだけだからね。」
少年が独り言のように話した後、付近の木から鳥が一斉に飛び立ち、少女の姿はまるではじめから何も無かったかのように消えていた。
少年の方も何も無かったかのようにニコニコとしながらあさっての方向を向いた。
「――――来たか、サキエル。」
そうつぶやくと、どこからか、甲高い音が聞こえてきて、すぐに辺りを轟音が包み込む。
「さあ、せいぜい僕を楽しませてくれよ。」
キィーーーン!シュゴーーーー!
バラバラバラバラ・・・・!
ドォーーン!ズドーーーン!
巡航ミサイルが後方から低空を飛んできて、また別の方向からは戦闘機が機銃を乱射している。それらの攻撃が加えられている方向からは異形の天使――――水を司るサキエルが歩いてきていた。
次々と攻撃が命中し激しい爆発が起こり、辺りに熱と爆風が立ち込める。が、サキエルはそんなものをものともせず歩みを進めていく。
ネルフ本部 発令所
「だめです!敵生体にダメージ確認できません!」
「だめだ。この程度の火力では埒があかん!!厚木と入間の全ての部隊を投入しろ!出し惜しみは無しだ!なんとしても食い止めろ!!」
悲痛な叫びをあげるように報告をするオペレーターに対し、苛立ちを隠そうともせず、その上部に位置する軍人たちが指示を出していく。
その喧騒の後方で白髪の老人―――そう呼んでも差し支えないだろう―――と中年の男が2人にしか聞き取れないほどの声で会話をしていた。
「十五年ぶりか。」
「ああ、間違いない。―――使徒だ。」
先ほどまで何のそぶりも見せずに歩いてきたが、次々と加えられる攻撃――――当人にとっては痛くもかゆくも無いだろうが――――がいい加減邪魔に思えてきたのだろうか、腕を伸ばし、光のパイルのようなものを掌から突き出して、一機の戦闘機を叩き落した。
戦闘機は半分に折れ、激しく爆発しながら墜落していく。その先には先ほどの少年がいたのだが、戦闘機が向かってきているにもかかわらず、あいもかわらずニコニコと笑顔を浮かべながら立っているだけだった。
少年のすぐそばに墜落し、激しい爆発が少年を襲うが、爆風が少年に達する前に一台の青い車が少年の前に滑り込んできた。
「遅れてゴミン。碇シンジくんね?」
アルピーヌ・ルノーから声をかけてきた女性―――葛城ミサトは辺りの悲惨な光景にも決して笑顔を崩そうとはしない少年を―――碇シンジ、そう呼んだ。
今、かつて少年―――碇シンジが経験してきた歯車がこの少年を想う運命の女神によって巻き戻され、そして、再び回りだした。ただし、歯の数は著しく手が加えられていたが。
修正が不可能なほどに
「葛城さんですか?」
「そうよ、悪いけど早く乗って!」
このような状況にもかかわらず、相変わらずのんびりとした様子で質問してくるシンジに、時間がないとばかりに車に乗るよう急かす。
実際時間は無いのだが。
「あ、はい。」
「飛ばすわよ、しっかり掴っててね!」
ギュルルルルーー!
シンジがルノーに乗り込むとほぼ同時に、激しくタイヤを鳴らせながら急発進していった。
「あの〜、あのでかいやつ、一体何なんですか?」
「説明は後。まずはここから一刻も早く離れるわよ!」
のんびりとした声でニコニコしながらシンジがたずねるが、ミサトは空から降ってくる瓦礫を避けるのに必死で、そんなシンジの様子に気づかない。
無人の街中を時速100キロを越えるスピードで青い車が駆け抜けていくが、そんな中、シンジはかつてのミサト―――およそ200年前―――について考えていた。
(この人は結局、僕に何をしたかったのかな?あの時は僕を家族だと言ってくれて、とても嬉しかった。でも、この人の中には父親の仇を討つことでいっぱいだった。僕のこともどこかで復讐の駒だという考えがあった。家族面しておきながら、僕が一番つらいときにも何もしてくれなかった。確かにあの時はみんな自分の事で精一杯だった。それは分かるけど・・・。優しさが中途半端なんだ。だから余計僕を傷つけた。期待させておいて、手を差し伸べて欲しいときにはその手を引っ込める。それが一番つらいんだよ・・・。)
シンジが考えにふけっているうちに、車は止まっていて、双眼鏡でかなり離れたところにいる使徒の様子を観察していた。
国連軍と交戦しているが、一方的に国連側が落とされていて、使徒の方は全くダメージを受けている様子は無い。
ネルフ本部 発令所
軍服の男がモニターを忌々しげに見つめていると、机の上の電話が鳴り響いた。
「はい、はい。わかりました。予定通り発動いたします。」
男が電話を置き、指示を出すと、モニター上の戦闘機たちが攻撃をやめて、突然散開して使徒から離れていった。
(やれやれ、やっぱりN2地雷を使うのか。無駄なのにね・・・。あの付近のシェルターにいる人たちもかわいそうだねぇ。敵に殺されるならともかく、本来は守ってもらうはずの味方の軍人に殺されるんだから・・・。無能な人たちだねぇ。・・・って僕の場合も似たようなものだったか。ふふっ、あんまり笑えないね。)
(このくらい離れておけば、まあ死ぬことは無いか。)
自嘲的に笑うシンジをよそに、ミサトは離れていく戦闘機を見て思い当たることがあるのか、急に顔を青ざめさせて、
「ちょっと、まさかN2地雷を使うつもり!?シンジくん伏せて!!」
そう言ってシンジに覆いかぶさろうとするが、シンジはすでにシートを倒して、衝撃に備えていた。
ミサトはシンジを抱きかかえようとしていたので、肩透かしをくらった形になり、バランスを崩して変な体制のままシンジの上に倒れこんだ、次の瞬間―――
カッ!
ズドーーーン!!
激しい光と音の後、辺りが白のみの景色になり、すさまじい爆風がミサトの車を襲う。
「キャアアーーーー!!!」
爆風によって車が吹き飛ばされ、転がっていく。
激しい衝撃が車内のミサトたち―――主にミサトだが、に加えられるが、ミサトは十分な体勢をとれず体をあちこちにぶつけている。
ネルフ本部 発令所
「やった!!」
国連の軍人が爆発とともにホワイトアウトしたモニターを見ながら、喜びの声を上げる。
「ははははっ、碇君、残念だったな。君たちの新兵器の出番は無いようだね。」
「電波障害のため確認までしばらくお待ちください。」
「あの爆発だ。ケリはついてる。」
オペレーターが報告するが、無駄だといわんばかりにはき捨てた。
そんな様子にもかかわらず、オペレーターたちはそれぞれの仕事を果たそうと、あわただしく自分の目の前の端末をたたいて、確認作業に勤しんでいる。
軍人たちは嬉しそうにモニターを見つめていたが、一人のオペレーターの報告とともにその表情は驚愕にゆがむ。
「爆心地に高エネルギー反応!!」
「なんだと!!!???」
「主モニター回復します。」
先ほどの報告とは別の、女性オペレーターが告げると、先ほどまで真っ白だったモニターの映像が切り替わり、そこには、多少ダメージを負ったものの、以前とそう変わりない姿で立っている使徒の姿があった。
映像は使徒の上空にホバリングしているヘリコプターから送られてくるが、使徒がモニターの方に向きかえり、目、と思われるところが光ると同時に本部内の最も大きいスクリーンの映像はサンドストームに切り替わった。
「おおっ・・・!」
それと同時に発令所内にはほぼ全員のものと思われるため息が響き渡った。
「なんてことだ・・・」
「街を一つ犠牲にしたんだぞ・・・」
「化け物がっ・・・!」
一気に力が抜け、弱々しくつぶやきながら椅子にへたり込む者に、悔しそうに自らの拳を机に叩きつける者。発令所内を沈黙が包み込む。
その沈黙は、再び机の上の電話が鳴り響くことで破られた。
「はい、はい・・・。わかりました。」
先の電話のときとはうって変わって、力なく受話器を置き、長らく黙して語らなかった後方に座っている2人に向かって話し始めた。
「碇君、本作戦の指揮権は君たちに移った。目標に対し、我々の所有する兵器では効果が無かったことは認めよう。だが碇君、君たちならあれに勝てるのかね?」
軍人の一人が2人のうち、ふてぶてしい態度で座っていた中年の男―――碇と呼ばれた―――に尋ねる。
碇と呼ばれた男は、顔色一つ変えることなく言い放った。
「ご心配なく。そのためのネルフです。」
「期待してるよ。」
碇の台詞に悔しそうに全く期待感のこもっていない言葉をかけて、発令所を出て行った。
「UNも退散か・・・。碇、どうするつもりだ?」
碇の隣にいた老人が話しかける。
「初号機を起動させる。」
「パイロットがいないぞ?」
「問題ない。もうすぐ届く。」
そう言った碇の先にあるモニターには青いアルピーヌ・ルノーが映っていた。
Return Of God
「ええ、彼は最優先で保護してるわ。だから、直通のカートレインを準備しといて。じゃ。」
ピッ!
小気味よい音を立てて携帯をきると、ミサトは自分の格好と車を軽く見渡して心の中でうなだれていた。
(はぁ〜あ。せっかく気合入れて決めてきたのにもぉ〜台無し。おまけに車はベッコベコ。この前納車したばっかりなのに・・・。後ローンが33回プラス修理費か・・・。トホホ・・・。)
「ミサトさん。」
シンジが呼びかけるが、ミサトは修理費が経費で落ちないだろうか、などと考えており、シンジの声に気づかない。
「ミサトさん、ミサトさん。」
「ん、な〜に?」
「いいんですか、こんなことして。」
そう言ってシンジが視線を送ったところには、どこから持ってきたのか、大量のバッテリーが積まれていた。
「いいのいいの。車動かなきゃどうにもならないしね。それに今非常時だし。あたしこう見えても国際公務員だから万事オッケーよ。」
「それもそうですね。」
(ま、僕一人でも本部にはたどり着けるんだけどね。)
などと心の中で思ってたりもするのだが、表情はいつもと同じニコニコ顔だったりする。
そんなシンジを見て、
(うっ、この子かわいいじゃない。)
などと思っていたりするが、
(でも、のんびりしてる子ね。この非常時にもかかわらず。大丈夫なのかしら、この子で。性格も報告書と微妙に違う気がするけど。)
「これから父のところに行くんですよね。」
「そうよ。お父さんの仕事、なんだか知ってる?」
「人類を守る立派な仕事だと、先生からは聞いています。」
心持ちシンジの表情が曇ったように見えたミサトはシンジに尋ねてみた。
「お父さんのこと、苦手?」
「いえ、よくわかんないんです。ずっと別々だったので・・・」
「ふ〜ん、そっか、あたしと一緒ね。」
というミサトをよそにシンジは心の中で笑い転げていた。
(くくくっ、いいねぇ、ミサトさん。最高だよ、やっぱりあなたは。私と同じ、だって?違うよミサトさん。僕は父さんを、ネルフのみんなを殺してやりたくてうずうずしてるんだから。)
(こんな子を戦場に送り出さなきゃならないなんて・・・)
だがミサトはシンジの心中に気づくことなく、これからこの笑顔を絶やさない少年に起こることについて同情をしていた。
「シンジくん、お父さんからIDもらってない?」
「あっ、はい。」
カートレインで運ばれる車の中、ミサトはシンジからIDの書かれた手紙を受け取る。
「ふ〜ん。ありがと。じゃ、これ読んどいて。」
そう言ってシンジに「ようこそNerv江」と書かれた、ふざけたパンフレットを渡す。
そのとき視界が開けてジオフロントに入っていったが、シンジは特に見向きもしない。
(あれ、なんか反応が薄いわねぇ・・・)
ミサトはシンジが感嘆の声くらいは上げるだろう、と思っていたが、シンジの予想外の反応のなさに少し落胆する。
(こういうのに、あまり興味ないのかしら・・・)
こつこつこつこつ・・・
無人の本部内を2つの影が通り過ぎていく。
「おっかしいわね〜。確かこっちのはずなんだけど。ごめんねぇ〜、シンジくん。まだ慣れて無くってさぁ。」
「・・・さっきもここ通りましたよ。」
「んぐっ・・・。大丈夫、システムは活用するためにあるのよねぇ〜。」
やたら長いエスカレーターの上で、ミサトの答えだけが空しく響いた。
・・・やはりミサトは迷っていた・・・。
「技術一課の赤木博士、赤木博士。葛城一尉がお呼びです。至急最寄のエレベーターへ・・・。」
「呆れた。また迷ったのね。」
ミサトとシンジがエレベータを待っていると、チン、というと音ともにエレベーターが到着し、中から金髪の女性が降りてきた。―――なぜか、水着の上に白衣、という妙な格好ではあったが。
「何をしているの、葛城一尉。時間も無ければ人手も足りないのよ。」
「うっ、ゴミン。」
歳の割りに妙にかわい子ぶった態度で謝るミサトに対し、はぁ、と呆れた様子でため息をつく。
気を取り直して少年―――シンジの方へ向き直る。
「この子がサードチルドレン?」
「そう、マルドゥック機関の選んだサードチルドレン。これがまた、父親と違ってとってもかわいいのよ。」
「はじめまして。私は赤木リツコ。ここで技術部長をしているわ。よろしく。」
「こちらこそよろしくお願いします。あの・・・。」
「何かしら?」
「その、申し訳ないんですが、物を見るような目で僕を見るのやめていただけませんか?」
「あら、ごめんなさい。気をつけるわ。」
申し訳なさそうに言うシンジに、さすがにリツコも悪いと思ったのか、すぐに謝る。
「いえ、いいんです。」
そう言うと、いつもの笑顔にコロッ、と戻るシンジ。
「ついてらっしゃい。お父さんに会う前に見せたいものがあるの。」
「目標は再び進行を開始。進行ベクトル修正、プラス3度。目標の予想目的地はここ、第3新東京市です。」
「よし、総員第一種戦闘体勢。」
オペレーターの報告を受け、碇ゲンドウは指示を出すと、振り返り、後ろの人物に話しかけた。
「冬月、後を頼む。」
「ああ。」
白髪の老人―――冬月が軽く返事をすると、ゲンドウは発令所を後にした。
「10年ぶりに息子と対面か・・・」
どこかのプール、というには広すぎる気もするが、その上をモーターボートが走っていた。
「繰り返します。総員第一種戦闘体勢。繰り返します・・・」
「上の状況は?」
響き渡るアナウンスを聞き、ミサトがリツコに尋ねる。
「国連の攻撃は効かず、N2地雷を使用するも敵生体の表層部にダメージを与えただけ。自己修復の後、先ほど再び進行を開始したわ。」
「目標は何らかの遠隔操作によって操られているのではなく、プログラムによって行動する、いわば一種の巨大知的生命体であると、MAGIは推測しているわ。」
「!それって・・・」
「そう、エヴァと一緒よ。」
2人の会話を聞きながらシンジは
(全く関係ない人間にこんな機密情報を話すわけないよな・・・。結局、僕があれに乗るって分かってたんだな。それに気づかない僕って、ほんとバカシンジだったんだね。)
と、心の中で自嘲していた。
「暗いから足元に気をつけて。」
リツコはシンジたちを真っ暗な部屋に通しながら注意を促した。
「真っ暗ですよ。」
シンジがそう言うと、真っ暗だった部屋に光がともる。
すると、シンジの目の前には久しぶりに見た、懐かしい鬼の顔があり、その顔をシンジは愛するものを見るようにいつもとはまた違った、優しい顔で見つめる。
(あら、あまり驚かないわね。それとも驚きで言葉が出ないのかしら。)
だがリツコはシンジの顔が見えないため、そんな様子に多少疑いのまなざしを向けるも、深くは追求しない。
「これが父の仕事ですか?」
「そうだ!」
静まり返っていた室内に、低い声が響く。
声のした方にはゲンドウの姿があった。
「久しぶりだなシンジ。」
「そうだね。十年ぶりだね。」
(僕にとっては200年以上たってるけど。)
「ふっ、出撃。」
「出撃って、リツコ、パイロットがいないじゃない。・・・まさか!?」
突然の展開にミサトは当然の疑問をリツコに投げかけるが、すぐそばにいる少年のことに思い至り、思わず絶句してしまう。
そんなミサトをよそにリツコはシンジの方を向き、普通に考えればとんでもない台詞をシンジに放つ。
「シンジくん、あなたがこれに乗るのよ。」
だが、その言葉に反応したのはシンジではなく、ミサトだった。
「そんな、無理です。レイでさえシンクロするのに7ヶ月かかったんです。今来たばかりのこの子には無理です。」
「座っていればいい。それ以上は望まん。」
「ですが・・・」
ミサトの抗議の声にも冷たくあしらうゲンドウに対して、なおも食い下がろうとするが、それはリツコによって阻まれた。
「葛城一尉、今は非常事態なのよ。使徒撃退が最優先事項です。そのためには、わずかでもシンクロ可能な人間を乗せるしかないのよ。」
リツコがそう告げると、ミサトはうつむいていたが、急に掌を返し
「そうね。」
そう答えると、先ほどからずっと黙っているシンジに向かい冷たく
「乗りなさい。」
と命令した。
だが、シンジは下を向いているだけで、何も発しようとはしない。
「逃げちゃだめよ現実から、何よりお父さんから。」
「もういい、葛城一尉。人類の存亡をかけた戦いに臆病者は無用だ。シンジ、何をしている。乗るのなら早くしろ、
でなければ帰れ!!
」
だが、それでもシンジは身動き一つしない。
そんなシンジの様子にゲンドウは、手元の回線を使い、冬月と会話しだした。
「冬月、レイを起こしてくれ。」
「動けるのかね?」
「死んでいるわけではない。」
「わかった。」
そう言って回線を閉じると、しばらくして、数人の医師とともに、蒼銀の少女が運ばれてきた。
その瞬間、シンジの肩が小刻みに震え始め、
「く、くくっ、
はーはっはっはっは。
」
突然大声で笑い出し、まわりの人が呆然としている中、しばらく笑い続け、やっと落ち着いたのか、呼吸を整える。
「いや、面白い、面白すぎますよ、皆さん、特にミサトさん。すばらしい茶番をありがとうございます。」
そんなシンジの言い草に、バカにされたと気づいたミサトが食って掛かろうとするが、先ほどまでとは全く異なるシンジの雰囲気に思わずたじろんでしまう。
「そんなに怒んないでくださいよ、ミサトさん。本当のことじゃないですか。あなたは僕がこれに乗ることになるのを知っていたはずだ。じゃなきゃ僕のいるところであんな話しませんよ。結局あなたは子供を人類を守るために、
しょうがなく
、戦いに追いやる、という免罪符が欲しいだけなんですよ。全ては僕をこいつに乗せるために皆が仕組んだ芝居。これを茶番といわずしてなんというんです?」
ミサトは何も言い返せず、唇をきつく噛んだまま、肩を震わせている。
シンジが言い終わると、扉が開き武装した保安部の人間がシンジを取り囲んだ。
上方からゲンドウが声を放つ。
「お前は誰だ。」
「やだなぁ、10年会わないうちに息子の顔まで忘れてしまったんですか?オ・ト・ウ・サ・ン?」
「そいつを捕まえろ。」
ゲンドウの指示を受けて数人の保安部がシンジを捕まえようと歩み寄るが、シンジに触れることなく、崩れ落ちた。
「せっかちだなぁ。僕は正真正銘あなたの息子ですよ。それに、僕はあれに乗らないなんて一言も言ってませんよ?」
その言葉に呆然と事態を見送っていたリツコが我に返り、
「シ、シンジくん、初号機に乗ってくれるの?」
「ええ、構いませんよ。」
「急いで初号機の発進準備をして。」
シンジのあっさりとした返事にリツコは耳を疑ったが、すぐに気を取り直して、発進準備の指示を出す。
シンジは急に騒がしくなった周囲とは対照的に、ゆっくりとレイの方へ近寄っていく。
「やあ。」
「あなた誰?」
「それはそのうち分かるよ。今はおとなしく寝ててね。」
レイの質問に答えることなく、そう返すと同時にレイの首の裏に軽く手刀をあててレイを気絶させる。
「貴様、何をした!?」
「別に。ただ眠ってもらっただけだよ。」
普通の人ならすくみ上がってしまいそうなゲンドウの言葉にも、いつもと同じようにシンジは答える。
「じゃ、行ってきますよ。」
未だ下を向いているミサトに向かってそう告げると、シンジはリツコの方へと歩いていった。
「・・・・終了」
「神経接続開始」
「プラグ注入。」
(いや〜、さっきは久々に面白いものが見れたから思わず本音を言っちゃったよ。最初のうちはしばらくおとなしくしていようと思ってたのに。まいったな、思いっきりみんなに怪しまれちゃったよ。ま、いっか。なんとかなるでしょ。それだけの力が僕にはあるのだから。)
「LCL注水。」
(おっと、一応聞いておかなきゃね。)
「なんですか、これ。」
足元から湧き上がっていく黄色い水を見てシンジは発令所に問いかける。
「大丈夫。肺がLCLで満たされれば直接酸素を供給してくれるわ。」
シンジの問いにリツコが発進準備を進めながら答える。
「へえ、血の味がしますね。」
「我慢なさい。男の子でしょ!」
ミサトが先ほどのお返しの意味もあるのか、きつい口調でシンジを怒鳴る。
「僕は嫌いな味だとは言ってませんが?でも、今の言葉にはちょっとむかっときましたね。」
「ミサト!邪魔をするんならどっかほかの所へ行ってちょうだい!」
「うっ・・・。ゴメン。」
親友であるリツコに怒鳴られ、引き下がるミサト。
(無様ね、てか。ふふふ、リツコさんの口癖結構使えるね。)
「LCL電化。」
「パルス正常。全神経接続完了。」
「シンクロ率・・・すごいわ。35.9%。何の訓練もしていないのに。」
「いけるの?」
感嘆の声を上げるリツコを見て、ミサトが確認を取る。
「ええ。」
「エヴァンゲリオン、発進準備!」
リツコの返答を受けて、ミサトが高らかに声を上げる。
その指示を聞いて、オペレーターたちが激しく端末をたたく。
「アンビリカルブリッジ移動。」
「エヴァ初号機は3番の射出口へ。」
「進路クリア。オールグリーン。エヴァンゲリオン初号機、発進準備完了しました。」
オペレーターからの報告を聞き、最終確認を取るため、ゲンドウの方へ向き直る。
「碇司令、かまいませんね。」
「もちろんだ。使徒を倒さぬ限り、我々に未来はない。」
ゲンドウの言葉にうなずくと、ミサトは命令を下した。
「エヴァンゲリオン初号機、発進!!」
バシュ!!
命令とともに初号機が射出口をものすごい速さで上っていく。
グオオン、ガコン!!
緑色をした人型の巨人の前に紫の鬼が姿を現した。
(シンジくん、死なないでね。)
―――――さあ、ショーの始まりだ―――――
後書き?
ううっ、なんか結構な長さになってしまった・・・。本当はもっとあっさり書くつもりだったのに・・・。
はっ、いかんいかん。・・・改めて。どうもこんにちは、aveshinです。いや、ようやく壱話を書き終わりました。でも、やはり物語を書くというのは難しいですね。文量は思い通りにならないし、自分の書きたいこともうまく書けないし・・・。つくづく自分の才能のなさを思い知らされました。
こんな駄文しか書けないですが、読んでくださったらメールをいただけると嬉しいです。ほかの作家さんが言うようにメールが来るとやはり嬉しいものです。では。
ps ゴミ溜めの村のむめほさん、相互リンクありがとうございました。この場でお礼を申し上げます。みなさんも村へ行ってむめほさんたちのすばらしい作品を読んでみてください。
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