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きょうのコラム「時鐘」 2010年4月11日
ウナギの完全養殖に成功した、と報じられた。大奮発しなくても、おいしいうな重がやがて食べられる。ツバがわき出るようなニュースである
世界初の快挙は難しい技術や管理が必要なようで、親ウナギにホルモン処理をして性成熟を促す、とある。何やら、ウナギはややこしい目に遭わされる。ツバをのみ込みながら、お前は確かにおいしいのだろうな、と念を押したくなる ウナギ料理は難しい。「くし打ち3年、裂き8年、焼き一生」とか。増えたウナギを生かすも殺すも腕次第。そんな技まで、ホルモン処理で完全養殖できるはずはない。たっぷりツバを流すのは早とちりか ごちそうが身近になるのは、うれしいことである。少しの奮発で、回転ずしでトロが味わえる。が、小さな子までが「トロ、お代わり」とねだるのを見ると、脂ぎった味が本当においしいのか、と余計なお節介を焼きたくなる ごちそうとは何だろう。豊かな味があふれる時代は、逆に「ああ、おいしい」という感動が見つけにくくなってはいないか。ウナギには悪いが、快挙の報にどこまで拍手を送ればいいか悩んでしまう。 |