昨年１０月に発覚した環境清美部の元職員（４３）の長期病気休暇問題。市の病休制度の在り方や法令順守（コンプライアンス）制度の充実、解放同盟奈良市支部協議会との関係や同和優遇施策の見直し、入札制度改革、そして職員の意識改革など体質改善、信頼回復に迫られた奈良市。藤原昭市長は平成１９年度の予算編成にあたり、同和行政の見直しなど不退転の決意を表明した。
　 １月には環境清美部の業務、収集体制の在り方などを検討する市環境清美部業務・管理体制再生検討委員会を設立。３月には旧同和地区にある改良住宅の家賃などについて話し合う改良住宅家賃等検討委員会も立ち上げた。
　 一方、市が給与の自主返納を求めた元職員は、請求の回答期日である２月１５日になっても返還に関する具体的内容を示さなかったため、市は提訴する方針を固め３月議会に関連議案を提出。４月１７日に給与２１９７万８５４１円と遅延損害金の支払いを求め、奈良地裁に訴えを起こした。
　 入札制度改革では、４月から土木、建築など公共工事の全業種全ランクで郵便入札を実施。それに先立ち、３月には市役所で入札参加登録業者を対象に「入札制度の改正点」について説明会を開催。同月末には、長期病休を繰り返していた環境清美部職員１５人を１―６カ月の停職とする懲戒処分を発表。当時の上司や人事担当の管理職も管理監督責任を問われ、処分対象者は６７人に上った。
　 ４月には市法令遵守推進条例を施行。行財政改革の推進役として津山恭之財政課長ら２人が新ポストの政策監に任じられると同時に、同じく新たな設けられた法令遵守監察監（危機管理監も兼務）に県警出身の栢本隆博氏が就任。公務員の心構えや不当要求行為の未然防止を図るために「法令遵守等に関する行動基準」も設け、しおりを作成した。
　 その一方、５月に入って、市が是正するとしていた部落解放同盟奈良市支部協議会の市人権啓発センターの事務局使用について、市協が退去していない問題が明らかになり、市協は６月末にようやく事務所を施設外に移転した。
　 同問題以外では、藤原市長は３月、ＪＲ奈良駅西側に誘致を表明していた大型ホテル建設計画で、隣接する県農業協同組合（ＪＡなら）の所有地の一体利用について、合意が得られず断念すると発表。市有地（約２５００平方メートル）にホテルを誘致する考えを示し、公募型プロポーザルで業者選定に入った。
　 ４月には市内全小学校で新１年生を対象に３０人学級がスタート。５月、２４時間対応で市役所に対する質問など受け付けるコールセンターが本格稼動。また児童、生徒の減少を受け、市内の学校規模の適正化を検討していた「市学校規模適正化検討委員会」が、４０ある幼稚園を４減、４８ある小学校を７減、２１ある中学校を１減などとする提言をまとめ、中尾勝二教育長に提出した。
　 一方、同月末には市立一条高校の女子バレー部顧問の男性教諭が、平成１７―１８年にかけ、練習中に当時の１、２年生の部員２人の腹を蹴ったり、暴言を吐くなどの体罰をしていたとして、市は教諭の処分を発表。同校は再発防止を目的に、生徒を含めた検討委員会を立ち上げた。
　 市が民間委託している名阪国道針インターの道の駅「針ＴＲＳ」の使用料７２００万円が未払いになっている問題が同月発覚。姉葉秀次元建築士による耐震強度偽装発覚で、休業に追い込まれていたサンホテル奈良（同市三条本町）が耐震改修工事を終え再オープンした。また改正の具体策が議会の反対などもあり決まっていなかった市の高齢者優遇施策「老春手帳」の検討委員会（間哲郎委員長、８人）が発足した。

●◎主な出来事◎●

4月からの郵便入札拡大を前に、市が業者対象に説明会を開催＝3月27日、奈良市役所正庁

部落解放同盟奈良市支部協議会が「見解」を市に提出＝6月1日、同市役所