現場から

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さらば花月園 /神奈川

 戦後間もなく、父が東京で競輪新聞「大穴情報」を発行した。ガリ版刷り。「満州では巨万の富を築いた」が酔うと口ぐせだった▼故郷で落選し、逃げるように東京へ。開設したばかりの競輪業界に入り、父が謄写版に予想を書き、母が刷った。経済復興の中、競輪はブームに。ギャンブル禍で家庭崩壊も起き「競輪亡国論」が叫ばれ、子ども心に肩身の狭い思いをした▼でも、夏には越中ふんどし一つで深夜までガリ版を切るオヤジの背中には玉の汗。「職業に貴賤なし」は記者生活40年目の今も胸に刻まれている▼花月園競輪場が31日、60年の歴史を閉じる。高度成長期には自治体の財政に貢献したものの、今や赤字続きでお荷物に。ファンも高齢化した▼4年前、開設した鶴見駐在も今月、閉鎖に。最初に届いたファクスは「鶴見にようこそ!」と鶴見在住の脚本家、小山内美江子さん(78)からだった。花月園とともに「駐在」が消えたのも、亡きオヤジの奇縁か。【網谷利一郎】

毎日新聞 2010年3月31日 地方版

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