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【愛知】

戦前、カナダに日系人野球チーム 「バンクーバー朝日物語」出版

2010年4月3日

膨大な資料を基に日系人野球チームの歴史をまとめた後藤さん=日進市内の自宅で

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 ドラゴンズ戦中継の名調子で知られる中部日本放送(CBC)の元アナウンサー後藤紀夫さん(73)=日進市=が、戦前のカナダにあった日系人野球チームをテーマにした「伝説の野球ティーム バンクーバー朝日物語」(岩波書店)を出版した。冬季五輪で注目されたバンクーバー。1世紀前、人種を越えて愛されながらも、戦争によって解散を強いられた光と影の歴史を、長年の研究を基に描き上げた。 (遠藤康訓)

 朝日軍は1914年発足のアマチュアチーム。アジア系移民のヒーローとしてだけでなく、フェアプレーを重んじたスタイルが白人にも受け、20、30年代にはリーグ優勝を達成した。沢村栄治、スタルヒンらを擁する巨人軍の遠征相手を務めた記録も残る。

 しかし、41年の開戦で、日系人選手が強制移住や財産没収に遭い、チームは消滅。88年にカナダ政府が公式に謝罪するまで、その存在は歴史に埋もれていた。

 後藤さんは「もしも戦争がなかったら、力のある選手が日本のプロで活躍していたかもしれない」と思いを巡らせる。

 後藤さんは92年、バンクーバー旅行中に偶然、朝日軍OBのケイ上西さんとバスで乗り合わせた。話を聞いて興味を持ち、帰国後、CBCでドキュメンタリーを制作。その後も独自取材を続け、100本以上のインタビューテープや、当時の日系人新聞などの膨大な資料をまとめた。

 「2万人もいたカナダ移民だが、アメリカ移民に比べて、実情は知られていない。朝日軍を通して、日系カナダ移民の苦労、無念を伝えたい」と後藤さん。朝日軍は再評価され、2003年にカナダ野球殿堂入りを果たした。「あと4年で結成100年。メンバーを祝うため、もう一度カナダに飛びたい」とほほ笑む。

 46判。232ページ。2205円。 

 

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