チラシの裏SS投稿掲示板




感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[8671] 多次元世界渡航漫遊記(オリ主×多重クロス×思いついたネタとか)【習作】
Name: 銀色っぽい何か◆48e73465 ID:9d5b0d85
Date: 2009/06/08 21:30
   前書き。

 この作品は、作者の妄想で出来ています。

 この作品は、作者の独自解釈で構成されています。

 この作品は、その日の天気と気温と湿度と風速と財布の中身と満腹度とアルコールと活字中毒症状で出来ています。

 原作至上主義の方。原作原理主義の方。また、二次創作に抵抗や違和感を覚える方は此処でご退出を願います。

 他との作品を比較しない方。有用性のある指摘をされる方。只ひたすらに読むのが好きな方。厨二病設定嫌いじゃない方達はカモンベイビー!


 この作品のタイトルは若本ちっくに叫ぶと面白さが3%くらい増すかもしれません。


 基本的に作者は月曜か水曜日に更新予定。土日はバイトで更新できない可能性が高いので注意。

 チマチマと加筆修正はしているかも……。


 更新履歴

 5/21 第四話投稿。遅くなってサセーン!

 5/24 ごく一部加筆修正。メッチャ微々たる。

 5/25 第五話投稿。6話は六月に入ったらかな?

 6/2  第六話投稿。七話は来週の水曜かな……?

 6/8  第七話投稿。予定より早く上げる事が出来ました。



[8671] 第一話「ご都合主義。これがないと始まらない」
Name: 銀色っぽい何か◆48e73465 ID:9d5b0d85
Date: 2009/05/25 17:34








   多次元世界渡航漫遊記



   第一話「ご都合主義。これがないと始まらない」












 初めまして諸君。俺の名前は神無(かんな)銀狼(ぎんろう)。

 この無限に存在する世界を旅する世界渡航者。ワールドウォーカーと呼ばれるものだ。

 俺は今、一つの多次元世界を旅している。

 多次元世界というのは複数の次元世界で構成された世界のことだ。分かりやすく言えば一つの世界がバラ売りの商品で、次元世界がパック売りや纏め売りで、多次元世界は箱売りみたいなものだ。もしくは次元世界が箱売りで多次元世界がコンテナ売りみたいなものだ。え?コンテナ売りはしてない?貿易会社に言えばしてくれるぞ金があればの話だが……。

 まあ、ともかく。俺は今次元世界の境界を漂いながら次の次元世界を選んでいるところだ。

 ああ、名前以外の紹介がしてなかったな。

 まず先に俺の正体を教えよう。俺は元観測側の人間だ。正確には異世界から地球にやってきて幾多数多の並行世界の地球を行き来している存在。

 そして、たま~に観測側の人間として二次元作品を鑑賞している。

 といっても実際は少々ややこしいのだが、地球から他の異世界に言っている間は地球での時間経過は殆ど無いので、オタクなマニアをやりながらあちこちに行っているのだ。

 と、いってもそれはかなり昔からの話だ。年月にすると億なんて軽く超えている。幾多多くの世界を旅して悠久の時の狭間をさ迷う俺に、年月と言うものはもう既に磨耗してしまった感覚だからだ。

 こんな言い方するとカッコイイよな。でもホントの事。

 強さとか能力に関してはチート通り越してご都合主義真っ青のイタイ君だからねぇ。STMC蹴り飛ばしたときは俺自身驚いたよ。この肉体上限ないし。体術に関してはおかげで化け物の一言だね。

 まあ、唯一の弱点は魔法が一切使えない事かねえ。俺の中で魔法ってのは神のみが起こす事を許された奇跡って認識だから。

 だから事、魔法や魔術、魔道に関して俺は無能もいいところだ。あ、使えないだけで理解はしてるよ。むしろ下手なその道の人間よりも知識や理解力はあるんじゃないかと思う。

 下手な固定概念はないから、あらゆる方向から解析と理解出来るし、それにそれ以外の力は逆に全部使えるってのが俺だからねぇ。

 ちなみにプロフィールに関してはこんな感じ↓。

 身長:183センチ。まあ普通だろう。
 体重:78キロ。岬越寺秋雨理論で出来ている。
 頭髪:銀髪。前髪はウルフヘア。後髪は腰までの長髪を首の所で一つに束ねただけ。
 眼:銀眼。犬目というか狼目。
 顔立ち:二十歳前後の東洋系。童顔?悪かったな!
 オプション:縁なしメガネ。度は入ってます。逆に。
 服装:ジーンズ。黒シャツ。タクティカルジャケット。軍用ブーツ。ハーフグローブ。
 装備:長刀。中太刀二本。分解式八節棍。腰布。パイソン4インチ。
 特技:体術全般。魔法を使う事意外。
 趣味:ひたすらに多趣味。基本は読書と散歩。
 備考:体と技はネタで出来ている。
 オマケ:ビームとドリルは浪漫である。

 こんな所かな?あ、棍に関してはジャケットの裾裏に仕込んである。しかし、銀髪銀眼ってよくある厨二的な容姿だよなぁ。ま、俺のはどちらかと言えば灰色に近い感じだけどね。

 他に何かあったっけかねぇ?




 そうして今日も俺は次の世界を探して世界の狭間をさ迷っていた時だ。俺は少々気になる反応を感知した。

 おそらく俺と同じく世界間移動をした奴の反応なのだが移動のベクトルが少々今までのと違っていた。

 通常世界間移動の移動は横の力だ。だがソレは上下の反応だった。

 まさか並行世界間の移動か!?少し気になるな、会いに言ってみるか。







 であったのはカレイドスコープのお爺さんでした。

「で、いきなり現れたお主は何者じゃ?」

 と、言ってくるのは中々な体格に白い頭髪と鬚に紅い瞳のご老人に……

「魔力は全く感じられないけど、感じる力は死徒以上ね」

 黒髪に深紅の瞳のお嬢様、いやこの場合はお姫様かな?

 ただ見た目と内包する感じが違うところから察するに外見を変えていると言った方が正しいか……。

 本来はおそらく二十歳ほどの女性なのだろう。

 俺の感と今までの経験がそう継げている。それに、少女が実は麗しい美女なのは良くあるパターンだ。

「姫様、お下がりを……。この男は危険です」

 俺に剣を向けてくるのは黒髪に茶眼の剣士。この場合はナイトといったほうが正しいか……。

 判断としては正しいが、いきなり剣を突きつけられるのは勘弁してもらいたい。

「なかなか好みの顔だね。もう少し小さかったら良かったのに……」

 お姫さんの斜め後ろで人を値踏みしているのは金髪に赤眼の美形青年。黒髪の剣士程ではないが此方を警戒しているのは窺える。

 ただ、後半の発言に関しては右手がコイツを握りつぶせと疼く。

「……グルル」

 その後ろに控えるのは、見た目は大型の白い狼を彷彿させる魔獣。

 はっきり言って危険度だけならこの獣が一番高いが、俺の人外センサーがこの娘をもふもふしたいと告げている。って雌なの!?この子!?

「あ~。とりあえずいきなり現れてすまん。世界間移動で妙な反応を感知したから調べに来たんだ」

 とりいあえず両手を上に上げて無抵抗を表す。

「……ほう。つまりお主は第二魔法を感知してここに来たと?」

「アンタのその、第二魔法ってのがさっきの世界間移動を示すならそうだ。並行世界移動は俺は出来ないが異世界間移動ならできるからな、世界間移動の反応が今までのと違っていたから調べに来たんだ」

「なるほど、確かにワシの第二魔法は並行世界の運用じゃからな。横移動の種類が違うと言えば違うからの。でお主はソレを調べてどうするつもりじゃ?」

 若干だが老人からの視線が鋭くなる。

 自分の力はを利用とする者に対する警戒と言ったところか。

「別にどうもしない。アンタがその力で世界や他人に害を与えないなら今まで通りで」

 その言葉に老人は片眉を上げる。

「ソレはそうと自己紹介をしてなかったな。俺は銀狼。神無銀狼。銀の世界渡航者(ワールドウォーカー)と呼ばれている」

「世界渡航者? 聞いた事がない名前じゃな」

「世界渡航者ってのは俺たちの間での認識だから知らないのも無理ないだろう」

「その言い方じゃと他にもいるようじゃな」

「俺を含めて数十人と言ったところかな、俺が認識してるのは」

 正確には世界渡航者は十数人しかいない。それは其処まで至ってないからだ。ただ多次元世界間を移動できるものは先の人数はいるだろう。

「なるほどなぁ。ああ、わしはキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。ひとからは『宝石翁』『魔導元帥』『万華鏡』と呼ばれておる魔法使いじゃ。ゼルレッチと呼んでくれてかまわん」

 ああ、まさかとは思っていたがゼル爺だったか。と言う事は此処は型月の世界か?

「ゼルが名の名乗ったのなら、私の名乗りましょう。アルトルージュ・ブリュンスタッド。『血と契約の支配者』で真祖の吸血鬼よ」

 とくれば当然アルト姫か。とりあえず一応聞いておこう。 

「一つ聞くが真祖ってのは?」

「生まれたときから吸血鬼であり、人を恐れた星が人を律するために生み出した『自然との調停者』」

 まあ、つまり星の意思の代行者みたいなものだ。不老不死の代名詞と言えば吸血鬼が人の中には基づいているからな。この世界では如何なのかは知らないが転生を繰り返す吸血鬼も真祖だからな。

 彼女は本当は真祖と死徒のハーフらしいのだが、本当の姿になると星からのバックアップを受けられるから一応真祖という位置付けらしい。妹さんの方は常時受けられるから真祖の姫君という名は妹さんが正しいらしいが……。

 彼女はまだ眠っているのかね?

 時期が今何時だから分からないが、大抵物語りの前だと思う。ご都合主義的に。

 彼女、アルトルージュの外見に関しては聞かない方が良いだろう。ってか知ってるし。

「私はリィゾ・バール=シュトラウト。黒騎士と呼ばれている」

 矛先は収めてはいるものの、警戒はバリバリしてるねこのお兄さん。剣士としてならおそらく超一流クラスだろう。彼は吸血鬼ではないが不老不死に近い呪い的なものを持っている。確か『時の呪い』だったっけ?

「僕はフィナ=ヴラド・スヴェルテン。『ストラトヴァリウスの悪魔』にして白騎士と呼ばれているアルトルージュ様の護衛さ。僕の事はフィナって呼んでくれてかまわないよ」

 警戒はしてないようだが、その捕食者の眼差しは止めてくれんか? 正直この中で一番危険なのはアンタだと俺の直感が告げている。やっぱりガチなのか?

「それとこの娘はプライミッツ・マーダー。ガイアの魔獣と呼ばれてるわ。霊長の絶対的殺害権の持ち主でも在るわ」

「……ウォン」

 アルトルージュが頭を撫でながら紹介したおっきいワンコ。ってかやっぱり雌だったのね。ああ、モフモフしてぇ。

 と言うか相変わらずだねそのチートスキル。人間は絶対に勝てないジャン。まあ俺は人間じゃないから大丈夫だと思うけどね。不老不死だから人間のカテゴリーから外れてるだろうし。

「それでお主、これからどうするのじゃ?」

「まあ当初の目的は済んだから、とりあえずはこの世界を見て回ろうかなと……、今まで見てきた世界との違いを見つけるのも面白いし、それに何よりこの世界は壁が妙に薄くて、次元世界としてはかなり規模が小さいんだよね」

 そうこの世界、正確にはこの次元世界は世界と世界の壁が妙に薄くて世界間移動がし易いのだ。これはおそらくこの次元世界の人間のかなりの数が異世界がある事を認識しているからだろう。

 俺が今いるこの世界は然程薄くないが、他の世界がかなり薄い。人間の認識以外にも何かしら原因があるかもしれない。調べる必要が出てきたな……。

「ふむ、それに関してじゃが、ワシの推測でよければ聞くかね?」

 ふむ、どうやらゼル爺は何か知っているようだ。

「聞いても良いが、とりあえず座らないか? 立ちっ放しというのも疲れるしな」

「教えても良いけど、私は貴方が何者なのか、いえ、『何』なのか教えて欲しいわ」

 ふむ、等価交換と言うわけか……。アルトルージュの眼差しは何処か探求者の知人を思わせる。

「まあ、答えられる範囲にはある程度制約があるから、問題ない範囲でよければ答えよう」

 そう言って俺は、この千年城の主アルトルージュ・ブリュンスタッド嬢達と邂逅したのだった。

 ちなみにこの世界は次元世界として成り立っている、一つの『世界』だった。

 つまりなんだ? この世界はリリカルの世界か?

 なあ、ゼル。時空管理局って在ったりする?

「ああ、あるぞ。ちなみに数十年前に此方に仕掛けて来たから叩きのめしてやったがな」

 やべ、俺確実に狙われるし……。今までにもリリカルの世界には行った事はあったが、あいつら必ず俺の持ち物奪いに来たがるんだよなぁ。

 ロストロギアと質量兵器の不法所持だのなんだかんだと言って。

 理由は俺の『蔵』と言う能力に関係している。分かり易く言おう。ゲートオブバビロンであると。

 生物だけは収納できないけど、蔵の中では時間も止まってるから、俺は専ら冷蔵庫兼冷凍庫として殆んど食料庫として使っているけどね。

 この中に俺は自分で製作した宝具やら幻想武具やらパオペイやらアーティファクトやら魔道書やら魔法書やら魔術書やら魔道具やら魔法具やら魔術道具やらが多数収納してあります。ギルガメッシュ?アイツより多いよ?インッデクス?百万超えてますが何か?封神演義?一応全部作ってあるよ?贋作だけど。

 アーティファクトなどに関しても製作経緯は元になった物とは完全に別。効果だけが同じなだけ、後は同じ名前を付けて完成。外見は似てなくとも効果は同等。マニアにとって大事なのは外見ではなく実用性なのです。そりゃ外見も真似するけど大抵は『遊ぶため』だし……。

 とにかく、ワールド・ウォーカーの俺にとって、管理局はウザイ以外の何者でもない。天敵の間違いじゃないかって? いや、管理局の魔導師ってデバイスとジャケットと魔力ランクにオンブにダッコの連中だからはっきり言って雑魚だし。どちらかと言うと古代ベルカ式の使い手の方が厄介かな。基本的に彼らは近接格闘型だし。

 まあ、いいや。向うは俺を探知出来ないだろうし。今回も遊ばせて貰いますか。

 ああ、そうそう。質量兵器に関してはナノマシンからデス・スターまで揃ってますよ♪個人的には大親分の機体とか好きです。良いよねDMLS。








 それからしばらく、俺は千年城に滞在した。……んだけどさぁ。

 いや、あのねアルトルージュ。いくら俺が不老不死で復元再生の肉体の持ち主で精神情報干渉不可能体質で死徒にならないからって、此処まで血を吸わなくても良いんじゃない? さすがに貧血状態がつらいです。

 そりゃ復元再生されるとはいえ、基本的にその能力は軽く封印状態にしてるから、血を増やすのって地道に普通の血液生成と何ら変わらないんだし。ってかリィゾも見てないで止めろよ! なに? 『アルトルージュ様があんなに嬉しそうなのは初めてだ』? 吸われるこっちの身にもなれ! ええいフィナ! お前もモノ欲しそうな眼で見るんじゃない! 男に座れるのだけは絶対に嫌だ! 

 ああ、プライミッツ。お前だけだよ俺の事を心配してくれるのは。もふもふ気持ちいい。

 ゼルレッチ。アンタも俺の魔道知識と技術に興味があるのは分かるが、もう少し分別と言うか程度を弁えろと言うか、せめて風呂の時くらいゆっくりさせてくれ。プライミッツとの入浴を邪魔すんなコノヤロウ!

 リィゾ。アンタも大概バトルマニアだな。いやまぁ、剣を交えるのは嫌いじゃないが本気になりすぎて城壊すの止めような? 直すの俺なんだし。何で俺かって? 滞在費を肉体ご奉仕で支払っているからだが、流石にこう修理頻度が多いといい加減この城魔改造したくなるのよ……。いや、しないけどさ。

 ああ、ごめんごめんプライミッツ。これが終わったらブラッシングしてやるから髪引っ張らないで。

 フィナ、お前はこっち来んな! 固定年齢? 顔は十八くらいだが肉体は二十三だ。何だその舌打ちは。あと三つて何だ!?

 どうしたプライミッツ? え? 漫画肉が食いたい? マンモスと恐竜があるぞ!

 こうして俺はゼルレッチに魔道知識を、リィゾに戦闘技術を教えるため、五年ほど滞在した。




 …………したのだが。




 ん? どうした、アルトルージュにプライミッツ。二人してアダルトモードとは珍しい。って、ちょ、ふ、二人とも? 眼がチョット怖いですよ?

 アッーーーーーーーーーー!








 追伸。霊界で第二の人生?満喫中の父上母上。この度子供が生まれました。真っ白な毛並みの可愛い女の子です。母親に似て絶対殺害権を持ってそうです。おまけに対神対魔属性もばっちりでぶっちゃけ俺以外に彼女を傷つける事は不可能らしいです。


 名前は後日公開。










 後書。
 ビビッときてピコーンとなってキターとなって書いた。後悔はしていない。
 とりあえず次どうしよう(マテ



 では、いつか活字の海で。



[8671] 第二話「ミッドよ。私は帰ってきた!(某少佐風に)訳ではないです」
Name: 銀色っぽい何か◆48e73465 ID:9d5b0d85
Date: 2009/05/24 23:06







   多次元世界渡航漫遊記


   第二話「ミッドチルダよ。私は帰ってきた~!(某少佐風に)……訳ではないのであしからず。」






「○~○~○×○・○・×○~△♪」

 某高速機動バトルレースの曲を口ずさみながら俺は疾走する。

 個人的にこの曲はお気に入りだ。スピード狂と言うわけではないが、男には時に我武者羅に走りたくなる時がある。

 あ、ちなみに言っておくけど、現在乗り物には乗ってません。自分の足で走ってます。

「○~□☆○●○◎~♪ ▲~▽○○▼××っ☆○★♪」

 俺の後方からは色取り取りの魔力球が飛来する。

 それを俺は虚空瞬動を使った八双跳びの要領で難なく回避する。

 曲芸的回避行動をする度に、後ろの奴らは驚愕の気配や声を洩らす。

「○~× ○・×・◎・×○~♪」

 前方宙返りをしつつ、右手に握られたパイソンを一閃。

 ドズギューン!

 銃声は一回。しかし、後方でうめく気配は三つ。

 不吉を届ける黒猫に負けず劣らずの銃の腕はダテではない。その気になれば閃士のように銃弾を克ち合わせて落とす事も可能だ。さすがにオッパイリロードだけは出来んが……。

 六発撃ち空になった回転弾倉から薬莢を排出し、クイックローダーで手早く再装填。空薬莢はそのまま放置しない。

 靴底に衝剄を纏わせ急速停止。その場で回転。

 回し蹴りをする右足が、的確に空薬莢を捉える。

 落下途中の空薬莢が足の甲に接触する。

 必殺! 空薬莢弾丸ボレーシュート!

 後方百メートル程にいた追跡者に飛来し、二人ほど動きを止める。

 ……っち。今のは二人仕留めただけか。

 あ、死んではいない筈だ。空薬莢の軌道は全て腰から下を狙ったからな。尤も男としては死んだかもしれないが……チーン。

 あ、何でいきなりこんな状況なのかを説明しよう。

 場所は第1管理世界ミッドチルダ、首都クラナガン郊外の荒廃都市部。

 俺の後方には、数キロの長い列を作って俺を追いかけてきている時空管理局の『海』の空戦魔導師数十名と、『空』の武装航空隊十数名。そして『陸』の陸戦魔導師五十数名。

 はい。現在絶賛逃走中。

 理由は簡単。管理局からロストロギアを奪還して持ち主に渡しに行く途中だからです。

 おっとまたスフィアが飛んで来た。迎撃迎撃っと。

 そこら辺に転がってるコンクリの破片をぽいっと!

 先頭のスフィアが迎撃された余波で、後続のスフィアを八割以上打ち落とす。

 ふふふ。魔導師の驚く顔が目に浮かぶわ! というか驚愕の表情が視認出来ます。

 幾ら夜間で百メートル程離れているとはいえ、この程度の距離なら十分視覚範囲内だからな。

 ブッチャケ彼らが自分の横に展開させているスフィアの魔力光で丸見えなんだけどね。

『止まれー! 止まらんと撃つぞ!』

 もう撃ってるじゃないかと言うツッコミはしない。

「生憎と止まる訳にはいかなくてね。此処で止まると私は止まれと言われて止まった大馬鹿者として、時空管理局に英雄として崇め奉られてしまうからな」

『何訳の分からん事を言っているんだ!』

 ふむ、渾身の冗談も、意味をなさないか。

 尤も此処で俺を逃すと時空管理局の沽券に関るからな。ロストロギアを奪われた上に逃げられたなど露顕した日には管理局の信用はガタ落ちだろうからな。

 ついでに最後の英雄云々は気にしないで欲しい。まあ、管理法と魔法と正義が大好きな連中だ。軽い挑発と言うやつだ。

 そうこうしている内に俺は荒廃都市部の中心に到達した。

 では早速、殺剄と気配遮断をしてっと……。

「何!? 目標が消えた!? どういうことだ!?」

 突然消えた俺の反応に魔導師たちは慌てる。

 それもそうだろう。魔力反応もなしに突然俺の反応が消えたのだ。魔導師たちは今まで、俺がワザと放出させていた魔力だけで、この暗闇を追ってきていたのだ。

 気配察知の一つも出来ない運痴な魔導師に、魔力を消しただけの俺を見つける事は出来ないだろうが、念のため隠者潜業で気配も消す。

 魔導師って基本的にデバイスにオンブにダッコだから、デバイスがなかったら陸自の新兵(高卒)と大して変わらない身体能力だし。体術に関しては下手すりゃ小学生並。

 ほらあの高町ナントカだって運動神経はゼロだし……。

 あ、俺魔法は使えないけど魔力はあるんです。何処ぞの騎士王のような魔力炉心というか根源炉心と言っても過言ではない物が俺の肉体には存在する。

 ちなみに便宜上、根源炉心なんて言ってるけど実際はある種のアストラル機関だ。俺の炉心で生成した『力』はあらゆる力やエネルギーに変化させる事が出来る。俺限定だけど。だから気力に霊力に神力に冥力に魔力に天力など、おまけに体力にもさらには精力にだって変換できる。

 と言っても生み出して変換できるだけで、俺自身は魔法発動不可能体質だから少々宝の持ち腐れ。

 どうせ魔導師連中は俺を見つけられないから、ここで軽く補足。

 前回も言っていたが、魔法とは神のみが起こす事を許された奇跡の代名詞だ。そして俺は神殺しの属性を、この肉体は生まれながらに持っていた。

 神を殺す者は魔法の干渉を一切受け付けない。変わりに魔法を使う事が出来ない。

 某黄昏の姫御子と同じで、影響を受けないが干渉することも出来ないのと同じなのだ。まあ、魔力に関しては彼女も咸卦法が使えることで証明済み。

 つまり俺が出来る魔力行使技術は魔力生成や魔力放出とか魔力圧縮など、魔力そのものを直接操ることだけ。

 あ、魔力弾や魔力砲はぶっ放せますよ?

 魔法って基本は魔力を使って起こした現象であって魔力操作は魔法とは言わないからね。これは俺が見つけ出した魔法に対する抜け道だ。屁理屈とも言うが、世の中は矛盾で出来ているから問題ない。

 『魔法』については詳しく語りだしたら限がないので今日は此処までしとこう。

「くそっ。何処に行きやがった、あの黒尽くめ」

 俺が隠れた廃ビルのすぐ側を、陸戦魔導師が悪態を吐きながら通り過ぎる。

 そうそう、俺の格好なのだが。現在俺はフルフェイスヘルメットにガクランという全身黒尽くめな格好だ。ちなみに魔導師に話す時は諏訪部ちっくに話し掛けている。彼の演じるキャラは大抵自信過剰な挑発キャラが多いからねぇ。特に某弓兵。

 しかし、陸戦魔導師はともかく空戦魔導師はウザイな。蝿みたいにブンブンと……。

 !!! そうか! 蝿だ!

 俺はイソイソと蔵からとあるモノを取り出す。

 ♪ねんちゃくせい~まどうしとりがみ(粘着性魔導師取紙)~♪

 アイテムを出す場合はやはり某猫型ロボット風が一番だな。勿論声は大山さんだ。

 さて、あとはこれを何処に『ばら撒く』か……。





「四時の方角に目標を発見! 距離二百!」

 後方支援のサーチャーが、僅かに放出させた俺の魔力を探知し、近くにいた海の魔導師に通信される。

「A班B班は目標を追跡! C班は左から、D班は右から回り込んで取り囲め! E班は上から奴の頭を押さえろ! 管理局に刃向かった愚か者に法と正義の鉄槌を食らわせてやれ!」

 部下を鼓舞しながら隊長と思わしき魔導師がこちらに向かってくる。先程までは射撃魔法を撃って来たのだが、この暗闇では目視で誘導するのは不可能と判断したのか、撃って来る様子がない。暗視魔法とかないのか?

 しかし、ホントに管理局の奴らって法とか正義とか言うの好きだな~。

 さて、奴(やっこ)さんは五人ずつの5小隊と隊長副隊長の27人か。とりあえずAB班はこの場でご退場かね?

 俺の姿を確認しないで魔力反応を頼りに直進してくるから……。

「な、何だこれは!?」

「う、動けない」

「バインド!? でも魔力反応もないのに!?」

「な、何だ。魔力が……」

 俺の百メートルほどにまで近づいてきた魔導師だったが、突如として空中でその動きが止まる。

 そう、其処には光学迷彩を掛けた粘着性魔導師取紙が仕掛けてあったのだ。

 そして、それは只の粘着性の取紙ではない。ある魔界に存在する、魔力を吸収する樹木から作り出した紙にガッチガッチに破魔属性と耐魔属性を付加させたモノだ。

 それをあとはリボンのように長く加工して空中に蜘蛛の巣のように張り巡らせるだけだ。

 光学迷彩は某公安九課の技術に、某魔道銀の傭兵部隊のECS技能と、俺独自の網膜には投影されるが脳はそれを認識できないようになる文様を描いてある。

 人間の目ってのは何気に性能が良いのだが、如何せん人間の脳がそれに追い付いていない。それが顕著に表れるのが動体視力だ。あれは視力より一瞬の認識力がモノを言う。

 さてと、四番から七番の光学迷彩を解除してっと……。

「こ、これは幻覚魔法!? ……バカな! 魔力反応などなかったのに」

 いや、あんたらさっきから魔力だのなんだの五月蝿いねぇ。杖もって呪文唱えて発動させる以外は全て先住魔法だと騒ぐどっかの大陸の貴族達と一緒だな。

 管理局の魔導師も魔法と魔力反応にばっかり目が言ってるからそれ以外のことに対処できないんだよね。

 そして気が付けば彼らは魔力を吸い取られ、バリアジャケットも維持できなくなる。

 う~む。それてにしても女性隊員がいないのがつまらんなぁ。

 ジャケットを装着&解除の瞬間はそのボディラインにエロスを感じるのに……。輪郭だけってのに独自のエ浪漫を感じるのは俺だけか?

 いいや、それは俺だけじゃないはず!!

 と、熱くなってる場合ではなかったな。

 さて、空中で捕らえられて身動きが出来ない状況になった時、皆は何をする? ちなみに俺の基本はこれ。

 あ、ポチッとな!

 バリバリバリバリバチバチバチバチバリバリ伝説バリバリバチバチバチバチ!!!

『うぎゃあああああぁぁぁぁぁーーーーー!!』

 ちなみに流す電圧は十万ボルト。某電気ネズミと同じだ。

 本来紙は絶縁体なのだが、其処は魔界の植物。魔界の雷に打たれて(この雷が魔界の大気中の魔力を大量に含んでいる)育つ樹木。伝導率のよさは金と同等いうパネェさ。

 そしてその電圧でショートして完全に機能を停止するデバイス。見事に全員気絶する魔導師。

 デバイスの諸君。君たちは良いデバイスではあっただろうが、君の持ち主たちがいけないのだよ。

 このまま粘着性魔導師取紙を解除してもいいのだが、このまま解除するとなす術もなく落下して死ぬだけである。

 仕方なく俺は張り巡らされた取紙を地面から一メートル程の高さになるまで緩める。

 俺は物陰から出て、そそくさと彼らを地面に……、下ろすと見せかけて、右側からやって来たC班目掛けて投擲する。

 秘技! 人間手裏剣! オマケだ持ってけ徹甲作用!

 時速三百キロオーバーで飛んでった魔導師は先頭の魔導師ごと後方の廃ビルに突っ込む。気配から感知するに、どうやら見事に気絶したらしい。

 突然飛んできた仲間を受け止める事も出来ずに戦闘不能になった魔導師え~と№11。

 そしてあまりの出来事にその動きを止める12から15。だが、余所見をしている暇はない。

 俺は連続で人間手裏剣をして残りの四人も同様に片付ける。中にはバリアとシールドで受け止めようとしたが、俺の徹甲作用はそんなモノ、モノともしないでブチ抜いて吹き飛ばす。

 俺の放つ徹甲作用は対軍貫通属性を持っている。某埋葬機関の鉄甲作用とは少々効果が違う。本当は徹甲作用じゃなくて徹陣作用が正しいが、この場合はこの方が合っているだろう。何せ投擲しているんだからな、人間を。

 徹陣作用の場合は、殴って吹き飛ばした相手に発生させるものだから。ちなみにそれやった日には魔導師は簡単に内臓破裂と肋骨粉砕でご臨終しちまう。

 魔法はクリーンらしいから、戦場だろうと殺しはご法度ってのが管理局の考えみたいだしな。俺からすれば完璧に戦場を舐めているとしか思えない。というか絶対、戦いを侮辱してる気がする。

 傷付ける覚悟もされる覚悟もない奴が戦場に立つなと言いたい。

 戦場とは命をかける場所だ。そこに覚悟のない奴は立たないで貰いたい。

 撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだから……。

 まあ、C班の連中も死んではいないだろう、ジャケットは着ていたし……。せいぜい全治一ヶ月の全身、骨折から打撲と内蔵機能の低下くらいかね。投げられた人間は何故か無傷なのはデフォルトだから問題ない。

 これで十五人と……。おっとD班がやってきたか。

 左側から接近してくる魔導師五人。中途半端な高度は危険と判断したのか低空で接近してくる。

 駄菓子菓子!

 其処には第二のトラップが仕掛けてあるのだよ!

 俺は某反逆皇子のデザインのスティックを取り出してスイッチを押す。あ、ポチッとな。

 ガコン。ベチベチベチベチべチンッ!

 パントマイムのコントよろしく、俺の三十メートル前方で空中で『何か』に突っ込んだ魔導師五人。

 それは不可視の壁を作り……出したわけではなく、寝かせてあった超強化防弾ガラスを起こしただけである。

この暗闇の中でガラスを視認するのは困難だろう。

 俺は素早く蔵からカメラを取り出すと、フォーカスとピントを合わせてフラッシュを焚き撮影。

 完全にギャグ状態でガラスに張り付いている魔導師五人の姿をフィルムに収める。ちなみにカメラはかの名作キャノンPだライカシリーズもあるが、庶民な俺にはこっちの方が性に合っているだろう。

「ふ、ふほはほぉ(こ、この野郎)~!」

 防弾ガラスから離れようとするが、それが出来ずに慌てだす魔導師。

 ふははは! ガラスの表面は強力な接着剤でコーティングしてるのだよ!

 しかし、残念な事にこの超強化防弾ガラスは、ただ硬いだけなので電気を流す事が出来ない。その代わりに俺は置き土産をプレゼントする。

 俺は空き缶サイズの物体の安全ピンを抜き、軽く投擲。テニスのネット脇落としの要領で、反対側に落とす。

 数秒置いてその物体から煙が放出される。瞬く間に充満した『黄色い』煙はすぐ側にいる魔導師にその牙を向く。

『ひ、ひんぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 この世の絶望のような悲鳴を上げる魔導師たち。まあ、無理もない。何せアレの中身は俺が次元世界を回って収集しつづけた物質が、数十倍の濃度で凝縮されているのである。

 その中身は、シュールストレミングを蒸発気化させてマイナス273度で液体状に濃縮した上に各種催涙薬品をこれでもかこれでもかええいこれならどうだと言うくらいぶち込んで百回ほど蒸留させた物質である。

 はっきり言おう! 一ヶ月鼻が使い物にならなかった上に一週間鼻水と涙が止まりませんでした!

 唯一の救いは匂いが見えるくらいか……。ってか、見えるくらい臭いってドンだけ凝縮したんだ俺!?

 まあ、幸いにも俺のいる位置は風上…………じゃねえし!!!

 やべ、煙がこっちに流れてきだした! き、緊急退避ーーー!!

 俺はわき目も振らずにその場から縮地で逃げ出した。








 ちなみに煙が流れた先には他の追撃部隊がいて、あまりの臭さに即昏倒したらしい。

 それと、他の海の魔導師は戦闘不能になった魔導師の救出に向かって、現場に付いた途端に昏倒したらしい。

 さらに煙は流れに流れて都心部まで行き、阿鼻叫喚の地獄絵図となったらしい……まる。

 管理局はこの事件をBC兵器による侵略行為ではないかと危惧し、ミッドチルダ全域に非常時警戒態勢が敷かれ、その間の地上での犯罪者検挙率は過去最高を記録したそうな。

 それと同時に、誤認による無罪冤罪の誤縛率も過去最高だったらしい。

 この事件は後に、『シュールストレミングの悪夢』と名づけられ、管理局は全管理局員にバリアジャケットの設定に、対汚染空気防護の設定を義務付けたらしい。

 時に新暦58年の出来事だった。

 って俺の事は隠匿された!? 畜生! こうなったら管理局のAランク以上の危険物指定ロストロギア全部、スネイク&ルパン方式で盗み出してやるうううぅぅぅっ!!

 ダンボールの恐ろしさを教えてくれるわ!









 ちなみに奪還したロストロギアは確りと持ち主に渡して、さらに持ち主の敷地内をプログラム魔法発動不可能空間にして、さらにはその家を管理局は認識できないようにした上で、周囲の町にN(ネガティブ)M(マジック)F(フィールド)を張り巡らせるという、徹底的なアフターサービスをした。

 なお、これは正確にはプログラム方式魔法発動不可能空間なので、現地の魔法使いの魔法には何ら影響はないので大丈夫でだ。

 ミッド式とベルカ式ってよく解析してみると、プログラム制御方魔力行使技術でどちらかと言うと管理局の魔法は、精神反応エネルギープログラム制御方魔力運用行使技術と言う長ったるしい言い方になるが、どちらかと言うと科学としての特色が強い。

 しかし、管理局はこれを魔力と魔法と言う言葉で一括りにしている所為で、如何せんスペルや詠唱、カオス・ワーズ。呪(しゅ)や言霊などに対する理解力が足りない。

 それに魔方陣は本来補助的な役割や、基点やマーカー的意味合いが強い。だから魔法の発動の際に魔方陣が浮かび上がるってのは、実は使用者が未熟な証拠なのです。

 ただし、空間転移など世界の物質法則に干渉する場合は、どうしても世界が矛盾を修正するので必要になる場合が多い。

 これも例外は存在するが、それは世界から外れた者のみができることだ。

 ちなみに全知全能の神なんかは実は自分の世界そのものに対して干渉できない。世界の中を変える事は出来ても……。

 元々神ってのも世界が生み出した星の意思の代行者の一種だからだ。

 しかし何を勘違いしたのか、自分が始まりであるかのような立ち振る舞いをしたがる。その結果が人の時代の始まりで、信仰の衰退だと言うのに……。

 さて今日はこのくらいにしておくか……。





 それでは、またのご利用をお待ちしております。

 ミス・サクラ=ヨシノ。





 今回の教訓。

 風向きには注意しよう。銀狼お兄さんとの約束だ!









 後書

 唐突な始まり方にgdgdな終わり方。
 後日、加筆修正します。

 プライミッツの娘の名前は、読者からは『シルミッツ』『ディエティー』『ギンコ』今の所この三つ。
 作者の方は『シルバミッツ』『銀黎(ぎんれい)』『アルフィエルダー』の三つ。

 
 追伸。今回から使用したネタに関しては軽く説明しようかと。分からない人も多いし。


 今回のネタ

 某高速機動バトルレース
 「IGPX」
 試合中の平均時速は400kmオーバーの作品。
 サイバーフォーミュラーとどっちが速いか……。

 不屈を届ける猫
 「ブラック・キャット」
 原作は集英社週刊少年ジャンプにて連載。完結。
 作者はイヴとキョウコがお気に入り。

 閃士
 「グレネーダー ~ほほえみの閃士」WOWOWで放映されたアニメ。
 原作は角川書店少年エースAにて連載。完結。
 オッパイリロードはこの作品の名シーンの一つ。
 
 何処ぞの騎士王
 「Fate/stey night」
 セイバーことアーサー王の別名。
 魔力炉心と魔力放出も彼女の能力の一つ。
 某弓兵は同作の遠坂凛のサーヴァント、アーチャーのこと。

 黄昏の姫御子
 「魔法先生ネギま!」
 神楽坂明日菜の正体。完全魔法無効化能力の持ち主。
 原作設定はこの設定に矛盾があると作者は思っている。

 「生憎と~略~止まれと言われて止まった~略」
 「スクラップド・プリンセス」
 原作の小説版のとあるワンシーンの台詞を少々アレンジしたもの。
 原作を紛失したので詳細は憶えていない。

 某猫型ロボット
 「ドラえもん」
 言わずとしれた国民的超大作アニメ。
 この作品の道具は使い方によってはチートを越える。

 某公安九課
 「鋼殻機動隊」シリーズ
 一部の間で名作として言われている。
 この作品の続編的映画「イノセンス」の方が世間体では有名。

 某魔道銀の傭兵部隊
 「フルメタル・パニック」シリーズ
 主人公が所属するアンチテロ組織「ミスリル」のこと。
 富士見ファンタジア文庫にて発行中。

 バリバリ伝説
 「バリバリ伝説」
 作者の実家にあった二十年以上昔のバイクレース漫画。詳細は知らない。
 『一位以外はビリと同じだ』は作者個人的に名言かと……。

 某電気ネズミ
 「ポケット・モンスター」シリーズ
 今や国民的人気キャラクターの一つ「ピカチュウ」のこと。説明は不要かと……。

 某反逆皇子
 「コード・ギアス」シリーズ
 主人公ルルーシュの必須アイテムの一つ。
 ギアスってやっぱレアスキル扱いになるよな……。
 作者は「ザ・スピード」のギアスが欲しい。

 シュールストレミング
 「世界一臭い缶詰」ニシンを発酵させて缶に詰めたもの。
 中身によっては発酵具合で、開封のときに中身が飛び出すらしい(ガクガクブルブル)
 匂いはともかく、味はご飯に合うらしい。


 では次回「ファザコンって、日本と外国では少々意味が違うらしい」出会いましょう。
 読んでくれないと暴れちゃうぞ!



[8671] 第三話「眼からビーム。浪漫だけどやってる当人は見えてるのか?」
Name: 銀色っぽい何か◆48e73465 ID:9d5b0d85
Date: 2009/05/24 22:42









   多次元世界渡航漫遊記




   第三話「ドリル。自分より硬くてデカイ奴相手にやると自分が回るのが科学者の見解」








 さあ、皆さん。一緒に叫びましょう!!

 せ~の。






『前回の予告と題名と本文とで全部タイトルが違うわーーーーーー!!!』






 よし、つかみはOKだろう。

 それじゃあ逝ってみよう♪











 時にハルケギニア暦六千……たぶん五十ちょいくらい。

 トリステイン王国トリステイン魔法学院。

 春の使い魔の召喚の日。

 そいつは爆発と共に現れた。

「あんた誰?」

 その者を読んだと思われるピンク髪にツルペタ少女が、問い掛ける。

 そいつは銀色の髪を陽光に淡く光らせながら、爆発の余韻の風に、腰まである長い髪をたなびかせる。

 思わず周囲にいた『雌の使い魔たち』が感嘆の息を吐く。

 閉じられた瞼の下の瞳の色は一体何色なのだろうか?

 ……ああ、彼に見つめられたい。

 その口が紡ぐ言葉と声音は一体どんなものなのか?

 ……ああ、彼に命令されたい。

 その掌に体を撫でられたら、自分は理性を押さえられるだろうか?

 ……ああ、全身隈なく全てに触れて欲しい。

 もし彼とツガイになれたらどれだけ幸せになれるのだろうか?

 もし彼とXXX版のようなことをしてさらには、あ~んなことやこ~んなことやあまつさえ、え?そんな事もするの?で、でも貴方だったら……

「ちょっと! アタシが話し掛けてるんだから、平民はとっとと答えなさいよ!」

 とりあえずこのバカ小娘をコロストコロカラハジメヨウカ……。

 周りにいた雌の使い魔たちが、殺意をピンク少女に向ける。

 と、その時だ。

 閉じられていた男の瞼が開かれた。

 瞼の下にあったのは何処までも透き通った銀色の瞳。

 男は口を開き、

「此処は誰!? 俺は何処!?」

 ずいぶんと捻くれたお決まりの台詞を紡いだ。

 思わず其処にいた全員がズっこけた。







 俺が此処にいる理由、それは……。

 あ、ありのままに起こった事を説明するぜ。南米アマゾンを森林浴ながら歩いていたら、タイプ・マ-キュリーことORTに出会って、其処に偶然ORTを捕獲しようとやって来た時空管理局のバカ共と遭遇して、管理局員を一蹴した後ORTとガチの殴り合いになって三日三晩殴り合いをしてたら、撃退したはずの管理局員が精神錯乱状態でロストロギアもってやって来て、しかもそれが次元震動弾のような物だったらしく、緊急事態だったから縮地の応用で殴り跳ばしたんだけど僅か数コンマ、ロストロギアが発動が早く超極所極小次元断層に飲み込めれて気が付けば虚数空間で、元の世界に返ろうと思ったら突然目の前に鏡のようなものが現れてまさかと思って触れたら飲み込まれて気が付けばハルケギニアにいたんです。あとORTは少女でロリで美巨乳でした。半径一キロが更地になる攻撃は熱愛的な求愛行動らしかったです。自分でももう何を言っているのか分からなくなってきたけど、とにかく聞いて。それが今。俺が此処にいる理由……。

 さ、最後のは少々長戸チックになったがつまりそう言う事だ。

 ORTとの殴り合いは楽しかったのになぁ……。

 何処ぞの戦闘種族ではないが、オラわくわくしちまっただ。





 んで現在、冒頭に至るわけです……。

 いや、一度でいいから言って見たかったんだよね。『此処は何処? 私は誰?』を。今回はそれに少々捻りを加えてみたんだけど……、うん反応は上々のようだ。

「い、いきなり何を言い出すのよアンタは!」

 と、俺の前にこけているピンクのツルペタ少女。

 うん。間違いなくルイズだねぇ。ちなみに俺はロリコン幼女の称号はタバサにこそ相応しいと思う。ルイズの場合発育不足なだけだろうし。その証拠に同い年のキュルケはあのスタイルだ。もっともティファニアには負けてるが。それにたしかタバサは13かそこらの歳だったはずだし。

 っと、こんな事を考えている場合じゃなかったな。とりあえず。

「……問おう。……汝が我のマスターか?」

 この台詞も言いたかったんだよなぁ。聖杯戦争が始まるのは当分先だから座が俺に聖杯の破壊もしくは封印か修復を依頼してくる事はないだろうし。

 もっとも頼まれたら頼まれたで行くけどね。ランサーとは個人的に闘ってみたいし。あ、アサシンとも斬り合ってみたいな。燕返しに俺の技が何処まで通じるか試してみたいし……。

「え? ええぇ、そそうよ。私が貴女のマスターよ!」

 俺の問いに無い胸を張って主張するルイズ。

 そうか。

「では一つ聞くが、私の後ろに倒れている少年は一体何なのかね?」

 と、言って俺は一歩横にずれる。

「「へ?」」

 一つはルイズだが、もう一つはおそらく、

「其処にいる君が、監督者かね?」

 このコッパゲこと、コルベールだろう。

「コココ、コルベール先生! これは一体!?」

「こ、これはおそらく、使い魔が二体召喚されたという事だろう。
 しかし、この儀式は何よりも神聖なものだ。だからやり直しは許されない。早く彼らとサモン・サーバントをするんだ」

「そんな!? 聞いたことがありません! 平民を使い魔にするなんて!」

「たしかにそんな前例はない。だが、どんな事情よりもこの儀式は優先される。それは君
も分かっているだろう?」

 そんな押し問答を半分無視して聞き流しながら、俺は件の青年。平賀才人を起こす。

「お~い。起きろ~。少年~」

 ゆさゆさと揺らしてから、軽く頬を叩いて鼻を摘む。

「う、う~んぅ…………」

 呼吸反応停止。

 …………あれ? こりゃ死んだか?

「……ぶはぁっ!」

「お、起きたな少年」

「へ? お、俺は一体? たしか秋葉原で変な鏡に吸い込めれて……」

 なんか知らんが勝手に自分が此処に呼ばれた訳を言いだす。便利だねこりゃ。今のうちに才人に現状を説明しておくか。

 ちなみにピンクとハゲはまだ押し問答を繰り広げている。何故か話が『鶏と卵』に『昼と夜』になってるし。おたくら何そんな哲学的なこと言い合ってるんですか?

 あ、ちなみに俺は鶏と夜が先だと思う。

「まあ、とりあえず状況は理解しているか?」

「ええ、とりあえずあそこにいる女の子の使い魔(サーヴァント)にならないと、帰るどころか暮していく事も出来なくて、聖杯を求めて戦い抜かないと逝かないと」

 混乱はしているが、錯乱はしていないようである。サーヴァントちゃうからな。

「それだけ分かっていれば今は十分だ」

 よし、それじゃあ早速契約を済ませるか。まあ、俺は契約出来ないだろうけど……。

「ちょっと! 平民の分際で貴族を無視するなんて、アンタたちふざけんじゃないわよ! この場で死にたいの!」

 流石に今のはカチンときた。だが契約をしないと『この物語』も始まらないから我慢視する。

「あんたたち、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通一生ないんだから」

 貴族相手にキスはあまりしてないけど、王族とか神族とか魔族とかならキスはかなりしてます。基本俺はされる側だけど。

 そして、『○× XXXから○○○★☆の○の○×○×○~♪』っとな。

 才人に先にやらせるのは当然だ。

 俺個人的には○CH○K○は『◎○● XXX ■○◆ ○の◇××の○』が好き。そういえばデビルキシャーは戦闘力幾つなんだろう?

 そして才人にルーンが刻まれた。先にある程度契約云々については俺が説明してあるから痛みに文句を言う事はなかった。

 結果から言って俺は契約出来ませんでした。魔法で干渉できないからね。物理的破壊攻撃系の魔法ならともかく……。

 しかし、此処で契約できてないと、他の生徒からボロクソ言われる八つ当たりを俺や才人にしてくる事は明白なので、振りだけはしました。

 俺の方はズボンの中の部位に刻まれたと言う事にしてあるから確認させてません。

 ここでズボンを脱がせるなんて貴様そっちの趣味があったんだな、と言うとコルベールは慌てふためき、女子は顔を赤くしながら黄色い声を上げ、男子はベルトを押さえて数歩後退。キュルケだけは笑ってた。

 タバサ? みょ~に俺のほうを窺ってた。それとシルフィードの視線が、発情したドラゴンのようだったのはきっと気のせいだ。ああ、気のせいだとも!

 そして、ルイズとコルベール以外が飛んで帰る。目に入ってくるのは……。

「眼福ですな才人殿」

「ええ、見事なまでの花々ですね。銀狼殿」

 そりゃぁ、見えるだろう。女子生徒のパンツが……。

 タバサはシルフィードに乗っていったので色は不明。むう、キュルケめ。見えそうで見えない飛び方をする。やるな。

 ちなみにこの俺と才人の会話は、ルイズには聞こえないように話している。





 ほんでもってルイズの部屋~。

 現在俺たちは自分たちが異世界人であることの証明と、ルイズから使い魔の役目を聞いている。

 ちなみに俺の装備に関する才人の質問には、紛争地帯にいたという理由で納得してもらった。

 今ルイズの目の前には。異世界の証拠品として、才人のパソコンに携帯電話。俺のパイソンに財布の中身、世界各国の紙幣に硬貨にカード。窮め付けは才人が持ってた『新訳ゼータ』DVD一巻とコミック版『仮面ライダークウガ』。俺が出した、小説『まじしゃんず・あかでみぃ』とコミック『DQダイの大冒険』。

 『ありえない、あるわけない』と呟きながら、新訳ゼータを見るルイズは何ともシュールだった。DQの方はあまり好評ではなかった。まあ、異端信教と捉えられても過言ではないだろう。ハルケギニア人にとってDQの世界の魔法は先住魔法としか理解できなかったようだし。

 小説は字が読めないのは分かりきっているので、異界の文字だと教える。

 ってか、ルイズ~。お前さん忘れてるかもしれんが、それ創作物だからな~、フィクションですよ~。

 あと、才人のパソコンの壁紙にあった、マンハッタンの摩天楼には驚愕だったようである。

 ついでに言っとくが才人~。デスクトップのエロゲーのアイコンは消しておけ。彼女が出来たときに見られたら、ビンタじゃすまないぞ~。

 あと、才人は俺と年齢が同年代だと思ったのか、呼び捨てで呼んでくる。まあ、俺も呼び捨てだからいいけど……。歳くらい聞こうぜ才人。





 使い魔の役目その1

 使い魔が見たものは主も見る事ができる。

「なんだよそれ。プライバシーの侵害のいいところじゃないか」

「そうだそうだ~! 使い魔にも人権と秘匿権を寄越せ~!」

「ご主人様に隠し事なんて、使い魔の癖に生意気なのよ!」

『男の生理現象をジックリ観察したいなんて、何て変態で破廉恥な娘なんだ!?』

「そんなわけないでしょ!」

 ちゅど~んっ。



 使い魔の役目その2

 主人が望む物を探してきて献上する。

「才人はこっちの地理や生態系って分かるか?」

「銀狼こそ宝石とか貴金属の場所分かるのか?」

「さすがに地質調査しないことには鉱脈は探せないよ」

『と言うわけで無理で~す!』

「じゃあ仕方がないからアンタ達の荷物、全部私に寄越しなさい。使い魔の物はご主人様の物。アタシが欲しいと思ったモノはあたしのモノ」

『メッチャ傲慢なジャイアニズムだ~~!』



 使い魔の役目その3

 ご主人様の為ならその身を挺して守る事

「成る程、例え親姉妹に王様だろうが女王様だろうがお姫様だろうが、見捨てて見放して捨て駒にしてルイズの命だけは守れと……」

「そんなわけないでしょ! 私が守れといったら、死んでも親姉妹に王様に女王様にお姫様を守るのよ!」

「死んじまったら守るものも守れないと思うんだけど……」

 良い事言うね才人。全くその通りだ。

「アンタたちが死んだら、また新しい使い魔を召喚するから大丈夫よ」

 あ、今の言い方ものすんごい鶏冠にキタ。

 俺は少し殺気を溢れ出させる。

「やれやれ……。平民の命すら守ろうという気もない輩が、よく貴族の娘なんかをやっていられたものだ……」

 少しとはいえその殺気に中てられたルイズは、腰を抜かし歯をガチガチ震わせる。顔面は真っ青を通り越して真っ白だ。

 隣にいる才人も少し顔が青い。

「力の使い方も分からず知らない小娘が、守るなどと軽々しく口に出来たもんだ。
 一度。……死んで見るか?」

 殺気から殺意に切り替えた途端。ルイズは白目をむいて気絶した。

 いかん。調子に乗ってやりすぎた。

 才人には殺意が行かないようにしたが、感情の方で大分怖がらせてしまった。本当に大人気ないな俺も。

「なあ、ルイズ大丈夫か?」

 流石に心配になったのか、才人が気絶したルイズの様子を見る。

「一晩寝かしておけば大丈夫だろう。まあ、俺も少々やり過ぎたかもしれないが……」

「とりあえずどうするんだ?」

 そう言えば、才人に俺の正体話してない。ある程度話しておかないと後々面倒だからな。まあ、絶対に言っちゃいけないのは、この世界も才人も実は架空のモノだと言う事だな。これを聞いた日には錯乱どころではすまないかもしれない。

「それについてと、これからについて話がある。重大な話だから外で話そう」

 これは他人に聞かれるには少々拙い。





 俺は才人を連れて学院の中庭にやって来た。

 流石に昼間の草原は、学院の門が閉まっていたので行けない。いや、行けなくはないがそれはそれは色々と面倒だし。

 ああ、言い訳ばっかだな俺……。

「最初に言っておく、才人。俺はお前の知っている地球とは、違う地球からやって来た人間だ」

「それってパラレルワールドみたいなもののことか?」

「まあ、そんな所だ。それと俺のいた地球には魔法や超能力など、超常現象を起こす事ができる力の持ち主や能力者がいた。俺もそんなの能力者の一人だ」

「じゃあ、銀狼も魔法や超能力が使えるのか?」

「魔法は使えないが超能力なら使える。といっても俺のは少々異質だがな」

 そう言って俺は蔵の能力を発動させ、目の前に出現させた漆黒の穴からビームライフルを取り出す。モデルはファーストだが。

 俺の能力にか、それとも取り出した物にかは不明だが才人が目を見開く。

「亜空間物質収納能力『蔵』。四次元ポケットと同じことが出来ると思ってくれていい。尤も生物を入れておく事だけは出来なのが欠点だが」

 才人の世界を確認したが、ドラえもんは存在した。というか才人の世界では少々ファンタジー系はあまり流行していないらしく、逆にSF物の流行が強いようだ。

 現に有名なガンダムシリーズは俺の知らないものが存在した。アニメで。

 あと特撮や戦隊モノも流行しているらしい。ライダーとレンジャーの作品数が半端ねかった。五十超えてるってすごいな……。原作の方も才人の世界の事は殆んど語られてなかったから知らなかったが……。

「つまり銀狼は超能力者ってことか」

「その認識でかまわない。尤も俺は格闘戦型だから拳で殴る方が強いがな。ああ、そうだ。才人にも一応武器を渡しておこう。といっても護身用だがな」

 俺が武器を渡そうとした時、最初は武器を持つ事に抵抗を感じていたが、この世界での平民の扱いと使い魔としての役割の場合、なければ命の危険に関るため渋々ながらではあるが持たせる事に成功した。

 尤も使う場合は、自分も傷つけられる覚悟をしろと注意しておいた。

 力は簡単に人をを狂わせるからな……。この世界の貴族たちが良い例だ。

 ちなみに渡した武器は、持ち運びに便利な用に警棒形の黒鋼錬金鋼(クロムダイト)とサバイバルナイフを一つづつ無論剣帯も一緒に渡す。銃も良いかとは思ったが、こっちは人の命を軽くするから、止めておこう。

 錬金鋼はまだ復元音声を教えない。下手に復元してるところを貴族に見られたら、絶対に貴族は物欲しさで錬金鋼を寄越せと言ってくるだろうから。

 剄脈? 俺の作った錬金鋼は剄じゃなくて気で復元させられるやつです。

 剄は流石にむりだろうからね。

 俺? 俺の剄は発剄の亜種だから種類が別。

 ついでに『炉心の力』を剄に変えることも可能なのです。チートだねぇ俺。

 ガンダールヴのルーンもあるし、問題ないだろう。あれも何気にチート能力だからな。

 もっとも俺は、逆に余計な情報が流れ込んでくるガンダールヴは、個人的に欲しくない。マニュアル通りの動きしか出来なくなると、スピード&トリッキーな戦法が得意な俺には少々邪魔なので・

 勝手に身体能力強化されちゃあ、自分を鍛える事も出来ない。まあ、素人の才人には必要なものだが……。

 さて、才人は部屋に帰すか……。あ、その前に寝袋渡しておくか。

 ん? どうした才人。上なんか見上げて。……ああ、月か。

「赤と青の月か」

「ははは。改めて異世界だと感じさせられるな。今日は早めに寝とけよ才人」

 そういって俺は学院の城壁の方へと歩き出す。

「何処行くんだ?」

「軽く外を散歩してくるだけだ。お休み、才人」

「そっか、お休み。銀狼」

 才人が女子寮に入って行くのを確認すると、俺は学院の壁に手を掛け、

「私に何か御用か? ミス・レディ?」

 学院の中央塔のすぐ側の茂みから、此方を窺っていた女に声を掛ける。

 フッ。驚く気配が丸分かりである。

「其処にいるのは分かっているぞ? それとも不埒な賊という事で攻撃されたいか?」

 俺は出して手に持ったままだったビームライフルを茂みに向ける。

「お、お待ち下さいミスタ! 私は賊では在りません!」

 慌てて茂みから出てきたのは、お分かりの方も居るだろう。ミス・ロングビルだ。

 ふっ。だが、姿を表した程度で俺は警戒態勢を解くつもりはない! なぜならテファのオッパ……げふげふん。ティファニアとの中を認めて貰うためには、彼女との友好関係を築く事が大事だからだ。

「では何者だ? 生憎私は今日此処に来たばかりだが、貴様のような行動に出る輩は聞いた事がないし、此処に居る貴族ならそんな行動もとらないだろう?」

「の、覗いていた事は謝ります。私はこの学院に勤めます学院長秘書のロングビルと言うものです。私は元貴族の者です。此処に勤めるまでまではただのメイジでしたから」

 ただのメイジ。つまり傭兵なんかをやっていたからつい隠れてしまったと……。

 ま、言い訳としては及第点だからヨシとするか。

 おれはライフルの銃口を下ろす。

「そうか、それはすまない。私が知る貴族らしかぬ行為だったので警戒してしまった」

「いいえ、分かって頂ければ。ところでミスタ? 貴方は?」

「私は銀狼。神無銀狼だ。ルイズ・ヴァリエールという貴族の娘の使い魔をやる事になったものだ。私も此処に呼ばれる前は、紛争地帯で傭兵をやっていたものでね。つい警戒してしまった」

 ここでルイズのことを『貴族』と言わずに『貴族の娘』っと言った事が良かったのか、ロングビルからの気配が随分と柔らかくなった気がした。

「そうでしたか、ミスタ・ギンロウ。済みませんが私は見回りの仕事が残っていますので失礼させて戴きます」

「いや、此方こそ引き止めてしまってすまなかった。では、良い夜を」

「其方こそ、良い夜を」

 ロングビルも本塔の方に入って行くのを見送ると俺は壁をけって学院の外へと飛び出す。









 さて、今夜のうちに幾つか片付けておきますか……。

 んじゃま早速、次空間転移体術。縮地! とりゃ!





 ピコーン。『烈風カリンとどっちがルイズのトラウマになるかフラグ1』『マチルダフラグ1』『姉妹丼フラグ1』『使い魔ハーレムフラグ1』『人外に愛されし者フラグ1』が立ちました。



 後書。
 貴族どもを何処までクズ集団にすべきか……。
 ルイズを何処まで傲慢にすべきか……。シエスタとルイズとサイトの三角関係の為に何処までツンデレにしたらいいのか……。
 あ、デルフの出番どうしよう。銀狼の蔵の中には魔法無効化の武器も道具も在るわけだし……。
 とりあえず、銀狼は人外のお婿さんでいってみようかな……。



 今回のネタ

 ……どれもネタバレしてる気がするが。

 ORT。タイプ・マーキュリー
 オルトと読むらしい。
 型月シリーズ内で最強の人外。
 その正体は地球外知的生命体。

 ビームライフル
 ピンクの熱粒子光線を発射する浪漫武器。
 一部の作品では残留熱粒子の影響が汚染物質になるらしい。

 縮地
 本来は仙術の移動術の一つ。
 入りと抜きが完璧な瞬動術をこう呼ぶ作品もある。

 錬金鋼
 ダイト
 リリカルのデバイスに並ぶ浪漫の格闘戦武器。
 質量保存の法則を無視してる、リアルに欲しいもの。
 作者はハルバートが欲しい。


 さて次回は。
 「食事と貴族との決闘」
 「学院の秘宝と土くれのフーケ」
 「舞踏会と月見酒」
 の三本でお送りいたします。
 ジャン、ケン、ポン! はいロ~ン!
 犬一色(ワンイツ)一万二千点!



[8671] 第四話「ゼロ魔を見てるとシャナを思い出すのは俺だけか?」
Name: 銀色っぽい何か◆48e73465 ID:9d5b0d85
Date: 2009/05/21 08:06








   多次元世界渡航漫遊記

   第四話「努力・気合・根性があるなら、意地・誇り・我慢の精神コマンドがあってもいいと思う」










 ハルケギニアにきて二日目。

 空が明るくなりだす明朝に、俺はハルケギニアに戻ってきた。

 場所は現在本塔の天辺。

 何処ぞのバカよろしく「ああ、今日も一日が始まる」などとほざいてみる。

 生徒たちは未だ夢の中なのを気配で感じる。起きているのは見張りの兵士と、朝食の準備のため厨房へと入っていくコックとメイドたち。

 そして……。

「くう~ん」

 俺の頭の上で朝陽を浴びる、白き魔獣。

 人類の絶対殺害権の持ち主の娘にして、神魔滅昇たる俺の血と力を受け継いだ、最恐の人外。

 その名を『シルヴィネウス・マーダー・ハウリングムーン』。

 満月の生まれ、世界と人外の祝福を受けし者だ。

 ちなみに愛称はシルヴィ。見た目はちっさいワンコ。ただどちらかと言えば狼に近い外見。それでもとってもぷりちぃです。もふもふでふわふわな体毛と尻尾がタマリマセン!プニッとした肉球も、クリッとしたお目めも、ピクピクッって動くお耳もめがっさラヴリィです。レキや久遠などに負けはしません!

 ここ一週間ほど千年城に行かなかったので(そのうちの三日はORTとの戦闘)少し寂しい思いをさせてしまったらしく、こっちに戻ると言ったら一緒に行くと言ってきたので連れてきました。

 ちなみにシルヴィ、年はまだ6つだが知能は十五歳ほどだ。ただ肉体の成長は遅く、成体になるまであと五十年はかかるだろう。人型に成れるのはさらに五十年はかかるらしい。

 プライミッツの方は昨晩はたっぷり愛し合ったので、一ヶ月は大丈夫らしい。

 半月に一回は千年城に行くか……。







 あの後、ルイズと才人を起こしたのだが、ルイズのヤツ、俺を親の仇のような目で睨んでくる。

 しかし、俺が視線を向けると少々震えながら視線を慌てて逸らす。

 貴族たる自分にあんな態度をとったのが非常に気に入らないのだが、俺が向ける視線に昨日の恐怖心が蘇るらしい。

 まあ、この手の視線や態度には慣れてるから全く問題ない。周りに被害が出ないなら放置するに限るね。

 この手の輩は下手に反応してるとつけ上がるが、無視していると逆に面白いぐらいに滑稽な行動にでる。

 その時の行動によっては俺は、ルイズを見限るつもりだ。

 尤も何らかしらの変化が有るようなら、人として貴族として少し師事してやらん事もない。まあ、どちらかと言えば才人の為かもしれんが、結局の処おれはこの世界で『遊びたい』だけなのかもしれんが……。

 そこら辺の自分の性格の悪さに少々悩むが、何万年と生きてきて今更変えられないし、変える気はない。

 何処ぞのヤツが言っていたが、至った強者は『神で魔王で魔法使い』なんだと。

 自分の傲慢さは神の如く、他者を弄ぶ様は魔王のように、起こす奇跡は魔法使い。……らしい。

 俺もそこら辺は感じ方次第だから何ともいえない。

 俺個人的には、『天使で悪魔で死神で閻魔』がイイと思う。

 微笑は天使で、囁きは悪魔で、命を刈る姿は死神で、罪と罰を裁くのも俺(閻魔)。

 ちなみに一部の世界では、天使か悪魔が死神を兼任する世界もあった。んでもって死神は執行人。裁判長は勿論閻魔様。

 っと話がそれたな……。

 ちなみに、シルヴィを見たルイズが『そいつを寄越せ』と言ってきたので、軽く殺気で黙らせた。

 シルヴィは俺の娘だ。手を出そうというのなら、己が命以外全てを失う覚悟をするのだな。

 現在俺たちは食堂に来たんだが……。

「……え? うそ!? これがメシ!?」

「……………………(怒」

「……へ、平民で使い魔の分際で、アルヴィースの食堂で、食事が出来るだけでもありがたいと思いなさい!」

 原作どおりの硬いパンと塩のスープ。しかも床。

 いくらメイドさんたちが毎日綺麗にしているからといって、こんな所で食いたくはない。まだ外の芝生で食べた方が空間的にも絶えられる。

 一応二人分用意されていた事には及第点ぎりぎりだが、他が0点だ。

「才人。食おうぜ。芝生の上で食べた方がいくらかマシってもんだ」

「そうだな。外で食べた方が気持ちが良いもんな」

 俺と才人は自分の食事を持って食堂の外へと行く。

 しかし、其処に待ったを掛けるのがこのバカ娘だ。

「チョット待ちなさいよ。アンタ達は私の使い魔なんだから、私のそばに居なさいよ!」

「こんな所でこんな飯を食わせたいとは、お前さんどんな羞恥プレイをしたいんだ?」

 俺の言葉に、周囲からひそひそと声が囁かれる。無論喋る時に大きくはないが人の耳に入り易いような発声で言うのを忘れない。

 ルイズは思わず顔を真っ赤にするが、とっさに言葉が浮かんでこない所為か口をパクパクさせるだけ。その隙に俺は才人を外へと連れて行く。

「もっとも、こんな香水と化粧とコロンで鼻が曲りそうな所で食事なんか出来たものではないがな。折角の食事も豚の餌に成り下がると言うものだ」

 他のガ貴族のバカどもに置き台詞を言うのを忘れない。

 ハッキリ言って料理の香りと、香水などの匂いで俺は若干眩暈を感じた程だ。

 これは料理に対する冒涜だと俺は感じた。

 他のガキ族から敵意の眼差しが放たれるが、ハッキリ言って微塵も痛くも痒くもない。

「さて、それじゃあ朝餉をいただくとしますか」

 蔵からテーブルと椅子を出して、更に惣菜とサラダをいくつか出す。時間が止まってるって便利です。冷蔵冷凍保温が必要ないからな……。

 それじゃあ……

『いただきます』「くう~ん!」

 ただ、食事をしている最中に他の使い魔たちが、わんさかと寄って集って来たのには少々困ったが、シルヴィの『お父さんはしるびぃのなの!』な視線と行動は非常に癒されたと此処に記しておく。

 才人もシルヴィのことに質問してきたが、正直には言えないので『昨夜森で出会って遊んだら懐かれた』と言ったら納得された。早くも俺が人外に愛されし者であり、人外フェロモンの持ち主である事に本能的に感じ取ったらしい。

 ガンダールヴという使い魔のポジションに居るからか?

 でも、たしかガンダールヴって『魔法を使う小人』って意味じゃなかったっけ?

 ソコのところ如何なのよ? ブリミルさんよ~。

 ―――僕に聞かれても困るなぁ~―――

 さいですか。







 ちなみにキュルケとの出会いイベントは、俺は一足先に食堂前の広場で使い魔たちと遊んで埋もれていたので

出会う事はありませんでした。

 ってこら、お前ら! 服の中に入ってくるな! ら、らめえええぇぇぇっ!




 さて、次は教室爆破イベントか。ああ~、かったりぃ~。






 さて、俺たち三人と一匹は教室にやってきたわけだが、そこかしこから、俺に対して敵意やら殺意やら殺気を向けてくるヤツばかり。尤も恐ろしい位にみみっちぃ位で、使い魔たちからの視線の方が強いくらいだ。

 敵意のない視線を向けているのはキュルケとタバサくらいだが、タバサの方は妙に探るような視線だ。

 シルフィードが俺の正体に感付いて、ソコから伝わったか?

 まあ、その時になったら彼女の方から接触して来るだろう。

 シルヴィに視線を向ける輩もいるが、見た目が子犬だし昨日俺が連れていなかったから、何処からか連れてきた子犬だろうと、視線を戻していく。

 まあ、キュルケだけは「あら、かわいい子犬ね♪」と歳相応の視線を向けてきた。

 ふふふ。そうだろうキュルケ。ウチのシルヴィネウスの可愛さはそこらの萌え獣とは次元が違うのだ!

 いかん。思わず熱くなってしまった。

 ……おっと。どうやらシェヴルーズがすぐ近くまで来ているようだ。歩いている気配を感じる。

 とりあえず俺は、教室の最後部に壁に寄りかかる。才人はルイズの側に行かせた。いや、流石にその場所に二人も居たら狭いから。

 俺が壁に寄りかかると、近くにいた使い魔たち――いや、幻獣と言った方が良いだろう――が俺に擦り寄ってくる。俺は彼女らの頭を撫でながらシェヴルーズが来るのを待った。



「どうやら皆さん、春の使い魔召喚の儀式は無事に成功したようですね。私もこうして皆が成功したことを嬉しく思います。……おや、どうやらミス・ヴァリエールは変わった使い魔を召喚したようですね」

 開口一番はやっぱりこの台詞か……、まあ変わっているという点では変わっているだろう。世界でも現在三人しか居ない人間の使い魔だしな。

 過去にもおそらく居たと思うが、記録や歴史から抹消されてるだろうしな。使い魔が人間という理由だけで。召喚したのが典型的な貴族だったらおそらく殺して、もう一度召喚しているだろうし……。

 まあ、その時はろくに役に立たない、ただの犬や猫、さらには鼠や雀。最悪の場合は蝿が出てくるだろう。

 蝿にキスする貴族。しゅ、シュールだ! それでいて笑いが止まらんwww。

「ルイズ! 召喚出来なかったからって、そこら辺に歩いてる平民を連れて来るなよ」

 たしか、マルコリヌ・なんとか・グランドプレだったけか?

 『人』を使い魔にする事のすごさを知らないバカはこれだから困る。

 大抵、高位の存在というのは、自然と人型に近い形をとる。それが何故なのかは知らないが……。

「違うわよ! コイツが勝手に出てきちゃったのよ!」

 いやいや、ルイズよ。いくらなんでもその言い分はないだろう? 才人だって来たくて来た訳じゃないんだし……。むしろ才人は問答無用で拉致られた被害者だぞ。

 そして、ルイズとマルコルヌは口喧嘩を始めるが、シェヴルーズが赤土をマルコルヌにつめる。

「あなたはそのまま授業を受けなさい」

 少しばかり魔法と披露して自分の技量を見せつける。まあ、技としてはそこそこか。でも少々彼女のやり方は気に入らない。これでは、何かあればすぐに魔法で物事を解決したがるバカしか生み出さない。

 だから俺は……

「……貴女が軽率な事を言わなければ、そもそも今の騒ぎは起きなかったのでは? ミス・シェヴルーズ」

「あなたは?」

 シェヴルーズの視線が此方に向く。ルイズの近くに居ない俺は、余所の人間だと思われたからだろう。

「銀狼。ルイズの使い魔をやっている者だ。それで、先程の発言に対して何か申し開きは?」

 原作ではそこそこ人がいい性格なのだが、少々思慮が足りなかったのが難点か?

「そうですね。ミス・ヴァリエール、少々軽率な発言でしたね。すみません。それと、貴女の使い魔はとても素晴らしい使い魔のようですね」

 シェヴルーズの良い所は、自分の失敗は素直に認めるところだ。他の貴族ではこうは行かないだろう。

 大抵が『平民が貴族に意見するなど生意気だ』とか『貴族の言葉は絶対だから自分が間違っている筈がない』といって罪を平民に擦り付けるか、逆らった罰だとか行って魔法で殺すかだ。

 その点を考えれば、彼女は良く出来た貴族と言って良いだろう。

 これ以上は俺が関与する必要はないかな? あってもメンドイからやりたくないし……。

 そして、ルイズが教室を爆発で混乱させるに至るのだが、俺が居た所為か他の幻獣たちはそれほど暴れなかっ

たため、被害は教卓一つに窓一枚。それと机と椅子がいくつかだった。

 まあ、埃と煤が酷いから拭き掃除の方が手間か?

 もっともそっちは才人とルイズにやらせ、俺は壊れた教卓などの修理をする。

 ここで俺の大工技術が発揮するのだが、ハルケギニアの木造工芸品は余り出来が良くない。これはまあ、工芸品の大半は貴族が錬金で作り出した物ばかりで、平民が作ったところで『平民が芸術をしようなどとは生意気だ』といって破棄されていったものばかりなのだろう。ゲルマニアではそんな事は少ないと思うが……。

 俺は鑿と槌で砕けた木面に溝を掘り、それを互いに繋ぎ合わせていく。それはまさしく匠の業。椅子と机は見事に修復が完了する。明らかに学院の机と椅子より見事なものが出来上がっている。

 教卓に関しては面倒くさいので、蔵の中から引っ張り出してくる。

 モチロン毎度お馴染みのアルミステンレス教卓だ。おそらくメイジどもはこの教卓に驚愕するだろう。特に土のメイジ。何せ自分たちの知らない分からない理解できない金属で出来ているのだから。

 まあ、所詮余談だからあまり気にする必要もないか。

 什器は俺が、拭き掃除と掃き掃除は二人にやらせたのだが、ルイズはろくに手も動かさないでしょんぼりと自分を自虐して悲劇のヒロインぶってる。それでも諦めないのが彼女の美点だ。

「分かったでしょ。私がゼロって呼ばれている理由が。何度やっても失敗ばかり。魔法成功率ゼロ。だから『ゼロのルイズ』」

 失敗が全部爆発って、よく今まで死人が出なかったな。

 あれか? ナチュラルに非殺傷設定なのか? それともルイズの爆発はギャグ属性だから死人は出ないのか?

「しかし、魔法学院も失敗したら爆発すると分かってて、室内で魔法の授業をやっているのか。有名なのは名前だけで中身は三流か。それとも阿呆なのか? 失敗したら爆発とは、良くそんな危険なものを貴族の子供に教えられるもんだ」

「言われてみればそうだよな。今までよく怪我人が出なかったな」

 俺の言葉に才人が賛同してくる。

 まあ、才人はこの世界の魔法の事を知らないから、俺の推論に頷いただけだが。

「何言ってるのよ。魔法が失敗しても爆発する分けないじゃない」

「じゃあ何でお前のは爆発するんだ? 俺から言わせて貰えばお前さんのは失敗したから爆発してるんじゃなくて、系統魔法を発動させようとしたから爆発したんじゃないのか? 現に俺や才人を召喚したんだし、契約も出来たんだ。結果を求めて、求めた魔法が発動しなかった事は失敗かもしれんが、魔法そのものは発動しているんだ。結果に対して過程の段階で問題が派生したから望んだ結果にならなかった。それだけだろう?」

 俺は、長年感じていたこの世界の魔法に対する疑問をルイズにぶつける。

「生憎と俺は魔法は使えないが、魔法魔術魔道に対する理論に関しては、研究機関(アカデミー)の人間より博識だと自負している。使えて出来て当たり前の人間には、使えない出来ない当たり前じゃない人間の感覚は分からんだろうが、だからこそ見えているものは多いんだぞ? お前が未だに魔法をマトモに使えないのは、認識の仕方が間違っているからだと俺は思うが?」

 少々言い過ぎているかもしれないが、俺は魔法は一切使えない。だからこそそれに対向する為に様々な視点や観点から試行錯誤をする。

 敵を知り、己を知れば、百戦危からず。

 余りにも有名な兵法の言葉だが、其処に極意がある。

「…………うるさい。うるさいうるさい、うるさいうるさいうるさーーーい!! 魔法も使えない平民が貴族に口答えするんじゃないわよ! 平民如きが貴族より魔法に詳しいわけがない! 理解できるわけがない! そんな事あってはならないことなのよ!」

 いやいや、何故そんな結論が出てくる? 

 てか、出ましたよくぎみーボイス。何時かは聞いてみたいと思ってはいたが、まさかこのタイミングだとは。

 しかし、少々言い過ぎたようだ……。

「もう知らない! アンタ他たちご飯抜き!」

 そう言ってルイズはさっさと教師から出て行ってしまった。

「なあ、今の少し言いすぎじゃないのか?」

 ありゃぁ、やっぱり才人もそう思ったか。

「かもしれんなぁ。まあ、この世界で生活していくなら貴族に媚び諂う方が楽だろうが、人としてまともに生きられないかもしれないぞ?」

「え? それってどういうことだ!?」

「この世界は良くも悪くも魔法至上主義で貴族原理主義だ。貴族じゃない奴は人間じゃない。平民は貴族の為に生かされ貴族が命じるならその全てを差し出さなければならない。まあ、ゲルマニアじゃあそんな考えは薄いから良いが、このトリステインは完璧に貴族社会だ。『貴族こそ全て』この考えがある限り平穏に生きていく事は出来ないだろう……」

 俺の言葉に才人は顔を真っ青にする。

 まあ、それも当然だろう。だが、俺は才人をそんな目に遭わせるつもりは毛頭ない。

 原作どおりなら才人はルーンの影響で、この世界に居る事を望むかもしれない。そうさせないために何らかの手段を講じなければ……。

 誰もが望むハッピーエンドは嫌いじゃない。だけどそれは結局奇麗事の範疇でしかない。何かを得るなら何かを犠牲にしなければならない。

 世界の法則にして理。等価交換。

 世界がそれを望むなら、俺は真っ向から喧嘩を売ってやろう。

 何せ俺は世界渡航者。世界と対峙する者して、世界を殺す者だからな。




 なんか、すんごくスケールのでかい事になったような…………まぁ、いいか。




 それはともかくとして、

「で、昼飯はどうするんだ? 飯抜きって言われたけど、俺は二、三日は食わなくても平気だが」

「あ。そう言えばそうだったな。……ってか、一寸待て! よくよく考えてみれば俺は関係ないんじゃないのか!?」

「まあ、八つ当たりだろう。同じ平民だからと言う理由でだろうがな。ま、厨房に言って訳を話せば賄くらいは分けてくれるだろう」

「だと、いいんだけどな……」

 とりあえず飯にしよう。








「やれー、ギーシュ! 平民に貴族がなんなのか教えてヤレー!!」

 さて何でこんな事になったのかは、言うまでもないだろう。

 事の起こりは十分程前。




 あの後、厨房に行って賄を分けてもらい、その対価としてケーキ配りに従事していたのだが……。

 あ、シルヴィは外で他の幻獣たちと遊んでもらっている。

 コツンと足に当たる感触に足元を見ると、紫色の液体が入った香水瓶。

 ってこれモンモンの香水ー! まさか、あれか!? 俺がギーシュと決闘する事になるのか!?

 まあ、とりあえず香水瓶を拾うか。

「あれ? どうしたんだ銀狼。その小瓶」

 後ろにいた才人から声がかかる。

 きゅぴーん!

 俺は一瞬で最良のひらめきをする。

「女子生徒の誰かが落としたんだと思う。才人、悪いが近くに居る女子生徒に、『この香水』を持って聞きに行ってきてくれないか? 俺はお前の分のケーキも配っておくから」

「分かった」

 何の疑いもなく俺から香水を受け取り、俺が示した『モンモランシーとケティが雑談しているテーブル』へ才人は持ち主を聞きに行った。

 後はとんとん拍子に事が進む。

 才人が香水を持ってモンモンに落とし主が誰か尋ね、その香水が自分がギーシュに渡したものだと気付くモンモン。
 ↓
 モンモンが聞き、才人が落ちていたと答える。
 ↓
 モンモン。ギーシュが自分がプレゼントした香水を、落とした事にも気付かない事に怒る。
 ↓
 その香水がどうしたと聞いてくるケティ。自分が渡したと話すモンモン。
 ↓
 彼女が紫色の香水を渡すのは特別な事と知っているケティ。『モンモランシー先輩もギーシュ様と付き合っているのですか!?』と驚愕のケティ。
 ↓
 『先輩も』に反応するモンモン。ギーシュが二股を掛けていたと察する。
 ↓
 ギーシュのところに行く二人の修羅。そこに『封を切ったワインボトル二本を持って立っている』俺。
 ↓
 俺の手にあるワインボトルを、「もらうわ」と言って持っていく二人。
 ↓
 ギーシュ。ワインとボトルでフルボッココンビネーションを喰らってK.O。
 ↓
 復活するないなや、拾った才人が悪いと八つ当たりする。
 ↓
 二股したお前が悪いと才人。貴族の礼儀を教えてやる。決闘だ!
 ↓
 今にいたる。



「よくよく考えてみれば、原因は銀狼なんじゃないのか?」

 あ、やべ。気付かれた。

「拾った俺が悪いなら、そもそもの原因は落としたギーシュが悪い」

 さて、そんな事より才人に武器を渡さないと。青銅相手に警棒では分が悪い。いくら黒鋼錬金鋼とはいえ鉄鞭だ。鋼鉄錬金鋼で作った刀なら話は別だが、素人に刀は扱いが難しい。

 俺が作った錬金鋼は剄じゃなくて気で復元できるタイプだから、一般人の才人でも問題はない。むしろ、ガンダールヴの能力でそこら辺も強化されるんじゃないか?

 まあどちらかといえばガンダールヴの能力は人間の肉体リミッターの解除の方が正しいか?

 心の震え? いや、この時はまだルイズに対する思いは少ないから、どちらかと言えば才人自身の怒りに反応したと言った方がいいか?

 原作じゃボコボコにされたサイトにルイズが泣いたのが最初のきっかけらしいけど、それ以外でも発動していたシーンはあったからな。

「ちょっと、アンタたち何やってるのよ!」

 と、そこに現れたのはツルペタピンクことルイズ。

「何って……決闘?」

「今すぐ止めなさいよ! 平民如きは何をしたって貴族には敵わないんだから!」

 ああ、もう五月蝿いな。喧しい事この上ない。ちと黙ってろ。

 問答無用で簀巻きにして猿轡をかませて黙らせる。

 俺は蔵から、鞘に収まった一振りの剣を渡す。デザインはオーファンの王子のバスタード・ソード。両手でも片手でも扱える剣だ。ロング・ソードでもイイかもしれんが個人的にバスターの方が好きなので。

 何処からともなく剣を出した事に回りの生徒たちは驚いているが、そんな事気にしない。

「才人。こいつを使え。ただし使うなら覚悟を決めろ」

「覚悟?」

「剣をとっていいのは、剣で討たれる覚悟のある奴だけだ」

 黒の騎士団の零のマスクっぽく言ってみる。

 才人も意味が分かったのか、顔を真剣なものに変える。

「まあ、難しい事を言うつもりはない。ギーシュの杖だけ落とすなり斬るなり折るなりすればいいだけだ」

「そうだよな、これって結局は人殺しの道具だもんな……」

 その言い方は一寸哀しい。間違ってはいないが……。

「力は振り翳すものじゃない。守りたいものを守るためにある。それを忘れるな」

「分かった」

 才人は頷くと、舞台へと進んでいく。

「ちょっと待ちたまえ。魔法道具(マジックアイテム)の使用は卑怯ではないか」

 俺が蔵から出したのが、魔法道具だと勘違いしたギーシュが文句を言ってくる。

「アレは何の効果も付与していない剣だ。それとも何か? 貴族は丸腰の平民にしか魔法を使って戦う事が出来ないのか? 戦場で態々相手に武器を捨ててもらってからでないと何も出来ないのか?」

 まあ、俺が渡した錬金鋼とナイフがあるから丸腰じゃないが……。

「……いいだろう。其処まで言われたらグラモン家の人間として認めないわけにはいかない。いいや! むしろそんな相手に勝てないようでは、軍人の家の者として恥だからね」

 ただの剣ならば負ける事はない。そう判断したようだ。

「武器の使用を承諾したと認識する。才人。相手も魔法を使ってくるという事を忘れるな。御伽噺のようにはいかないからな」

「分かった」

 互いに剣を、杖を構える。すでに才人のルーンは淡くだが輝きを放っている。

「ルールはどちらかが戦闘不能、もしくは気絶をするか降参を宣言した時点で終了とする。また、明らかに勝敗が決したと思われる時点で此方から終了を宣言させてもらう。双方異議はないか?」

「それで構わないが、なぜ君が仕切っているのかね?」

「この中で一番実戦経験があり、尚且つ止めるだけの技量があるからだ。それに、他の生徒では公平な勝敗を判断できないと思われるからだが?」

 俺の言葉に何人かの生徒は視線を鋭くする。

 悪いがこちとら三つの頃から森の熊さんと食うか食われるかの戦いをしてきたからな。

 俺が放つ闘気と殺気に、ギーシュは一瞬たじろぐ。

「平民が貴族を止められる筈がないだろうが!」

「そうだ! 平民の癖に生意気だぞ!」

 しかし、それに気付かない生徒たちは罵詈雑言を吐く。

「分かった。君に審判を任せよう」

 しかし、ギーシュが納得したのでとりあえずはざわめきは収まる。

 俺はゆっくりと右手を振り上げる。

「それでは……」

 両者が俺の言葉に意識を互いに相手に集中させる。

「……始め!」

 勢いよく振り下ろされた右手と共に、決闘の開始が告げられた。





 開始と同時に突っ込んだ才人の速度に驚いたギーシュだったが、即座に青銅のゴーレム、ワルキューレを作り出す。

 いきなり出現したゴーレムに今度は才人が驚く。

 生み出されたワルキューレは剣を持ったのが二体に、槍を持ったのが二体。

「これが魔法!?」

 驚きに足を止める才人に、剣を振り上げて襲い掛かるワルキューレA。

 しかし、才人はそれを剣で難なく受け止め弾き返すと、かえす刃でワルキューレを一刀の元に切り伏せる。

「な!? ワルキューレを一撃で! ならば!」

 ギーシュは更にワルキューレを三体生み出すと、最初に生み出しておいた三体を才人に仕掛けさせる。

 しかし、才人も落ち着きを取り戻したのと、最初の攻撃を感覚を掴んだのか、強化された身体能力に物を言わせて回避。そして一撃で倒していく。

 残ったワルキューレは盾と槍と剣、それぞれを装備したタイプ。

 才人は一気に残ったワルキューレに詰め寄ると、相手の武器ごと真っ二つにして倒す。

 策のなくなったギーシュは驚きを隠せない。

 才人は左手に剣を持つと、剣帯から錬金鋼をとりだし素早く復元。

 よく見てみると若干だが才人の気の量が上がっている。ガンダールヴの影響か?

 周りの生徒たちは錬金鋼に驚いているようだが、才人はそんなのに反応している暇はない。

 一瞬でギーシュの杖を弾き飛ばすとギーシュに剣を突き付ける。

 二人の動きが止まる。

「両者其処まで! ギーシュ・ド・グラモン。負けを認めるか?」

 俺はそこで終了を宣言し、ギーシュに降参か聞く。

「……ああ。負けを認めるよ。まいったな、こうも簡単に負けるとはね」

 俺は二人に近づきながら、才人に武器を収めさせる。

「魔法とはいえ、ゴーレムは人型だ。魔法での攻撃ではなく、ゴーレムでの攻撃が敗因の一つだな」

 俺の言葉にギーシュは苦笑しながらも納得の様子を見せる。

「二つ目は数の理を生かしきれなかった事だな。陣形をとるのも立派な戦術だ。仮にも軍人の家系なら意のままに行動させられるゴーレムを兵隊として扱う事が出来なかった時点で、負けは決まっていた」

「耳が痛いね。平民のくせにと言う前に、戦士としての言葉だから返す言葉もないよ」

 あれ? ギーシュってこんなに素直な性格だったか?

 もう少し、錬金鋼やバスターソードに対して文句を言って来ると思ったのだが……

「決闘とはいえこれも戦闘だからね、戦場じゃ文句を言った所で意味は無いからね」

 ぎ、ギーシュがまともな事言っている。

「これでも軍人の端くれだからね」

 まあ、本人が納得しているなら良いか。

「銀狼。剣、ありがとう。それと錬金鋼も。これがなかったら俺、彼を傷つけていたかもしれない」

 俺は才人から剣だけ受け取る。

「俺はただ道具を渡しただけだ。それを上手に使ったのは才人、お前だ。その行為は誇っていいはずぜ」

「そうだとも、それに仮にも僕に勝ったんだ。それは誉められて良い筈だ。そう言えばまだ、互いに名乗っていなかったね。僕はギーシュ。ギーシュ・ド・グラモン」

「俺は才人。平賀才人だ」

「変わった名前だね。それにその黒髪も珍しい」

「はは、よく言われるよ」

 ふむ、原作の親友フラグ発生イベントだなこれは。 

 さてと、あとは問題は回りのガ貴族どもか……。

「ギーシュ! なに平民如きに負けてやがる!」
「この貴族の面汚しめ!」
「そんなんだからグラモンは落ちぶれるんだ!」

 周囲からの罵詈雑言に、ギーシュも頭にきたのか怒りを顕にする。才人も今の物言いには頭にきたらしい。

「まあ、まて二人とも。周りのバカは戦いのタの字も知らない愚か者どもだ。相手にしない方がいい。たとえ戦場に出たって、平民の兵隊の後ろにコソコソ隠れて呪文を唱えて、ちんけな魔法を放つ事しか出来ない愚者なんだ。貴族と呼べないバカどもに構う事はない」

 あからさまに挑発と取れる言葉をはする俺。

 いや、昨日からルイズの行動や物言いに、ここのガ貴どもにいい加減頭にキテたんだよな。

「貴様! 平民の分際で!」
「平民が生意気なんだよ!」
「死ね! この平民!」

 まあ、無駄に高いプライドのせいで沸点の低い貴族どもは、すぐ魔法に頼っての暴力しか起こさないからなぁ……。

「才人! ギーシュ! 下がってろ!」

 俺は飛んできた火の玉を、何時の間にか拝借しておいった食堂のナイフ投げて迎撃する。

 ボーン!

 音を立ててその場で炎上した火球は、俺と生徒たちの視界を一瞬だが遮る。

 俺にはその一瞬で十分だ。

 手に持ったバスターソードを才人に投げ渡すと、すぐさま俺は魔法を放ったバカに向けてダッシュ。

 まさか自分の魔法が迎撃されるとは思っても見なかった生徒Aは、驚きの表情のままボケッと突っ立ている。

 爆炎から現れた生徒Aはそのまま俺の真空跳び膝蹴りを人中に受ける。

「ぐぶべらばぁ!」

 鼻血と前歯数本をぶちまけながら、吹っ飛ぶA。それに巻き込まれる生徒数名。

 着地と同時にすぐ隣で魔法を唱えていた生徒の手首を掴んで上に持ち上げる。

「く! は、放syぶぇ!」

 手早く顎に一発アッパーを打ち込み、更に回し蹴りで他の集団に吹き飛ばす。

 吹き飛ぶ生徒Bに巻き込めれる生徒数名。

 そこで、周囲に視線を廻らせると、後ろから才人とギーシュを狙う奴が居たのでナイフを投擲。

 刺さった場所を押さえながら涙を流して泣き喚き地面でのた打ち回る生徒C。

 と、そこで漸く俺に攻撃を放ってくる生徒二人。

 小さな風の塊と拳大の石が一つずつ飛んできた。それを俺は一歩横に動いて回避。

「バカな。僕の必殺の魔法が避けられた!?」

 たったそれだけのことなのに驚愕する生徒DとE。

 案山子相手しかしたことがないから、狙いも甘いし、動作も詠唱も稚拙だ。

 てか今のが必殺の魔法って、どんだ~け~(呆。

 呆然と突っ立っている隙にナイフを投擲。亜音速で投擲されたナイフは二人の生徒の杖を半ばから断ち切る。

 さすが魔法学院のシルバー製のナイフ。いい切れ味しているねぇ。

 右手に新たにナイフを取り出して次の獲物を探したとき、

「君たち! 何をしている! 今すぐ騒ぎを止めなさい!」

 本塔から走って出てきたコルベール教師が、大声を上げる。

 おそらくギーシュが他の生徒たちから罵声を掛けられた辺りから、慌ててやってきたのだろう。

 まあ、その時にヴェストリの広場を見ていた二つの視線が感じられなくなったしな。

「何を言うんです! コルベール先生! あの平民が我ら貴族に刃向かって来たのですよ!」

 確かに売り言葉に買い言葉を言ったのは俺だが、先に手を出したのはそっちだぞ?

「黙りなさい! とにかくこの場は私が預かります。ミスタ・ギンロウ。貴方も矛を収めてください」

 まあ、これ以上下手に騒ぐと厄介だから、これくらいにしておくか。

 ああ、そう言えば簀巻きにして放置されてたルイズは、決闘開始早々にキュルケがヴェストリの広場の端まで運んでいってそのまま観戦させていたので、静かなものだった。





 さて、次はデルフリンガーか。時間は四日後の虚無の曜日だったな。

 その前にフーケともう一回軽く接触しておくか……。








 ピコーン。
 『雪風と風韻竜のお兄様フラグ』『微熱と火竜山脈の火蜥蜴のダーリン』『オルレアンの親子丼フラグ』『ガリアの姫君姉妹丼フラグ』が立ちました。
「一つは駄目だろう。倫理的に……」






 後書
 タイトルと本編は殆んど意味がありません。
 いや、題名つけるのメンドイんで……。
 決闘シーンは殆んどまともな戦闘描写がなかった。
 というか銀狼相手じゃ勝負にならないし。
 あと会話が少なくてすみません?
 それとプライミッツの娘の名前が決まりました。案を下さった名前は他の何かに使おうかと……。




 今回はネタがこれといってないのでNGシーンでも。



 朝食にて
 銀狼が外へ行かずにそこで飯を食べるときに
「始祖何とかと王には感謝をせず。今日この日の糧となる贄に、作りし者に、そして世界と天と大地に感謝を。そして、命を喰らう事に謝罪と感謝を。いただきます」
「始祖ブリミルと女王陛下に感謝をしなさい!」
「何もしてない相手に何を感謝しろと?」
「あんた食事抜き!」
「ふっ。食えない事の辛さを味わうがいい」
「え? あたしのご飯は?」
 銀狼。神速クロックアップで既に完食済み。



 ネウス
「ふむ、ぷちネウスでも作ってみるか……」
「くう~ん(此処は学園じゃなくて学院だよ)」
「メイド服にデフォルメ二頭身のシルヴィ。いいな」
「くおん(その次はメガネウスだね)」
 ネウス違い。



 才人に剣を1
「才人。これを使え」
 銀狼が渡したもの。
 黄金の剣にして、振るえば必ず勝利を約束した剣。
「いや、流石に約束された勝利の剣(エクスカリバー)は拙いだろう」
 対城宝具。学院が吹き飛ぶため却下。
 真名解放はガンダールヴのご都合主義で可能。



 才人に剣を2
「才人。これを使え」
 銀狼渡したもの。それは、白い筒の発信端末だった。
「いや、エネルギーはどうするんだよ」
 ビームサーベル。エネルギーがないので却下。



 才人に剣を3
「才人。これを使え」
 銀狼は一枚の栞を大剣に変えて才人に渡す。
「いや、俺悠二じゃないし」
 吸血鬼(ブルートザオガー)。名前がややこしいので却下



 才人に剣を4
「才人。これを使え」
 銀狼が渡したのは、虎のストラップのついた竹刀だった。
「俺、どこかで選択肢間違えたの!?」
 妖刀虎竹刀。ビジュアル的に却下。


 才人に剣を5
「才人。これを使え」
 銀狼が渡したのは、フルメタル軍曹の愛用の獲物だった。
「ただし。撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ!」
「実はその台詞が言いたいだけだろう?」
 グロッグ17。今更なネタなので却下。




 次回「魔剣とサイト。盗賊フーケと怪盗ウラン三世」
 じかいもおたのもみしに!



[8671] 第五話「デルフリンガー。この剣もある意味ご都合チート武器」
Name: 銀色っぽい何か◆48e73465 ID:9d5b0d85
Date: 2009/06/08 21:21




   多次元世界渡航漫遊記



   第五話「デルフの能力もある意味チート。ルパンとアバンとウランって何か似てるよな」








 原作と違って重傷を負う事も、水の秘薬を使う事もなかったので、時間と金が余った。

 よって、サイトに少し稽古をつけてやる事にした。

 ちなみに作者のパソコンが『さいと』で変換しても『才人』にならないので以降サイトで通すらしい。打ち分けなきゃいけないのがメンドイらしい。




 トリステイン魔法学院ヴェストリの広場。

 現在時刻は十時を回った所。

 俺はいつもの服装、いつもの装備。そして右手には木刀が一本。

 その俺の足元には息を乱して荒い息を上げるサイト。

 その手には硬くて、黒くて、長い物体。……言い方が悪かった。

 その手には黒鋼錬金鋼の警棒とサバイバルナイフ。

 左手のガンダールヴのルーンもその輝きを失っている。

 現在俺は、サイトの強い要望もあって彼に戦いを教えているところだ。

「ま、サイトも分かってると思うが、いくら身体能力が上がって武器の使い方が分かっても、所詮それは能力であって技じゃねぇ。スキルとアーツの違いは、小さいようで大きい」

 何処ぞの大尉も言っていたな。

「今のお前はルーンの力にオンブにダッコだ。しかも武器を持つと強制的に発動しちまう。それじゃあ、何時まで経ってもお前が強くなった事にはならない」

 原作じゃあ木刀とか殺傷能力のない武器には反応しなかったのだが、こっちのルーンは警棒にも反応した。

 多分本人の認識で、武器だと思ったものに反応するんだが、下手に戦士や武術家の心得を教えると自分の体そのものに反応しちまう。そうなったら常時発動状態で、天上天下の生徒会長の高柳兄みたいに、常時肉体や心臓、さらには脳細胞に余計な負荷が掛かりっぱなしになってしまう。

 そうなったら、サイトはその負荷で寿命を一気に減らす事になりかねない。

 理想的なのは自分の意志でルーンの発動を制御することだが、普通の脳神経のサイトには少々無理な事だ。

 蝦夷(えみし)の拳法。九頭竜みたいに脳のフィルターを取り払えば可能かもしれないが、そうしたら今度はそれを制御するために長い期間訓練しなければならない。舞踏会が四日後に迫っているとなるとマチルダとの対決も四日後だ。

 え? 何故俺がロングビルの事をマチルダと言っているかって?

 本人から言われたからです。

 訳は昨日の決闘騒ぎの後から始まる。









 
 決闘騒ぎの後、学院長室に呼ばれた俺は、そこで杖を構えた教師陣に取り囲まれた。

 装備は取り上げられてない。お前らメイジ以外を嘗め過ぎだ。

「それで? 態々意味のない威嚇と、発動できない魔法を放とうとしながら、俺に何の用だ? オールド・オスマン学院長」

「貴様! 平民なら平民らしい態度をしたら如何だ!」

「まあまあ、落ち着きなさいゲドー君」

「ギトーです!」

 はぁ、いちいちバカ貴族に付き合うのも面倒臭い。

 ――ッキン。

 俺は腰の太刀の鯉口を切ると一瞬で、この場にいた杖を突きつけていた教師の杖を切り刻んだ。

 ただし、教師どもには俺が左手で鯉口を切って収めた事しか分からなかっただろう。

 突然の出来事に、驚愕する教師達。

 霞月(かげつ)流 居合 瞬円閃(しゅんえんせん)

 多対一用居合術で本来は敵軍を突き進みながら使う技だ。

 右手に掛かる負荷がでかい為多様は出来ないが室内で囲まれたときは非常に重宝する。

「オールド・オスマン。こんな下らない事をする為に態々俺を呼んだのか? だったら此処に居る者全員斬り伏せてもいいのだぞ。其方が呪文を一言唱える間に、俺は全員を三回ずつ切り刻めるんだからな」

 少々高圧的な脅迫だが、この場ではこれが一番効果的だ。

 何せ魔法より速いのだから。

「ほっほっほ。こりゃたまげたわい。お主メイジ殺しか」

「戦場ではメイジは、矢か槍か剣で死ぬ確率の方が高いが?」

「なるほどの。ギンロウ・カンナと言ったかの? トリステイン魔法学院へようこそ。杖を向けての歓迎、その非礼を詫びよう。わしの事は知っとるようじゃの」

「決闘を覗いていたのは貴方だろう? 詫びられたなら不問にしよう。騒ぎを起こすのは面倒臭い」

 騒動は嫌いじゃないけど、後腐れないのが好き。

「では諸君、退出を。彼とはわしが一人で相手をしよう」

「そんな! 危険です、オールド・オスマン!」

「メイジ殺しの野蛮な平民ですぞ!」

 ……お前ら一回地獄を見せてやろうか?

「なに、彼は暴れるつもりはなかろう。それに杖のないそなた達で彼に勝てると?」

 オスマンの一言に、渋々退室していく教師達。

 勿論コルベールも退室する。

「それで。俺に何の用なんだ?」

 立ったままは疲れるので、ソファに座って話を聞く。

「実はのう、決闘騒ぎの後にお前さんが起こした乱闘で、傷を負った生徒たちから、お前さんを処刑しろとの声が上がっておるんじゃ」

 アホかそいつら。自分から攻撃を仕掛けてきて、怪我をしたから俺を処刑したいって。

「貴族に刃向かった平民は、始祖ブリミルの高貴なる血筋に傷を負わせたも同然だ。だから殺せ?
 バカかそいつ等は。親の権威に脛をかじって、事あるごとに貴族貴族貴族。貴族と言わなきゃ何も出来ない連中に、何だって俺が従わなきゃならない?」

「お主の言う事も尤もなんじゃが、彼らにも威厳や対面と言うものがあるからのぉ」

「怪我をするのが嫌なら力をふるんじゃねぇよ。実際は十人がかりで挑んで何も出来なかったって他の貴族に知られるのが恥ずかしいだけだろ。
 貴族のプライドの為に流させられた力無き者の命の方がよっぽど大事だ」

「耳が痛い言葉じゃ。まあ、お主がそういうのも分かっておったからな、そこでお主に監視を付ける事になったのじゃよ」

「判断としては妥当だが、本人のいない所で決められても困るな。まあ、ここのガ貴族どもからしたら、只でさえ厄介で目障りなのに、教師が監視しているから手も出せなくて苦虫を噛み潰すしかない。と言った処か?」

 別に監視されてても問題ないけどな。影分身使って監視を誤魔化せるしね。

「で? 監視は誰が?」

「うむ。コルベール君とミス・ロングビルじゃ」

 おお、俺個人的には最良の人選。

「分かった。とりあえずオスマン殿の采配には感謝しよう。換わりと言ってはなんだが一つ頼みがあるのだが」

 折角だし、俺から一つ要望を出すか。

「あまり大した事は出来ないが、一応聞こう」

「部屋を一つ用意して欲しい。ルイズの部屋に三人で寝泊りするには少々狭い。それに俺、アイツ嫌い」

「まあ、部屋くらいなら何とかなるわい。一応お主も彼女の使い魔なんじゃし、そう邪見にせんでもいいじゃろぅ」

 ああ、そう言えばルーンを確認させて無いから俺が彼女と契約できない事を言ってなかったな。

「言い忘れていたが、俺はルイズと契約をしていないぞ。というか俺は自分に干渉しようとする魔法を消滅させられる体質だから、ブリミルだろうと契約は出来ないがな」

「何気にすごい事をさらりと言ってくれるのぅ……(汗」

「まあ、周りが五月蝿いからフリだけはしよう。でも、人の尊厳を踏み躙ろうとしたら、俺は容赦なく彼女を見限る。人の上に立たせて貰っている貴族なら、他者を気遣い敬う事が出来て当然だからな」

「やれやれ、耳が痛いわい。お主は一体何者じゃ?」

「神無銀狼。世界を渡り歩く者、ワールドウォーカーさ。自分の知識が世界の全てじゃない。自分の常識は世界の常識には通用しない。自分が見てきたのは世界の極わずか。人は世界に生かされている」

 オスマン程の人物なら、俺が何を言いたいのか分かるだろう。

「……なるほどの。確かに世界は広大で、人はまだ世界を知らぬか」

 伊達に神殺しで、神族の末席に名を連ねてないよ? 

 『神魔滅昇の者』なんて他の神族や魔族から恐れられていないからね。

 死神とも言うけど、俺は輪廻転生に還す者の方に近いかねぇ。

 長生きしていろいろやり過ぎたかな……。








 その後、俺はロングビルに連れられて空き部屋の一つに案内されたんだけど、その時に前日の盗みの下調べのことを口にしたら、そこで一悶着あったんだけど、軽くベッドに押し倒して何でフーケやってるか尋問して(手は出してません)、彼女の本名と盗賊の理由と故郷の妹たちの事と貴族を怨む理由を、涙流しながら語られたから、思わず蔵から宝石千カラット分と砂金一リットルを出資してしまった。

 女性の涙は個人的に苦手です。

 それに俺も別の多次元世界で、孤児院を経営したり出資したりしたから、彼女の気持ちは分かる。

 あと、何故か知らないけど、俺と眷属の契約を結ぶと何故か一度幼退化してしまい、そこから相応の年月をかけて育て上げなければ、俺の従者として仕える事が出来ないのだ。

 話がそれた。

 その後、人のシャツ握り締めて顔うずめて泣いたら、泣き疲れたのか急に寝ちまいやがった。

 仕方なくベッドに寝かしつけて、俺は縮地でゲルマニアへ跳んだ。

 するべき事はそう多くない。

 一つ目は『まとも』な孤児院をいくつか探しておく事。

 これは、アルビオンで戦争が始まれば確実にウエストウッドも被害を受ける。だからそうなる前に良心的な貴族が経営ないし出資している孤児院を探して、そこに入れる必要がある。

 仲介役に関してはキュルケにでも頼もう。

 何、やり過ぎない程度の媚薬や惚れ薬でも渡せば喜んでやるだろう。

 二つ目はゲルマニアの地理を把握する事。

 実際ゲルマニアまでは、目視知覚距離をフル活用しての連続縮地だ。でゲルマニアについたら多重影分身の術使って、ゲルマニアを一斉調査。孤児院と地理関係を同時に処理した。

 三つ目はゲルマニアの貴族の意識調査のようなもの。

 ゲルマニアは成り上がりの軍事国家とはいえ、やはり国の中核となっているのは貴族だ。まあ、トリステインと違い、金で土地を買ってそこを統治できれば貴族に慣れるのだ。

 血筋と家名と伝統と魔法だけに固執しているトリステインと違い、成果に対し相応の酬いがあるのがゲルマニアだ。『平民だから』は理由にならない。

 まあ、結果はトリステインよりはマシだが、やはり多少の格差はあった。でも、成り上がりの貴族は大なり小なり平民の苦しみを知っている。

 そして孤児院だが、驚いた事にツェルプストー領に中々の孤児院があった。

 獲らぬ狸ではないが第一候補に入れておこう。

 まあ最悪、俺が金にモノを言わせて領地を買って、其処に住まわせれば良いか。

 統治はマチルダかタバサの母親かイザベラにでもさせるか? 

 原作だと全員行き場所が無かった気がするし。

 マチルダは言わずもがな、タバサの家は母親が例の状態だが、俺の持ってる秘薬をいくつか使えば治るだろう。治った後は青髭ことジョセフに狙われるからって理由で。イザベラはタバサが復讐を果たしたら、身の保身は問題ないだろうが心の問題ってことで。もともとガリアの騎士団を運営していたのは彼女だ。おまけに魔法意外に関してはルイズと似たような影で努力するタイプ……だったはず。

 タバサとイザベラに関してはまだ先だから、マチルダが適任か?

 領民の方は戦争で行き場の無くなった難民を受け入れれば問題ないか。金と食料は“有る所から持って来ればいい”だけの話しだし。日用品? メイジの傭兵に金払ってやらせんべ。むしろ、楽でおいしい仕事だからそれほど文句は言わんだろう。

 傭兵もついでに常駐させとけば治安もそれなりに大丈夫だろう。

 金? 何処の世界に行っても純金と宝石だけは殆ど価値が下がらないんだよね。

 ハルケギニアだったらオリハルコンやミスリルなどの魔道貴金属の類も高値で売買できるだろうし。

 はっ!? 気が付けば国作りを計画してた……。

 そして色々と調べた俺は、早朝に自室に帰ってきた。

 で、部屋の扉を開けた途端、何故か上半身裸のマチルダとエンカウント。

 悲鳴を上げる前に遮音結界張ってドアを閉める。

 ただ、徹夜+多重影分身の情報処理で少々判断力が狂っていた俺は、部屋の内側に逃げてしまった。しかもしっかり鍵までかけて……。

 そして暴れだすマチルダ。それを静めるために取り押さえようとする俺。そしてまたベッドに押し倒す。ただし今度は銀狼がした。

 昨日の出来事に、自分に共感できる銀狼からの行為に、その時生まれた初めての異性への意識。さらに、自分の格好に現在の体勢。太腿に感じる、自分の裸を見て反応した生理現象。

 そして、一緒に倒れたときのお約束な、むちゅ~、状態。

 マチルダの思考は混乱の頂点に達して……。

『…………は、……初めて……なんだ。…………や、優しく……しておくれ……』

 ピッキーーーンッ!!! わおおおぉぉぉぉん!!







 ……後は、ご想像にお任せしよう。

 まあつまり、そ~ゆ~こと。







 で、宝物庫の件に関しては好きにやらせることにした。

 個人的に『破壊の杖』を見てみたいのが本音で、後はここの貴族どもの目を覚まさせる事……にしたいんだけど現実逃避しそうだなぁ~。

 まあ、いいやバカ貴族どもに関しては俺の知ったこっちゃねぇし。

 さて、サイトの訓練の再開するとしよう。お次は頭と精神を鍛える為に、海兵隊式でいくか。

「よし、十分の休憩終わり。オラァ! とっとと起きやがれいっ! ジジイの●●みてぇに●●させていもしない●●で●●するようなファ●キン●●が! 次は学院城壁周り丸太を担いでタイヤ引き三十週だ!」

「ま、待ってくれ。流石にこれ以上やったら死んじまう」

「誰が口答えしろといった! 返事はイエスで、頭とケツにサーを付けろ!!」

「サ、サー・イエス・サー」

「声が小さい! そんなんじゃ●●の●●にすら負けるぞ! もう一回!」

「サー! イエス! サー!」

 う~ん。思ってた以上に気持ちいいなこれ。

 あとは鞭でもあれば完璧か? サイトは犬だし。

 ……今度試してみるか。










 更に二日後の虚無の曜日前日。

 アレからキュルケとタバサに、マルトーとシエスタとの邂逅も済ませた俺は、今ルイズの部屋に居る。

 唐突に言ってくるの分かってたが、本当に唐突だった。

「明日。トリスタニアまで買い物に行くわよ」

「そうか、逝ってこい。土産は地酒で構わん。ただし三種類は買ってこいよ」

 俺はサイトに地球の勉強を教えながら(毎度お馴染みの机と椅子にお約束のホワイトボード)指し棒でボードに書かれている一文を指している。

「何言っているのよ。アンタたちも行くのよ。使い魔なんだから当然じゃない」

「行きたいなら一人で行けば良いだろう? 使い魔だからというのは理由にならんな」

 マジックで文章に説明文を書き足し、所々空白を作る。

「何言っているのよ! 使い魔はメイジの手足も同然なんだからアタシの言う事を聞きなさいよ!」

「たかが人間の、しかも貴族の娘如きの言葉に俺が従わないといけないんだ? 第一俺に命令していいのは俺が認めた女神。月霞神(げっかしん)只一人だ」

 ちなみに月霞神とは、俺の生まれ故郷の月霞界の唯一神の事だ。彼女の役目は月霞界の安定。アンゼロットみたいなものだと思ってくれればいい。性格はずうううっっっとまともだがな。

 ちなみに俺は彼女に仕えた月霞十三神の一人、月明の銘を承りし者だった。既に排席の身だが未だに俺の場所だけは空席らしい。やれやれだぜ。

 はいサイト~。ここに埋まる単語は何かな~?

「女神? 月霞神? そんなものが居るはず無いじゃない。それに神は始祖ブリミル様だけよ」

「ただの人間が神になれるわけ無いだろう? お前たちが勝手に神聖視している、あのバカがそんなタマか。ヤレヤレ、勝手に祭り上げられるとは、哀れだぜ」

 前の文章だけじゃなく、後ろの文章にも答の導きはあるからな~。

「あああアンタ! 始祖ブリミル様を侮辱するなんて!? 自分が平民だって分かっているの!?」

「平民以前に俺はハルケギニアの人間じゃない。それに年上にモノを頼むならそれ相応の敬意を見せろ。自分が貴族だからは理由にならないからな」

 よし、今日はココまでにしとこう。起立、礼、解散。

 俺はちゃっちゃと蔵に勉強道具をしまうと、勉学後の一杯をサイトに注ぐ。やっぱ緑茶だよな。

「ついでに言っておいてやるが、されて当たり前、してもらって当然という考えでいるうちは、君は何時まで経っても立派なメイジはおろか貴族にすらなれないからな」

 まあ、今のルイズがこの言葉に気付けることは無いだろう。

 その言葉とともに、俺は部屋から出て行く。

 ドアを閉めた途端、部屋からルイズの金切り声が聞こえたが無視。

 サイトが犬に目覚めるか、マゾになるかは多少見ものだろうがな……。









 翌日、ルイズはサイトと一緒に馬に乗って王都へ出かけて行った。

 そう言えば昨日、俺の部屋の前にフレイムが居たが挨拶だけして部屋に入った。

 フレイムの切なげな泣き声に罪悪感が芽生えたが、気にしない気にしない。

 さて、俺も王都まで行くか。ルイズの冷かしとサイトの武器選びにデルフの一見に……。

「カモン・バーニィー!」

 乗り物の調達と言えばまずはコレ。

 嘘だといってよ、を付けるとザクが出てきそうだがそれは今度試してみよう。

 ……………………。流石に来ないか。

 俺は早々に意識を切り替えると蔵からハーレーを出す。

 モデルはタ●ミネ●タ●2に出てきた、シュワちゃんが乗ったあれ。

 さて、行くとしますか。








 王都までハーレーを走らせる事一時間。

 途中馬を二頭ほど追い抜いた気がするがまあいいか。

 俺は町の外れにある岩陰にハーレーを止める。さらにシートを掛けて認識阻害の結界を発動。

 そして俺が町に入ろうかとした時だった。

「はぁ~い、ギンロウ。こんな所であうなんて奇遇ね」

 あれ? 何でキュルケとタバサが居るんだ?

 いや、居る理由はルイズとサイトだろうが、あの二人はまだ到着に時間が掛かるぞ?

 少し離れた所でシルフィードが休んでいる気配を感じる。どうやら俺に追い付くために急いだ所為で疲労したようである。

「奇遇といえば奇遇だな、二人は何を買いに来たんだ?」

「アタシはギンロウが王都まで行くのをみたから追いかけてきたのよ。タバサはあたしの付き添い」

「せめて着替えさせてから来いよ」

 パジャマ姿のタバサをみるのは初めてだが、なかなか可愛い。ロリではないぞ。

「それでギンロウは何を買いに来たの」

「なに、ハルケギニアの武器に少々興味があってね。どの程度なのか見に来たのさ」

 まあ、ハルケギニアでは金属製の武器はメイジが錬金で作っているから、おそらく出来はあまり期待できないだろうが。

「じゃあ、アタシからギンロウに武器をプレゼントさせてくれない?」

 あれ? もしかして俺がキュルケフラグを立てちまった? 

「気持ちは嬉しいが、欲しい物は自分で手に入れたい。それに、こちらの武器に俺の目に適うモノが早々あるとは思えんしな」

 武器を知らないメイジが、まともな武器を作れるとは思えない。おそらく殆どが見た目ばかりのナマクラだろう。

「それに今回は街の視察も兼ねてだ。余計な荷物はあまり持ち歩かない方が動きやすい。すまんな。今度暇なときに付き合おう」

 俺の言葉にキュルケはため息をすると、諦めの表情を浮かべた後に、

「じゃあ、デートしましょう!」

 何故にそうなる。

 第一そうするとタバサはどうなる。

 普通に考えてお邪魔虫だぞ。

「大丈夫よ。タバサはそんな事気にしないから」

 と言っているが、そこのところどうなんだ?

「……後を付いて行くだけ。気にしないで」

 さいですか。じゃあ、とりあえず行くとしますか。










 あの後武器屋で俺達と鉢合わせたルイズとサイト。

 なにやら五月蝿く突っ掛かって来たけど、適当に受け流して武器選びをした。

 そしたらとんでもないものが出てきた。

 刀身は大した事は無い普通の鋼の刀身。驚いたのは柄の方だ。

 使用者の意思力と想像力で刀身の大きさが変わる武器。

 『烈光の剣』。もしくは『ゴルン・ノヴァ』と呼ばれたその武器が今、俺の手の中にあった。

 なして光の剣さがこなえな所にあるんや!?

 これ、ロード・オブ・ナイトメアが回収したんじゃなかったのか?

 外見完璧に光の剣だし。ちゃんと針で刀身と柄を分解できる穴もあるし……。

 サイトの方はデルフリンガーを買うようだ。

 怪我をしてないからルイズも財布は軽くない筈だ。

 と思ったらエキュー金貨百枚しか持って来てなかった。

 どうやら剣の相場を知らず、これだけあれば足りると思ったらしい。

 ちなみに1エキューを日本円に換算すると二万円相当。

 まあ、大剣が二百の相場だから確実に足りないが、デルフは半分の百だ。さらに其処で俺が交渉して値切って貴族に頼む処理代分も値切らせたら六十で買えた。

 デルフはあまりの安さに少々凹んでいたようだが、六千年ぶりに本来の使い手の元に来たのだ。

 剣として最高の使い手に使われるのだ、感謝ならともかく文句を言うとは……。叩き折るぞ?

「うお!?」

「どうした? デルフ」

「今なんかものすげえ恐怖に襲われた気が……」

「気のせいだろ?」

「……だといいんだがよ」

 そんな事を言っていられるのも今のうちだよ? デルフリンガー。

 せいぜい余生を楽しみたまえ。

 それはそうと、この光の剣だが、

「刀身部分は要らないから、柄だけ売ってくれ。10エキューでどうだ?」

「なに言ってるんですかい。柄だけを売る武器屋が何処にあるんですか。第一刀身だけを取れないのにどうやって」

 俺は針を一本取り出すと例の穴に入れる。

 ポロリと音を立てて抜けた刀身に武器屋の店主は目を見開く。

「と、取れたーーーっ!」

 まあ、彼が驚くのも無理ないだろう。ハルケギニア製の剣は、基本的に柄の部分まで刀身と同じ金属で出来ている。後は其処に布などを巻くだけ。

 刀工技術がないハルケギニアでは、メイジが柄も一緒に作る。そのためこのように分解する事が出来ないのだ。

 店主は外れた刀身と柄だけを見比べている。

「……で? 刀身と柄が分解できてしまうハルケギニアの剣で、あってはならない事が起こる剣を売っている事がばれたら、この店はどうなるかな?」

 言っててなんだが、随分と無茶苦茶な事を言っている気がする。

 まあ、いいか。うまく交渉すれば。

「俺としてはこの柄を売ってさえくれれば黙っているが、刀身まで買わされた日には、何処かの酒場でこの剣を見世物にして、何処で買ったかをうっかり喋ってしまうかもしれないな。俺が欲しいのは柄だけだから、柄だけ売ってくれたらそんな事は無いんだがなぁ……」

 嘘である。

「わ、わりやした! 金貨8枚で結構です!」

「あんがとさん」

 ただし、俺と店主の会話がわかっていないのか、ルイズとサイトは頭をかしげている。

 キュルケは柄だけの武器を指して笑っている。

 タバサだけは外れた刀身を眺めている。どうやら『場違いな工芸品』の違和感に何か感じたようだ。

 買った光の剣はベルトの右側にでも差しておくか。右側はあまりモノを差したくないが、コレなら鞘が要らないので戦闘中は問題ないだろう。いざとなったら蔵に……ってああ!? しまった! こいつ本当は高位魔族の一種だった!

 ……ってよくよく見れば魔族の意思は感じなかった。ただ、微弱ではあるが何らかの意志をもった武器ではあるようだ。

 喋れないだけか?










 さて、今夜だったはずだ、盗賊フーケの出番は。

 でも現在、俺が半分骨抜きにしちまったからな……。

 上手く説得して学院を襲ってもらうか……。

 まあ、マチルダが捕まるような真似はさせないがな。

 チートを舐めんなよ。

 ご都合主義? 笑いたきゃ笑いやがれ!

 勝てば官軍!














 後書
 とりあえず第五話投稿。
 思ってた以上に文章が増えた。
 ってか話が中々進められない。


 今回のNG&ネタ

 タイトル
 怪盗三世とDQダイの先生。三つ目は放射能物質。
 ところで劣化ウラン弾使ってるエヴァって環境汚染は大丈夫なのか?

 海兵隊式罵り
 軍事モノを書いてる作品なら一度は出てきている物言い。
 本場のはもっと凄いらしい。
 海外旅行で海兵隊の訓練を見学した友人談。

 アンゼロット
 ナイト・ウィザード
 『返事はハイかイエスでお願いします』
 は、ある種の名言。拒否権ないし……。

 カモン・バーニィ!
 スター・オーシャンのお決り台詞の一つ。
 ただ、見た目ものすごく揺れそう。

 ハーレー
 作中の片手での猟銃の次弾装填は一度やってみたい。
 ケンイチの親父さんもその技能の持ち主。

 光の剣
 スレイヤーズの武器
 小説、漫画、アニメで結末が違う変わったキーアイテム。
 ビームサーベルやライトセイバーに並ぶ浪漫武器。


 ミスタ・ギトー1
「まあまあ落ち着きなさい。ガトー君」
「ギトーです! 核弾頭はいただきません!」
 ソロモンの悪夢。アナベル・ガトー

 ミスタ・ギトー2
「まあまあ落ち着きなさい。バトー君」
「ギトーです! 両目は天然です!」
 鋼殻機動隊公安九課。バトー

 ミスタ・ギトー3
「まあまあ落ち着きなさい。サトー君だかゴトー君だかイトー君」
「ギトーです! 佐藤でも後藤でも伊藤でもありません!」
 『○○とう』な発音の日本の苗字。

 ミスタ・ギトー4
「まあまあ落ち着きなさい。ムトー君」
「ギトーです! 武装錬金は持ってません!」
 武装錬金。武藤カズキ。




 次回『怪盗と舞踏会』
 今度こそ予告どおりの内容に……。



[8671] 第六話「花より団子。舞踏会より月見酒」
Name: 銀色っぽい何か◆48e73465 ID:9d5b0d85
Date: 2009/06/02 05:41











   多次元世界渡航漫遊記



   第6話「花より団子。舞踏会より月見酒」










 トリスタニアから帰ってきたとき、つい少佐ネタをやりかけた。

 いかんな、アレは場所を弁えないと大変な目にあう。

 ちなみに帰り道、シートの後ろにキュルケを乗っけて帰ってきました。

 走り始めは50キロ程だったがそこから徐々に速度を上げていった。

 最初はハーレーの速度に驚いていたけど、数分で時速100キロにも慣れた。

 背中に当たる感触が中々タマリマセンでした。

 そう言えばハルケギニアってブラジャーが無いらしい。

 聞いたら何それって聞き返された。キュルケもマチルダも。そう言えばシエスタもドロワーズだったな。

 学院についた時は、キュルケは興奮の汗でサクランボが薄く透けて見えていました。眼福眼福。

 無論、タオルを渡して隠してやった。返事はウインクだった。まだ乙女ではあるが成長の仕方によっては将来『良い女』になるだろう。

 ハーレーは学院の一キロほど手前で止めて蔵に隠した。

 キュルケは驚いていたが、使い魔の能力って事で納得してもらった。

 ……あ。町でもこの方法をとれば、態々結界張らなくても済んだじゃないか。

 まあ、いいや。この世界でも俺が術を行使出来るか確認できたし。








 キュルケは俺がフラグを立てたようなので、塔の外での決闘が起こることは無かったが、ルイズが魔法の練習をしているらしい。

 俺も光の剣の具合を確かめるため、広場の端の方でサイトと稽古中。

「ほら、サイト。剣は腕で振るんじゃなくて、体全体で振れ。バットと同じだ、腰だ腰」

 デルフが光の刀身に弾かれるたびに悲鳴を上げている。一応人体には影響の無い出力なんだがな。

 振ってて気付いたんだが、この剣。名前はラヴィス=カノンと言うらしい。

 らしいと言うのも、この剣には驚いたことに人格があったからだ。

 とりあえず刀身を復元してみようかと思って、気力とか霊力とか色々試してみたら、

「問います。貴方が私の主ですか?」

 ってメッチャさくらチックな声で聞いてきて驚いた。

 どのさくらって?

 剣でさくらと言ったら真宮寺家のさくら嬢ちゃんしかいないじゃないか。

 つまり横山さんなわけですよ。

 俺はノインよりサミーの方が好きだがな。

「とりあえずはイエスになるが、君にとっての主とは『何』だ?」

 大抵、意思ある武器は持ち主を選ぶ。所有者に技量が足りない場合は所有者を喰らうか、非業の死を遂げるだけである。

「私が武器としての本懐を遂げるその日まで、私の全てを引き出してくれる事です。貴方は長い眠りに就いていた私を起こせました」

 まあ、彼女を起こす事が出来たのも、おそらく俺だけだろう。

 彼女を起動させるのに必要なのは、一定値以上の戦闘力と法撃力。

 法撃力とは、使用者の内側ではなく外側にある法力を、どれだけ操れるかによる。世界によってはコレをフォトンというところもある。

「このハルケギニアについてから数千年。誰も私の力を扱える事も無く死んで逝きました。しかし、貴方だけは私を起動させ本来の力を発揮させた」

 といっても法力を注いだのは偶然である。幾つか前にグラール太陽系によった時に、テクニックは使えなかったがスキルとバレットのフォトンアーツはマスターしてあったので、エネルギー系の武器だったらそれも有りかなとフォトンを注いだら、見事に起動したというわけである。

「私の名前はラヴィス=カノン。どうぞ、ラヴィスと及びください。マスター」

 ありゃりゃ、マスター登録されちゃった?

「この世界において、フォトンを扱えるのが貴方だけであり、尚且つ貴方は私の能力を完全に引き出せる技量、才能、経験、そして心があります」

 いや、まぁ、戦闘経験は『世界一』有るけどさぁ~。

「どうかお願いです。私に武器としての本懐を遂げさせてください。ただ黙って朽ちるのは嫌です」

 むう~。そんな事を言われてしまったら、お兄さん君を壊れるまで使いますよ?

「使い手の、手の中で朽ち果てる事こそ我が喜び。私は貴方に、……使われたい」

 ……ふふっ。いいだろう。そこまで言うなら使ってやるさ。でも……

「生憎と俺は節操無しだからな。平気で他の武器も使うぞ」

「マスターが私を使い果たしてくれれば……何も言いません」

 OK! お前さんはジャケットの内側に装備しよう。蔵にしまうのは勿体無い。

「……でも、私だけを使って欲しい、という思いがあるという事も忘れないで下さい」

 ということがあったのさ。





 ちなみにラヴィスにグラール太陽系から、何があってこのハルケギニアに来たのかを聞いたら、

『……たしか、SEED封印の時に次元の狭間に吹き飛ばされて、気が付いたらこの世界に居ました』

 あら? 実は物凄い激戦を潜り抜けてきたのね。

 しかし、何で人格が?

『マシナリー製造技術を用いての、人工知能搭載型試作フォトン・リアクター・ウェポン。コードGHW-RX。タイプ・ラヴィス。基本形態セイバーの他にダブルセイバー、ツインセイバー、ツインダガー、ダガーの五形態あります』

 形態変化機能付き!? 破格の性能だな。

 あ、ちなみにダブルは柄の両端から刃が出る形態で、ツインは二刀流。ダガーは逆手持ち小剣のこと。

 ところで前の持ち主は?

『それが、余りにも高出力過ぎて使い手が見付からないまま、HIVE掃討戦の船の倉庫に置き去りにされていたんです……それでHIVE掃討戦で船が撃沈して宇宙空間を漂っていたときに、SEED封印が起きて』

 …………ごめん。不憫過ぎて泣けてきた。





 ちなみに、俺と彼女の会話は、サイトには話していない。

 言っても分からんだろうしね。

 それと、ラヴィスには人前ではあまり喋らないようにと言ってある。インテリジェンスウェポンで形態変化機能付きの武器だとしれたら、強欲な貴族どもが寄越せと言いかねない。

 まあ、この世界の人間じゃ彼女を使える者はいないだろうが……。グラールですら使い手が居なかったってのに、こんな文明の低い世界じゃ、ラヴィスはおろかフォトンすら扱えないだろう。

 しかし、さっきから爆発音が五月蝿い。何回かは俺の近くにも発生した。

 シルヴィはお部屋で就寝中。寝る子は育つ。

 しかも何時の間にかキュルケとタバサもいる。あ、シルフィードもいるな。……ってか目が怖いって。

 ふむ、三十回を越えた辺りからサイトの息遣いが粗くなってきたな……。

 いくらガンダールヴの身体能力強化でも、元の体力は強化できないようだな。やはり肉体制限の強制解除のようだな。ま、ようは火事場の馬鹿力を強制的に発揮させるやつだな。

 まあ、後遺症で筋肉断裂とか骨折とか神経断裂とか起きないだけマシかもしれないな。

 ただその代わりに、手加減がし難いのが難点だな。

 頭の方は強化されないし、武器の情報と使い方が分かるだけだもんな。

 だから、『速さ』は有るけど『早さ』が無い。

 マニュアルに忠実なんだが、本人の技量が足りない所為か、初動が丸分かりなんだよな。

 だから今も、剣が最大の威力を発揮する前に、弾くことが出来る。

 ハルケギニアのメイジじゃ、見切りを出来る人間なんて片手で数える位だろう。

 おそらくタバサはその一人。伊達に一人で危険な任務をやらされていない。

 ハルケギニアじゃ武術や格闘技なんて、ごく一部でしか普及してないからな。軍隊でも体は鍛えても技を鍛えているところは少なさそうだ。体捌きくらいは教えているかもしれないがな。

 っと、ルイズの爆発が本塔の壁で起きたか、となると出てくるか……。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

『きゃあああぁぁぁぁぁっ!?』

 出てきたか、ゴーレム。

 しかし、改めて見るとデカイね。30メイル……メートルも同じだったな。

 ってことはガ○ダムよりデカイってことだよなぁ……。7、8階立てのビルくらいあるな

 よくよく考えれば学院の塔もそれよりデカイんだよな。よく15、6世紀程度の文明でそこまで高い塔作れたな。

 そりゃ、魔法のおかげってのもあるだろうが、エレベーターもエスカレーターも無いのになんでこんなに高く作ったんだろうな。

 え? 王城の方はって? あれは別だろう? 国で一番目立つように作るんだから、それなりに高く作るだろう。

「キュルケ! タバサ! ルイズを連れて逃げろ! サイト! ルイズを引き摺ってでもいいから退避させろ!

 俺はその時間を稼ぐ!」

「「「わかった!」」」

「ルイズ! 逃げるわよ! まともにやっても勝ち目は無いんだから!」

「嫌よ! ここでアイツを倒せは私はゼロじゃなくなるわ!」

 ゴーレムを破壊しようと魔法を放つルイズに、キュルケが声をかけるが、こんな時にくだらない貴族のプライドと、他者を見返すチャンスだと勘違いしたバカはその声を聞かない。

「何やってるんだよ、ルイズ! 死にたいのか!」

 幸いな事にデルフを握ったままだったため、強化された身体能力でルイズの元に駆け付けるサイト。

 俺はラヴィスをベルトに差すと、蔵からM16を取り出し、本塔の下まで瞬動で移動し、ルイズを狙っていたゴーレムの腕に放つ。

 放たれた十数発の弾丸は、全弾命中し土に埋まるなり削るなりする。

 はっきり言ってアレだけの質量だ。焼け石にも等しいが、気を向けさせるには十分だ。

 肩に乗っていたマチルダも俺の攻撃に気付いたらしく、此方に向かってきた。

 俺は足の裏に気を纏わせると、後ろ走りで壁を登っていく。

 その光景にマチルダは勿論だが、サイトにルイズ、キュルケにタバサも目を見開く。

「うお、すげぇ! 壁走りか!」

「な、何よアレ!? なんで平民があんな事出来るのよ!?」

「うそ!? もしかして先住魔法!?」

「…………」

 サイトだけは妙に興奮していたが、他のメンツは驚愕を隠せない。

 壁を登りながらも、三点バーストでゴーレムの頭部に弾を放つ。そして、俺はある場所で足を止める。

 俺が止まった事を好機と見たのか、ゴーレムは大きく右の拳を振り上げる。

 迫り来る拳を見ながらも、口元に笑みを浮かべ、拳が鉄になった瞬間、瞬動を用いて離脱。

 ただし、速度を押さえて視認可能な速度でゴーレムの頭上を跳び越える。

 逆さになりながら、右肩にマチルダが要るのを確認した俺は、手足を広げ空気抵抗で速度を落とすと、体を捻り回転させながら、非難していたサイトたちの近くに着地する。

「十点満点!」

 しっかりと両足で着地してポーズを決めるのも忘れない。

「銀狼! 大丈夫か!?」

 慌てて俺のところまで駆け寄ってくるサイトを後目に、俺はゴーレムの拳が壊して突き刺さった場所を確認する。

「あら、見事にぶっ壊れたな」

 マチルダが宝物庫に入っていくのを確認する。

「しかし、ありゃなんだ?」

 現状一番冷静なのはタバサだろう。

「……盗賊フーケ」

「盗賊? 噂の『土くれのフーケ』か? しかし、なんだって学院に?」

 たしか、武器屋の店主が言ってたっけ。

「あそこは宝物庫」

「なるほど、魔法学院ともなれば国宝級のお宝があると。それで」

「きっと狙いは『破壊の杖』ね。フーケが狙うくらい有名な物と言ったらそれでしょ」

 よこからキュルケが補足してくる。

 と、俺はゴーレムに向かって駆け出そうとしたバカの襟首を捕まえる。

「何をするつもりだルイズ。先に言っとくがお前さんのチンケな魔法で、どうこう出来る相手じゃないぞ。下らない自尊心で命を捨てるのは、愚者のする事だぞ」

「離しなさいよ! 此処は貴族が通う神聖な場所なのよ! こんな横暴が許される筈が無いわ! 王に忠誠を誓う事を許された、始祖ブリミルの高貴なる血を受け継いだ王に唯一忠誠を誓う事を許された、貴族の尊厳をあのフーケは傷つけたのよ!!」

 ……何それ。

 唯一許されたって……。忠誠を誓うのに、他者の許しなんて必要ないだろうが。

「私があのゴーレムを倒して、フーケを捕まえるんだから!」

「無理言わないでよ、ルイズ! あんなの相手にやってもこっちがやられるだけよ!」

 キュルケはちゃんと、相手の力量を理解しているようだ。

「私は貴族よ! 誇り高きヴァリエール公爵家の娘よ!! アイツを倒せば誰も私をゼロなんて呼ばない!! 呼ばせないわ!! だからアタシがゴーレムを倒すのよ!」

「アホらし」

「! ……アンタ今、貴族の存在意義をっ!」

 俺は掴んでいた手を離すと、ジャケットの内側から(のように見せて蔵から)無針注射器を取り出し、ルイズの首筋に打ち込む。

「へにゃぁ?」

「銀狼(ギンロウ)!?」

「ただの麻酔だ。昼には目を覚ます」

 慌ててルイズを抱きとめるサイトとキュルケ。

「足を引っ張る無能な仲間ほど、恐ろしい者はない」

「……激シク同意」

 …………タバサ。ドコでそんな言葉覚えた。

 俺たちがそうこうしている内に、ゴーレムは塔から離れ城壁を跨いで森のほうへと去って行った。






 一晩明けた翌日。早朝の学院長室。

 集められた教師達と、昨日現場にいた俺たちがそこにいた。

 ルイズは部屋に寝かせてある。

 はっきり言ってココにいても喧しいだけ。俺が麻酔を使ったから昼間では起きないと言ってある。本当は夕方まで起きない量の麻酔を打ち込んだが、言い訳に関しては子供だから使用量が多すぎたと説明する予定。

 キュルケが昨日の状況を報告する。ちなみに俺とサイトは使い魔という事で数に入っていない。

 オスマンだけは、俺に聞きたそうな視線を向けてきていたが……。

 教師達が責任の押し付け合いで五月蝿くなってきた頃、マチルダが戻ってきた。

「フーケの居場所と思われる場所が分かりました」

「本当ですか!? ミス・ロングビル!」

「はい。近くの森に住んでいる猟師に聞いた所、『大きな音がして外に出てみたら、ゴーレムが森に向かって歩いていて、森の入り口でゴーレムはただの土になったが、ローブを着たメイジが森の中に入っていくの見た』と仰いました。猟師に聞きますと、森の奥に猟師たちが時折使う小屋があるとの事です」

 うむ。『正確な』ではなく、『少々曖昧な』情報を提示する事によって、相手に情報不足を補完させる。何か言ってきても自分は詳細を知らなかったからで通せるな。

「其処へは遠いのかね?」

「歩いて半日程。馬で四時間程だそうです」

 ここで猟師が、この小屋に入っていく所を見たって情報だと、猟師がロングビルと会うまで少なくとも半日は掛かる距離を戻ってこないといけなくなる。昨晩の事件発生からフーケが小屋に到着してからの時間を考えるとどうしても馬でも間に合わない。

 昨晩の事件発生が22時頃で、其処から小屋まで用意してあった馬で移動して往復しても八時間。

 早朝の6時現在の時間でもギリギリだ。

 やれやれ、ここ数日ベッドの中で色々と教えた甲斐があったってもんだ。

 そして、『破壊の杖』奪還とフーケの討伐。教師は杖を上げる事は無かった。そしてルイズもいない。

 ……さて、ここらで学院長に恩を売るいい機会か。

「誰も行かないなら俺が行こう。ココに来る前は傭兵をやっていたからな」

「平民の貴様がフーケに敵う筈がないだろう! 第一誰が喋っていいと言った! 口を慎め!!」

 ……ぷっちーん。

「どうやら先日、杖を切り刻まれたのが、分からなかったらしいな。今度はその身も切り刻んでくれようか?」

 杖以外を軽視している貴族は、俺のこの部屋での帯剣を許可している。

 俺の左手が鯉口に掛かる。

「これこれ、今は破壊の杖とフーケの事が先決じゃぞ、ミスタ。お主もあまり挑発するでない」

 とりあえず収まった矛先だが、こいつマジで十七分割に切り刻みてぇ。ギトー以外の教師はコルベールとシェヴルーズ以外知らないし。

 とそこに、杖を掲げる物がいた。

「ミス・チェルプストー! 貴方は生徒ではないか!」

「彼にだけ任せてなんておけませんわ」

 キュルケが上げれば当然、

「ミス・タバサ。貴方まで」

「……心配」

「ありがとう。タバサ」

 そしてタバサがシュヴァリエなことに驚く俺以外。道案内は無論マチルダ。

 サイトはルイズの側にいさせた方が良いのだが、戦いを経験させておかないと、この先死に急ぐ事になりかねないので連れて行くことにする。

 ルイズ? どうせ戻ってくるまで起きないだろう。ご主人様の為にフーケ討伐に参加しましたで言い訳は十分通るだろう。








 目的地に向かうまでの道中は、キュルケがマチルダに過去を聞いたり、デルフとサイトが話をしたり、タバサが本を読んだり、俺はシルヴィと親子のスキンシップをしたりしていた。

 途中、キュルケがラヴィスの事を聞いてきたが、フォトンを扱えないハルケギニアの人間では、使うのが不可能だと言ったら、早々に興味を無くしたようだ。サイトも少し残念がっていた。

 まあ、エネルギー兵装はSFの浪漫だからな。ビームサーベルもいいけどライトセイバーもいいよな。個人的には天地剣やオーラ・ブレードが好き。

 そんなこんなで目的地に到着。

「開けた場所に小屋って、明らかに誘いだな。罠は仕掛けてないだろうが、俺たちが小屋に入った瞬間にゴーレムで『ぷちっ』はしようとしてくるか」

 茂みから小屋を窺いつつ作戦会議。

「罠が無いのは?」

「開けた場所じゃ落とし穴がせいぜいだが、土を動かした形跡が見当たらない。魔法で地面をそういう風にする事は出来るのか?」

 俺はタバサに視線を向ける。

「理論的には不可能。それに大抵のメイジは落とし穴を使わない」

「落とし穴って手間が掛かる割に効果が小さいのよね」

 まあ、かなり地味なイメージが大きいからな。俺だったら油を入れといて、落ちたら火を放つな。

「それより『ぷちっ』ってなんだ?」

「「「ゴーレムで小屋ごと踏み潰す」」」

 俺とタバサ、キュルケの回答が重なる。

「さて、ここは偵察が必要だな」

「……適任」

 俺の提案に、タバサが俺を指差す。

「じゃあ、俺とサイトで小屋の両側から調べよう。サイト、周囲の警戒も怠るなよ。タバサ、キュルケとロングビルを頼む」

 こくんと頷くタバサが、少し可愛いと思ってしまう。

 ……大丈夫。俺はロリ『が』好きなんじゃない。ロリ『も』イケルだけだ。

 青髪ピアスは、好きだ、とほざいていたが……。

 俺とサイトは両側から小屋を調べたが、異常は無し。サインでタバサたちを呼ぶ。

 マチルダは少し離れたところにいるようだ。おそらく見回りをするといって離れたのだろう。

 俺たちは小屋の中に入って目的の『破壊の杖』を見つけた。

「これが『破壊の杖』!?」

「ええ、前に宝物庫で見たことがあるから間違いないわ」

 ……M72ロケットランチャーじゃありませんでした。

 そしてキュルケよ。前に見たって一体どうやったら宝物庫の中を見れるんだ? 基本は立ち入り禁止だろうが? あれか? 学院の秘宝公開とか時折やっているのか? 

 ハルケギニアでは製造不可能な金属で出来た、少々SFチックな外見に、其処に付いているグリップトリガーと簡易スコープ。極めつけはストック部分に内蔵されているエネルギー蓄積構造。そしてなにより銃身の下部に刻まれた文字。

 『RXRプラズマ・ランチャー』

 何故コレがここにあるのか気になったが、それを考える時間は無かった。

 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

「ッ! 全員外に避難しろ!」

 俺の声にタバサが逸早く反応して外に飛び出す。続いてサイトにRXRプラズ・マランチャーを抱えたキュルケ。殿は俺だ。

 しかし、キュルケがドアから出た瞬間、横殴りの衝撃が襲った。

 ……っちいいぃっ!!

 小屋の外に吹き飛ばされた俺は、そのまま森の木を数本へし折って地面に倒れる。

「いってぇなコン畜生っ!!」

 自分の上に倒れこんできた木を殴り飛ばしつつ、俺は起き上がる。

 マチルダめ、手加減するなとは言っておいたが、流石に今のはビビッたわ!

 俺は圧し折った気を抱えながら、広場に戻る。

 そこではサイトがデルフを握り締め、ゴーレムの攻撃を回避して、後方でキュルケとタバサが炎と風の魔法を交互に繰り出していた。タバサ以外の顔に怒気が見えるのは、おそらく俺がや殺されたと思ったからだろう。

 しかし、さっきのは本当に……

「……ちっと痛かったぞ、コノヤロオオォォォッ!!」

 両手に抱えたままだった木を、徹陣作用で投擲する。

 サイトを攻撃しようとしていた両手を砕く。

『銀狼(ギンロウ)!!』

 俺が生きていた事に、喜びが隠せない二人。タバサも少し安堵した表情だ。

「タバサ! シルフィードを呼んで撤退準備だ! キュルケ! ソイツを俺に貸せ!」

 瞬動でキュルケの後ろに移動すると矢継ぎ早に指示を出す。

「サイト! 五秒だけ逃げ回れ!」

 キュルケからRXRプラズマ・ランチャーを受け取った俺は素早く点検をする。

 本来ならコイツは別駆動のジェネレーターからエネルギーを供給しないと使えない代物だ。

 だが、一発限りならコイツにはエネルギーを充填しておける。

 俺の後ろで、タバサとキュルケがシルフィードに乗って離脱する。

 ……エネルギー確認、発射可能。よし、撃てる!

「サイト! 離れろ!」

 爆破範囲に注意しないといけないので、俺はゴーレムの鎖骨中央の位置を狙う。

 セーフティ解除。ターゲット・ロックオン。コレより破壊する。

「SFと科学舐めんな、ファンタジイイイィィィィィッ!!」

 青白い光弾が、プラズマ独特の放熱音を立てながらゴーレムの鎖骨中央部分に命中する!

 けたたましいプラズマが破裂する音と光の中、ゴーレムは膝から下を残して吹き飛ぶ。

 膝から下も、形を維持できなくなったのか、音を立てて崩れていく。





 ……やれやれ、何とか終わったかな?

「銀狼! 大丈夫なのか!?」

 サイトが近づいてくると、すぐ側にシルフィードが着地して、キュルケが飛び降りてくる。

「ダーリン! 凄いわね! それが破壊の杖の威力なの?」

 抱きつくのはいいが、キスは止めてくれんか?

「皆さん! ご無事ですか!?」

 マチルダも、茂みから出てきた。

「なあ、銀狼。それって地球の武器なのか?」

「地球の武器だが『別の』な……。それにコイツはもう使えないだろう」

「もう、使えないのですか?」

 マチルダが寄って来る。下手に渡してココでフーケの正体をバラす必要も無いだろう。

「コイツを使うには別に用意されたエネルギー供給機関が必要になる。生憎このハルケギニアには存在しないものだからな」

 ハルケギニアの何処かに流れ着いているかもしれないが、探し出すのが面倒だ。

「結局それって何なの?」

「コイツは銃の一種さ」

『コレが銃!?』

 サイト以外が驚くのも無理は無い。何せこれがあったら貴族の魔法などマッチのようなものになる。

「ま、携帯可能な大砲の一種と思ってくれ」

「でも、それって一体何処の武器なんだ?」

 ま、サイトがそう思うのも無理ないだろう。

「『The Earth Defense Force』通称EDF。連合地球防衛軍、特殊部隊ペイルウイング隊の範囲攻撃兵器だ。携帯武器の中ではトップクラスの武器さ」

 RXRは確か、使い勝手のよさなら最高のプラズマ・ランチャーだった気がする。

「ま、フーケは少々骨折り損だったのかもしれないが……な?」

 マチルダにRXRプラズマ・ランチャーを渡しながら、微笑む。

 ……ばつの悪そうに視線を逸らすマチルダ。少々悪いことしたかな?

「そう言えばフーケは!?」

「おそらく逃げただろう。ま『破壊の杖』を取り戻せただけでも良しとしようや。命あってのモノだねだ」

 気付くのが遅いぞ、キュルケ。









 その後は、何事も無く学院に戻る。

 まあ、帰り道でマチルダが若干しょんぼりしていたのは俺だけが気付いた事。

 俺はオスマンにRXRプラズマ・ランチャーを渡す。

 フーケは取り逃したが、杖を奪還したのでキュルケにはシュバリエの称号を、タバサには精霊勲章が渡されるように申請するらしい。

 俺とサイトは使い魔なので何もなし。

 その頃になってようやく目を覚ましたルイズが、学院長室に乗り込んできたが、既に事態は収拾済み。

 勝手にフーケ討伐(ルイズはフーケをどうしても捕らえたかったらしい)に言った事に激怒していたが、寝ていたお前が悪いと、ご主人様の為に命を掛けて破壊の杖を奪還したのに、其れすらも誉めてくれないなんて何て出来の悪いご主人様なのだろうか、の俺の口撃に口を閉ざす。

 ついでに、例えフーケを討伐しても今の態度じゃ誰も認めない、と思った事は言わなかったが。

 自分だけ蚊帳の外だった事に、えらく憤慨のルイズだったが、今夜がフリッグの舞踏会で、その準備の為にルイズ達は部屋から退出させる。

 その場に残ったのは俺とオスマンに、マチルダとコルベール。

「……さてと、学院長殿。俺が聞きたい事は分かると思うが?」

「うむ。この『破壊の杖』のことじゃろう?」

 プラズマ・ランチャーなんて物騒なもん、一体どういう経緯で手に入れた?

「うむ。……三十年ほど前の事じゃ」

 当時、近くの森を散歩していたオスマンは、ワイバーンに襲われたときに、このプラズマ・ランチャーの持ち主の女性に助けられたそうだ。

 しかし、彼女は瀕死に近い重傷で、急いでこの学院に運び込み必死の手当てをするも……。

「……逝ってしまったと」

「うむ。彼女は、自分の持ち物は、何処か安全な場所に保管しておいてほしい、と言っていた。いつかこの地を攻めて来る異形の集団が現れた時、きっと力となるから……と」

 いや、さすがに来ないだろう……。アレは文明が二十世紀以上しか侵略行為をしない。

「他には何か……?」

「ストーム3、地球は救えましたか……?、と言っておった」

 ……思い出した。最終決戦で皇帝母艦に特攻していった、ペイルウイング部隊の生き残りの彼女の事を。

 彼女が臨時的に、当時ストーム3だった俺の指揮下にいた事を……。

「…………彼女の持ち物は、……宝物庫に?」

「今も大切に保管してある」

「……それ、もらっても? 使える人間が使ってやるのが彼女の望みだと俺は思う」

「そうじゃのう……。恩人の形見ではあるが、道具は使ってこそじゃからな」

 …………今は彼女の冥福を祈ろう。





 ……こちらストーム3。敵皇帝母艦の破壊を確認。及びペイル3の死亡を確認。

 …………任務…………完了。





「…………ええ乳と尻のオナゴじゃった……」

『死ね! クソジジイ!!』

 折角の雰囲気をぶち壊したオスマンに、俺とマチルダのツープラトンアタックが炸裂した!










 貴族たちがダンスホールで舞踏会を繰り広げる中、俺は月見酒を楽しんでいた。

 先程、テラスでワインを飲んでいたサイトが、ルイズに中へと連れて行かれた。

 まあ、見た目だけは良かったので、馬子にも衣装とはこのことだろう。

 キュルケは俺を探してダンスホールの中をさ迷い歩いている。

 タバサ? ハシバミ草のサラダを、ハムスターみたいに食べているんじゃないのか?

 ギーシュはまた下級生の女子生徒に声を掛けて、モンモンに叱られているようだ。

「……まったく。何処にも居ないと思えば、こんな所に居たのかい」

 ワインとグラス二つを片手にマチルダがやって来た。

 胸元を大胆に開け、背中も大きく開いている黒いシンプルなドレスが彼女の艶やかさを引き立てている。

 スリットから見える太股もなかなかだ。

「騒がしいのは嫌いじゃないが、今夜は騒ぐ気分になれなくてな」

 俺がいるのは、アルヴィースの食堂からは見えない、本塔の壁際だ。其処に背を預けて、空に輝く赤と青の満月を眺めている。

 一番良く見える場所が、向うからは死角になっているのが幸いだった。

「あの銃の持ち主の事かい?」

 グラスにワインを注ぐと、一つを俺に渡す。

「ああ……、彼女は一時的とはいえ俺の部下だった」

「でもそれって三十年も前の話じゃないのかい?」

 お猪口の中の酒を一気に飲み干すと、ワインも一気に飲み干す。

「こう見えても俺は不老不死でね。吸血鬼じゃないが化け物なのさ」

 蔵からお猪口をもう一つ取り出すと、マチルダに渡して酒を注ぐ。

 酒は俺の故郷の『月宴酒』と呼ばれる特殊な酒だ。

 ……俺はこの酒でしか酔う事が出来ない。

 アルコール度数は83°とクソ高いのに、飲みやすさはチューハイ以上だ。口当りは非常に軽く、水のように飲めるのがこの酒の特徴だ。

「俺もサイトもこのハルケギニア大陸じゃない……、空に浮かぶ月の色と数すら違う『世界』からやって来た」

「成る程。アンタの強さが普通じゃないのはその所為か」

 『蔵』の能力に驚きつつも、何処か納得の表情をするマチルダ。

「まあ、こう見えても百歳なんて当の昔に超えてる。ついでに言えばハルケギニアの歴史より長生きしている」

「はいぃ!?」

 くっくっく。マチルダの驚いた表情が、なんとも可愛く感じる。

「別に信じなくても構わんさ。ただ、今は死者に冥福を祈りたい気分なんだ。彼女の死に顔を見れなかったのが残念でな……」

 俺の近くのお盆の中には、急須と肴数点の他にドック・タグが一つ置かれている。

 あの後、宝物庫で見つけた、彼女の遺品の一つだ。

 EDFの衣装は蔵の中に収納済みだ。プラズマ・エネルギー・ユニットや他の装備、マスター・レイピア、イクシオン・マーク4、ゴースト・チェイサーは現在俺の部屋に置いてある。

 近々魔改造を施す予定だ。

「……やっぱり長く生きると、皆自分より先に逝っちまうのが辛いかい?」

 それは、不老不死の者にとって辛い物の一つ。

 常に自分だけが残り、周りの者は先に逝ってしまう。

 ……後残るのは一人ぼっちとなった自分だけ。

 だから不死者は死が訪れない者を近くに置く。

 そして、堪らなく命ある者たちが羨ましいから彼らを愛する。

「確かに辛いものはあるが、それと同時に出会いがある。そして何より見届ける事が出来る」

 だから、逆に見取ってやれない事があると……ツライ。

「せめて今だけは……、死者に鎮魂歌(レクイエム)を奏でよう」

 舞踏会の曲では少々雰囲気が出ないが、双月が彼女の魂をきっと地球に導いてくれるだろう。

「今夜は少し……呑む」

「……付き合うよ」

 ああ、こういうところが彼女のよさだな。









 翌日、気が付いたら、マチルダの部屋で裸でベッドで合体でキスマークだらけでした……。

 三升飲んだあたりから記憶が曖昧だ。

 飲み過ぎには気をつけましょう。








 後書
 少々遅くなりましたが、第6話お待たせしました。
 新キャラ(?)ラヴィス登場。
 ルイズの扱い……はコレで良し!(マテ
 シルヴィ何気に出番が無かった……。
 サイトも半分空気?
 最後は少々シリアス。でも締まらない。



 今回のNG&ネタ



 サモン・サーヴァント

「アンタ誰?」
 ルイズは男に尋ねる。男が口を開き、
「……チェンジ!!」
 交換宣言をした。
「「はあ!?」」

 ルイズ。いきなり拒否される。



 真宮寺家のさくら嬢ちゃん
 さくら大戦のメインヒロイン。
 詳細は皆様の方が知っているだろう。



 サミー
 黒田洋介、梶島柾樹で調べると出てくる。
 ギャグと努力と根性とSFで出来ていたりする。
 作者の魔法少女は半分ここから来ていたりする。



 ラヴィス=カノン
 本来は武器の名前。
 ファンタシースター・ポータブルから
 フロウウェンの大剣と節子おばさんのFセットがお気に入り。



 RXRプラズマ・ランチャー
 THE地球防衛軍2のペル子の武器。
 マスレイがあれば神ソラスも十秒で落とせる。





 次回。
 「やべぇ、新作のエロゲー予約し忘れた。特典が……」
 それじゃあ次回に、プリティ・コケティッシュ・ボンバー!!



[8671] 第七話「モット伯爵屋敷襲撃事件。家政婦と警備員は見た」
Name: 銀色っぽい何か◆48e73465 ID:9d5b0d85
Date: 2009/06/09 01:31










   多次元世界渡航漫遊記



   第7話「モットと使い魔品評会。アニメのオリシナらしい」












 フリッグの舞踏会の翌日。

 マチルダの部屋から戻ってきた俺は、作業台の上に置いたままになっていた彼女の武器を改造するべく工具を手に取る。

 幸いな事に今日は生徒たちも授業は午後からなので、未だに夢の中も物が多い。

 ―――――このいぬうううぅぅぅぅぅっ!―――――

 ふむ、どうやらルイズの夢にサイトが出てきたみたいだな。

 サイトの声は聞こえないが気配は感じる。

「♪~♪~~♪♪~♪」

 とりあえずRXRプラズマ・ランチャーはとっととエネルギーを補給しておこう。

 まず、マスター・レイピアだが、コレはこのままにしておこう。いい改造案が思いつかない。

 次にイクシオン・マーク4だが、威力はそのままに連射速度と射程を上昇させ、エネルギー消耗をさらに下げる。あとは移動時の照準ぶれを直しておこう。コレは粒子砲の弱点だからな。

 ゴースト・チェイサーは誘導弾の弾数を発射毎に変更できるようにしよう。1~80位がいいかな? 誘導性能はこのままで射程を伸ばす。エネルギー消費も大きいので、せめて20%くらいにする。仕上げの連射性能も二秒毎に一発は撃てるようにしないと……。

 プラズマ・ランチャーも射程、弾速、消費を改善しておくとするか。

「♪~~♪♪~♪~~♪」

 うむ、鼻歌の調子も悪くない。

 最後にプラズマ・エネルギー・ユニットだが、コイツは武器への供給速度とエナジー・ゲージの回復速度だけ上げとこう。下手に出力まで上げると扱いがピーキーになりすぎる。

 ―――――こんのぉ、クソジジイイイィィィィィ!!!―――――

 やれやれ、オスマンもまたマチルダにセクハラして凹られているようだ。

 ―――――あヒイイィィィィィ!♪―――――

 ただ、オスマンの悲鳴が妙に歓喜の悲鳴なのは気のせいか?

 ちゅど~~~ん!

 どうやらルイズの魔法が炸裂したようだな。

 さて、とりあえず飯を食いに行くか……。

「くう~ん」







 俺が厨房に入ると、まずマルトーが声を掛けてくる。

「おお、ギンロウ。今日はスープが美味いぞ」

 ギーシュとの決闘以降、俺とサイトは学院の使用人たちの間で英雄視されていたが、それは俺たちへの依存でしかないので、早々に止めさせ普通に接するように言った。

 尤も、尊敬や憧れの眼差しが消えた訳ではないが……。

 料理長のマルトーはそこが分かっているのか、気軽に接して来てくれる。

 頼られるのは嫌いではないが、あまりいい気分にもならないのが俺の心情だ。

 まあ、マルトーには俺がいくつかレシピを教えたり、されたりしているのでどちらかと言えば料理人仲間と言った感じが強い。

 俺に運ばれてきたのはパンにスープとサラダ、それと豚肉と野菜の炒め物。

 はっきり言って生徒と同じメニューなんて、重くて食えません。

 ホントは銀シャリ飯に味噌汁、焼魚に漬物が食いたいが、欧州の食文化のハルケギニアにそれは酷というもの。しかも、ハルケギニアにはライスがない。これを知った時には一瞬目の前が真っ暗になった。

 ハルケギニアも欧州と似た食文化な所為か、朝と昼はガッツリで夜はサンドイッチとワインを軽くな程度。

 朝からローストビーフは重いです。


 卵かけご飯やおろし醤油ご飯やネコマンマが食いたいです……安西先生。


「お、おはよう……ござ……います」

 俺がスープで喉を潤していると、妙に(原因は明白)ボロボロなサイトが厨房のドアを開けた。

「おはようサイト。ルイズの寝顔はベラボーに可愛かったようだな」

「!? な、何でそれを!?」

「俺の気配察知は学園全体におよぶんだぜ? 第一アレだけ派手に爆発魔法を起こせば嫌でも分かる」

 まあ、ルイズは見た目だけはいいからな。尤もそれも寝ている時限定だが……。起きている時は傲慢と我儘と自分勝手が貴族を着ているような者だからな。目を見れば良く解る。

 サイトにも朝食が運ばれてきたとき、俺は気付いた。

「そう言えばシエスタはどうしたんだ? サイトの食事は彼女が用意したがるからやらせているんじゃなかったのか?」

 言われてサイトも気付いたのか、怪訝な顔をしている。

 まあ、彼女の行為は丸分かりだが黙っててやるのが大人ってもんだ。

「実は朝早くから貴族が来てて、その給仕に何人かメイドが対応しているんだ」

 その中にシエスタもいるらしい。

 サイトも、シエスタの顔を見ることが出来なかったのか少々残念そうだ。

 しかし、こんな時期に貴族が学院に来訪する予定なんてあったかな……?









 その夜のことだ。

「大変だ! 銀狼! シエスタが貴族に召し抱えられた!!」

 シルヴィをブラッシングしていた俺の部屋にサイトが飛び込んできた。

 ありゃ? もしかしてジュール・ド・モット伯爵?

「そう! ソイツなんだ! ソイツの屋敷にシエスタが連れて行かれたんだ!!」

 ふむ、とりあえず現状を聞きにオスマンにでも聞いてみるか。



 で、聞くと

「此方が返答を出す前に、いきなり金を置いてとっとと連れて行ってしまったんじゃ」

 書類とかの引渡し手続きとかは?

「自分は貴族で伯爵だから、ただの魔法学院が文句を言うなと言って連れて行ってしまったわ」

 それは拙くないか?

「勿論じゃ。彼女のことは彼女の両親からしっかりと面倒を頼まれておるし、彼女と彼女の両親の承諾なく、他の貴族の屋敷に召し使えることなんぞできんわい」

 つまり、モットとやらの横暴と……。

「そうなんじゃ。すまないがお主に彼女の救出を依頼してもいいかのう?」

 無論だ。ただし極秘にだろう?

「うむ、一応相手は貴族なので上手くカタを付けてくれるか? 勿論報酬は用意しよう」

 OK。交渉成立だ。

「ミス・ロングビルを借りてもいいか? モット伯の屋敷が何処か案内してほしい」

「うむ。ミス・ロングビル。彼を助けてやってくれ」

「分かりました。私としても、そんな手段で召し抱えようなんて、女性として許せません」

 うわお、何やらやる気ですねぃ。マチルダさん。

 さて、時間が惜しい。下手すりゃ今夜にでもシエスタの貞操が散ってしまう。







 学院の門の所で待たせておいたサイトと合流する。

 シエスタ救出のメンバーは俺とサイトに、マチルダとシルヴィ。そして……。

「何でいるかな? 君たちは……。キュルケ、タバサ、馬鹿とピンク」

「誰がピンクよ!」

「馬鹿って僕のことかい!?」

 ルイズとギーシュが喚いているが無視。

 ったくサイトめ、ルイズに言わんでいい事言ったな。

「言っとくが俺たちが今からやる事は、極秘の奪還作戦だ。俺の言う事に従えないなら今すぐ部屋に戻っておねんねしてろ」

「なんで私が平民のアンタの言う事を聞かなきゃいけないのよ!」

 事態を全く理解していない馬鹿はこのさい放置で。

「まず今回の作戦において大事なのは、基本的に派手な行動は一切厳禁という事。その点でルイズは魔法の使用を禁止。キュルケも炎系の魔法は俺からの指示が無い限り使用は禁止だ。ギーシュもワルキューレは使うな」

「なんで使っちゃいけないのよ!?」

 本っっっ当にこの阿呆は自分を理解していない。

「お前さんの魔法は爆発特化型の陽動作戦にしか使えず、威力も発生もコントロールできないだろう。しかも、お前の魔法は知ってる人間が見れば一発でバレる」

 俺の言葉にルイズは唸りながら口を閉ざす。キュルケとギーシュは自分の特性を理解しているからか文句は言ってこない。

「作戦としては外で騒ぎを起こして、その隙に目標を奪還。まあ、一応事前にロングビルに金を持ってモット伯の屋敷を訪ねてもらい、返却を要求。それを拒否したら強制的にと言うわけだ」

「陽動は誰が?」

 ふむ、タバサは状況の飲み込みが早い。

「作戦はロングビルとルイズが外で騒ぎを起こして、その間に、事前に侵入していた俺がモットを足止め。キュルケとギーシュは、シエスタを救出するサイトの援護。タバサはシルフィードに外から屋敷を襲わせ別行動で屋敷の使用人たちの足止め。場合によってはキュルケとギーシュはルイズの援護で、タバサはサイトの援護に回ってもらうかもしれん」

「モットがシエスタと一緒にいたときは?」

 おそらくサイトの言った可能性が一番高い。

 折角手に入れた玩具は自分の手元に……。それが大抵の腐った貴族の考えだ。

「そんときは俺がモットの相手をするから、サイトはシエスタ連れてとっとと逃げること。今回の作戦はシエスタを取り戻す事が第一優先だ。それに俺の場合、一人の方が足手まといがいなくて逃げやすい」

 少々棘のある言い方だが、下手に正義感や仲間意識を持たれても困る。自分の言われた役割は果たして貰わないと作戦というものは成功しない。

 友情ごっこが通用するのは、漫画やアニメや小説の中だけだ。それも主人公に特別なナニカが在ればの話し。

「さて、時間も余裕が有る訳じゃないのでとっとと移動しよう」

 俺は蔵から夜間迷彩を施してあるホバージープを出す。

 ルイズやギーシュが先住魔法だ何だと煩いので後部座席に放り込む。

 サイトには後ろのルイズとギーシュが騒がないように見張っていてもらう。

 キュルケはタバサとシルフィードで移動してもらう。

 マチルダを助手席に乗せると、エンジンを始動する。無論シートベルトは締めさせる。

「コイツは一体なんなんだい?」

「俺の世界の乗り物さ。馬の変わりに駆動機関が積んである馬車だと思ってくれ」

「馬がないんじゃ馬車じゃないだろう?」

 ご尤もで。

「さて、道案内頼むぜ」

 タバサに出発の合図を送る。





 最初は煩かったルイズとギーシュだったが、ジープを理解できないまま車特有の振動に居眠りをしたが、モット伯の屋敷近くの森に付いたときに叩き起こした。

 人によっては車に乗ると、すぐ眠くなる人っているよねぇ。

 モット伯の屋敷近くの森の入り口にジープを光学迷彩で隠し、屋敷近くの茂みまで歩いて移動。シルフィードには少々高度をとって待機してもらう。

「それじゃあ、ミス・ロングビル。『一応』交渉してきてくれ」

「分かりました」

 俺が懐から取り出した、金貨が入った袋を持って屋敷の方へと行く。

 しかし、見張りの兵士を置いていないのは舐めているのかねぇ。





 マチルダが戻って来たのは二十分後だった。

 ただ、気配が異様に怒っているのは気のせいか?

 もしかして、『お前も私に召し抱えられろ』とか言われたか……?

「さあ、モット伯の屋敷を、見るも無残な廃墟にすると致しましょうか」

 笑顔で促すマチルダの米神が、これ以上ないほどに怒っているのを物語っている。サイトもギーシュも引いている。女性陣は何があったのか理解したのか、共感したらしく異様に燃えている。

 おそらく『多少年は食っているが』とか『その身で未だ独身は』とか言われたんだろう。

「それじゃあ、ロングビルとキュルケとルイズは十分後に陽動を開始してくれ。
 サイトとギーシュはその混乱に乗じてシエスタの奪取。
 タバサはシルフィードと一緒に屋敷の上空から襲撃を仕掛けてくれ。
 一応全員顔を隠すように。それと互いを名前では呼ばずに、コールサインで呼ぶように」

 俺:ウォーカー
 マチルダ:ミデア
 シルヴィ:マーダー
 サイト:ガンダールヴ
 ルイズ:ピンク
 キュルケ:フレイム
 タバサ:ウイング
 ギーシュ:ローズ

 マチルダと言ったらこれでしょう。大丈夫、俺が上手くガ○ダムを使うから。

 シルヴィはそのまま、というか誰も子犬一匹程度、気にも止めないだろう。

 サイトは言うまでもないだろう。尤も貴族の前で呼ぶのにこれほどの皮肉はないがな……。今はまだサイトもルーンの効果しか気付いてないだろうが。

 ルイズ? これが最適だろう。ゼロなんて呼んでも喚くだけだ。

 キュルケは使い魔の名前を、タバサは風関係繋がりで羽と言う意味で。

 ギーシュは杖が薔薇だから。

 後は全員にショ○カーの口だけ隠したマスクを渡す。俺は一人フルフェイスヘルメットをかぶる。シルヴィには左肩に乗っていてもらう。

「銀狼だけ何かカッコイイ気がする」

「だが、視界はかなり狭いぞ。気にするな、俺は気にしない」

「くおん(気にしたら負け)」

 バイク乗りの方で、フルフェイスのヘルメットを持っている方はよく視界を確認してください。こんなのかぶって屋内戦闘なんてまともに出来ません。SWATとか機動警備隊のヘルメットなら話は別だが、あれは俺の美学に反する。

 俺はサイトとマチルダにトランシーバーと時計を渡す。

「周波数と時間は合わせてある、使い方は分かるな?」

 マチルダには移動中にレクチャーしてある。キュルケやルイズに渡すと壊しそうなので渡さない。

「じゃあ、十分後に」

 そう言うと俺は、縮地で屋敷を取り巻く壁まで移動する。






 壁を乗り越えたら中庭の木の蔭に一旦隠れ、屋敷を窺う。

 敷地内には殆ど見回りをしている人間の姿は見当たらない。

 ふむ、警備は薄いな……。

 ヘルメットのバイザーに内蔵されている、熱探知モードで屋敷の中を調査。

 使用人の大半は近くにある使用人用の家にいるみたいだな。

 警備の人数は分からないが、屋敷内の人数は十八人。そのうちのモットとシエスタを抜くと十六。

 夜間用の使用人は動きから察するに四人。アレだけコマコマと動き回れば分かる。

 とすると警備は十二人か。

 気配からも武装している人数と一致する。

 俺は屋上に跳び上がると、屋根裏部屋の開いている窓を探す。

 大抵一つは誰かが鍵を閉め忘れているもの。

 …………発見。屋根裏に人の気配はないのでとっとと侵入。

 屋根裏からは階段で下の階に下りれる。扉の近くに人の気配もない。

 さて、ココまでに二分。残り八分。

 俺は今いる階(屋敷は三階建て)にある人の気配を調べるために動き出す。

 ふむ、使用人二人が客室の一つを掃除中か。

 俺は次の気配の場所へ向かう。

 おっと、警備兵二人が扉の前に立っている。俺は通路に置いてある趣味の悪い置物の陰に隠れる。

「しっかし、伯爵も物好きだよなぁ~」

 警備兵の呟きが聞こえてきた。

「まったくだ。偶に町まで行くと、気に入った女を連れてきては抱いて……」

 どうやらモットは似たような事を繰り返しているらしい。

「しかも飽きたら屋敷の外に捨てて、子供を身ごもったら少しだけ金を握らせてポイだ」

 …………うん。モット死刑。ただし、貴族としてね。

 ふっふっふっふっふ。生まれてきた事に後悔を、生きている事に絶望を、死ねなかった事に地獄を味わわせてやる。

 俺は来た通路を戻ると各階を調べる。

 二階は書斎や書庫などばかりだった。

 一階にシエスタがいた。

 どうやら湯浴みをしているようだ。水の音がする。

 どうやら、間に合ったらしい。

 む、五分経過したか。残り半分か。

 そこで俺は足を引き返すと、屋敷の地下室へと向かう。

 先程地下に宝物庫があるのを確認したから、そこから財産を根こそぎ蔵へと収納する。

 見張りの兵士? 気配を殺して後ろから麻酔針をブッ刺してやった。

 ふむ、宝の質は悪くないな……。モットの野郎、かなり悪どい方法で領民から巻き上げているな。

 う~む、もしかしたらここで『場違いの工芸品』が出てくるかと思ったが、見当た…………たよ。

 …………なんでこんな所にある……いや、居るんだ?

 アンテナイヤーにヘッドギア。腰に太股に腕に付いている金属パーツ。長い青銀髪に赤い金属製の瞳。

 ど~みてもこれコスモスいやKOS-MOSだな。しかもVer.3だし。

 宝物庫の隅っこに、埃を被ったまま椅子に座らせて置いてあった。

 どうやら固定化は掛けてあったらしく、外見に目立った損傷は見られない。

 機能は停止してるが、修復は可能だろう。

 まあいい、今は時間がない。コスモスを蔵に収納したいが、俺の蔵は意思を持つモノは入れることが出来ないんだよな。

 コスモスはロボットの類とはいえ、確りと自我を確立した存在だ。

 仕方ない鎧布(がいふ)で包んで運ぼう。

「くう~ん(お父さん人形フェチ? それダッチなワイフじゃないよ?)」

 ぐさり。

 し、シルヴィ……。何気に酷いこと言うなぁ。

 俺は腰布でコスモスを包むと、右肩から背負う。

 少々動きにくくなるがこの際仕方ない。

 さて、後は……

「こちらウォーカー。ガンダールヴ、ミデア。応答しろ」

『こちら、ガンダールヴ。何かあったのか?』

『こ、こちらみ、ミデア。何か問題が!?』

 サイトは問題なく返答してきたが、マチルダは少々戸惑ったようだ。

「問題はない。シエスタを確認。場所は一階北東側、端から四番目の部屋だ。予定より二分早いが襲撃を開始してくれ」

『了解。派手にやって構いませんか?』

「構わんが屋敷の隣の家には使用人が寝ている。彼らには危害を加えないように」

『分かりました』

「ガンダールヴ、玄関は開けておく」

『了解。これより突入します』

 通信を終了すると同時に、俺は地下室から扉を打ち破って屋敷の内部へ進攻を開始する。

「ラヴィス。初陣だ。少々派手に暴れるぞ」

「了解しました。形態(モード)は?」

「ダガーだ」

 左手にラヴィス・ダガー・モードを握り、屋敷中央に向けて進攻。

 途中、警備兵四人と遭遇したが、擦れ違いざまに手足の腱を切って通路脇に転がしておく。

 屋敷中央のエントランスホールに到着した時は、四人の警備兵が玄関前に集まっていた。

「何者だ!?」「賊か!?」「捕えろ!」

 口々に剣を抜刀しながら向かってくる。

 一人目の上段からの攻撃を、ラヴィスで受け流しながら右膝蹴りを顎に打ち込む。さらにそのまま蹴りを胸に叩き込んで後続に中てる。

 後続三人を巻き込んで玄関のドアに叩きつけられる。

 さらに俺はそこに追撃。



 霞月流 飛刃烈破撃(ひじんれっぱげき)



 斬撃が衝撃波となってドアごと警備兵を吹き飛ばす。

 吹き飛ばされたドアの向こう側から、サイトとギーシュがやって来た。

「ず、随分と派手にやったね……」

 俺の所業に少々ビビリがちなギーシュ。

「ガンダールヴ、ローズ。囚われの姫君は向うだ」

 シエスタの居る場所を指しながら俺は、屋敷の外で暴れている十メートル程の三体のゴーレムを見る。

 マチルダは、ココ最近メイジの腕が上がったらしく、スクエアクラスの魔法が使えるようになっていた。

 まあ、原因は俺とS○Xしたからだが……。

 どうも俺と『する』と相手は身体的に、最盛期の肉体と能力に上昇するらしいのだ。しかも半分不老となり基本能力なら、その世界でもトップクラスの能力になるらしい。

 俺の精液は何処ぞの秘薬だぁ? おい。

 どうやら常駐している警備兵の殆どは、あちらに行ったようだ。

 シエスタを救出しに行くサイトとギーシュを見送ると、俺は階段を上って三階のモットの居る寝室へと足を進める。

 モットの寝室の前には先程までいた警備兵が居なくなっていた。

 ラヴィスをジャケットに収納した俺はドアをノックする。

『様子は分かったか!?』

 どうやら俺を警備兵と思っているらしい。

 ココで一芝居打ってもいいのだが、面倒臭いのでドアを蹴破る。

「な、何者だ!? 貴様!」

 そこに居たのは趣味の悪い寝巻きを来た、モット伯爵(クソ野郎)。

「貴様を裁きにやって来た、ナイトメア・オブ・ダークネス(闇の悪夢)と言う者だ」

 気分は半分、闇の王子様。

「罪状……以下略。よって魔法剥奪の刑に処す」

 俺は一瞬で詰め寄ると、モットの前頭部に拳を叩き込む。



 霞月流 神魔滅昇 破魔の拳



 ベットの向こう側に転げ落ちたモットを後目に、俺は踵を返すと部屋を出て行く。

「き、貴様! 貴族にこんなことしてただで済むと思うなよ!」

 ゆっくりと廊下を歩く俺の後ろに、部屋から出てきたモットが杖を俺に向ける。

 しかし、俺は振り返る事無く歩く。

「このジュール・ド・モットに手を上げた酬い! その命で償え!!」

 呪文を唱え杖を振るう。

 しかし、何も起きる事はなかった。

「な、何!?」

 最初はただ失敗しただけかと思い、もう一度呪文を唱えるが、やはり何も起きない。

「…………ば、バカな!? …………こ、こんなハズは……!?」

 失敗しても消費される精神力の感覚が無い。

 驚愕と茫然に動きを止めるモット。

「き、貴様! この私に一体何をした!?」

 しかし、俺は振り返る事無く裏拳を放つ。



 霞月流 飛天拳 背甲打(はいこううち)



 音速で放たれた俺の拳圧は、モットの人中(鼻と上唇の間)に命中する。

 そのまま廊下の端まで吹き飛んだモットは、置物に埋もれて動かなくなる。

 死んではいない。

 だが少なくとも一ヶ月は碌に動けないだろう。

 いくら魔法でも、神経中枢の一角を破壊したのだ。情報伝達神経の理解が無いハルケギニアでは、イメージだけの魔法では治療に時間が掛かる。

『こちら、ガンダールヴ。姫君の救出に成功した』

 と、そこでサイトから通信が入る。

「こちらウォーカー。ミデアと合流してゴーレムでジープまで撤退。ミデアはフレイムとピンクをウイングに回収させてそのまま帰路に着けろ。こちらも、デカイのを一発かまして撤退する」

『ミデア了解』

『ガンダールヴ了解』

 玄関まで移動した俺は、タバサがキュルケとルイズを乗せて飛んで行くのと、サイトとギーシュにシエスタを乗せたゴーレムが、森に向かっていくのを確認すると瞬動で正門まで移動する。

「置き土産をくれてやる」

 蔵から拳大の黒い物体を取り出すと、ピンを抜く。

「もってけ、パイナップルだ」

 投擲。

 エントランスホールに落ちた黒い物体は、数秒後に大爆発を起した。

 置物やガラスを撒き散らして、屋敷の玄関は半壊する。

 コスモスを担ぎ直すと、俺はジープの場所まで駆け出した。






 学院までの帰り道。

 コスモスを荷台に載せ、後部座席にルイズの換わりにシエスタが乗ったジープ。

「しかし、最後の爆発は凄かったね。ルイズの失敗魔法に勝る爆発だったよ。一体どうやったんだ?」

 背凭れの横から顔を出しながらギーシュが聞いてきた。

「ただ、手榴弾を爆発させただけだ。ハルケギニアじゃ火薬はあまり研究されてないようだが、俺やサイトの国では、数リーグ(1リーグ=1キロ)四方を吹き飛ばす爆弾だって存在する」

 その言葉にギーシュは顔を引きつらせる。

 サイトは現在、シエスタの為にハンカチになって貰っている。

 うむ、これでシエスタのフラグがまた一つ立ったな、サイトよ。

「それで、後ろの荷物は一体?」

 鎧布に包んだままの為、マチルダは中身を知らない。

「モットの宝物庫から盗ってきた人形だ。知人の作品なのでついでに回収して来た」

 本当は彼女をこんな言い方はしたくない。

「「人形?」」

 モットがコスモスを屋敷内に展示していなかったのはおそらく、一人で鑑賞したかったからだろう。コスモスは下手な人形よりずっと精巧に出来ている。

 はっきり言って虫唾が走る。

「あまり見ない方がいい。見慣れない人間が見ても気持ち悪いだけだからな」

 そう言って俺は、ジープのアクセルを踏み込む。







 学院にて。

 関係者全員を学院長室に集め、緘口令を言い渡す。特にギーシュとルイズは念入りに。

 釘をさされた事に文句を言ってきたが、

「お前たちの場合、勢いで今回の事を洗い浚い吐くからだ。『己が功績を自慢したがる貴族は三流』と知れ」

 ギーシュの場合女子からチヤホヤされたくて、ルイズはゼロと言われたくなくて。

「たとえどんな事でも、やるべき事を成し遂げた事に誇りを持てないようじゃ、二流止まりだ。堅実さを知らない貴族は愚君に憧れ、名君を侮る」

 たとえどんな小さな事でも成し遂げねば、他人は認めない。

 一応サイトとシエスタにも念を入れとく。

 シエスタは否が応でも聞かれるから、『イーヴァルディの勇者が現れて助けてくれた』と言うように言っておく。

 貴族の間では、魔法も使ず貴族でもない、平民の英雄の話だから『イーヴァルディの勇者』をよく思っていない者は多い。……ってかタバサとキュルケ以外は嫌っていた気がする。

 とりあえず全員を解散させ、俺もコスモスを担いでシルヴィと部屋に戻った。

 それと丁度いい機会だったので、サイトとマチルダからトランシーバーを回収して、腕時計型の通信機を渡しておいた。

 部屋に戻ってコスモスの状態を確認したら、動力炉が何故かなかった為、機能を停止していたようだ。メモリーの方には機能停止前のデータが残ってなかった為、ハルケギニアに来た経緯は不明。

 とりあえず、動力炉を取り付けるか……。

 俺はバスターマシン7号と同型の縮退炉を、少々改造してコスモスに取り付けることにした。

 物凄いパワーバランスが起きるかもしれないから、出力にはリミッターを掛けておく。

 ノノはノノリリになれたのだろうか……?

 ついでにボディも改造を加える。

 この際だから外見をVer4に変更しておく。ついでに胸も大げふんげふん。

 よし、今夜はこの辺でいいだろう。

 武装と外装に追加武装系は明日作ろう。

「じゃあ、お休み。シルヴィ」

「くう~ん」

 PPP! PPP!

 俺とシルヴィが寝ようとした時、サイトから通信が入った。

「なんだサイト」

『ルイズが、二週間後に使い魔品評会があるから、明日から訓練するから来い。だってさ』

 あれ、そんなのあったか?

 もしかして……アニメ版?

「訓練するときになったら呼んでくれ。場所は?」

『とりあえずヴェストリの広場だって。授業が終わったら呼ぶよ』

「わかった。じゃあ、お休み」

 通信を終えると、俺はシルヴィと布団にもぐった。

 しかし、一体何をやれと……。









 ピコーン。
 『貴方が私のご主人様ですか?』『ご主人様とお呼びしてもいいですか?』『ハルケギニアの現地妻マチルダ第一婦人』フラグが立ちました。

 「第一婦人って!? 増えるのか!?」







 後書
 予定より早く書きあがりました。
 次はアルビオン編。の前に一話入れるかも……。
 外伝とか、タバサ編とか……。
 個人的に吸血鬼編のエルザをどうしようかと。
 コスモスはやり過ぎかな……?
 今回のモット伯爵と使い魔品評会はアニメのオリジナルシナリオらしいです。
 ……コミックの方にも書かれてるのかな?買ってないから分からん。






 今回のNG&ネタ。


 ミデア
 ファーストガンダム。アムロの初恋?の人マチルダの搭乗機。
 マチルダと言って、まず思い浮かぶのがこの人かと……。


 パイナップル
 手榴弾の別の言い方。
 アップルという場合もある。


 KOS-MOS
 コスモスと読む。
 説明は……要らないよね?
 詳しく知りたい人は『ゼノサーガ』でググって下さい。
 Ver4ってエロイよね~。胸とかカットインとか相転移砲とか。


 バスターマシン7号
 トップをねらえ2。主人公『ノノ』の本来の姿。
 合体劇場版は泣ける人は泣けるかと……。
 縮退炉はマジでチートだよね。



 闇の王子
 ナデシコ劇場版プリンス・オブ・ダークネス。主人公テンカワ・アキトのこと。
 某巨大二次創作物『○の○○に』はナデシコ二次創作の金字塔になっている。
 ……ですよね?


 NGシーン


 モット伯の宝物庫1
 アンテナイヤーに○○高校の制服。そして金髪。
「これセリオじゃん」


 モット伯の宝物庫2
 アンテナイヤーに○○高校の制服。緑の髪にモップ。
「なんでマルチやねん」


 モット伯の宝物庫3
 アンテナイヤーに麻帆良学園の制服。緑色の長髪に間接節の手足。
「茶々丸かよ」


 モット伯屋敷襲撃
「任務了解。これより作戦を開始する」
 タバサは杖に風を集める。
「ターゲット・ロックオン。これより破壊する」
 放たれた魔法は警備兵を吹き飛ばす。
「きゅい~い!(ゼロがあたし達に未来を見せてくれるのね!)」

 ウイング違い。





 次回「吸血鬼に十字架? 俺の知り合いの吸血鬼はクリスチャンなんだけど……」
   「白木の杭。そりゃ心臓に刺されば死ぬだろう、普通」
   「流水。雨に打たれて悶えるって、ショボくね?」
 以上の三本立てでお送りいたします。
 よくよく考えるとニンニクも怪しい気が……。


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
3.01652598381