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スマートフォン・シフト始まる――ケータイからモバイル・コンピューティングへ

nikkei TRENDYnet4月 9日(金) 11時21分配信 / テクノロジー - モバイル
スマートフォン・シフト始まる――ケータイからモバイル・コンピューティングへ
日本の携帯業界がスマートフォンに大きくシフトし始めた。NTTドコモは4月1日、グーグルのモバイルOS「アンドロイド」を搭載した本格的なスマートフォン「Xperia」を発売。同日、ソフトバンクは同じくアンドロイド携帯の「HTC Desire」...
 日本の携帯電話業界がスマートフォンに大きくシフトし始めた。NTTドコモは4月1日、グーグルのモバイルOS「アンドロイド」を搭載した本格的なスマートフォン「Xperia」を発売。同日、ソフトバンクは同じくアンドロイド携帯の「HTC Desire」の予約受付を開始。さらにKDDI(au)もアンドロイドやウィンドウズ・モバイルを搭載した「IS series」を、6月上旬以降に発売する予定だ。

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 これまで日本の主要キャリアは、アップルやグーグルなど米国勢が主導するスマートフォン・ビジネスには慎重な姿勢を崩さなかった。それは過去に日本独特の多機能携帯と豊富なサービスで世界をリードしてきたとの自負があり、そうした大成功を収めた従来型ビジネスをあえて崩してまで、未知の領域に踏み込む理由が見当たらなかったのだ。

 それが、ここに来て主要キャリアがスマートフォンに向けてかじをきり始めた背景には、日本でも2008年にソフトバンクが発売したiPhoneのすさまじい攻勢がある。発売当初スロー・スタートだったiPhoneは2009年に勢いを増し、その年の後半からは携帯売上ランキングでトップの常連となった。特にARPU(携帯ユーザー一人当たりからキャリアが得る収入)が極めて高いF1層(20〜34歳の女性層)が、いわゆるMNP(携帯電話番号の移行制度)を使って、どんどんiPhoneに乗り換えており、これにソフトバンク以外のキャリアが危機感を募らせ、ついに臨界点に達したと見ることができる。

 端末メーカー側の事情もある。それまで右肩上がりの急成長を遂げた携帯電話機市場は2008年以降、頭打ちから大幅な縮小に転じた。国内需要の先細りが明らかになった日本のメーカーは今後販路を海外に求めざるを得ない。このため日本独特の多機能携帯よりも、最初から世界市場向けに設計されたスマートフォンへと主力ラインアップをシフトさせたいのだ。

 しかし真の問題は、こうした業界側の事情で投入されるスマートフォンが日本の消費者に受け入れられるかどうかだ。これまで日本ではiPhoneを唯一の例外として、スマートフォンはあまり売れなかった。元々、日本のスマートフォンには2005年にシャープとウィルコムらが共同開発した「W-ZERO3」があるなど、当初はむしろ米国を先行していた。しかし当時から現在に至るまで、日本のスマートフォンは一部ハイテク・マニアが好むニッチ商品の域を出なかった。

 その主たる理由は日本型の多機能電話が、あまりにも発達してしまったことにある。電話(通話)やメールなど基本的な機能に加え、目覚まし時計、電卓、カレンダー、スケジュール帳、サウンド・レコーダー、デジタル・カメラ、ビデオ・カメラ、GPSナビゲーション、ワンセグ、さらにはFeliCaのような非接触ICによる認証・課金機能(お財布ケータイ、電子マネー)、航空搭乗チェックイン機能、電機量販店のポイント・カード、緊急通報装置まで、とにかく思いつく限りの機能を小さな携帯端末に詰め込んでいった感がある。

 つまり日本では、非常に便利な携帯電話サービスが人々の生活全般まで広がってしまったので、そこから、すぱっとスマートフォンに切り替えることが一般ユーザーにとって難しい状況にある。これが米国型のスマートフォンに対する一種の防御壁になってきた。

 しかし、この状況が昨年あたりから変わりつつある。それは「販売奨励金」と呼ばれる業界の慣行が廃れることによって、携帯電話機の実勢価格が大幅に上昇したことだ。これによって消費者の間に「高いお金を払ってまで多機能携帯を買う必要はない」という、意識の変化が生じた。こう指摘するのは、携帯電話業界に詳しいITジャーナリストの神尾寿氏だ。同氏によれば、これまでも日本の携帯電話に装備されている無数の機能の大半は実際使われてこなかった。それでも「価格が比較的手ごろである」という理由で買われてきたが、これが高くなれば「使わない機能はもったいない」という意識が消費者の間に芽生える。むしろ現在求められているのは、あらかじめ装備されたハードウエア的な機能を最小限に抑え、後から必要な機能(アプリケーション)をユーザー自らがダウンロードできる端末だという。これは、つまりスマートフォンのことである。

 将来的にもスマートフォンが主流化する下地は存在する。2007〜2009年にかけて内閣府や総務省が実施した調査では、20歳未満の若い人たちの間では「携帯電話よりもむしろコンピュータ(パソコン)を使うことの方が多い」ということが繰り返し指摘されてきた。つまり「メールからウェブ・アクセスまで、何をするにも携帯電話」という、いわゆる親指族(携帯世代)は今や、過去の話になりつつあるのだ。スマートフォンは携帯電話というよりモバイル・コンピュータであり、学校へのパソコン教育が浸透してから成長した現代のティーンエイジャーにとっては、むしろ親しみやすいものなのだ。これまでは事実上、iPhoneしかなかったので、スマートフォン全般に対する彼らの関心はそれほど強くなかった。しかし今後、ほかにも良い商品が出てくれば、若い消費者の間で携帯電話からスマートフォンへのシフトが目立って増えてくることは想像に難くない。

 もっとも、そうなるためには課題も残されている。これまで日本の主要キャリアがリリースしたスマートフォンは、「おサイフケータイ」のような認証課金機能や「ワンセグ(携帯端末向け地上波デジタル放送)」など、従来の日本型ケータイの人気機能を搭載していない。神尾氏は「特にFeliCaに代表される非接触ICを利用した課金認証機能は、今後、スマートフォンにも必須になってくる」と語る。実際、キャリア各社は今年後半からアンドロイド搭載端末にFeliCaやワンセグなど日本型ケータイ独自の機能を追加していく方針を明らかにしている。こうした和洋折衷が成功すれば、日本のスマートフォン・ビジネスもいよいよ離陸することになるだろう。

(文/小林雅一=ジャーナリスト、KDDI総研リサーチフェロー)

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  • 最終更新:4月 9日(金) 18時38分
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