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ニュース裏おもて:肥薩おれんじ公的支援へ 苦境あらわ並行在来線 /熊本

 ◇九州新幹線鹿児島ルート、全線開業へ脚光

 八代市と鹿児島県薩摩川内市を結ぶ第三セクター、肥薩おれんじ鉄道(本社・八代市)に対し、県や県内の沿線2市2町は10年度、赤字補てんのため初の公的支援に乗り出す。04年3月の開業当時、3億2000万円あった予備運転資金が底をついたためだ。来年3月の九州新幹線鹿児島ルート全線開業が光を浴びる一方、影にあたる並行在来線の苦境が浮き彫りになっている。【西貴晴】

 ■利用者減で赤字拡大

 県によると、おれんじ鉄道に対する10年度の補助予定額は県の6407万円のほか、八代市627万円▽水俣市303万円▽芦北町136万円▽津奈木町63万円。出資比率(県85%、市町15%)などに応じて、07年度に策定した中期経営改善計画に基づく赤字予想額を案分した。

 おれんじ鉄道は、九州新幹線鹿児島ルートの並行在来線としてJRから経営を切り離された。事実上の開業初年度の04年度こそ855万円の黒字を計上したが、2年目からは赤字に転落した。08年度の赤字幅は1億6144万円。09年3月末時点の累積赤字は8億862万円に上る。

 赤字の最大の理由は利用者数の減少にある。04年度は188万人だったが、08年度には163万人へと13%減った。新幹線やマイカーへのシフトのほか、沿線人口が95年度の39万7500人から08年度は7%減の36万8400人となったことも背景にあるとみられる。さらに、利用者の7割を通学定期利用者が占めており、収益拡大につながる定期外の一般客は04年度の41万人から08年度には36万人と13%減っている。

 おれんじ鉄道の予備運転資金は熊本、鹿児島県が別々に充当する仕組み。一足早く底をついた鹿児島県では沿線外の市町や企業・団体が積み立てた「肥薩おれんじ鉄道経営安定基金」の取り崩しが08年度に始まっている。熊本県にはこうした基金はなく、行政からの直接支援に追い込まれることになった。

 ■経営努力に限界

 古木圭介社長が「沿線外からの旅客誘致と観光掘り起こしが鍵だ」と語るように、同社は昨年10月、社内に営業課を新設した。8人のチームが「九州のウエストコースト(西海岸)」を掲げて企画ツアーの開発などにあたっている。海外からの集客も視野に入れ、2月には韓国の観光調査チームを招いて売り込みを図った。

 しかし、熊本市周辺など多客路線を抱えるJRと異なり、今後も厳しい経営が続くことは間違いない。10、11年度には自動車の車検にあたる8年ごとの車両検査が予定されており、これだけで2億2800万円の費用がかかる。おれんじ鉄道は開業時、線路などの資産を簿価より安い10億円でJRから譲り受けたが、八代海などの塩害にさらされる施設の維持管理費は自社で賄う必要がある。

 古木社長は「鉄道がなくなって困るのは住民だ。経済効率だけ考えていては路線を守れない。地方を守るかどうかは政治の役割だ」と語る。国やJRからの抜本的な支援がないままでは、将来にわたって県や自治体が財政負担を迫られることになる。

毎日新聞 2010年3月13日 地方版

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