元素が消失して人類が激減した未来の地球で、中学生がその危機を救うSF冒険漫画『エレメントハンター』。人気テレビアニメの漫画版を月刊「Vジャンプ」で連載している漫画家が中島諭宇樹(30)=伊万里市出身=だ。紙の上にペンを走らせ、自らの世界観を構築している。
父は小学校教諭、母は市役所職員という公務員一家の長男。幼少から絵をかくのが好きで、小学3年ごろ、テストを早く終えてその裏に落書きするのが楽しみだった。当時流行のビックリマンシールのキャラクターを自分で作ったりした。
中学、高校は美術部に所属。漫画を描く趣味の同級生は少なく、一人で同人誌を作り、友人に見せた。「うまいねって言われて自信を深めていた。井の中の蛙(かわず)だった」。ただ漠然と「漫画を描くだけで仕事になるなら」と漫画家を夢見た。
大学で漫画研究会に入り、同じような仲間が大勢いたことを喜んだ。就職も決まらないまま迎えた4年生の冬。「週刊少年ジャンプ」の月例賞に応募したファンタジー作品が最終候補に残った。「ひっかかるくらいの力があったのか」。受賞は逃したものの手ごたえを感じ取った。
卒業後もアルバイトを続け、漫画を描いた。自分の作品を気にかけていた編集者から声をかけられ、コマ割りなどを記した「ネーム」(企画案)を見せた。「これをきちんと仕上げて応募しなよ」。
2003年、完成した『天上都市』は「赤マルジャンプ」(増刊号)に掲載され、デビューを果たした。続いて読み切りを発表し、05年に『切法師』で念願の週刊少年ジャンプ連載をつかんだ。
だが週に1作のペースは「想像をはるかに超えるきつさで、地獄のような日々。休みはゼロだし、3時間眠れたらいいほうだった」。読者アンケートの人気は低迷した。アドバイスを受けても「許容量がなかった。最初に決めた物語以外の展開を成立させる方法を考えつかなかった」。連載は18週で終わった。
その後、読み切りだけで連載に結びつかず、もがき苦しんだ。4年を経た昨春、連載時の担当者からアニメ『エレメントハンター』を再構成して描く依頼が舞い込み、月刊誌の連載が決まった。「アニメのこみ入った内容をどう表すか難しさはあったが、久しぶりに描けてうれしかった」。
既に次回作の話もあり、軌道に乗ってきた。漫画の魅力は「紙の上にインクを置いて描いた存在(キャラクター)が生き生きと動き、真っ白な平面に奥行きが生まれ、世界ができていくのが楽しい」と語る。
年2回帰省するが、「トンテントンを見に行けないのがさみしい」。再整備された駅周辺の姿に「きれいにはなっているけど、発展の仕方が空虚に感じる」。若者のやる気を刺激するまちづくりを望む。(敬称略)
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