米政府NPR発表 背景に核兵器を超える非核型の新型ミサイル「CSM」開発の動きも
アメリカのオバマ政権は6日、核兵器の削減を進め、その役割も限定的にするなどとした今後の核戦略の指針を発表した。この「核なき世界」への歩みの裏側には、核兵器を超える兵器開発の動きがある。
アメリカのゲーツ国防長官は「これは、『核なき世界』という長期的な目標に向けて、核兵器の役割と数をアメリカがいかに減らしていくか、再検討したものだ」と述べた。
「核なき世界」を目指すオバマ政権。
その方向性を示す報告書「核体制の見直し(NPR)」が発表された。
クリントン国務長官は「アメリカは、核拡散防止条約に参加し、それを順守する非核保有国に対しては、核兵器の使用や威嚇を行いません」と述べた。
報告書では、歴代政権で初めて、核拡散防止条約(NPT)に従う非核保有国には、核兵器による攻撃は行わないことを宣言した。
ゲーツ国防長官は「もし、イランや北朝鮮がルールを無視し、核拡散を行うなら、われわれの対処法には『あらゆる選択肢』がある」と述べた。
イランや北朝鮮は例外的に核攻撃の余地を残すことで、圧力を強める形となった。
また報告書は、核弾頭の保有数削減や、新たな核弾頭の開発停止も表明している。
鳩山首相は7日朝、「まさに、核のない世界に向けた第一歩だと、そう思って評価を申し上げたい。核兵器のない、持たない国に対しては、基本的には核攻撃しないという判断は、これは大変正しいと思っております。核を持っている最大の国が、そのような意思表示をするということは、私は大変勇気づけられる話で」と述べた。
核兵器を増やさず、その役割も限定的なものにすると、アメリカが新しい抑止戦略へ転換を図る背景には、何があるのか。
軍事評論家の岡部 いさく氏「核兵器は、維持や管理に費用がかかりますから、そのコストを減らしたいという思惑もあるんでしょう。しかし今、核兵器に頼らなくてもいいとアメリカが言えるようになった背景には、非核型の新型ミサイル計画の存在が大きいはずです」と指摘する。
岡部氏が指摘する非核型の新型ミサイルが、「コンベンショナル・ストライク・ミサイル」、略称「CSM」と呼ばれる非核攻撃ミサイル。
しかし、その予想図では、特にこれまでのミサイルと変わりがない。
この非核攻撃ミサイルの秘密について、岡部氏は「この弾頭部分の中にはHGV(超高速滑空体)、つまりこれ、実質的には金属の塊なんですけど、これが入るんですね。これはもちろん核弾頭じゃありませんし、爆薬すら入っていません」と話した。
岡部氏によれば、HGVは、長距離ミサイルで打ち上げられ、地球上のどこでも1時間以内に到達するという。
打ち上げ後、大気圏外で分離されたHGVは、目標へ向かって落下を始める。
そして、最終的にマッハ6以上、時速7,000kmを超える高速で、目標にピンポイントで突入する。
スピードと重さが作り出す運動エネルギーだけで、地下目標などの破壊も可能だという。
岡部氏は「こういった兵器の構想があるからこそ、アメリカは核兵器を減らすと言い出したんでしょう。ミサイル防衛をもって、そしてこの非核攻撃能力を持って、ますます軍事的優位に立つわけですよね。中国やロシアは、どう対応するんでしょう。『現在の世界 - 核兵器 = 平和と安定』っていう答えが出るんでしょうかね」と話した。
「核なき世界」を語りながら、新たな軍事的優位性を追求するアメリカ。
新ミサイル抗争が、新たな火種とならない保証はない。
8日には、プラハでアメリカとロシアの新たな核軍縮条約の調印式が行われ、そして12日からは、ワシントンでの核安全保障サミットが行われる予定。
(04/08 00:30)