まさかの54歳。漫画「サザエさん」の父、磯野波平の年齢には驚いた。失礼ながらあの風ぼうは今なら70〜80歳に見えるだろう▲
連載開始の1946年、日本男性の平均寿命は約50歳。今はほぼ80歳と30年延びて「人生の比率」は1・6倍になった。残り時間に比例して、日本人はなかなか成熟せず、若く、幼くあり続けようとしているのかもしれない▲
そんなことを、松山市の県美術館で開催中の「ネオテニー・ジャパン」展を見て思った。日本現代アートの特徴的な表情―幼児性、内向性、痛みや孤独など―を網羅してなお一貫性を失わないのは、通底するテーマ「ネオテニー」の力▲
両生類のウーパールーパーなどを指す生物学用語「幼形成熟」を、作品を所有する精神科医は「『こどもの王国』で成熟した表現活動を続ける」日本の現代美術に冠した。相反するイメージは、見る者にまとわりつく。無機的だが生々しく、カワイイのに毒々しく▲
日本の「カワイイ」は今や、世界の「クール(かっこいい)」。今展の奈良美智(よしとも)、村上隆らのアートやファッション、ゲームは「クール・ジャパン」と称され、絶大な発信力を持つ▲
そこに目を付けたのが、経済産業省。戦略案をまとめ「日本ブランド」の売り込みを図るという。魂胆見え見えの幼稚な手法で「ダサい」と笑われないよう、クールに、老練にお願いしたい。