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きょうの社説 2010年4月8日
◎小松空港の搭乗率 羽田便5割台は「危険水準」
小松空港の「ドル箱」と言われてきた羽田便が長引く不況で苦戦を強いられている。2
009年度の平均搭乗率はついに50%台に落ち込み、採算ラインといわれる6割を割り込んだ。ビジネス路線だけに、搭乗率が景気動向に大きく左右されるのは致し方ないが、羽田空 港再拡張事業に伴って、10月から増える地方枠20便をめぐり、地方空港間の増便誘致活動が正念場を迎えている時期だけに、過去最悪の数字となったのは痛い。 小松―羽田間に1日6往復を運航する日本航空は、経営難で不採算路線から撤退を続け ている。6割の大台を割ったからといって、直ちに減便になるとは考えにくいが、採算割れの「危険水準」にある現実を直視しなくてはならない。県は羽田経由の乗り継ぎ割引の拡大や、より利便性の高いダイヤ改正を航空各社と交渉していくなどして、ドル箱路線復活に向け、危機感を持って取り組んでいく必要がある。 小松空港の国内線利用状況は、静岡便を除く全路線が前年度を下回り、羽田便は搭乗率 58・2%で前年度比6・7ポイントも落ち込んだ。国内線の不振は全国的な傾向であり、小松空港だけが苦戦しているわけではない。日航が持つ地方路線のなかで、小松―羽田便の搭乗率は、中位クラスに位置することを考え併せれば、それほど深刻に考える必要はないのかもしれないが、羽田空港の地方枠をめぐる綱引きが激しさを増すなかで、最後にものを言うのは搭乗率である。 幸いなことに今年3月の羽田便の搭乗率は、70%台を確保し、再浮上のとっかかりが できた。人事異動や受験シーズンという季節要因を割り引く必要があるとはいえ、北陸の景気が上向く兆しもあり、地方枠の拡大を反転攻勢のステップにしたい。 小松空港の羽田便は、かねてから昼の時間帯に空きがあり、不便との指摘がある。1日 11便体制の搭乗率が再び6割を超えてくれば、増便の可能性はあるはずだ。路線開設はあくまで航空会社の判断だが、県は各社の経営戦略をにらみながら、必要な手を着実に打ってほしい。
◎オバマ政権の核戦略 中国の核に警戒心隠さず
オバマ米政権の核戦略指針となる「核体制の見直し(NPR)」は、東西冷戦の終結と
核テロの脅威の増大という現実を明確に反映する内容となった。東アジアの関係では、北朝鮮の核問題はもとより、「もはや敵でなくなった」ロシアにかわって、中国の「不透明な核戦略」に警戒心を隠さない点に留意したい。中国の核軍備は米ロに比べて著しく小さいと指摘しながらも、不透明で「将来的な意図 に疑念を抱かせる」中国の核戦略を、核テロや核拡散などに次ぐ重要課題に位置づけ、安定した戦略関係の構築が不可欠というオバマ政権の視点と認識は、日本の安全保障戦略にも必要であろう。 オバマ政権の核戦略指針は、米国の核兵器使用を自国と同盟国の「死活的な利益を守る ための極限の状況」に限定し、通常兵器や生物・化学兵器で攻撃された場合でも、核拡散防止条約(NPT)を順守している非核国には核兵器による攻撃をしないことを、米国として初めて明記した。 そのような場合に核の使用もあり得るとしたブッシュ前政権の戦略を大きく転換するも のであり、オバマ大統領の提唱する「核兵器なき世界」実現に向けた一歩と評価することができる。 しかし、その道のりがはるかに遠い国際社会の実態も直視し、NPTを順守していない イランや北朝鮮に対する核攻撃の余地を否定せず、核の先制不使用宣言を見送ったのは、理想主義に流れない現実的な判断である。 日本など同盟国が注視しなければならないのは、同盟国を守るため核抑止力の維持を強 調すると同時に、核兵器の比重を低減させる分を通常兵力やミサイル防衛でカバーしながら抑止力を保持する考えを表明し、同盟国との信頼性の高い政治的関係が不可欠との認識を示した点である。 日本に対する「核の傘」を担保してきた巡航ミサイル「トマホーク」は退役が決まり、 鳩山政権は非核三原則の堅持を掲げている。こうした状況下で抑止力をどう維持していくかという課題が日米間に残されている。
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