1994年8月より、イギリスのヨークに住んでいたのですが、1994年の秋から1995年にかけて水戸芸術館で開催された5周年記念イベント「ジョン・ケージのローリーホーリーオーバーサーカス」で、ぼくのプロジェクトをやりました。
 当初、学芸員の黒沢伸さんは、pou-fouでの出演を考えていたようだったけれど、せっかくイギリスから水戸に行くので、ぼくは何か新作を作りたかった。それで、吹奏楽団か、卓上木琴100個、という二つのリクエストをしたところ、双葉台中学校吹奏楽部と一緒にコンサートをすることになった。
 日本に帰国する直前に、神戸で地震があった。島袋道浩は無事だった。ぼくらは水戸に行っている場合ではない、神戸に行こう。実とのプロジェクトを神戸に結びつけよう、など色々考えたが、さんざん考えた挙句、水戸で当初予定していたことを行った。その代わり、水戸で神戸のことなどを話したり伝えたりした。
 10日間、連日のようにこの中学校に通い続けた。pou-fouの豊永さんや小林さんも来たし、歩行器プロジェクトのダンス山下残くん、画家杉岡正章鶴も来たし、ダムタイプ・OKガールズの砂山典子さんも来た。中学生と連日濃密な時間を過ごした。
 あれから10数年。もうこの中学生たちは、20代半ば。母親になっている子もいるかもしれない。再会したい。
 この「でしでしでし」創作プロセスは、かなり細かく「The British Journal of Music Education」という学術雑誌に投稿し、掲載されました。日本語では、どこにも書いていないなぁ。
 「でしでしでし」は名曲で、その後、イギリスで何度も上演。2003年には、オランダでも久しぶりに上演しました。また、どこかでやりたい。
 この水戸芸術館で「でしでしでし」の音響・録音をしてくれたのが、山辺義大さん。まさか作曲家とは知らなかった。97年ごろから山辺さんと片岡祐介さんと即興のライブをするようになりました。




 

例によって早口言葉のごときややこしい曲を作曲してしまった僕は、とっても不安な気持ちで双葉台中学校を訪れた。

「こんなの、中学生にできるんだろうか。」

失礼ながら、その時僕は、いかにこの曲をやさしく書き直すかを考えていたのだ。でもそれは大きなまちがいだった。彼と彼女らの演奏をきいたとたん、僕は「うきうき」、「わくわく」になった。僕の友人は「くらくら」、「めらめら」になったそうだ。すばらしかったのだ。

この若い音楽家達に僕が教えたことといえば、僕の住所と電話番号ぐらいのものだが、僕がこの若い音楽家達に教えられたことは数限りなくある。そのうちのひとつに「でしでしでし」という名のじゃんけん遊びがある。僕は未だかつてこれほど音楽的なじゃんけんを見たことがない。(この遊びを知らない人は、是非オーディトリウムで僕に質問して下さい。きっと教えてあげます。)そしてこの遊びの詞は、

       でし、でし、でし

       きみはぼくのでし

       ぼくはきみのでし

というたった3つのフレーズのたくみな組み合わせからできている。この詞にも、「めらめら」、「くらくら」した。                         〈野村 誠〉

演奏は関西、関東で活躍している強者・金物ミュージシャン達と双葉台中学校吹奏楽部により行われます。





「でしでしでし」

作曲:野村 誠

演奏:でしでしでしアンサンブル

協力:水戸市立双葉台中学校

指揮:市毛紀子

パーカッション:稲葉朋子、一毛美幸、鈴木敬、木村香織

アルトサックス:久田祥子、兼子文香

テナーサックス:生田目多恵

バリトンサックス:佐藤ゆかり

バスクラリネット:中崎邦子

ファゴット:宮本由美子

クラリネット:佐藤紋子、大和田祥子、氣田あゆみ、鈴木明美、清水文子、木村美紀、大津絵美子、高儀理恵、寺門美穂

フルート:近藤理恵、関根加奈、田崎正恵、野呂圭衣子、木方幹人

オーボエ:川又香織、大澤志乃

ユーフォニウム:藁谷里栄

テューバ:大久保智美

コントラバス:横山雅喜子

トランペット:吉田理恵、浅川智恵子、村岡えり奈、鈴木実幸

ホルン:中川めぐみ、江口妙恵、佐久間恵

トロンボーン:木村亜紗子、溝口恵理、鯉渕祥子

ギター:豊永亮

ベース:宋基文、荒井徹也

キーボード:小林薫

ドラムス:内田吾郎

ピアノ:河合拓始、野村誠

トイピアノ:島袋道浩

ふえ:杉岡正章鶴

マラカスダンス:山下残

百円洗濯板、トリぶえ:砂山典子

すず:中村未来子

カスタネット:鎌田高美

エア・キャップ:逢坂恵理子

金球:森山純子

1995年2月11日(土)9:30〜18:30

公開リハーサル及びリハーサル風景ヴィデオ上映

2月12日(日)9:30〜18:30

コンサート(各回10〜20分/時々)

公開リハーサル(時々)