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応援団も瞳潤ませ
右翼ポール脇の入場口から選手入場。前年優勝校、準優勝校に続き、北から順に出場校が登場する。イッチニ、イッチニ。コブクロの入場曲「蕾」にあわせてグラウンドに入る。9番目に姿をみせたチームは、ひと際輝きを放った。
直線的に伸ばされた腕が、上下する。拳は頭の高さぐらいまであげられている。上半身の動きにつられるように太もももきっちりあがる。選手18人が、一糸も乱れない。初陣・安房の行進だ。
プラカードを持つ化学部の日高翔伍君(新3年生)に、選抜旗を手にする岩澤寿和主将、選手が続く。「安房高校」の名がアナウンスされると、会場にひときわ大きな歓声が。ゆっくりと進み、安房の応援団が陣取る一塁側内野席前を通過。大きな拍手があがる。応援団はみな、瞳を潤ませていた。
元安房高監督で早川監督の恩師でもある吉澤肇さん(66)=千葉市緑区=は、スタンドで入場行進を見守った。「うれしいね。きょうの行進は格別の出来。気迫がみなぎっていた。膝の上げ方、腕の振り方が彼らの気持ちを物語るよう。日本一の行進」と、声を詰まらせる。
OB会長の早野友宏会長(66)=館山市北条=は、「安房の子どもたちが胸を張って行進している。涙で目がかすんだ。うれしいの一言。『自分の生きているうちにぜひとも甲子園』と話しながらも亡くなった先輩方の顔が後から後から浮かんだ。一緒にここで涙を流したかった。胸が詰まる思い」と感激していた。
大役を終えた日高君は「感動で泣きそうになった。『安房高校』の名前が呼ばれた時は、胸が高揚するような、なんともいえない思いになった。一生忘れられない経験です」と話していた。