【社説】北の軍事情報、公開すべきことと控えるべきこと

 国会国防委の委員長を務める金鶴松(キム・ハクソン)議員(ハンナラ党)は5日、国防部の非公開の報告を受けた後、記者団に対し、「哨戒艦『天安』沈没前後の先月23-27日にかけて、韓国側が北朝鮮の潜水艦2隻を確実には追跡できず、このうち1隻については事故当日(26日)の航跡を把握できていない」と語った。金委員長は「事故当日、潜水艦1隻が琵琶岬付近で北朝鮮の基地と交信したことが確認された」と述べた。

 金委員長のこの発言を聞いて、北朝鮮は韓国側が利用している米国の軍事衛星の性能と、北朝鮮内部の通信に関する韓国軍の傍受能力をたちどころに把握したはずだ。北朝鮮の潜水艦や潜水艇は今後、北朝鮮軍の動態把握能力に関する韓国軍の死角地帯を最大限活用し、北朝鮮軍内部の通信周波数や暗号も、さらに解読が困難になるよう、変更の頻度を上げるに違いない。

 現在、「天安」沈没事故で最も注目されているのは、北朝鮮の介入の有無だ。政府や軍、政界は、これに関連する情報を韓国国民に十分に説明する義務があり、国民には知る権利がある。事故の真相を明らかにするためには、軍にとっては「機密」であっても、国民の信頼を得るために必須の情報であれば公開すべきだ。インターネットなどで「韓国軍の誤爆説」「政府の自作自演」などといった低劣な主張が出回る状況で、国家のバランスを立て直すためには、なおさら必要なことだ。

 だが、北朝鮮に関する軍事情報の公開に当たっては、「公開してもいい情報」と「公開すべきでない情報」の境界線を的確に引かなければならない。この点で、今回の情報公開の線引きが正しかったのか疑問が残る。北朝鮮の潜水艦2隻の航跡、そのうち1隻の事故当日の航跡を把握できていないという事実を公開したことで、北朝鮮の潜水艦に対する韓国の監視体制の盲点が北朝鮮側に正確に把握されたことになり、「北の潜水艦と基地間の交信を傍受」発言は、韓国の傍受能力を北朝鮮に把握させたのと同じだ。迅速な対北情報収集に関し韓国と協調体制を敷いている米国が、このような国家と重要な情報を共有しようとするだろうか。軍は北朝鮮の脅威に対する安全保障と韓米協調体制の基盤を維持しながら、その範囲で国民の信頼と理解を得られるような軍事情報公開の原則を打ち出すべきだ。

 大統領府(青瓦台)と軍は事故発生当初から、北朝鮮の介入の可能性について微妙な見解の違いを見せ、それが北朝鮮に対する軍事情報公開という問題に関して混乱を拡大させたともいえる。大統領府は南北関係や6カ国協議などの国際関係も考慮し、包括的な国家安全保障の次元で冷静さを保とうとし、軍は今後予想される事故責任の追及範囲や程度を意識せずにはいられなかったはずだ。このような状況下で、双方は内部での十分な意思疎通を通じ、大統領府の包括的な判断と軍の軍事的判断を適切に調整、北朝鮮に関する軍事機密公開の限界について共同見解を準備し、国民の前で声を一つにしなければならない。「天安」沈没事故の真相調査団は、政府内での一連の情報選択や伝達、そして意思決定の過程を調査し、国家安全保障体制を確実に再整備する資料を提供すべきだ。

【ニュース特集】哨戒艦「天安」沈没

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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