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【福井発】

大野 荒島岳で会社員転落死 登山道から200メートル下に

2010年4月6日

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荒島岳への捜索に入る大野市消防署(手前)、大野署と県警本部の捜索隊=5日午前6時47分、大野市西勝原のカドハラスキー場で

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 大野市の荒島岳(一五二三・五メートル)に入山した名古屋市の男性が行方不明になったのを受けて、大野署などは五日早朝から捜索を始め、午前九時五分ごろ、登山道から約二百メートル下の谷で倒れている男性を発見した。男性は名古屋市中川区明徳町二の七、会社員酒井映孝(ひでたか)さん(56)で、県防災ヘリで福井市の県立病院に搬送されたが、死亡が確認された。

 同署によると、酒井さんは一二〇四メートル地点にあるシャクナゲ平と頂上を結ぶ登山道から滑落したと見られ、登山道のある尾根の西側の大ワサビ谷で見つかった。シャクナゲ平付近は一メートルほどの積雪があり、足を滑らせて転落し全身を強く打ったとみられる。

 酒井さんは登山歴十年で、これまでに富士山や白山、北アルプスなどにも登っているが、荒島岳は初めて。「三日に帰る」と家族に言って二日夜、自宅を出発し、三日午前八時ごろ、大野市西勝原のカドハラスキー場からの登山コースで入山したらしい。同スキー場の駐車場に酒井さんの軽乗用車が止めてあり、登山届け記入所には届けが残っていた。

 酒井さんの家族が四日夜、愛知県警に捜索願を出し、連絡を受けた大野署、大野市消防署などが五日午前六時四十五分ごろから捜索を開始。上空から捜索していた県警ヘリの乗組員が酒井さんを発見した。

4月の残雪 特に滑りやすく 冬山と同じ 単独避けて

愛好家団体・高松さん

酒井映孝さんが発見された荒島岳の事故現場=高松誠さん提供

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「4月でも冬山だ」と、奥に見える荒島岳の登山に警鐘を鳴らす高松誠さん=5日、大野市矢で

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 大野市の荒島岳で名古屋市の会社員酒井映孝さんが死亡した遭難事故。荒島岳には四月でも雪が多く残り、県警のヘリコプターで救助に向かった登山愛好家団体「荒島愛山会」の高松誠さん(58)は「四月でも冬山と同じ。単独登山は避け、危なければ引き返して」と注意を呼び掛けている。

 酒井さんが滑落したとみられる現場は標高約千三百メートル地点の急斜面で、岩のように硬い積雪が一メートル以上あった。その西に広がる大ワサビ谷はさらに急傾斜で、一度足を滑らせれば止まる手がかりなどはない。

 昨年二月にもこの付近で死亡事故が起きており、高松さんは「荒島岳の難所の一つで、残雪の時季は雪が固まって特に滑りやすく、滑れば死に直結する」と指摘する。

 大野署によると、酒井さんは登山歴十年で、富士山をはじめ、国内の高峰をいくつも経験。今回はアイゼンを履くなど、冬山の装備を整えていた。

 ただ、荒島岳に登るのは今回が初めてだったが、単独登山。高松さんは「初めてなら夏に登って地形を知ってから登るべきだった」とし、単独行についても「単独だと限界まで挑戦してしまう。二度怖いと思ったら引き返すなど、自分の限界を知ることが大切」と強調する。

 高松さんは、荒島岳を紹介する自身のホームページ「荒島岳On−Line」に、これまで協力した遭難事故の記録を掲載。登山者が増えるこれからの季節に向け、「装備や天候などが原因で起こった過去の遭難に学んでほしい」と訴えている。

 県警本部によると、県内では過去五年間で十一人が山岳遭難で死亡し、このうち二人は荒島岳。二人とも二〜四月の“雪山”で亡くなった。 (増田紗苗、中西卓郎)

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