My number is “0”
story:1 「訓練」
―Side:セロ
私が生まれてから3年が経った。
私の人格形成も順調だとドクターは言っており、教育係というものはいなかったが、問題なく日々を過ごしている。
知識の蓄積も滞りない。生まれてすぐに、記憶転写で得られなかったものをインストールされた。
『遠・中・近距離における戦闘理論』
『戦闘における心構え-戦略編-』
『戦闘における心構え-戦術編-』
『管理局法』
『人間社会における礼儀作法』
『人心掌握術』
『基礎教養』
『食事作法』
…
……
………
…………
……………
『初心者でもわかるお料理講座』
『家事の上手なやり方』
………………
…………………
『男のロマン-萌え-』
……………………
………………………etc,etc
大量のデータが流れ込んできたが、人間の脳の容量はもともと高く、
人間を超えるために生み出された戦闘機人のスペックは言うまでもない。
私は即座に、社会に出て活動するには十分な知識を得ることができた。
若干、今でもあまり理解できない知識が存在するのだが、ドクターに聞いてみたら、
「理解できるように頑張りなさい」
と言われた。真剣な様子だったので、とても重要な知識のようだ。頑張らなければ。
生まれてから1年経ち、ようや1人目の妹、ウーノが生まれた。
彼女は私を「セロ姉さん」と慕ってくれるが、第三者が見れば逆に見えるだろう。
私の肉体年齢はまだ5歳程度だが、彼女は生まれたときから10代後半の肉体なのだ。
これは、私「セロ」が人間と同じように成長するように造られたのに対して、
彼女「ウーノ」はある程度年を経たら肉体の成長がストップするように造られたからである。
しかも、これから生まれてくるであろう妹たちは全員、ウーノと同じように調整されるようだ。
これでは長女としての威厳が保てないのでは、とドクターに相談したが、
「君が成長すれば済む話だよ」
と言われてしまった。
正論のような詭弁のような、判断がつかないが……諦める他ないだろうな。
また1年経ち、ドゥーエ、続いてトーレの2人が生まれた。
私が戦闘専門、ウーノが情報専門であるのに対し、ドゥーエは隠密専門、トーレは私と同じ戦闘専門だった。
ドクターは私をトーレ、ウーノをドゥーエの教育係として付かせ、自信は次の妹たちの製作に取り掛かっている。
休む暇もないそうだが、本人のやる気に支障はないそうだ。
ちなみに、ドゥーエ、トーレの肉体年齢は10代半ば程度。
……もう何も言うまい。
そしてさらに1年が経った。
―Side:トーレ
「IS――ライドインパルス!」
一気に加速し、敵の背後に付き、右手に付いたインパルスブレードを
振り下ろす。
ガキンッ!!
「「ハアァァァァ!!」」
敵の持つ長槍の石突とエネルギー翼が打ち合い、弾かれる。
振り向いた敵を見据え、即座に互いの武器を敵に対し打ち付けあう。
そのたびに2つの武器が互いにぶつかり合い、両者に反動を与えるが、互いに一歩も引かない。
本来接近戦においては、リーチの長い槍が有利に立つが、そのリーチを越えられてくると一気に不利に陥る。
トーレは持ち前の高速起動を生かし、何度も槍のリーチを侵しているが、
その度に敵は片方の手を支点にして、長槍を無駄のない円の動きで振り回し、トーレを弾き飛ばして距離をとる。
……やはり強い
これは模擬戦。
敬愛する長姉との日課である。午前、午後の訓練が終わった後、最後にこうして付き合ってくれる。
姉はまだ私たちの中で一番の小柄だが、その分、知識と経験がある。そのことを言ったとき、
「……知識はそこそこあると思うけど、経験はまだまだだね。
外に出る機会も少ないし…自慢できるほどじゃないよ…(小柄、か…ははは)」
とは言っていたが、それでも尊敬できる姉だ。
さらにその上、彼女はISを使っていないのだ。
彼女のISは戦闘機人相手には効果のないものではあるが、それは今関係がない。
つまり、彼女は自身の身体能力のみで戦っているのである。
彼女の機動力は私に及ばないために受身にまわってはいるが、始まってから一撃も有効打を与えていない。
逆に私の防御をすり抜けて刺突や打突が入ってくる。
…隙がつかめないっ。なら!!
敵に正面から突進しインパルスブレードを振り下ろす。
「甘いよ!」
当然、敵が槍で迎撃してくる。
武器と武器が激突する瞬間……
「ライドインパルス!」
ISを発動。敵の側面に回りこみ、インパルスブレードを叩き込む!!…が、
「セイ!!」
「なぁ!?」
インパルスブレードが円運動によって軌道を変えられた槍でかち上げられ、
円運動を止めた槍の石突の一撃がトーレの腹部を打ち抜いた。
「ガハ!!!」
模擬戦場の壁に激突し倒れこむ。
コツコツ
彼女に敵は近寄って行き…
「おつかれさま。また強くなったね、トーレ。最後の一撃は良かった」
―Side:セロ
槍の突きから持ち手を支点にしての円運動に移行、相手の武器または体に当ててバックステップ、
距離を離して再び突きに移行。敵を打ちつけようとするが、高速で避けられる。
……やはり早いね
トーレのIS“ライドインパルス”は常時開放型の高速機動が特徴。
初めての模擬戦の時とは違い徐々に使いこなしてきている。
私がまだ余裕をもって対処できているのは、トーレの必ず敵の背後に回りこもうとする癖が抜けきっていないのと、
回り込んでから攻撃するまでのタイムラグが大きいからだ。
まぁ、どちらも改善できる程度の問題だが。
マルチタスクで思考に陥っていると、トーレが正面から突っ込んでくる。
「(…正面からなんて)甘いよ!」
余裕で迎撃しようとするが、
「ライドインパルス!」
なっ!?背…いやっ側面!!だけど!
「セイ!!」
「なぁ!?」
槍の軌道を無駄のない円の動きで変えて、インパルスブレードを迎撃、
そのまま石突で敵を打ち抜いた。
……少し危なかったかな
ゆっくり近づく。
「おつかれさま。また強くなったね、トーレ。最後の一撃は良かった」
「ありがとうございます、姉上」
「うん、背後に回りこむ癖は抜けてきているかな。
人の視界、それも“意識している”視界なんて大して広くないし。
側面に回りこむだけでも十分奇襲ができる。
課題は、敵の死角を取ったときから攻撃するまでの間をなくすことだね。それができれば十分だよ」
「わかりました」
模擬戦の反省をトーレとしていると、視界の向こうに見覚えのある金髪の女性がこちらに近づいくるのが見えた。
「……ふぅ~やっと見つけた。探しましたよ、セロお姉さま」
「ドゥーエか…」
「ドゥーエ、どうしたのかな?」
2人の前に立った女性、ドゥーエはやれやれっといった感じで肩を竦める。
「トーレ、あなたも女性なんだから……もう少し愛想よくしないとだめよ?…無駄だろうけど」
「なら言うな…」
「……まったく、どうしてこんな堅物になったんだか…訓練もほどほどにしないとだめよ?
脳みそまで筋肉になってしまうわ」
「ならん!!」
私はその2人の様子を見て苦笑する。
……どうしてこう性格がここまで反対になるのかな?
しかしさすがにこのままでは話が進まないので2人の間に止めに入る。
「まぁ2人ともその辺にしなよ…で、ドゥーエ、どうしたのかな?」
「ドクターが用があるから部屋に来てくれと言ってましたよ?」
「わかった。(これから夕食の支度をやろうと思っていたのだが……ガジェットにやらせるか)」
実は大抵の家事はガジェットにやらせているが、食事に関してはウーノと私の当番制だったりする。
食事も別にガジェットにやらせることもできるのだが、ドクター曰く
「食事は手作りじゃないといけないんだよ……君たちの」
だそうだ。作り方はガジェットに記録させれば味は変わらないはずなんだが…
…ドクターのこだわり具合がわからない。
「じゃあ、私は行ってくるから反省はしときなよ?トーレ」
「はい」
「いってらっしゃーい」
「はは、ドゥーエ、茶化さないでほしいね」
2人の妹の反応の違いに苦笑しながらも、私はドクターの研究室へと向かった……
あとがき
セロをトーレの教育につける際、ドゥーエにウーノを付けないのはおかしいだろうと思いました。
ドゥーエはウーノの性格の影響を受けさせるつもりはありませんが、尊敬はしています。
どちらも情報の扱い方を得意にしないといけないので。
セロのISは決まっています。ぶっちゃけ攻撃能力はありません。
固有武装はあります。形状は2mぐらいの長槍で紅いです。
ゼストの旦那みたいなものではなく、某運命の槍使いみたいな「突く」ことに特化したものです。
この時点で名前はすでに2つに絞られるのではないかと…
セロが強そうに描写してますが、はっきりいって戦闘経験はまだ少ないです。
戦闘技術は知っていますが、使いこなせることとは話が別です。
ISの能力のおかげで一般の管理局には楽に勝てますが、ヴォルケンリッターレベルには適いません。
百年単位の戦闘経験は伊達ではないので。
ヴィータなら工夫して戦えばわかりませんが、正面決戦は無理。
本編のなのはとフェイトにいかに主人公補正がかかっているのかがわかりますね。
ヴォルケンリッターと互角レベルで戦ってますもん。
特になのはは魔法使って一年経ってないのに…天才中の天才中の天才?
ちなみにセロは小さい体に劣等感のようなものを抱いています。
ぶっっちゃけ「早く大きくなりたい」とのこと。