Secondary  3_Mars-5

 

 

 

 

 

 

アスカと別れた。
傷つけた。
胸糞悪い。
何が、飽きた、だ。
何が、もう二度と話しかけないでくれ、だ。
ちきしょう。
ちきしょう。
何様なんだよ。
僕にそんな事を言う権利なんて何処にあったんだよ?
散々傷つけたアスカをまた傷つけて、僕は一体何をやってるんだよ?
ちきしょう。
ちきしょう。
ちきしょう。
 

 

アスカと二人で暮らしていた部屋から、
新しい自分の部屋へ荷物を運び出した。
それから、一人切りの部屋で僕は塞ぎこんだ。
本当にこれでよかったのか?
こんな方法でしか、僕はアスカを守れなかったのか?
ずっとそんな事を考えている内に、僕はいつの間にか眠りに落ちていた。

 

 

次の日、目を覚ますとアスカがいなかった。
アスカを探して部屋の中を見渡して、ようやく気づく。
昨日、別れた事に。
悲しさと、寂しさと、後悔がこみ上げてくる。
「…っ…うくっ…」
どうしてだろう。
昨日は、泣かずにいれたのに、
今、嗚咽を止められない。
「ぁあっ…うっ…うあぁっ…ううっ…」
一人きりの部屋。
僕は咽び泣いた。

 

何にも、する気力がない。
食欲も、なかった。
殆ど動かないまま、一日が終わった。

 

 

それから一週間ほどは、食べ物を取りに外に出る以外、
何もしない、時々、思い出したように泣くだけの日々を、僕は続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジが去って、アタシは蹲ったまま眠った。
次の日、起きるとシンジが傍にいなかった。
シンジを探して部屋の中を見渡して、ようやく気づく。
昨日、別れた事に。
悲しみと、寂しさと、後悔がこみ上げてくる。
「…ううっ…ううううっ……ううっ…」
一人きりの部屋。
アタシはすすり泣いた。

 

何にも、する気力がない。
食欲も、なかった。
殆ど動かないまま、一日が終わった。

 

 

その次の日、最後のシンジとのやり取りを、アタシは思い出していた。

 

飽きたんだ。

何よ…。

「僕の為に」何かをしたいという気持ちが残っているんなら、
 何処にも行かず、ここで暮らしていて欲しい。

勝手な事ばっかり。

もう二度と、僕に話しかけないでくれ。

勝手な事ばっかり、言わないでよ。
見捨てていいって言ったけど。
泣き喚いたって、気にしないでって言ったけど…。
こんな、
こんな…。

「くうっ…うううっ…うううっ…」
悔しくて、情けなくて、惨めで、アタシはまたすすり泣いた。
そしてそのまま、アタシは眠った。

 

 

 

 

 


次の日、嫌にすっきりした気分で目覚めた。
シンジは傍にいない。
悲しさや寂しさはあったけれど、アタシはもう泣かなかった。

 

お腹が空いたから、食材を調達しに外に出た。

僕の為に家事や其の他の世話、雑用、
それと勿論、夜の相手なんかもしなくてもいいよ。
と言うか、しないでくれ。

シンジの分も用意しようとして、そんな言葉を思い出した。
悔しくなった。
アンタなんかに言われるまでも無いわよと、頭の中で反発した。
なのに、アタシはシンジの分まで用意してしまっていた。

 

持ってきた食材を元に料理を作った。
シンジの分まで。
一人で食べる食事は美味しく無くて、
食欲も殆ど沸かず、作った料理は、シンジの分どころか、アタシの分まで余ってしまった。
余った分は明日食べようと思い、ラップをかけ、
その後、お風呂に入って、
部屋に戻り、眠った。

 

 

 

 

「僕の為に」何かをしたいという気持ちが残っているんなら、
 何処にも行かず、ここで暮らしていて欲しい。

そんな勝手なシンジの言葉に対する反発はあったけれど、
アタシはずっと、二人で暮らしたこの部屋にい続けた。
シンジの為に、って訳では…あったけれど、
何処か、新しく暮らす場所を探す気力が無いのもまた、事実だった。

 

シンジがいない分、退屈な時間が延々と続いたけれど、
それも、本を読んだり、街を散策したりして適当に時間を潰した。
今までだって、シンジがいない時間はそうしてきたから。
 

ゆっくりと、シンジがいない事に慣れていきながら、
また、平穏な日常が流れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このままじゃ駄目になると、僕は走り出した。
最初は慣らす程度のゆっくりとした速さ、
次第に、元々走っていたぐらいのペースに戻していった。
 

 

 

また、銃を手にした。
撃てなくなってしばらく経つ。
試しに、人に見立てた的を撃ってみた。
引き金は、いともあっさりと引けた。
撃てなかったのに、あっさり撃てるようになっていた自分に驚いたけれど、
すぐに理由がわかった。
もう僕が、アスカの傍にいる事を諦めたから、
この手を血で染めたくなかった理由が、無くなってしまったからなんだろう。
つくづく、自分の中でいかにアスカが大きな存在だったかを思い知らされて、
また、後悔が波の様に押し寄せてくる。
振り払おうと、僕は再び銃を撃った。
 

 

 

 

 

旅館に戻ると、ばったりとアスカに出会った。
「……。」
「……。」
お互い、見詰め合ったまましばらく固まっていた。
声を掛けようとするのを踏みとどまって、僕はアスカから視線を逸らし、傍を通り過ぎた。

 

部屋に戻ると、カセットコンロでお湯を沸かした。
それをカップ麺に注いで、出来上がりまで待って、食べた。
それから、お風呂に入り、
また部屋に戻り、眠る事も出来ずに、
何もやることが無いとゴロゴロと過ごした。
 

 

「以外に、暇なもんなんだな…。」
暗闇の中、ポツリと呟いた。
アスカとのやり取りが無くなる事で、想像以上に時間が余ってしまった。
これから、どうやってこの余暇を埋めていこう?
「アスカはどうしてるんだろ…?
 いや…気にするのはやめよう。悲しくなる。」
もう僕は、アスカとは別れたんだから。

 

飽きたんだ。

ああ言う事が、本当に最善の道だったのだろうか?

アタシはただ、シンジの為に…。

アスカは、僕の為に嫌な感情を我慢して僕に抱かれてくれていた。
「僕の為に」というのが何処までが本心で、何処からが依存の為の嘘なのか、
それはこの際どうでもいい。
問題だったのは、アスカが僕の為に我慢すれば我慢するほど、
僕がアスカに苛立ちを覚えてしまうという構造だった。
アスカの気持ちがどうであれ、この構造がある限り、
行き着く所はきっと、今以上にアスカも僕も傷つくような終わり方だ。
下手をすれば本当に、昔の様に、僕がアスカを殺そうとしていたかもしれなかった。
それを回避する為には、僕とアスカは離れなければいけなかった。
アスカの心を僕から離さなければいけなかった。
少なくとも、依存を助長する身体の関係だけでも終わらせる必要があった。
飽きた、という言葉は、アスカの心を離し、それを終わらせるのに最も適した言葉に思えた。
本音では、あるのだけれど。

 

 

もし、僕が溜め込んでいたものをアスカに打ち明けていたら、
僕はアスカに苛立たずに済んだんだろうか?
もしかしたら、そうなのかもしれない。
アスカに、こんな悲しい思いをさせないで済んだのかもしれない。
アスカに傷ついて欲しくなかった。
アスカに無理をして欲しくなかった。
アスカを守りたかった。
アスカを幸せにしたかった。
そう思って、よかれと思って何もかも僕の中に溜め込んでいたのに、
それが却ってアスカを傷つける結果になってしまった。
今更もう、アスカに打ち明けた所できっと何も取り返せはしない。
ならせめて、かつて生きる意味だと思ったように、人の社会が秩序を取り戻すまでアスカを守り、
最後は全ての罪を背負って、僕はアスカから離れよう。
ならむしろ、今のこの状況はアスカが僕から離れやすくなっている分、都合がいい。
アスカはこの旅館に留まってくれているみたいだし、
いつかのようにフラッシュバックを起こして大声を上げれば、ここなら何とか気づく事も出来る。
そして人が戻ってきたとき、すぐにアスカを見つけて守る事も出来る。
アスカが近くにいながら遠くにいる今のこの状況は、むしろ喜ぶべき、理想的なものなんだ。

 

アスカは僕の事を忘れるよ。
自分に都合のいい人形を見つければ、すぐにね。

もしかしたら、そうかもね。

じゃあ、どうしてそんなアスカの為に自分を犠牲にしようとする?

そんなの、アスカが好きだからに決まってるだろ。
それに、きっとアスカは僕の事を忘れたりはしないよ。

どうかな?
アスカは僕に何も訊かなかった。

アスカは僕の力になれなかった事を悔やんでいた。
アスカも辛かったんだよ。
なら、仕方ないじゃないか。

だから許すのか?
欺瞞だね、この期に及んで。
救いようがないな。

かもね。
でもそれでいいよ。
例え僕が救われなくても、それでいい。
それに、救う気なんて最初から無かっただろ?

……。

 


僕は、眠りに就いた。

 

 

 

 

 

 

それから、僕は以前の様に毎日走り、鍛え、銃を撃つ事を日課に日々を送るようになった。
ただ以前と違うのは、アスカが傍にいない分、帰ってきてから退屈な時間が出来るようになってしまった事。
あれだけ執拗にアスカを求めていたのに、今は全くそんな気になれないどころか、性欲さえも消えてしまった事。
そして、常に何処か嘘臭いような、現実感の無いフワフワとした感覚が付き纏っていた事。

 

 

「女が終わるところに劣悪な男が始まる、か…。」
偶々、以前読んだ心理学の本に紹介されていて知った、19世紀のドイツの詩人、ハイネの言葉。
「確かに、今の僕は劣悪な男だな…。」
アスカを、傷つけ続けた。
自分を押し殺して耐えるアスカを、踏みにじった。
アスカから、笑顔を奪った。
アスカを、泣かせた。
アスカから笑顔を奪って泣かせた僕の、何処が劣悪じゃないと言える?
あの囁くような声に、指摘されるまでもない。
「声、か…。」
あの耳元で囁くような声は、聞こえなくなった。
あの声は、何だったのだろう?
良心に訴えて僕を責め苛む時もあれば、
まるで悪魔の様に僕を罪に犯させようと唆そうとした時もある。
どっちが本質なのか?
そもそもどっちも同じものの声だったのか、わからないけれど、
共通する事は、あの声を聞き続けると、精神を急速に磨耗していく事だった。
アスカが、参るわけだ…。
「悪魔は理論家である。悪魔は現世のよさや官能の喜びや肉などの代表であるにとどまらず、
 彼はまた人間理性の代表者でもある、か、本当にこの言葉で言われている悪魔みたいだったな。」
同じ、ハイネの言葉。
正論を振りかざして僕の精神を弱らせ、そこを誘惑する事で僕に罪を起こさせようとする。
欲望と理性の代表。
なるほど、あの声は、或いは本当に本物の悪魔のものだったのかもしれない。
「…そういや、ハイネの言葉にまだ、こんなのがあったな。
 結婚、いかなる羅針盤もかつて航路を発見したことのない荒海。ってのが…。」
僕とアスカも、その航路を見つける事は出来なかった。
 

 

 

 

 

 

 

朝。
今日の始まり。
嫌な一日の始まり。
好きじゃない。

 

また、シンジのいない、退屈な一日。
苦しい事の無い。
怖い事の無い。
嬉しい事の無い。
楽しい事の無い。
何も無い、平凡な一日。

 

「もっとシンジの事、欲しがるかと思ってたのにな…。」
いつか、我慢できなくなってシンジに会おうとするんじゃないかって、
例え心が離れていても、優しい言葉をかけて貰えなくても、
せめて身体だけでも抱いて貰おうとするんじゃないかって思ってたけど、
そんな事も無かった。
それどころか、身体が疼く事さえ無く、自分で自分を慰めるような必要さえも無かった。

アスカの身体に、飽きたんだ。

もしかしたら、あの言葉で「女としてのアタシ」は死んでしまったのかもしれない。


 

 

シンジとは、偶に会う。
だけど、目は合わさない。
会話も交わさない。
決して、触れない。
まるで、お互いに相手がそこに存在していないように、アタシ達は振舞った。

 

 

悲しい気持ちは、もう湧かなかった。
代わりに、本を読んでも、おしゃれして着飾っても、美味しいお菓子を食べても、箪笥の角で小指をぶつけても、
膜に包まれているみたいに、感覚が、感情が全て鈍かった。
何をしても、満たされてるっていう感じがしなかった。
何かをする気力なんて殆ど無いのに、心だけはいつも乾いていて、餓え続けているような感覚。
決して本物の満足を得る事の出来ない、偽物の、偽りの世界。
 

 

 

パパに捨てられた後、ママもこんな気持ちだったのかな?
そんな事を考えた。
「シンジも、パパと同じだったのかな…?」
もしかしたら、そうなのかもしれない。
シンジは、アタシを傷つけた。
シンジは、アタシの事を捨てた。
アタシが泣いているのに平気な顔して、
自分勝手な言葉を残して去った。
シンジもパパと同じだったのかな…。

 

 

それでもアタシは、何処にも行かずに此処にいる。

 

 「僕の為に」何かをしたいという気持ちが残っているんなら、
 何処にも行かず、ここで暮らしていて欲しい。

そんなシンジの言葉を律儀に守って、アタシはまだ此処にいる。
あの時のシンジへの誓いを、守りたかったから。
ううん。
きっと、アタシはまだシンジがアタシに振り向いてくれる事を期待している。
アタシを捨てたシンジに、アタシはまだ期待してしまっている。
だから、アタシは此処にいる。
だから、未だにシンジの分まで料理を作り続けている。
我ながら、どうしようもない程のバカ。
そんなのわかってる。
でも、そこにしかアタシの「本物」は無かった。
 

 

 

 

 

 

 

外に出た。
雲ひとつ無い晴天だった。
朝だから、日差しは、まだ柔らかくて優しい。
「……。」
だけど、やっぱり何処か嘘臭かった。
心なしか、空の青はくすんで見えた。
日差しの柔らかさも優しさも、何処か嘘臭い、まがいものみたいな感じがして、本物の太陽の光じゃないように思えた。
まるで、人工の光の様な、
偽りの太陽の光。
「まるで、書割の空ね…。」
偽物臭い空を見上げて、アタシはそう呟いた。
 

 

 

本屋に寄った。
満足を得られないといっても、何も読まないよりはマシだった。
ふと、心理学の本のコーナーで足を止めた。
いつもなら、ファッション雑誌や料理本や漫画や小説、後は特撮物の絵本や解説本ぐらいしか読まないのに、
しかも、大学時代は心理学なんて専攻してなかったのに、何故か惹かれた。
棚の中に、「変遷する心理学」という本があった。
自分でもよくわからない内に手にとって、パラパラと捲った後、持ち帰る事に決めた。

 

 

「変遷する心理学」は、専門書というより、どちらかといえば入門書や啓蒙書に近い物だった。
いざ家でパラパラと捲って読んでみたら、ちっとも興味が湧かなかった。
PTSDや幻聴、強迫観念、回避性人格障害の項目は、ちょっと興味を引かれて読んだけれど、
以前シンジと一緒に調べた時に見た記述ばかりで、目新しいものは特に無かった。
そもそも何でアタシこんな本選んじゃったんだろ?
ただでさえ読むのに疲れるのに、この手の本には、シンジに教えてもらったり、
特撮の解説本を読んだりして大分読めるようになったとは言え、
まだまだ読めない漢字が多いし、興味も大して湧かないし、そろそろ読むのやめよ。
と、思ったときに、一つの項目が目に留まった。
欲求についての項目だった。

 

その本の記述によると、
人間を含めた動物は、原則的に快感や安心を得ている時、死に近づいているのだそうだ。
それは寿命が縮むという意味合いの場合もあるけれど、
それよりも、例えば睡眠、食事、性交など三大欲求に基づく行動をはじめ、
快感や安心を得る行動を取っているとき生物は、
外敵に対して無防備になっている場合が殆どであるという意味合いからである。
むしろ、外敵に対して無防備になったとしても生存の為にはとる必要のある行動だったからこそ、
快感や安心という「飴」をそれらの行動に伴う必要があったと言える。
逆に、苦痛や不安などは、死を回避するために、
その行動をとり続けていると死ぬような行動を回避させるために「鞭」としてそれらの行動に伴うようになった。
つまり、快感や安心は「死」に、
苦痛や不安は「生」に向かう為の「動機づけ」の為の感覚だと言える。
もっとも、死に向かっているとは言え、本当に死んでしまっては意味が無いので、
快感や安心にはある一定の地点まで達すると「飽き」か「満足」が用意されている。
そしてこの前提の上で、この本は精神分析用語の「生に向かう欲求」である「リビドー」と、
「死に向かう欲求」である「デストルドー」を新しく定義しなおしている。
一般に「リビドー」を伴う、と言うより「リビドー」によって起こされると考えられている行動は、
捕食や性交など、基本的に「快感」を伴うものである。
対して、「デストルドー」によるものと考えられている自傷や自殺といった行動は、基本的に「苦痛」を伴う行為である。
一見すると先の前提である「死に向かう快感」が生への欲求である「リビドー」に、
「生に向かう苦痛」が死への欲求である「デストルドー」にそれぞれ伴い、まるで逆さまの様に見える。
だが、「リビドー」によって引き起こされる行為は、つまりはそれに伴う「快感」を追い求め続ける行為であり、
その究極に求める所は「飽き」または「満足」であり、つまり「快感」の解消、「死に向かう快感」からの解放である。
つまり、自身の中の「死へ向かう方向性」を消してしまう事でより自身を生へ向かわせようとする働き、
それこそが「リビドー」であり、その本質は快感を追い求め続ける為の積極的行動、すなわち「動」である。
対して、「デストルドー」によって引き起こされる行為である自傷や自殺は、
その行為そのものは「苦痛」を感じるものではあるが、その行為は実は「安心」を追い求めての結果である。
自傷や自殺などデストルドーによる行動を起こす者の大半は、
「鬱病」等の行動自体を起こし難い無気力な状態に恒常的に置かれている場合が殆どである。
無気力になり動かない状態と言うのは、一般にある種の「安心」を伴う。
それはこの「無気力状態」からくる「動かないという行動」がある種の精神的な防御や疲労回復の為の行動の一種で、
「生きる為にあえて死に近づく」睡眠に近い行動であり、それ故にある種の「安心」を伴うのである。
そして、この「無気力状態」が崩れればそれに伴う「安心」が失われる事となり、「安心」を失わないように、
永遠に「安心」し続けれれると錯覚しえる永遠に動かない状態、すなわち「死」を、彼らは目指してしまうのである。
つまり「デストルドー」とは「死に向かうやすらぎ」を「失わない」為に「死」という「永遠の静止」に向かう欲求であり、
その本質は「安心」に留まり続けようとする消極的行動、すなわち「静」である。
そしてこの二つの欲求はともに、「死に向かう動機づけ」である「快感」と「安心」からそれぞれ主に発生するものであり、
それは生物の生というものが本質的に死に向かう為のものである故である。
また、「苦痛」や「不安」等の「生に向かう動機づけ」は、
あくまでこの二つの欲求が行き過ぎないよう調整する「バランサー」としての役割でしかないものである、なのだそうだ。
そして更にこの本では、現状を変化させようとする「動」の働きである「トランジスタシス」が、
「快感」によって「リビドー」という欲求として、
現状を維持し続けようとする「静」の働きである「ホメオスタシス」が、
「安心」によって「デストルドー」という欲求としてそれぞれ心に表出したとし、
人間の社会行動の内、その行動に伴うものがどんな感覚にしろ、
変化を求めての「動」の行動は「リビドー」によるもの、
現状を維持する為の「静」の行動を「デストルドー」によるものとするべきであるとしている。
実際に、変化し続けるものは個人、組織のレベルでは死や崩壊などを起こしにくい場合が多く、
変化を好まず同じ状態を維持し続けようとするものは個人、組織のレベルで死や崩壊を起こしやすい場合が多い。
勿論「変化する事」も「維持し続ける事」もどちらも必要で、
変化する事に偏りすぎれば変化し続けるものの方が、
維持し続けていく上で「決して変えてはいけないもの」まで誤って変えてしまい易く、
維持し続けようとするものよりも遥かに容易く死や崩壊を起こすが、
そのような事故か自殺の様な場合は兎も角として、
現状変化を求める行動をリビドーによるもの、
現状維持を求める行動をデストルドーによるものと定義すれば、
複雑で入り組んだ人間の感情や在り方に振り回されずに人間の行動を定義、分類し得る、とこの本ではこの項を締めくくっている。

 

「へぇ〜。」
その部分を一読して出た最初に言葉がこれだった。
心理学の事には詳しくはないし、
突っ込みどころ、特に最後の方、はあるけど、
確かに、なるほどと納得できる部分はある。
サードインパクトの時、全てが一つになっていくというある種の死に向かう時に感じた最初の感覚は、「やすらぎ」だった。
シンジに首を絞められて殺されかけたとき、アタシは抵抗しなかったけど、
あの時確かにある種の「やすらぎ」をアタシは感じていたと思う。
死に向かう時、死を受け入れた時、確かにアタシはいつも何処かで「やすらぎ」を感じていた。
「飽き、か…。」
シンジはアタシに飽きた、と言った。
この本の言う所では、シンジがアタシを求めていたのは、アタシに依存するあの状態から脱出する為、
「死」、「終わり」に向かう現状を変える為の行動だったとなるのだろう。
確かに、依存なんて状態は、生存競争の中でも、社会の中でも生き難い「死」に近い状態ではある。
それに対して、アタシは…、
あの時アタシはシンジとの生活に終わりなんて求めてなかった。
怖くて、苦痛で、虚勢を張る気力さえなかったけれど、それでもあの状態から変わりたくなかった。
シンジを失いたくなかったから。
シンジという「やすらぎ」を失いたくなかったから。
デストルドー。
現状を維持し続けようとする「静」の力。
「死」に向かう欲求。
なるほど、確かにアタシは終わった。
シンジに振られて、アタシ達の生活は終わった。
アタシは、失う事に怯えすぎたんだ。
あの声や自分の弱さを言い訳にして、
現状に甘んじて受け身になりすぎたアタシが、
シンジに何も訊かない、何もしてあげなかったアタシが終わるのは必然といえば必然だった。
アタシはただ、「安心」を求めていただけだったんだ。
シンジの為にと言いながら、その実自分の事しか考えていなかったアタシが、終わるのは必然だったんだ。
どうして、こんな簡単な事に気づかなかったんだろ?
きっと、弱さを言い訳に、アタシがいろいろな事から目を逸らしていたからだ。
いろんな事を、諦めてしまったからだ。
悔しい。
もし、アタシが動いていたら、もしかしたらシンジと別れないで済んだかも知れないのに。
悔しい…。
……じゃあ、今は?
シンジに振り向いてもらう事を期待しながら、何もしない今のアタシは…?
「……。」
本に落としていた視線を上げる。
上げた先には、一人分には多すぎる量の食材があった。

 

 

 

食堂。
食卓のテーブルの上に、お水の入った湯飲みに、御飯とお味噌汁、それと金平ごぼう、そして箸を置いた。
シンジの分だった。
今まで、シンジの分を作っても、シンジに見せる事も無いまま食べるか、捨てていた。
「…シンジ、食べてくれるかしらね?」

今までみたいに僕の為に家事や其の他の世話、雑用、
それと勿論、夜の相手なんかもしなくてもいいよ。
と言うか、しないでくれ。

「シンジは、こんな事望んでないわよね…。」
きっと、こんな事をするのも、アタシがシンジを繋ぎとめておきたいからしてるだけの事にしか過ぎないわよね…。
それにもし、こんな事してシンジが怒ったら、もっと、シンジに嫌われたらどうしよう。
また、あんな目でシンジに見られたら…。
「っ……。」
そう考えると怖くなって、せっかく並べた料理を、食卓から引こうと御飯茶碗に手を伸ばした。
「……。」
迷い。
引くことを躊躇う。

 

でも、このままだと、このまま何もしないままだと、アタシはきっとまた後悔する。
それは、それだけはもう、嫌なの。
 

シンジもパパと同じなの。
だからこんな事したって無駄よ。

違う!!!

何処が違うの?
パパがママを捨てたみたいに、
シンジは自分の都合でアタシを捨てたじゃない。

うるさい!!!!!

別れよう。アスカ。

うるさい…。

アスカの身体に、飽きたんだ。
ほら。

勝手な…。

今までみたいに僕の為に家事や其の他の世話、雑用、
それと勿論、夜の相手なんかもしなくてもいいよ。
と言うか、しないでくれ。
同じじゃない。

勝手なことばっかり…。

もう二度と、僕に話しかけないでくれ。アスカ。

「勝手な事ばっかり言わないでよ!!!バカシンジの癖にっ!!!!!」
 

 

そう叫んで、アタシは御飯茶碗から手を離し、
食卓の上の料理をそのままに、
自分の部屋に逃げるように駆け込んだ。
布団に包まって、やがて眠りに落ちるまで、そのまま塞ぎこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

走りながら、撃った。
一発目、二発目、三発目は的自体を外れ、五発目は的をかすり、
六発、七発、八発目は狙いの部分を外れたけれど的に命中、九発目でよくやく、狙い通りに当たった。
そこで、的との距離が近くなりすぎたから撃つのをやめた。

 

 

「九発撃ってようやく一人、か…。」
さっき撃った的を見ながら、僕は呟いた。
始めの内は、走りながらとか動きながら撃つと、ぶれて全く命中しなかったけど、
最近ようやく当てられるようになってきた。
「ミサトさんにはまだ、及びそうにないな…。」
最後の戦い、ミサトさんが僕を助けてくれた時、
おそらくミサトさんは走りながら僕を殺そうとした戦時の隊員の内、二人を撃ち殺した。
やってみてその難しさがわかった今、僕は今までとは違う意味でミサトさんに尊敬の念を持った。
あの人、実は相当凄かったんだな、と。
不意打ちとは言え訓練を積んで武装した三人の男を相手に、女性一人で立ち向かって勝ったってのも、
今考えると脅威だった。
全然そうは見えなかったけれど、ミサトさん、実は恐ろしく強かったんじゃないんだろうか?
そう考えると、生意気な口を利いていた昔の僕は、
本当は恐ろしく危うい橋を渡っていたんじゃないかって気がして寒気がした。
「…ともかく、少なくともミサトさんぐらいは、強くならなきゃな。」
もう一度、走りながら僕は銃を撃つ。

 

小休止。
そこら中から掻き集めたとは言え、全弾薬の約半分をこの半年とちょっとで消費してしまった。
おそらく持って後数ヶ月なので、そろそろ新しい弾薬を何処かから見つけてこなければいけないけれど、
全く当てが無かった。
仕方なく、銃を撃つ時間を減らして、筋トレなどの身体を鍛える時間や、こうやって休む時間を増やした。

 

何となく辺りを散策していると、
いつか見かけた「諏訪郡母子支援センター」があった。
「母子、か…。」
呆然としながら、ぼやくように呟いた。
 

 

もし、サードインパクトのせいで子供を亡くした女性が、僕に対する復讐の為に近づいてきたら、
僕は殺せるだろうか?
きっと今なら、躊躇わずに殺せる自信がある。
良心を封じ込め、人から「人」の認識を外すコツのようなものを、
アスカと別れてから、僕は掴める様になった。
といっても、実際に試したわけじゃないから、あくまで手ごたえを感じているだけだけれど。
それはコツと言えるほど大それたものじゃなかった。
アスカに対して感じていた苛立ちや嗜虐心といったあのドス黒い感情を、心の中から引きずり出して
心が黒く、何処までも黒く汚れていくのをイメージするだけ。
自分の意識を、ドス黒い漆黒に染め上げるだけだった。
その感覚の中なら、人をイメージしながらも僕は平然と撃てた。
その感覚を解いたときに、罪悪感と疲労感が出てくるけど、
その感覚になっている間は、罪悪感だけでなく疲れさえも感じなかった。
集中する事で認識する物体から一時的に意味が消失したり、疲労感を忘れたりするという事があるらしいけど、
これも、その一種なんだろうか?

 

しばらく呆然とそんな事を考えて、もう一度、僕は来た道を戻った。
 

 

 

 

もう一度銃を撃つ。
動きながら、今度は的に人を重ねて、あのドス黒い感情になりながら、
僕は持ってきた弾薬が尽きるまで撃ち続けた。
 

 

「反動」で、しばらく動けなかった。
またしばらく休みながら、ぼんやりと考える。
 

 

人は、相手を「自分と同じ」人だと認識している内は、「人」を殺せない。
それは、きっと「良心」によるもので、
その「良心」は、社会を作る群体として人が獲得する必要のあった「弱さ」ではあるけれども、
果たしてこれは本当に僕が以前考えたように、利己的な進化の果てに偶々獲得した程度の感情なんだろうか?
「良心」に従って行動したときのあの誇らしい、澄んだ気持ちも、
「良心」を無視して行動したときのあの汚らわしい、濁った気持ちも、
それらは本当に全て「偶々」そうなった産物にしか過ぎないのか?
昔、「良心」について考えた時はそれで納得できたけれど、
今は、違う気がする。
それは本当に非倫理的な、感覚的なものでしかないし、
信仰を盾に人殺しを行う人々がいたように、「良心」を盾に人は偽善を行うから、
「良心」を神聖視するつもりは無いけれど。
 

 

 

 

 

帰り道。
諏訪湖沿いを歩く。
 

 

もし、人が帰ってきたら、お互いの心の中を覗き合った人々は、またすんなり元の関係に戻れるだろうか?
この前読んだ旅人が喋るバイクみたいな乗り物に乗って国々を旅する小説の中に、
人の心がお互いにわかってしまう国の話があった。
その話の中は、心がわからない内はまだ仲のよかった恋人の内の一方が、相手に対してほんの少しの不満を頭の中で思ってしまい、
心がわかってしまうようになった事でそれが相手に伝わり、それをきっかけに喧嘩が続き結局その二人は別れ、
そういった事が国中で起こるようになり、その国の人々は人と関らない生き方をするようになる、といった事が起こっていた。
この話の中では、人々は遠ざかる事で相手の考えが伝わらなくなったけれど、
あの心の混ざり合った世界では、誰も他人から離れる事は出来ない。
今あの世界がどんな状況かはわからないけど、
例えどんなに仲のいい人達でも、お互いに対して何処かに不満をもってしまうものだし、
今、その小説のように不満が相手に伝わり、あの世界では終わらない喧嘩が既に始まっている、なんて事もあり得る。
例え相手を許そうと思う心があっても、その一方で相手を責め続けようと思う心がある限りは、
心が全て伝わってしまうあの世界で和解する事は出来ない。
それに、考えている事だけならまだしも、過去の記憶まで全て知られる上に、離れる事さえ出来ないから、
下手をすればあの小説よりも遥かに凄惨な、全ての人々が憎みあっているような状態になっていてもおかしくはない。
もしそうなっているのなら、人々が帰ってきたとき最初に始まるのは、きっと殺し合いだろう。
人が社会を構成し、そこに秩序が戻るまで、果たして何年かかるのだろう?
そうやって戻った社会も、二度のインパクトでズタズタになった地球環境の上では、後百年持てばいい方だろう。
例えセカンドインパクトもサードインパクトも起こらなかったとしても、人の社会はいずれ滅びゆく運命だったのだし。
でも、せめて、アスカが生きている内は、滅びないで欲しい。
アスカは、幸せになって、幸せなままで最後まで生きて欲しい。
「勝手な、願いか…。」
不意に、今日考えた「母子」の話を思いだした。
そこから連想して、アスカに妊娠したかもと告げられた時の事を、僕は思い出した。
「あの時、アスカに子供が出来て無くって、本当によかったな…。」
僕なんかの子供として生まれてくる不幸だけじゃなく、
再生したいずれ滅び行く人の社会で生きていかなければならないのだから。
生まれてきてはいけない子。
でもそれは、よくよく考えて見れば、僕そのものだった。
セカンドインパクト直後、
滅び行く世界に生まれた、僕だった。
「父さんは、どんな気持ちで僕が生まれてくる事を認めてくれたんだろう…。」
今となってはもう、知りようも無い。
父さん。
ただ拒絶していただけの、憎んでいただけの父さん。
その父さんと、今、話したいと思った。

 

それから、歩きながら父さんの事ばかり考えていた。
思い返してみても、やっぱりあの人はロクでも無い人だった。
僕を捨てて。
トウジを傷つけて。
リツコさんを泣かせて。
そうやってよくよく父さんの事を思い出している内に、
腹が立ってきてセンチメンタルな気分は吹き飛んでしまった。
そして悲しい事に、今の僕は父さんそっくりな事に気づいてしまった。
アスカを傷つけて。
アスカを捨てて。
アスカを泣かせて。
あんなに嫌悪していたのに、父さんと同じような人間になってしまった自分が情けなく、
同時に、こうなってしまったのはどうにも抗えない運命や宿命だったんじゃないかって気がした。
「カエルの子は、カエルか…。」

 

 

 

 

旅館に戻る。
食堂を通ろうとしたとき、テーブルに料理が置いてある事に気づく。
御飯とお味噌汁と金平ゴボウ。
「アスカか…。」
多分、僕の為のものだろう。
無視して通りすぎようとした。

ぐ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!

腹の虫が鳴った。
足が止まる。
また、テーブルの上の料理に目が行く。

そういえばお昼も食べてないかったからな…。
それにここの所インスタント食品しか食べてなかったし…。
でも…。

ぐ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!

駄目押しにもう一回。
「……。」
…まあ、いっか。
これぐらいなら…。

 

何処かでアスカが僕を監視していないか辺りを見渡して、席についた。
「別に、単にお腹が空いただけだから、それだけだから…。」
そう言い訳を口にした後、いただきますをして御飯に箸をつけた。
冷めてしまっているけど、いつか僕がアスカに教えた炊き方での御飯の味がした。
「っ……。」
思わず、涙が滲みそうになった。
アスカに見つからないように、泣きそうになるのを堪えるながら、僕はかきこむようにして急いで全部平らげた。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝。
起きてもしばらくアタシは部屋に引き篭もったままだった。
もし、昨日用意した料理をシンジが食べてくれてなかったらどうしよう…。
そう思うと不安で仕方なくて、見に行く勇気がなかなか湧かなかった。
「これじゃあアタシ、まるで昔のバカシンジみたいじゃない…。」
そう呟いてみるとイライラした。

 

そろそろお昼だ。
このままずっとウジウジしてても何も始まんないわね。
しゃーない!
ここはいっちょ、覚悟決めるか!!!

 

「行くわよ、アスカ…。」
そう呟いて、
飛び上がる様に起きあがり一気に食堂まで駆けた。
テーブルの上には、何も無かった。
「あれ…?」
そのまま調理場の方に向かう。
洗い場の近く、洗った食器を乾かすための水切り用の籠の中に、
昨日使った食器が洗って置いてあった。
「なんて律儀なヤツ…。」
シンジは、どうやら食べてくれた上に食器を洗って片付けまでしてくれたようだった。
何ともシンジらしいわね…。
でも、そんな変わらないシンジが、
シンジが食器を洗ってくれているその光景を想像すれば、
何だか微笑ましくって、
「ぷっ……ふふ、あははははっ」
思わず吹き出して、そのまま堪えきれずにアタシは笑った。
「あはははっ…律儀なやつ、ほんっと、バカシンジなんだから…」
嬉しかった。
まるで、偽物の世界が、一瞬だけ本物に戻ったみたいだ。
「ま、ここまでされちゃあしょーがないわね。
 需要と供給の関係が成り立っちゃたし、
 これからも、バカシンジの為に作ってあげるか。」
そう言って、アタシは駆けるように調理場から出た。

 

そうだ。
やっぱり、シンジはシンジなんだ。
シンジは、パパと同じなんかじゃない。
きっとアタシにあんな酷い事を言ったのだって、別れたのだって、何か訳があったんだ。
ううん。
例え訳なんか無くたって、
ホントはシンジもパパと同じだったって、アタシは構わない。
シンジが好きだもの。
アタシは、この気持ちを裏切りたくない。
例え報われなくたって、それで構わない。
あの時シンジに誓った言葉をアタシは守る。
もう一度、守ってみせる。
それに、きっとまだ、シンジもアタシの事を好きでいてくれてるって、アタシは信じてる。

 

外に出た。
見上げた空は少し曇っていて、昨日のような快晴の空ではないけれど、
昨日よりも、空の青は澄んで見えた。
 

 

それから毎日朝と晩、
シンジの為に料理を作ってテーブルに置いた。
シンジとは相変わらず口を利かないし、お互いに無視し続けているけれど、
それでも、シンジはテーブルの料理を欠かさず食べてくれた。
シンジとの、か細いけれど確かなつながり、
このつながりだけが、アタシの世界に、色を与え続けてくれた。
 

 

 

前へ      表題へ      トップへ        次へ

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づいておられるかも知れませんが、この「3_Mars」の章だけでなく「Secondary編」は、「Primary編」よりも作者が好き勝手書いております。

実は此処には更に太宰治の「人間失格」をシンジが読むというエピソードがあり、実際に書いていたのですが、

ストーリーにあまり関係ない上、太宰治についての認識が後で調べると色々間違っていたっぽいのでカットしております。

ちょっとだけ伏線みたいなものをそこで張っていたんですが、「人間失格」を読んだ事の無い方にとってネタバレにもなってましたし…。

 

2009年12月7日  たう