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【第166回】 2010年4月9日 友清 哲
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年収300万円なら十分“勝ち組”に?
給料の「無限デフレスパイラル」が始まった

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景気改善の兆しが見え始めたものの、企業はまだまだ慎重な姿勢を崩さず、社員の世帯収入が上向くまでには時間がかかりそうだ。昨冬のボーナス水準は1990年の調査開始以来、初めて40万円を割り込み「過去最安値」をマークした。今春以降も、状況は大きく変わりそうにない。巷には、労働環境の悪化ぶりを嘆く会社員が溢れているのが現状だ。年収300万円どころか、「年収200万円時代」も覚悟しなくてはならない現状において、企業と労働者の「目指すべき未来」はどこにあるのだろうか?(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

年収300万円は夢のまた夢?
「年収200万円時代」が現実に

大不況の煽りで過去最低を記録した昨冬のボーナス水準だが、その反動で今夏は6.6%増が見込まれるとの推計もある(野村証券金融経済研究所による「ボーナス推計」)。景気回復が本格的に家庭に届く日が待ち遠しい。

 かつて、『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社刊)という本がベストセラーになった。今やテレビや雑誌で引っ張りだこの人気者となった経済アナリストの森永卓郎氏がこの本を上梓したのは、7年前の出来事である。

 「年功序列が崩壊し、サラリーマンの年収は300万円程度になるだろう」と予測した同書は、当時センセーショナルな話題として、各メディアで採り上げられた。

 しかし、昨今のサラリーマン世帯は、もはやそれどころではない窮地に陥っている。汗水垂らして働いても「年収300万円」さえままならないのが、現状なのだ。

 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば、平成21年度の全勤労者の平均年収(賞与のぞく)は、前年比▲1.5%の294万5000円(平均年齢41.1歳、平均勤続年数11.4年)と、前年に続き300万円の大台を割った。

 もともと女性勤労者と比べて高給だったとはいえ、男性勤労者のみだと前年比▲2.1%となる。まさに「年収250万円時代」「年収200万円時代」の到来が、現実のものになりつつある。

 では、これらを一切がっさい「不景気のせいだ」と切り捨てて良いのだろうか。景気の先行きを占う日銀発表の3月短観は、4期連続の改善基調にある。さらに内閣府が発表した2月の景気動向指数(※6日発表、速報値)では、前月比0.4ポイント上昇の100.7で、11カ月連続の上昇を示した。

 消費の回復にはまだ時間を要するだろうが、景況は着実に上向いている。逆に、「景気にかかわらず労働者の給与は下がっている」とも言える。

 厚生労働省が3月末に発表した「毎月勤労統計調査」によれば、2009年11月~2010年1月までに支払われた冬のボーナスは平均38万258円。40万円を下回るのは、1990年の調査開始以来、初めてだという。同省の推察では、この背景には派遣社員やパート労働者など、ボーナスの低い非正規労働者の増加が大きく影響しているという。

 つまり、景気云々よりも、労働環境が構造的に悪化している影響が大きいのだ。サラリーマンの給料は、このままだと「無限デフレスパイラル」にはまり込みかねない。

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