プロローグ
ザァ・・ザァァ・・・ン・・・・
紅い、ただ紅い。紅だけの世界に少年と少女が、存在していた。
「な・・に・・、これ・・・?」
ザァ・・・ザザァァ・・ン。少年のつぶやきも、あっという間に波の音にかき消されてしまう。
「あはは・・、なんだろうね・・・、これ・・。ねえ、アスカ?」
乾いた笑いとともにそばにいた少女――――アスカに話しかけたが、そこにあったのはただ砂だけだった。
「あれ・・?アスカ・・・?」
少年――――シンジは辺りを見回し、アスカを探してみるがどこにも見当たらない。
ふと紅い海を見ると紅い海の中でさらに紅いもの――――少女が着ていたプラグスーツが漂っていた。
その瞬間、シンジは悟った。「ああ、これで僕は・・・」
―――― 一人なんだ――――
――――気持ち悪い
そうつぶやいた少女、自分が求めてやまなかった少女、首を絞めた少女はもういない。
「僕は・・・ただみんなともう一度会いたかっただけなのに・・・」
「結局、もうだめなんだね・・・」
海の方を見つめ、ふらふらしながら、一面紅の世界に歩みを進めていく。
「僕もみんなと一緒に・・・」
ひとつになることができるかな・・・
紅の海で力を抜き、その水をいっぱいに吸い込んでみる。
気持ち良いな・・・、そんな想いが自然と沸き起こり、その気持ちに身をまかせてシンジは目を閉じてみた。すると、シンジのまわりを暖かいものが包み込んでいく。そのままシンジが意識を手放そうとしたとき、
「ぐわぁぁーーーーー。」
シンジの頭の中に膨大な情報が一気に流れ込んできて、意識を手放すのを許そうとはしない。
世界中の知識、情報、そして感情。
そのすべてが流れ込んできた最後には、明確な
―――――拒絶―――――
その思いに耐え切れなくなり、海からはい出て胃の中身をすべて吐き出す。
「げぇー、ぐっ、ふっ、がっはぁ!」
吐き出すものが無く、胃液だけになっても吐き気は止まろうとはしない。
しばらくして、ようやく落ち着き、しばらくの間シンジは呆然としていたが、突然
「あーはっはっは、くっくく、ははっ、はーっはっは!」
気が狂ったかのように――――あるいは本当に気がふれたのかもしれない――――高笑いを始めた。大粒の涙を流しながら。
「なんだよ、それ・・・。結局僕らはいいように踊らされてただけなのか・・・。ゼーレに、父さんに、冬月さんに、母さんに、ミサトさんに、リツコさんに・・・。この1年間はなんだったんだよ・・・。無理やりエヴァに乗せられて、痛かった、苦しかったけど、何度も死にそうになったけど、みんなが傷つくのがいやだったからずっと乗っていたのに・・・。カヲル君を殺してまで・・・。」
「でも・・、やっぱり僕が悪いんだ・・・。なんだ、よく考えてみると僕も拒絶してたじゃないか。綾波を。アスカの時だって僕は逃げてただけじゃないか。最後の時には量産機に喰われて・・・。アスカに拒絶されるのも当然だよね・・・。その結果与えられたものがこの世界か・・・。
―――――罰、か。でも、みんな逃げていた。僕だけが逃げてたわけじゃない。結局、あいつらはみんな僕を裏切ったんだ。全てを僕に押し付けて逃げてしまったんだ。こんな世界は存在しちゃいけない。人を自由に操れるなんてこともさせちゃいけない。あいつらにも――――」
この世界を作った罪を償わせてやる
復讐、自分をアスカを綾波を人形にしていたすべてのものに復讐を
その思いがシンジの中で膨れ上がったとき、シンジの目は真紅に染まっていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2216年
一面紅の世界では時間の感覚を容易に狂わせた。もはやシンジはあの瞬間――――サードインパクトからどれくらいの時間が経ったのか、全く分かっていなかった。
服はぼろぼろになり、相当の月日が経ったことをほのめかしていたが、シンジ自身はあのときのまま全く変わっていなかった。
復讐、その想いがシンジを支え、LCLをすすって生きながらえさせていた。
「もうどれくらい経ったんだろう・・・?もうこの景色もいい加減見飽きてきたな。楽しいことも何もなし。ただ何もせず生きているだけ。知識だけは豊富にあるけど。さすがに過去に戻るなんて知識はどこにも無かったな。失敗に終わった考え方は色々あったけどな。」
決意した後、LCLから取り入れた知識で色々と試みてみたが、良好な結果に終わったものは一つも無かった。
「一つだけいいのがあったけど、S2機関がないとどうしようもなかったし・・・。」
「初号機自体にも自我があったぽいけど、あの後どうなったのかな・・・。」
当時のことを最近振り返ることが多くなっていたシンジだったが、ユイ以外の存在も確かにあったような気がしてきていた。
・・・ンジ・・・
「!?だれかいるの!」
突然聞こえてきた声に反応して、辺りを見回してみるが、あるのはいつもと同じ光景だけ。自分以外にも誰かいたのかと、驚きと喜びに顔をほころばせながら探してみたシンジだったが、気のせいだったのだと落胆して、海を再び眺め始めた。
・・・シンジ様、シンジ様・・・
今度ははっきりと聞こえてきた声。どこにいるのか、と再び辺りを見回そうとしたとき、ふとシンジは気がついた。頭の中から聞こえてきていることに。
「君は・・・?」
シンジがたずねると、光の粒子が一つに集まり、女性の形を作っていく。
「私はリリス・・・のコピーとでも言えばよいのでしょうか。初号機の中で眠りについておりました。サードインパクトが起こり、魂が散ってしまいましたが、何とか再びかき集めることができ、こうしてあなた様の前にいるのでございます。しかし、200年もかかってしまいました。シンジ様のところにたどり着くのが遅くなったことをお詫び申し上げます。」
「初号機!?に、200年!?」
思いもよらなかったことにシンジは頭がパニックになるが、初号機は話を進めていく。
「私の今ある力全てを使えば、シンジ様の願いを叶えることができます。」
「!それって・・・。」
「はい。過去へ行くことができます。ただし、いつに戻るか、正確な時間までは・・・。」
初号機の願ってもない申し出にシンジの目が再び真紅に染まる。が、時間を指定できないというと急に申し訳なさそうになった初号機を見ると元の色に戻る。そして、情報を整理していくとあることにシンジは気がついた。
「自分の力全部を、って行ったよね。ということは・・・」
「はい。私の存在も消える可能性があります。」
「!だめだよ、そんなの!!もう、いやなんだよ・・・。僕のせいで誰かが傷つくのは・・・。」
そこにいたのは、200年前となんら変わらない、気の弱い、優しい少年だった。
「ありがとうございます。シンジ様は優しくございますのね。大丈夫です。必ず消える、というわけではありません。ただ、その可能性があるというだけでございます。」
「でも・・・。」
「私だって消える気持ちは毛頭ございません。さあ、善は急げです。早速行きましょう。あなたはこんな時間を過ごすような人ではありません。もっと楽しい時間を送るべきなのです。私もそんな時間を奪ったあの方どもを憎く思っております。すばらしい時間を送り、この気持ちを無駄にしないことが、私のシンジ様へのお願いでございます。」
説得しても無駄だと悟ったシンジは、涙をぬぐい、力強くうなずいた。
「ありがとう。君だけはずっと僕のそばにいてくれていたんだね。」
「私はいつでもあなたのそばに居ります。」
・・・いつでも・・・
そうしてシンジの意識は闇の中に落ちていった。紅い世界にはもはや何者も残っていなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
何も無い暗闇の中に一筋の光が差し込んでくる。闇の中をさまよっていたシンジはその光に縋って行った。
突然まばゆい光が破裂し、あまりのまぶしさに目を閉じたシンジだったが、恐る恐る開けると、そこには、ずいぶん昔、あまりいい思い出の無かった部屋が広がっていた。しばらく呆然としていたが、我に返り、カレンダーで日付を確認してみると、そこには
――――2005年10月8日
「ふふふ、はは、はーはっはっは、あーはっはっは!!」
シンジは高笑いをあげた。今度は悲しみではなく、自らの願いを果たせるという暗い喜びに満ちた笑いを。これだけ大声で笑いながら家の人間は誰一人として様子を見に来ることはなかった。
体は4歳当時にまで縮み、傍から見れば顔の整った、かわいらしい幼児なのだが、その瞳と纏っている空気はこの世の何物も凍りつかせるのに相応のものだった。
「始まる、そう全ては今この瞬間から始まる。」
瞳を真紅に染めながらつぶやく。
「知識はある。次はこの貧弱な体を鍛えないといけないな。」
そして2年後、碇シンジの姿は消えた。
後書き
どうもはじめまして。aveshinと申します。ただ今大学2年です。もう長い夏休みの終盤だなぁ、と思いつつこいつを書いております。学生なんだから勉強しろよ、とのつっこみが聞こえてきそうですが、それはおいといて(おい)
小学生のときにエヴァにはまり、大学生になってからインターネットをはじめ、エヴァの2次創作を読み漁り始め早1年!読み始めた当初は自分が書く立場になろうとは思いもよりませんでした。小さい頃から国語が苦手で、文才など無いと今でも思っております。文章中にも誤植、その他色々とまずい表現もあるかと思います。その時はメールでお知らせください。
追記 この話はaveshinが行き当たりばったりで書いています。話に多大な矛盾が生じるかもしれません(爆)
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