横浜−中日 7回表1死、先制の左越えソロ本塁打を放つ谷繁=横浜スタジアムで(谷沢昇司撮影)
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6連勝で中日がガッチリ首位を守った。7日の横浜戦(横浜)。打線はランドルフに苦戦したが、7回に谷繁元信捕手(39)が2試合連続の本塁打。開幕から打撃の調子が上がらなかった男が意地の一発だ。投打がかみあったいま、どんな形でも勝てそうなムードが漂いはじめた。
のどから手が出るほど欲しい1点を、一振りで取ってきた。これが勝負師・谷繁だ。
「小笠原が頑張っていたので、何とか先に点が欲しかったので、いい形で出ました」
両軍無得点のまま進んだ7回1死。打席の谷繁は5球、じっと待った。フルカウント。6球目。137キロ。罠(わな)にかかったかのように甘く入った速球は、左翼席中段まで飛んでいった。2戦連発の2号ソロで待望の1点をもぎとった。
寒さ。冷たい雨。相手は昨年も2敗、対戦防御率0・44と苦しめられたランドルフ。冷えきったベンチを一気にヒートアップさせた。「ホームランは簡単に出るもんじゃないけど、打ててよかった」。狙ったわけではないだろうが、絵に描いたような決勝弾だ。
虎の子の1点を引き立たせたのも自分自身だ。小笠原の無失点投球、緊迫した投手戦を絶妙にアシストした。小笠原が感謝する。「ピンチで谷繁さんがマウンドに来てアドバイスをくれて、それでピンチを切り抜けられました」。5回、1死二、三塁のピンチ。打席の早川を2球で追い込んだ直後だった。
谷繁はマウンドへスタスタと駆け寄った。会話の内容は、小笠原によれば「技術的なことです。悪いときの感じになっている、と」。後続を断つと、あとは7回までスイスイと投げた。その後、谷繁は見事に完封リレーを演出した。
6連勝。単独首位をがっちり守った。厳しい接戦で、強烈な存在感を示し、チームを支えたのが正捕手・谷繁だ。
先週は試合途中から、そしてスタメンでも、小山にマスクを譲ることがあった。だが、ここぞというときはやっぱりこの男がやる。今年も変わらずタフだ。
前日(6日)にプロ入りから22年連続となる本塁打を放ち、こう語った。「元気で長くやっているからでしょう」。体を鍛え続けることはもちろん、技術を磨き続けることも怠らない。
ある日の練習中。控え捕手陣がひざを突いてワンバウンドを止める練習をしている姿を見ながら、「オレも昔は毎日のようにやらされてたよ」と、懐かしそうに話していた。
今はもう、やっていないのか。捕手として最高峰にいる。技術が出来上がり、もう、やる必要はなさそう。だが、時に応じて、人知れずやっているという。いつまでも自分に厳しい扇の要(かなめ)が、今年もチームを締める。 (生駒泰大)
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