「結婚願望ですか。この仕事と家庭生活を両立させるのは難しいと思いますよ。後輩社員で結婚したヤツがいるんですが、結局、退職しちゃいましたね。無理もないですよ。休みは月に数回あるかないか。その貴重な休みに外食だの買い物だのに付き合わされたら、体がたまりません。店じゃ些細なことで上司から毎日怒鳴られたり、とび蹴り食らわされたりしているんですから」
40代になれば体はボロボロ…
「将来に夢が描けない」
ただ、大塚さんの会社の場合、給与待遇は悪くない。年収は1年目で370~420万円、店長1年目の場合、500万円前後が相場だ。
「だけど、将来には夢が描けない」と大塚さん。
努力して出世したとしても、社員の95%は店長止まり。店長になれたとしても、業務のほとんどは高校生アルバイトの仕事とほぼ同じだ。シフトや発注以外に、自らの裁量でできる仕事はほとんどないのが現実である。
若いうちはまだいい。40代に突入すると体力的にきつくなり、若いアルバイトたちから邪魔者扱いされかねない。
「あの店長、使えないよね」
そんなレッテルを貼られたらもうおしまいだ。リーダーシップを失った店長の店は規律も何もなくなり、荒れる一方。シフトの穴埋めに四苦八苦した揚句、心身を壊し、やがて退職に追い込まれてしまうケースもある。
「40代の店長が高校生に手を合わせて、『お願い、出て。でないと、本当にオレもうムリ』と拝み倒しているのを何度も目にしました。パートのおばさんに言い負かされて泣いていたこともあったっけ。実際、先のことを考えれば考えるほど不安が募りますね。だからいつも何も考えないようにしているんです」
価格競争の裏で急増する
「名ばかり大企業」店舗
少子化や不況などで、厳しい現実にさらされている外食業界。日本フードサービス協会の調べによると、2009年における全業態トータルの年間売上は前年比98.5%。業態別では唯一、ファーストフードのみが売上102.5%と前年増だが、客単価は伸び悩んでおり、今年に入っても2ヵ月連続で前年を下回っている。
消費者の低価格志向は、業界全体に猛烈な価格競争を巻き起こしている。「すき家」「松屋」に続き、「吉野家」が牛丼全品の値引きキャンペーンを開始したのは周知の通りだ。しかし、こうした価格競争を下支えしているのは、ほかでもない現場で働く人々。人件費カットのしわよせが社員たちを直撃している。