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  •  自宅でくつろぐ谷正友さん(左)、吉井美奈子さん夫婦と息子たち=京都府精華町

    ウーマンアイ 夫婦別姓 導入に暗雲、政権内で賛否対立

     民主党が積極姿勢を見せていた「選択的夫婦別姓制度」の導入に暗雲が漂っている。旧自民党政権下では前進の兆しがなく、政権交代に期待してきた別姓派は「今を逃すとチャンスはない」と焦る。だが連立政権内部での賛否対立が深刻で、妥協点は見つかっていない。背景には夏の参院選対策も見え隠れする。

     一方、当事者のニーズに応える形で、結婚後も旧姓を通称として使える場が一定の基準なく拡大。混乱も心配されており「これ以上放置すべきでない」との声も強い。

     京都府精華町の短大講師、吉井美奈子さん(33)は、2002年に谷正友さん(33)と結婚し、戸籍上は谷姓に変わったが、職場でも日常生活でも旧姓を使い続けている。谷姓を名乗る息子たちが通う保育園でも「谷君のお母さんは吉井さん」で違和感はないという。「通称は市民権を得ている」と吉井さんは実感する。

     別姓への民法改正が進まない中、戸籍名でなく通称が使える場はかなり広がっている。別姓推進派の市民団体「mネット・民法改正情報ネットワーク」によると、銀行口座やクレジットカードの名義、確定申告、公共料金の契約も通称でできた例がある。医師免許は戸籍名でも旧姓で診療する医師がいるし、子どもが母親の通称と同じ姓を名乗る「子どもの通称使用」を認める学校も。ただし組織や窓口によって対応はばらばらだという。

     通称で健康保険証を作っているケースもあるため医師の一人は「通称しか知らない患者が死亡したら、死亡診断書も通称で書くことになるのだろうか」と心配する。

     夫婦別姓選択制実現協議会の岡部美喜代表は「混乱を防ぐためにも、法律で別姓を認めることがぜひ必要だ」と訴える。

     夫婦別姓導入の機運が大きく盛り上がったのは1996年。自民党政権下、法相の諮問機関である法制審議会が「価値観が多様化し、許容度の広い立法が望ましい」と、民法改正要綱案を答申した。しかし自民党内の強い反対で法案はたなざらしにされ、あきらめムードも漂っていた。

     ところが、野党として改正法案を国会提出し続けてきた民主党が2009年に政権を取って空気は一変。民法改正運動の先頭に立ってきた千葉景子氏が法相、福島瑞穂氏が男女共同参画担当相に就任して期待が急上昇。鳩山由紀夫首相も「基本的に賛成。(導入の是非は)だいぶ前から議論されており、拙速ではない」と明言していた。なのに、当初は10年3月12日を目指していた改正法案の閣議決定は見送られた。与党内で賛否が対立し、調整がつかなかったからだ。

     反対の急先鋒は国民新党代表の亀井静香金融・郵政改革担当相。2月15日の衆院予算委員会では「子どもまで名前が違ってくると一家の表札はアパートみたいになる」とまくしたてた。ポスターにも「夫婦別姓反対」を明記。連立離脱もちらつかせ、一歩も譲らない。

     与党関係者は「参院選で埋没しないよう、民主党との違いを明確にして伝統的保守層の支持獲得を目指す生き残り戦略だ」と分析する。

     一方、首相や小沢一郎幹事長らの「政治とカネ」問題の対応で苦戦する民主党内にも「夫婦別姓を強行し、与党内が混乱するのは得策でない」と守りの空気が。「別姓を選挙で掲げると保守票が逃げてしまう」と本音を漏らす議員もいる。

     だが、別姓反対派からも「これ以上放置すべきではない」との声が出ている。自民党の高市早苗衆院議員は「通称使用をめぐり現場で混乱が起き始めている。早急に政治が対応すべきだ」と主張している。

     選択的夫婦別姓制度

     夫婦が希望すれば、各自の姓を結婚後も名乗ることができる制度。現行の民法は夫婦同姓を規定しており、大半は妻が夫の姓に変えている。このため主に女性たちが「改姓は仕事上不便だ」などの理由で導入を求めてきた。日本世論調査会が09年12月に実施した世論調査では「賛成」「どちらかといえば賛成」が計49%、「反対」「どちらかといえば反対」が計48%と賛否が割れた。

      【共同通信】