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91社談合審決「寛大処分」高いハードル

2010年04月04日

 県内の91社が県発注工事で談合を繰り返したとする審決が公正取引委員会から出ている問題で、県の処分に注目が集まっている。91社や関連団体は「地域経済への影響が大きい」と、処分の軽減を求めているが、「寛大な処分」のハードルは低くはない。

    ◇

 91社のうち、登記簿上で今も存在し、公取委から談合の決別を命じられたのは79社。県の基準では、談合が認定された業者に対し県発注工事の指名停止期間は12カ月で、県建設業協会らが、停止期間の短縮などを求めている。

 ある県幹部は、処分の軽減を認めるかについて「どちらの決断をしても、批判を浴びることになる。それは知事もわかっているはずだ」と話す。

 審決を受けた業者の従業員は約4千人。県の規則通り12カ月の指名停止処分を受け、下請けも禁止になれば「倒産する業者が大量に出かねず、雇用や地域経済に悪影響を与える」というのが、県建設業協会などの訴えだ。談合問題に詳しい富士大学の前田邦夫教授(経済学部)は「原則通りの処分をするなら、県は業者をつぶす覚悟がいる」と話す。

 一方、経済的影響を理由にした短縮は「ルールの逸脱だ」との批判は免れない。

 2008年に全国で初めて経済的影響を理由に指名停止期間の一律短縮に踏み切った北海道では、批判を受けて、同様の短縮措置を今後はしないと決めた。

 また、91社談合で業者は「談合はしていない」と公取委の審判で一貫して主張しており、業者の反省や総括なしに県の措置を緩和すれば「やり得」を許すことにもなる。

 別の県幹部は「談合が認定された期間(01〜04年)で、どれだけ公共工事があったことか。落札率が1%下がっていればどれほど税金が節約できたのかも考えないといけない」。公取委の審決で「談合があった」とはっきり認めた工事だけでも63件。落札額の合計(税抜き)は100億円近くに上る。

 仮に指名停止になった場合、どれほどの経済的影響があるのか。岩手大学の井上博夫教授(財政学)は「産業連関の分析をしないとはっきりとはわからないが、経済に与える影響は低くなってきているのは間違いない」と指摘する。公共工事額がピーク時の4分の1近くまで減っているためだ=グラフ参照。

 08年度の県公共事業で、「91社」が占める割合は落札額で29%だった。県総務室入札担当は「残った業者だけで県発注工事を回すことは可能」と見ている。

 井上教授は県の処分について「経済犯罪である談合への処分と、地域経済対策は明確に分けるべきだ。県は入札改革をしてきたのに、処分を軽減すれば、『やり得』の環境をもう一度作ることになる」と話す。

 処分はいつ出るのか。最終決定を下す達増拓也知事は1日、「遅くなってはいけないが、週明け早々という段階ではない」と記者会見で話した。

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