きょうの社説 2010年4月9日

◎学生無料パス 期間を1年にすればどうか
 大学、短大などの新入生を対象に、金沢市内の文化施設を無料にするパスポート(学パ ス)の発行は、「学都金沢」を外へ発信し、学生に早い段階から金沢を理解してもらう上で意義ある取り組みである。昨年まで、金沢文化振興財団の施設は無料扱いだったが、県、市が足並みをそろえたことで、対象も22施設に拡大した。これらを順に回れば、金沢の歴史や文化土壌、輩出した偉人などは一通り把握できるだろう。

 パスの使用期間は4月から9月までだが、最初は学生生活に慣れる慌ただしい時期であ ることや、対象施設の多さを考えれば、期間は半年と言わず、1年に延ばしてもよいのではないか。金沢が「学都」を標榜するなら、学生支援策も思い切って取り組んでほしい。

 学パスは、県内20の高等教育機関で構成する大学コンソーシアム石川が実施主体とな り、北陸先端科技大学院大や石川高専なども含め、約8千人を対象にする。土日の兼六園、金沢21世紀美術館の市主催事業をはじめ、県立美術館、歴史博物館などの県施設、3文豪の施設や前田土佐守家資料館などの市関連施設に入場できる。

 新入生の入場料を半年間、無料にする取り組みは、2006年度から金沢市関連の14 施設で実施されてきた。だが、昨年の利用者は延べ538人で、活発に利用されているとは言い難い。この数字を見ても、利用期間は長めに設定してよいだろう。

 学パスでは、10施設回れば、北陸鉄道が発行するICカード乗車券「ICa」を先着 順に贈る特典が設けられた。せっかく実施するからには、学生に積極的に制度をPRし、そうした利用促進策にも知恵を絞る必要がある。

 学生にとって、施設は県も市も関係はない。これまで無料制度を一緒にやっていなかっ たのが不思議なくらいである。大学振興策でも、県は県内全域に目を配り、金沢市はにぎわい創出といった都市政策を重視するなど、視点の置き方に違いがあるとしても、連携が不十分では相乗効果は生まれない。県、市が一体となってこそ、高等教育機関の集積という地域の強みを最大限に引き出すことができるだろう。

◎米国産牛肉協議 経済対話の仕組み整えよ
 牛海綿状脳症(BSE)問題を受けた米国産牛肉の輸入制限問題について、日米協議の 再開が決まった。日米農相会談では、米側が制限撤廃を求めたのに対し、日本側は科学的データに基づいて対応を決める姿勢をあらためて示し、議論は平行線をたどったが、懸案解決へ一歩踏み出すことになった。

 協議の再開で気掛かりなことは、米軍普天間飛行場の移設問題やトヨタ自動車のリコー ル対応に対する米政府の巨額制裁金方針など、何かとぎくしゃくする現在の日米関係が微妙に影響しかねない状況にあることだ。牛肉輸入問題の協議は安全性の確保が最重要であり、安保問題を絡めたり、感情論に陥ったりすることなく、冷静に議論を進めてもらいたい。

 オバマ政権は輸出倍増計画を打ち出しており、今後、牛肉の輸入制限解除のほか、郵政 改革をにらんで保険事業などの公平な競争条件の確保などで圧力を強めてくるとみられている。普天間問題だけでなく、経済摩擦で日米関係が悪化することがないよう、両政府は賢明に対応してほしい。そのためには、日米政府間の経済対話の仕組みを整える必要がある。

 両政府は2001年に「成長のための日米経済パートナーシップ」に合意し、次官級協 議を定期開催する枠組みを設けているが、新政権の下でこの枠組みを早期に立て直してもらいたい。

 今回の日米農相会談では、生後20カ月以下の牛に限って輸入を認める日本側の措置の 緩和を米側が要請した。これに対して、日本側は「科学的知見に基づいて食の安心と安全を確保する」として、直ちには応じない姿勢を堅持した。米国産の輸入牛肉では昨年秋にも、特定危険部位の脊柱が見つかっており、米側は安全確保の努力がなお必要である。

 ただ、欧州連合(EU)は、域内のBSE検査の対象を「月齢30カ月超」から「48 カ月超」に緩和している。さらに国際獣疫事務局は昨年、輸出入できる牛肉の月齢条件を撤廃する決議を採択しており、制限緩和が国際的な流れであることを認識しておきたい。