日本人の腸内で、ノリやワカメなど海藻の食物繊維を消化している細菌を、フランスの研究チームが発見した。この細菌は米国人の腸内にはなく、海藻をよく食べる日本人が体外から取り込んで共生しているらしい。8日発行の科学誌「ネイチャー」に掲載された。
ヒトの腸内には約1000種の共生細菌がいる。これらは人体が作れない酵素を出して、消化吸収を助けている。野菜の食物繊維は腸内細菌が出す酵素によって分解・吸収されるが、海藻類の食物繊維はそのまま体外に排出されると考えられてきた。
チームは、ノリを餌にしている海中の細菌から、ノリの食物繊維を分解する酵素を発見、酵素を作り出す遺伝子を特定した。日米の31人の腸内細菌で遺伝子の有無を調べたところ、日本人13人中5人の腸内細菌にほぼ同じ配列の遺伝子があり、米国人18人の腸内細菌にはなかった。
日本人は、遅くとも8世紀にはノリを食べていたことが文献で分かっている。チームは、日本人が海藻を食べ続ける過程で腸内に細菌が入り、腸内にもともといた共生細菌がその遺伝子を取り入れて進化し、海藻の消化酵素を作るようになった可能性が高いとしている。
【斎藤広子】
毎日新聞 2010年4月8日 2時05分