博多湾に面した福岡競艇場(福岡市中央区)で見つかった黒い袋の中から9日朝、人の両腕が発見された。西に約7キロ離れた能古島では先月15日、同市博多区の会社員、諸賀礼子さん(32)の遺体の下腹部が見つかったばかり。事件との関連はまだ不明だが、朝の競艇場周辺は騒然とした雰囲気に包まれた。
「ごみが流れ着くことはあるが、まさか……。大変なことが起きて驚いている」。競艇場の安永立秋開催運営課長は、黒い袋に入った両腕に驚きを隠せない様子だった。場内の男性警備員は「レース前に毎回湖面を清掃する掃海艇の担当者が見つけたようだ。こんなことは初めて。那珂川から流れ着いたのかもしれない」と語った。
競艇場の警備員室に場内担当者から連絡が入った一報が入ったのは午前9時20分ごろ。「警察も来る。レースができないかもしれない」。競艇場は午前10時50分からのレースを開催するか、直前まで対応に追われた。レース開催の判断は通常、天候などをみて前日までに判断するが、当日までもつれ込んだケースは初めてという。県警の開催許可を得て、競艇場は予定通りレースをスタートさせたが、中止の可能性もあったため、通常100円の入場料を無料にした。
レースを楽しんでいた福岡市の自営業の男性(56)は「全然気付かなかったが、ニュースを見て驚いた。ひどいことをする。体を切り刻んで捨てるなんて、許せない」と憤りを隠せない様子だった。
那珂川河口でこの日8時ごろから釣りに来ていた男性(50)は「警察が来たのが9時過ぎくらい。岸壁に捜査車両が1台止まって、警察官15人くらいが河口をのぞき込んだり、写真を撮ったりしていた。すぐに警察のヘリコプターも飛んで来てものものしい雰囲気だった」と当時の様子を振り返った。さらに「能古島で見つかった女性と同じならかわいそう。早く犯人を捕まえてもらいたい」と語った。
福岡県警は諸賀さんの事件発覚後、博多署に捜査本部を設置して連日遺体の捜索を続けていたが、他の部位を発見することはできないまま、3月31日に捜索を打ち切っていた。
毎日新聞 2010年4月9日 西部夕刊