北朝鮮、金剛山観光事業を中国企業に?

外国人観光客は1%以下のため金儲けは難しい

「韓国国内での対立を誘発するため」という見方も

 北朝鮮が金剛山観光の事業権を中国企業などに渡すのではないかという見方が出ている。しかし、中国企業が新たな事業者となった場合、現在北朝鮮が目指している外貨の獲得はそれほど期待できない。そのため韓国政府の関係者は、「一種の駆け引き、あるいは脅しだろう」とみている。もちろん、南北関係が極端に悪化した場合、北朝鮮はこの脅しを行動に移す可能性もある。

 統一部の千海成(チョン・ヘソン)報道官は会見で、「北朝鮮が中国人観光客向けに展開している観光ツアーは主に平壌や板門店を見物するものだが、その中に金剛山も入っているという話を聞いた。しかし、具体的には把握していない」と述べた。

 統一部によると、1998年以降に金剛山を訪れた観光客は195万人だが、その中で外国人(中国人を含む)は1万3000人ほどだった。ある脱北者は「平壌から金剛山に行くには、バスや汽車で6時間ほどかかる。そこまでして金剛山に行きたがる外国人観光客がいったい何人いるだろうか」と語る。2008年に金剛山観光が中断される直前には、年間30万人が同地を訪れた。北朝鮮は金剛山観光を通じ、10年でおよそ5億ドル(約470億円)を稼いだことになる。

 北朝鮮もこのような金の問題を意識してか、いかにして脅迫するかについて思い悩んでいたようだ。今月8日には現代峨山に対し、「事業権を没収する」とは言わず、「南朝鮮(韓国)当局者のせいで、現代峨山との契約がこれ以上、効力を持たなくなった」とおかしな表現を使った。また、観光とは関係のない政府保有の離散家族面会所の建物は凍結する一方で、現代峨山が保有する不動産には手をつけなかった。北朝鮮の消息筋は「3月末に不動産の調査計画を発表したときには、韓国に対する北朝鮮の交渉窓口であるアジア太平洋平和委員会が動いていたが、今回はそれよりも格下の名勝地総合開発指導局(金剛山を管理)が声明を発表した。北朝鮮も何かと頭を使っているようだ」と述べた。

 ちなみに北朝鮮が2004年9月に自ら制定した「金剛山観光地区不動産規定」を見ると、新たな事業者の選定は実際には難しそうだ。この規定の第15条(土地利用権が取り消される条件)には、「やむを得ない事情で土地利用権が取り消される場合、1年前に当事者に通知し、土地にある建物を含み補償を行わねばならない」と記載されている。金剛山から韓国の事業者を追い出すには、1年前に通知し、補償までしなければならないという意味だ。ある観光事業者は、「われわれが確保してある観光地区と重ならない場所に、新たな事業権を設定することはできるかもしれない。しかし、大した金儲けにはならないだろう」と述べた。

 これらの事情から、中央大学のイ・ジョウォン教授は「北朝鮮は金剛山を利用して、韓国国内での対立をあおろうとしているようだ」とみている。今も北朝鮮は、観光事業中断の責任をすべて韓国政府になすりつけ、数々の誹謗(ひぼう)中傷を繰り返している。先月25日に金剛山に呼び出されたある事業者は、「北朝鮮は韓国人観光客射殺事件について、現場検証までは応じようとしているが、韓国側は(射撃を行った)兵士に対して取り調べを行うべきと強く主張した。このことが理由となって、会談が決裂した。これがあちらの言い分だ」と現地で聞いた話について語った。しかし統一部の関係者は、「現場検証などとんでもない。北朝鮮は“自衛権の行使”などと口にしていた」と明らかにした。さらに北朝鮮は、「観光事業の中断で被害を受けているのはわが民族であり、韓国企業だ」と主張している。つまり韓国企業に対して、韓国政府に観光再開を強く求めるよう促しているかのようだ。

アン・ヨンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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