きょうのコラム「時鐘」 2010年4月9日

 日曜日から天気が崩れる、と週間天気予報にある。週末は、花見客で大いににぎわうことだろう

花に心浮き立つ日々に、花に背く心痛む話も届く。中国で死刑に処せられる日本人の動向が連日、報じられている。麻薬密輸で死刑になること自体、私たちには大きな衝撃だが、加えて、刑執行の前日に家族と面会させるというやり方にも心が深くえぐられる

桜咲く日本から大連に向かった家族たちは、どんな思いで最後の対面に臨んだのだろう。面会すなわち処刑宣告である。目を背け、耳をふさぎたくなるような悲痛な場面しか想像できない

当人と家族たちに、大きな嘆きと悲しみをわざわざ与える。温情を装うような対面は、最後の衝撃的な見せしめ、懲らしめとしか思えない。遠い昔、暴君や異民族の支配者は、そんな残酷な場面を好んだという。そんなことまで思い起こす。盛んに富を蓄えても、あの国からは近代的な制度や法、文化といった大事なものが見えてこない

往来が盛んになって、勤勉で心優しく、勇気ある隣人たちに多く出会う。だからなおのこと、あの国が分からなくなってくる。