五輪モーグル:悲願メダル届かず 上村4位

2010年2月14日 20時42分 更新:2月14日 23時35分

モーグル女子で4位となった後、テレビのインタビューを受けながら時折涙をぬぐう上村愛子=カナダ・サイプレスマウンテンで2010年2月13日、手塚耕一郎撮影
モーグル女子で4位となった後、テレビのインタビューを受けながら時折涙をぬぐう上村愛子=カナダ・サイプレスマウンテンで2010年2月13日、手塚耕一郎撮影

 【バンクーバー栗林創造】バンクーバー冬季五輪第2日の13日(日本時間14日)、フリースタイルスキー女子モーグルで4度目の五輪に臨んだ上村愛子(北野建設)は4位に終わった。

 上村の五輪過去3大会の成績は98年長野が7位、02年ソルトレークシティーが6位、06年トリノが5位。昨年の世界選手権では初優勝を果たし、今回はメダル獲得の期待が高かったが、悲願のメダルにはあと一歩届かなかった。

 他の日本勢は、19歳の村田愛里咲(北翔大)が五輪初出場で8位入賞と健闘。伊藤みき(中京大)は12位、98年長野五輪金メダリストで5大会連続出場の里谷多英(フジテレビ)は転倒して19位に終わった。優勝はハナ・カーニー(米国)。

 ◇「なんで一段一段なんだろう」

 五輪連覇を狙うジェニファー・ハイル(カナダ)と、今季のワールドカップ(W杯)で2勝のハナ・カーニー(米国)が残っている時点で2位。そんな状況でも、上村の気持ちは不思議に落ち着いていた。

 「あそこで2番だとメダルはすごく難しい。みんなの滑りを見て、『彼女はこれだから(私より)上にいるんだ』と、しっかり納得したいと思っていた」

 ここでメダルが取れたら、やめてもいい。そんな思いが頭にあった。理由は、大会会場の一つ、ウィスラーにある。上村は長野・白馬中2年の冬休みに、旅行で訪れたウィスラーでモーグルの試合を観戦し、このスポーツと出合った。カナダは原点の場所だ。「(この五輪で)いい滑りをするのがモーグル人生のすべてかなって。ちょっと考えていた」

 それから4年後、白馬高3年になっていた上村は、98年長野大会で五輪初出場を果たし、7位に入賞。以来、6位、5位と五輪での順位を上げてきた。W杯では07~08年シーズンに種目別総合優勝。昨年3月の世界選手権ではデュアルモーグルとの「2冠」を達成した。だが、またしても五輪のメダルには手が届かなかった。落ち着いて結果を待っていたはずだったが、4位が決まった直後には、涙があふれ出た。「なんで、こんな一段一段なんだろう」

 近年、女子の競技レベルが急激に上がっている。皮肉なことに、それを招いたのは上村自身だ。空中でのアクロバティックな技が注目された06年トリノ大会の後、上村はスピードと正確なターン技術とを追求し始めた。「エア(ジャンプ)」よりも得点比率が高い「滑り」の部分を磨き抜いた結果が昨年の世界選手権。ところが五輪までの1年で、世界が上村に追いついた。

 1年ほど前、上村は言った。「私は小心者で、子どものころは周りを気にしてしまう人だった。そういう人間的な部分も大事にしたいけれど、それで大会で一番を取るのは大変なんです」。五輪まで、そんな優しい性格は封印しようと心に決めてきた。

 上村が描いていたストーリーが、バンクーバーで完結することはなかった。今後については「ゆっくり考える」という30歳の上村。目標に向かって全力で走り続けた時間の重さや尊さは、メダルの有無によって左右されるものではない。【栗林創造】

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