格差社会の中心で友愛を叫ぶ
【第16回】 2010年4月9日 西川敦子
著者・コラム紹介バックナンバー

じつは派遣より悲惨!?
“ブラック化”する外食・小売チェーンの正社員たち

previous page
3
nextpage

 「結婚願望ですか。この仕事と家庭生活を両立させるのは難しいと思いますよ。後輩社員で結婚したヤツがいるんですが、結局、退職しちゃいましたね。無理もないですよ。休みは月に数回あるかないか。その貴重な休みに外食だの買い物だのに付き合わされたら、体がたまりません。店じゃ些細なことで上司から毎日怒鳴られたり、とび蹴り食らわされたりしているんですから」

40代になれば体はボロボロ…
「将来に夢が描けない」

 ただ、大塚さんの会社の場合、給与待遇は悪くない。年収は1年目で370~420万円、店長1年目の場合、500万円前後が相場だ。

 「だけど、将来には夢が描けない」と大塚さん。

 努力して出世したとしても、社員の95%は店長止まり。店長になれたとしても、業務のほとんどは高校生アルバイトの仕事とほぼ同じだ。シフトや発注以外に、自らの裁量でできる仕事はほとんどないのが現実である。

 若いうちはまだいい。40代に突入すると体力的にきつくなり、若いアルバイトたちから邪魔者扱いされかねない。

 「あの店長、使えないよね」

 そんなレッテルを貼られたらもうおしまいだ。リーダーシップを失った店長の店は規律も何もなくなり、荒れる一方。シフトの穴埋めに四苦八苦した揚句、心身を壊し、やがて退職に追い込まれてしまうケースもある。

 「40代の店長が高校生に手を合わせて、『お願い、出て。でないと、本当にオレもうムリ』と拝み倒しているのを何度も目にしました。パートのおばさんに言い負かされて泣いていたこともあったっけ。実際、先のことを考えれば考えるほど不安が募りますね。だからいつも何も考えないようにしているんです」

価格競争の裏で急増する
「名ばかり大企業」店舗

 少子化や不況などで、厳しい現実にさらされている外食業界。日本フードサービス協会の調べによると、2009年における全業態トータルの年間売上は前年比98.5%。業態別では唯一、ファーストフードのみが売上102.5%と前年増だが、客単価は伸び悩んでおり、今年に入っても2ヵ月連続で前年を下回っている。

 消費者の低価格志向は、業界全体に猛烈な価格競争を巻き起こしている。「すき家」「松屋」に続き、「吉野家」が牛丼全品の値引きキャンペーンを開始したのは周知の通りだ。しかし、こうした価格競争を下支えしているのは、ほかでもない現場で働く人々。人件費カットのしわよせが社員たちを直撃している。

previous page
3
nextpage
上枠
下枠
underline
昨日のランキング
直近1時間のランキング
「クラウド」導入の実情は?
早期導入企業の取り組みから見えてきた、クラウドの可能性と課題とは…
DOL編集部のツイッターを開始
最新記事の話題から編集部の日常まで、24時間つぶやきます。フォローよろしくお願いします。

話題の記事

週刊ダイヤモンド

詳しくはこちら

特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。

ハーバード・ビジネス・レビュー

詳しくはこちら

1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。

ZAi

詳しくはこちら

年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。

Diamond money!

詳しくはこちら

偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。

Keyword
Information

西川敦子 [フリーライター]

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。


格差社会の中心で友愛を叫ぶ

現代社会でなおも広がり続ける「格差」。この連載では、人々の生の声を拾い、悲惨で理不尽な状況に苦しむ姿などから格差の現状を伝えていく。果たして現政権が唱える「友愛」の光はここにも届くのか――

「格差社会の中心で友愛を叫ぶ」

⇒バックナンバー一覧