在日コリアンへの差別をやめろ! かけはし2010.4.5号 |
拉致を口実に
「集団的懲罰」
四月実施予定の「高校無償化」をめぐり、中井洽・拉致担当相は二月二十三日午前の閣議後記者会見で、在日朝鮮人の生徒らが通う各地の朝鮮学校を対象とするかどうかについて、川端達夫文部科学相に対して「(経済)制裁をしている国の国民ですから、十分考えてほしい」と要請していたことをあきらかにした。また、それをうけて首相の鳩山は「必ずしも(朝鮮学校の)教科内容が見えない」などと語り、「(無償化から)除外する方向だ」などと語った。
この一連の発言は、「在特会」らの主張する「朝鮮学校はスパイ・テロリスト養成所」などの悪罵を政府閣僚が裏書きするものであり、一つの「ヘイトスピーチ」ですらある。そもそも、「拉致問題」と在日コリアンそして朝鮮学校は何の関係もない。朝鮮学校の無償化除外は、「拉致」を理由にした在日コリアン全体への攻撃であり、これはナチの行った「ユダヤ人一人の犯罪はユダヤ人全体に償わせる」とした「集団的懲罰」と何が違うというのだろうか。
「第三者機関」
による介入反対
鳩山政権は、三月二十八日に朝鮮学校の無償化に関する結論を参院選後に先送りし、文部科学省が設置する「第三者機関」に結論をゆだねることを決定した。しかし、この「第三者機関」の設置にも問題は多いと言わざるを得ない。
一つは、文科省がどのような基準で、「第三者機関」のメンバーを選任するのかあきらかではない。そして、「第三者機関」が、朝鮮学校の教育内容やカリキュラムに介入するということは、あらゆる教育現場に国家が介入して注文をつけ、従わなければ無償化対象から外すということに直結することになりかねないだろう。たとえば、キリスト教系の学校や入学式や卒業式で日の丸・君が代の掲揚・斉唱を拒否している学校へと「政府介入」が拡大しない保障はどこにもない。
また、本国のカリキュラムで授業をしている日本政府未認可のブラジル人学校やペルー人学校の多くも、朝鮮学校同様に、現在のところ無償化除外対象とされている。このように鳩山政権の「無償化除外論議」は、社会的少数者たちの民族的・宗教的アイデンティティーを培う教育を否定しながら、一律的な「日本民族教育」を強制していくという事態に道を切り拓くものだ。断じて許すことはできない。
橋下大阪府
知事の暴言
一方、橋下徹・大阪府知事は三月十二日、大阪府東大阪市と大阪市生野区の朝鮮学校二カ所を視察した際の記者会見で「金総書記の肖像画を外す」、「使用する教科書の記述で`敬愛する金総書記aなどと個人崇拝の表記をやめる」、挙句に「竹島や日本海の呼称について、日本側の主張も併記するなどの配慮をする」などを無償化の条件に挙げている。まったく傲慢極まりない教育現場への介入として、この橋下の発言を糾弾する。
そもそも、日本政府・文科省が強制してきた日の丸・君が代を使った「日本民族教育」が、「個人崇拝教育」と比べて何が違うと言うのだろうか。右派の常套句である「日本に住むなら日本を愛せ」などと言うのは、特定の価値観に過ぎず、橋下は「民族教育」を否定してその特定の価値観を社会的少数者である人々に押し付けているのである。しかし、橋下のような態度・言説こそが、在日コリアンの人々を反発させて金独裁体制の側に追いやることになるし、追いやってきた、と指摘しておこう。
「個人崇拝」の問題は、在日コリアン自身によって乗り越えられるべき事柄であり、公権力が介入するべきものではない。また、韓国併合とその後の朝鮮植民地支配への先鞭をつけた独島(竹島)支配に関する「侵略史観」を在日コリアンに押し付けようなどという許しがたい攻撃である点も看過できない。橋下ら右派は、次には「捏造された『慰安婦』問題を教えるな」、「強制連行問題は少なくとも両論併記にしろ」などと、要求をエスカレートしてくるのは想像に難くない。
また、橋下は、この機会を最大限に利用して、府がこれまで朝鮮学校に対し支給してきた生徒一人当たり年間約七万円の振興補助金を留保するとしている。日本政府は、歴史的に国からの朝鮮学校への公的な助成を一切拒否して国連の委員会から繰り返し是正勧告を受けてきたが、在日コリアンが闘いとってきた権利をも奪おうというのである。一連の「無償化除外」の動きに関して、国連の人種差別撤廃委員会があらためて「子どもたちの教育に差別的な影響を及ぼす行為」と勧告しているにもかかわらず橋下は民族差別を扇動しているのだ。
人権無視の逆行
を糾弾しよう
このように、多様な価値観による教育を否定し、政府による教育現場への介入にあらたな道を拓くのが高校無償化除外問題だ。しかし、社会的少数者の民族的・宗教的アイデンティティーの集団的維持を政府と社会全体が保証するなどというのは、いまや世界の趨勢といっても過言ではない。
鳩山は「東アジア共同体構想」を口にし、「日本列島は日本人だけのものじゃない」などと語って右翼から攻撃されたが、それが実は新自由主義的な意図からのものでしかないことが、このかんの「無償化除外論議」によって問わずあきらかになった、と言えるだろう。「そうではない」と言うのなら、鳩山政権は朝鮮学校の無償化除外を断念しろ!
三月二十七日には、朝鮮学校無償化除外に反対する緊急行動が東京・代々木公園で行われ、一週間の呼びかけで朝鮮学校生徒を中心とした在日コリアンと支援者ら八百四十人が結集した(詳報次号)。連帯の輪をさらに広げて、朝鮮学校とすべての高校の即時無償化を勝ち取ろう。 (F)
首相官邸に署名提出行動
シュワブ陸上・勝連沖「移設」案
絶対阻止!普天間基地即時閉鎖
これ以上基地を
タライ回しするな
「普天間移設先」をめぐる鳩山政権の動きは、三月末の政府案確定にむけていよいよ大詰めの段階を迎えた。名護市辺野古のキャンプ・シュワブ陸上部に五百メートル四方のヘリポートを設置し、さらにうるま市の勝連半島沖合に移し、新たに配備される垂直離発着機MV22オスプレイなどの訓練の一部を鹿児島県徳之島などに移すというのが政府案の枠組みだ。つまり文字通りの基地の「沖縄県内たらいまわし」であり、「最低でも県外移設」という鳩山首相の公約や、「沖縄県民の負担軽減」という三党連立合意を根本的に否定する裏切りである。
北澤防衛相、岡田外相、平野官房長官など鳩山政権の主要閣僚は、三月二十五日から二十六日にかけて仲井真沖縄県知事やルース駐日米大使らを訪れ、こうした県内移設プランについて説明し、了解を求めた。しかしいずれの納得も得られなかった。
沖縄県民の怒りは頂点に達している。沖縄では一月二十四日の名護市長選で基地受け入れ容認の現職・島袋候補を破って、新基地建設に反対する統一候補に稲嶺進さんが新市長に当選した。二月二十四日には沖縄県議会で自民党、公明党を含む全会一致で「普天間基地撤去・県内移設反対」を内容とする意見書が決議された。そして四月二十五日には読谷村で、沖縄県議会の全議員が参加した十万人規模の県民大会も開催される。この大会には仲井真知事の参加も予定されていると言われる。沖縄県民の怒りは、「県外移設」の約束を反故にして恥じず、「日米同盟の堅持」に縛られた鳩山政権、そして基地の重圧・被害を沖縄に押しつけたままでいたい「本土」総体に向けられている。
4・25沖縄県民
大会に呼応しよう
三月二十六日、辺野古への基地建設を許さない実行委員会(辺野古実)は三月九日以来三度目となる毎週金曜日夜の首相官邸前行動を行った。この日の行動には百五十人が参加し、辺野古実が二月に呼びかけた「沖縄の民意を尊重せよ」との署名提出も行われた。
司会の仲間から「沖縄の人びとに頭をはたかれてもやらねばならぬ時がある」との「県内移設」強硬方針を語った平野官房長官を糾弾し、大衆行動の力で「普天間即時閉鎖・県内移設阻止」を勝ち取ろうとの呼びかけの後、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの上原成信さんが発言。上原さんは「鳩山政権への怒りが収まらない。米国に対して幾つもの案を出してどれにしましょうか、などというのは交渉ではない。これからは本土の人たちが、沖縄の人びとに対して、私たちが闘いを引き受けるというべきだ」と訴えた。続いて「ピースニュース」、大阪の「リブ・イン・ピース 9+25」、全石油昭和シェル労組などからの発言が続いた。
この日提出された署名は八千百十九筆に達した。首相官邸前では、辺野古実、キリスト者平和ネットなどから要請文が読み上げられ、署名とともに内閣府の担当官に渡された。
毎週金曜日午後六時半からの首相官邸前行動は四月二十三日まで継続される。また四月二十五日には沖縄県民大会に呼応して、県民大会と同時刻の午後三時から`4・25沖縄県民大会とともに声をあげようa東京集会(社会文化会館・三宅坂ホール、沖縄一坪反戦地主会関東ブロック呼びかけ)が計画されており、集会後にはデモも行う予定だ。
事態はまさに急をつげている。いかなる「移設」案も実現性のないことは明白だ。しかしその現実を、普天間をふくむ在沖縄米軍基地の現状固定化に終わらせないために、そして「普天間閉鎖」と基地撤去の展望を切り開くためにこそ、「本土」での闘いを大きく発展させよう。そうした闘いには、「米軍再編」プランの廃棄、密約を構造化させた日米安保条約に基づく「日米同盟」の破棄という展望をはっきりと掲げることが問われるのである。(K)
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