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Communication

所長
神浦元彰
軍事ジャーナリスト
Director
Kamimura Motoaki
Military Analyst

English Column of This Month!VOICE OF Mr.KAMIURA

所長ご挨拶

4月 2010年

第123回

神浦元彰

いますぐ手術をしなければいけない時に、お医者さんから「漢方薬の体質改善で直しましょう」と言われても困ります。階段から落ちて、足を骨折しているのに、「家の方角が悪いからケガをしたのです。あなたの玄関の方向が悪いですね」と風水占い師に言われても、まず救急車を呼んで病院に行く方が先です。

そんなイライラを鳩山政権の「普天間移設問題」の対応に感じています。

アメリカ政府は辺野古沿岸を埋め立てる現行案を唯一実現可能な案として主張していました。あまりにも強硬に主張するので、米国内や日本からも頑固すぎると批判がでました。日本で政権が代われば、今までの政策見直しが行われることは当然だという批判です。

すると米政府は、新たな普天間移設案に条件を付け、この条件をクリアーすると新しい案を受け入れると日本政府に伝えました。

その3つの条件は、@地元の反対がないこと A与党3党が合意していること B統一運用が可能なこと、です。

これほど難しい提案は現状無視の無理難題の押しつけだと思います。

@については、昨年8月の衆院選では、沖縄4つの小選挙区で、辺野古沿岸基地に反対する候補全員が当選しました。今年1月の名護市長選では基地建設反対の候補が当選しました。沖縄県議会や名護市議会では、全会一致で基地建設の反対要望書が可決されました。7月の参議選でも、この流れは変わらないと思います。すなわち、地元の了解を得る案など無理なのです。これは沖縄県外も同じです。

Aについては、沖縄県外を主張する社民党は、県内移設案が決まれば、連立離脱しなければ7月の参院選は戦えません。すでに連立離脱を視野に入れた動きを検討していると思います。

そこで新たに登場した海兵隊の”統一運用”が可能な案という条件です。この答えは現行の辺野古沿岸埋め立て案の中に秘められています。キャンプ・シュワブ沿岸を埋め立てる基地には、強襲揚陸艦(軽空母)が接岸でき、戦車など超重量物が並んで待機しても崩れない超強度の岸壁が作られます。2本の1800メートルV字滑走路は、CV22オスプレイ機が燃料や弾薬を満載しても、短距離で離陸できる長さがあります。(1600メートル滑走路の両端に100メートルの余裕がある)

さらに隣接する場所に辺野古弾薬庫があり、海兵隊員を宿営地や訓練場に使えるキャンプ・ハンセン基地とキャンプ・シュワブ基地があります。また米海兵隊が所有する唯一のジャングル訓練場の北部訓練場があります。

これらの沖縄の海兵隊の施設を統一して運用し、海兵隊が持つ陸海空の戦力を即応的に発揮できる新基地をアメリカは求めているのです。まさに辺野古沿岸を埋めてて建設する現行案以外は、アメリカが受け入れる可能性はありません。

なぜアメリカはそのような考えを持つようになったのか。それはグアム基地のバックアップ機能が不足していることに気がついたからだと思います。グアムは狭すぎて、大型台風や大地震で被害を受けた時、すぐに基地機能を蘇らせるバックアップ施設の余裕がないのです。それを沖縄の現行案に求めることにしたのだと推測しました。

すなわち沖縄に第2グアム基地を建設して欲しいのです。それは沖縄に海兵隊を配備して、日本の抑止力を高めるという議論とは別のものです。一時的に沖縄に避難してきた海兵隊は、グアムの施設が修理されて回復すれば、またすぐにグアムに戻っていきます。その第2グアム案を受けいれば、沖縄の米軍基地は返還されません。

それでは沖縄の基地負担が軽減されるどころか、米軍基地の恒久化につながってしまいます。米軍再編で沖縄の基地負担が軽減されることが普天間移設の大事な要素です。

そこで私は、嘉手納弾薬庫の活用を考えました。嘉手納弾薬庫は米軍の精密誘導兵器の普及と、弾薬を搭載した事前集積船の多用で、弾薬庫の貯蔵量が激減していると聞いたことがあります。それに嘉手納弾薬庫の面積は嘉手納空軍基地の面積より広いのです。ここの一部にオスプレイに必要な1600メートルの滑走路を作り、事故や騒音を避けて、滑走路を海に面した場所に確保するようにします。

この案によって、米海兵隊の北部訓練場、キャンプ・シュワブ、辺野古弾薬庫は、地元に返還してもらいます。嘉手納空軍基地は米国の中国への抑止力として、米政府が絶対に手放しません。しかし米軍再編で、米空軍が撤退したら空・海自衛隊が那覇基地から移駐してきます。キャンプ・ハンセンは陸自の第15旅団(旧第1混成団から新設)が移駐し、嘉手納飛行場や嘉手納弾薬庫を警備します。

陸自の第15旅団は島嶼防衛部隊として、空中機動旅団としての能力や、海上輸送能力を向上させることが課題になります。

そして第15旅団(海・空も)は沖縄県出身者を優先的に配備し、郷土部隊としての性格を強める編成をとります。

大変、おおざっぱに書きましたが、これが私の嘉手納弾薬庫に統合する案です。私は米政府の第2グアム基地構想はハワイで行うことを求めるべきと考えています。

それから最後に付け加えることは、米軍基地が返還されたら、沖縄をハブ空港にするという案がありますが、すでにその考えは20年ぐらい遅れています。今のハブ空港は10本以上の滑走路を持ち、同時に4機以上の離発陸が出来る広大な土地が必要です。

それほどの広い空港は沖縄には無理です。しかし国際コンベンションセンターなどの商業施設なら、日本全体、韓国、中国、台湾、東南アジア諸国の中心として沖縄を活用できます。

再建中の日本航空も本社を沖縄に移すぐらいの覚悟で、国際路線の競争に臨むことが大事だと思っています。中国や東南アジアに市場を求める日本企業なら、沖縄に本社を移すぐらいの成長戦略が必要です。

普天間飛行場の移設問題を考えることは、沖縄の将来の発展と安全を考えることなのです。アメリカと日本政府にはその1点が欠けています。

 

 

                                       つづく

                                                   4月5日 

以前の所長挨拶はファイル(文書倉庫)にあります。

著書紹介

「面白いほどよくわかる 世界の軍隊と兵器」
05年1月30日 発売  日本文芸社刊  1400円(税別)  

この本を私の著書と呼ぶことはできない。大部分は軍事ジャーナリストの芦川 淳さんと、軍事フォト・ジャーナリストの菊池雅之さんが書いた本である。二人とも、将来は日本を代表する軍事通になる素質を持っている人である。  この本で私の担当は、監修と第7章の「新しい日本の防衛政策」を書いた。私としては高校生レベルの軍事入門書として読んで頂きたいと考えていた。しかし意外なことだが、若い新聞記者やテレビ関係の報道ディレクターが読んでいた。私のところに取材に来る前に、この本を読んできましたと話す人が多くいた。今までは、軍事とは関係のないところに生き、仕事柄、初めて軍事の世界に触れる人には都合のいい本だったようだ。
 出版社に聞けば、やはり売れているようで、早々と半年で軍事本では珍しい重版になった。ともすれば私たちは軍事の専門家として、高度な内容の本を書きたがる傾向がある。社会に自分を認めて欲しいという欲求があるからだと思う。しかし世の中が求めているのは、確かな基礎知識に基づいた初級クラスの軍事解説本も忘れてはいけないと気が付いた。  これから軍事を勉強してみたいと興味を持った方にお勧めしたい1冊である。 
『戦争の科学』(監修)
03年9月10日 発売  主婦の友社刊  3000円 (税別) 

5月のある日、主婦の友社の編集者が訪ねてきて、「この本を翻訳して、日本でも出版したいと思います。ぜひ協力してください」と話した。原題は『SCIENCE GOES TO WAR』である。すでに下訳ができていて、読んでみると戦争というより兵器の歴史書だった。まずは日本語訳の間違いを訂正するために原書と突合せながら読んでみた。するとこの和訳が実に上手い。いやむしろ上手すぎると思った。言葉を訂正するどころか、逆に、言葉の使い方に感心しながら読んだ。翻訳はまったく問題がなかった。ところが原書には、今の時代では必須のRMA(軍事革命)の記述がなかった。そこで、「この本のタイトルでRMAの項目がなければ欠陥品になります」と編集者に話した。そこで最後の解説の部分として、RMAを書き加えることになった。それを私が担当することになった。
 「高校生にわかるように書きます」と言って、もっともわかり易いRMAの解説を書いた。それから原書にはないイラストを友人の長谷川正治氏を紹介した。ぜひとも図説のイラストが必要と思ったからだ。これで8月末に完成した。訳者の茂木健さんに脱帽した。
「北朝鮮消滅―金王朝崩壊の衝撃、到来する破局」
03年3月1日 発売  イースト・プレス社刊  1500円(税別)

 北朝鮮という国を軍事的な視点で見ると、今までは異常な体制支配で隠された部分から、真の姿が浮かび上がってきた。なぜアメリカは北朝鮮を軍事攻撃できないのか。韓国の太陽政策はなぜ生まれたのか。日本と北朝鮮の国交正常化はなぜ進展しないのか。
 そもそも北朝鮮の軍事力とはどうなのか。テポドンやノドンが日本に飛来する可能性はあるのか。そして、北朝鮮をめぐる中国やロシアの対応に隠された真意はどこにあるのか。
 イラク戦争でフセイン独裁体制が米英の軍事力で倒された今こそ、この本が解き明かす北朝鮮の真実が近未来を予測します。
 この本は1500円で、2003年3月1日が発行日です。
「北朝鮮「対日潜入工作」」
共著  別冊宝島宝島 038  宝島社刊  1200円(税別)

 私が担当したのは、「生物・化学兵器の原料流出のみを警戒せよ!」です。何だか変なタイトルですが、もう北朝鮮の兵器は脅威ではない。エンジンのかからない戦車、飛ばない戦闘機(飛ばせないパイロット)、潜航せきない潜水艦の数を数えて怖がっててもしかたがない。しかし生物・化学兵器だけは怖い。これに対する警戒は必要と書いたら、このようなタイトルになりました。
 原稿を書いたのが02年の7月、本が出たのが8月、そして9月から小泉訪朝と拉致事件被害者の帰国と、日本で北朝鮮関連のことで大騒動になりました。そのためか、何度かこの本が増刷され、こんど宝島文庫にもなるそうです。
 北朝鮮は怖くなければ北朝鮮ではない。怖い北朝鮮が大好きという方には、この本は絶対のお勧めです。金正日の危険度を知る上では面白い本です。
「裸の自衛隊」  
神浦元彰 監修   宝島文庫社   ¥533(税別)

歴史的な名著として話題になった自衛隊本。ベストセラーの初版から9年たっての文庫本なのに、初版〔文庫〕で10万部を刷ったという驚異の本。この「裸の自衛隊〔文庫〕」では、記事中以外に、「INTRODUCTIN」と「あとがき」を担当しています。他の著名な執筆者の鋭い取材や分析には、軍事の専門家でない方が、むしろ自衛隊を正確に見ていると脱帽しました。自衛隊の本当の姿を知りたい人にはお勧めです。現職や元自衛官には圧倒的な人気でしたが、防衛庁高官や自衛隊の偉さんたちにはヒンシュクをかいました。
「北朝鮮最後の謀略」
神浦元彰 著   二見書房   ¥825(税別)

 神浦所長が最初に挑戦した「軍事小説」。本当はこれで直木賞を狙っていたが、候補どころか話題にもなりませんでした。〔もちろん冗談〕 小説の話しの内容は、ロシアの犯罪組織から核爆弾を密かに買った北朝鮮の指導者が、横須賀港に寄港している米原子力空母の船底に核爆弾を仕掛け、関東一帯を「チェルノブイリにする」という計画が発覚。それを阻止すべき自衛隊の特殊部隊が投入された。北朝鮮軍工作員指揮官の許少佐の謀略に翻弄される日本。その間にも、核爆弾は改装された貨物船で東京湾に運ばれ、水中から原子力空母の船底にセットされた。(裏話・この小説はアメリカの高官が、「北朝鮮が1〜2発の核爆弾を持っていても、1万発以上の核弾頭を持っているアメリカの脅威にはならない」と言った事に頭にきて書いたのがもともとの動機です)
「北朝鮮「最終戦争」」
神浦元彰 著   二見文庫   ¥495(税別)

北朝鮮がテポドンを発射実験して、日本政府やマスコミのあまりの動揺ぶりに「ビビルな日本、北朝鮮は怖くない」と、科学的な軍事分析してみせた本がこれ。内容はノンフィクションですが、軍事常識や理論を勉強するには最適の本です。各所に具体例を挙げながら、理論的な説明をしておきました。この本は一部の朝鮮半島の専門家には高い評価をして頂きましたが、「北朝鮮が攻めてくる」と危機感を煽ってなんぼの人には敵視されました。しかし北朝鮮がいくら全体主義の国でも、国民の大多数が飢えているのに、大きな戦争を始める余裕はないでしょう。(裏話・この本で言いたいのは、本当に怖いのは北朝鮮ではなく、その背後にいる中国で、その将来の日中関係によっては、深刻な事態になると警告をしたかった。新たな冷戦を生まないために、中国と日本と米国が軍事対立をしないことが大事)
「アジア有事 七つの戦争」
神浦元彰 他(共著)   二見書房   \1748(税別)

 「何か面白い本を書こうよ」と、軍事評論家の野木恵一さんと話していたら、これからのアジアの10年間を、軍事情勢から分析し予測してみようと企画したのがこの本。そしていつもすごい記事を書くなと関心をしていた、河津幸英〔軍事研究誌 論説委員〕さんと、航空ジャーナリストの石川潤一さんにも加わって頂いて、4人の共著で出版しました。
 本当は4人で酒でも飲みながら、ワイワイガヤガヤとやりながら、進行していこうとぐらいに考えていました。ところが、野木さんは昔から酒を飲まないことを知っていましたが、河津さんも酒を飲みませんでした。石川さんもほんの付き合い程度しか酒を飲まないと聞いて大ショック。大酒飲みの私としては、極めてまじめに企画から、執筆まで真剣に取り組んだ本です。出版後にA新聞社の有名軍事編集委員から電話を頂き、よく書けているとお褒めの言葉を頂きました。4人が大酒のみだったら、どんな本が出来たのでしょうか。
「日本の最も危険な日」
神浦元彰著  青春出版社  絶版  発行1978年6月  

 22年前の本です。「神浦さん、将来、大物になる人は20代で本を出しています。書いてみませんか」と、私が29歳の春に青春出版社編集部の行本さん(当時、現在は文化創作出版社)に言われ、中高生を読者対象にして、わかりやすく軍事常識の解説書を書いたのがこれ。日本や日本周辺で考えられる軍事問題を99項目とりあげて解説をしました。たとえば、「なぜ中国は台湾を攻めないのか」「小さな地域紛争(人種、宗教、国境など)から、人類を滅ぼす全面核戦争までの戦争分類法」「米ソ、戦略核兵器の種類と核戦略」「北海道脅威論のいい加減さ」「開発中の精密誘導兵器の恐怖」などなど、いろいろな項目で書きました。たしか30歳の7月の誕生日にぎりぎり間に合ったと記憶しています。この本を出したのを機会に、テレビなどマスコミに軍事問題で出るようになりました。そのころ週刊ポストで最も若い記者だった二木啓孝氏(現、日刊ゲンダイの編集部長)と、この本が縁で知り合い、同じ年ということで仲良くなり今も付き合っています。私の肩書きの「軍事ジャーナリスト」というのも、二木氏が20代で軍事評論家はないだろうと命名しました。この本で私の本格的な軍事人生(取材・研究・発表)が始まったようなものです。それが今、私の書斎の本箱を見たら、なんと1冊もないんです。びっくりしました。私と同じ頃に青春出版社から「天中殺」の本が出て、歴史的なほど爆発的に売れました。そして日本中で占いブームが起きたときは驚きました。まだ藤本義一氏が日本テレビで11PMの司会をやていた頃の話です。その11PMにも何度か出演させて頂きました。
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