作家の井上ひさしさん死去
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作家の井上ひさしさん死去

4月11日 7時8分

日本を代表する劇作家の1人で、小説「吉里吉里人」など奇抜な設定と軽妙な文体の多くの作品を発表し、平和運動にも取り組んできた作家の井上ひさしさんが9日夜、肺がんのため亡くなりました。75歳でした。

井上ひさしさんは山形県川西町の出身で、上智大学に在学中から浅草のフランス座で喜劇の台本や戯曲を書き始め、昭和39年からNHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」の台本を共同で手がけ、注目を集めました。その後、戯曲「日本人のへそ」で劇作家としてデビューし、「道元の冒険」や「しみじみ日本・乃木大将」、「小林一茶」など多くの話題作を発表し、日本を代表する劇作家の1人として活動を続けてきました。小説家としても、昭和47年に江戸の戯作者を描いた「手鎖心中」が直木賞を受賞し、東北地方の架空の村が日本から独立するという設定の「吉里吉里人」や、戦時下の庶民の暮らしを描いた「東京セブンローズ」などのベストセラーを発表しました。奇抜な設定と軽妙な文体に鋭い批評精神を込めた戯曲や小説のほかに、日本語論やエッセーも手がけるなど、多彩な分野で活躍を続けました。昭和59年にはみずからの作品を上演する劇団「こまつ座」を旗揚げし、「人間合格」や「シャンハイムーン」などの話題作を発表し、原爆で生き残った娘と父親の亡霊との対話を描いた「父と暮せば」など、作品は海外でも上演されて高い評価を受けています。井上さんは直木賞の選考委員や日本ペンクラブの会長を務め、平成16年には文化功労者に選ばれました。また、憲法改正に反対する「九条の会」を平成16年に大江健三郎さんらと設立するなど、護憲運動や平和運動にも取り組んできました。井上さんは去年10月に肺がんと診断されて抗がん剤治療を受けていましたが、9日夜、亡くなりました。