宮城

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

仙台空港アクセス線:開業3年 累積赤字が35億円 県、支援計画へ /宮城

 仙台空港とJR仙台駅を結ぶ仙台空港アクセス線が開業から3年を迎えた。この間、運行区間を17分で走る利便性や駅と車両のバリアフリー設計を売りに市民の足として定着したが、利用者数はなお開業当初の需要予測を大きく下回る状況が続く。運営する第三セクター「仙台空港鉄道」(名取市)の累積赤字は09年度末現在で約35億円。経営面ではいまだ軌道に乗り切れておらず、最大出資者の県が新たな経営支援計画を策定する事態になっている。【比嘉洋、鈴木一也】

 県などがまとめた開業当初の需要予測では、利用者数は年々上昇するはずだった。07年度の1日当たり乗客数を9980人と設定。17年度は同1万3620人、27年度は1万5643人とした。

 だが、実際の利用者数は減少傾向にある。仙台空港鉄道によると、07年度の1日利用者数は6950人。09年度は6340人の見通しだ。同社の小川竹男専務は「飛行機の旅客数が落ち込んだことが響いた」と嘆く。不況や燃料費の高騰、新型インフルエンザの流行により、09年の仙台空港の旅客数(約280万人)は、鉄道が開業した07年と比べると約16%減った。

 単年度の赤字は毎年増え続け、09年度の最終赤字は10億円に上る見通し。09年度末時点の累積赤字35億円は当初の計画を15億円も上回る。11年度からは民間金融機関に対し、元金のみで年間5億円の借入金の償還が始まり、経営環境は厳しさを増すばかりだ。

 沿線の都市開発も思うように進んでいない。大型商業施設「イオンモール名取エアリ」に出店していた三越は開業から2年で撤退。物産市場「だてもん市場」も開業からわずか1年で閉店するなど大型店舗の誘致は難航している。

 「経営安定化に公的支援は避けて通れない。利用客にも運賃値上げなどで負担を強いるかもしれない」(県空港臨空地域課)。資本金の53%に当たる37億6900万円を出資する県は、今年1月に「経営支援プラン行動計画」の骨子案をまとめた。1日利用客数の目標を8200人に設定し、運賃の一部値上げに踏み切る内容だ。

 ただ、値上げによるさらなる客離れの不安もある。現在の運賃は、東北線区間の仙台-名取間が230円なのに対し、名取-仙台空港間は400円に跳ね上がる。同課は「『なぜ急に高くなるのか』という利用客の不満も多い」と、利用客数の増加と運賃値上げの両立に頭を悩ませる。

 県は今後、値上げする区間を限定し、通勤・通学客の定期券は値上げしないなど、利用客の負担を軽減する方法を模索する。79億円の貸付金の利息減免も検討しており、10年度の早い段階で行動計画を策定したい考えだ。

==============

 ■解説

 ◇「需要の見通し甘かった」

 「結果がすべて。需要の見通しは甘かった」。需要予測の6~7割に低迷する利用客数の現状について、村井嘉浩知事は3月23日の定例会見で鉄道事業を推進した行政側の責任を率直に認めた。

 開業前の03年12月、浅野史郎知事(当時)は県議会で「採算性は十分確保できる」と断言していた。需要予測は当時から争点となっていたが、多くの県議も事業推進を支持している。

 裏を返せば、空港アクセス線の開業は、東北全体の経済活性化を担う県政最大級のプロジェクトとして多くの県民の期待を集めていたと言える。開業前の数年が景気拡大期と重なったことも事業を後押しした。仙台市営地下鉄東西線の開設に比べ目立った反対もなかった。

 鉄道は公共交通機関であり、採算性だけでは論じられない側面もある。だが、需要予測は専門性が高く、県民が見極めるのは難しい。公共事業を推進する行政側は不況時も見据えたうえで計画策定を行う必要がある。【比嘉洋】

==============

 ◆空港アクセス線と周辺の歩み

1957年 4月 仙台空港で定期便就航開始

  96年 9月 県が高架鉄道の整備方針発表

  98年 3月 3000メートル滑走路供用開始

2000年 3月 第三セクター仙台空港鉄道発足

      6月 旧運輸省が鉄道事業を許可

  02年12月 鉄道建設着工

  04年 6月 沿線の土地区画整理事業着工

  07年 2月 ダイヤモンドシティ・エアリ開店

      3月 仙台空港アクセス線開業

  09年 3月 三越名取店閉店

         物産市場「だてもん市場」閉店

  10年 1月 県が経営支援計画案を公表

毎日新聞 2010年4月1日 地方版

宮城 アーカイブ一覧

PR情報

 
郷土料理百選
地域体験イベント検索

おすすめ情報

注目ブランド