好天に恵まれた土曜、日曜日に花見を楽しまれた方も多いと思います。私は毎日新聞奈良支局近くを流れる佐保川沿いの桜を楽しみました。4日の奈良面でも紹介していますが、今、「佐保川桜まつり燈火会(とうかえ)」の期間中なのです。
万葉集にも詠まれ、ホタルが群れ飛ぶ様子は「奈良・南都八景」の一つに数えられていたという佐保川ですが、見事な桜を地域活性化につなげられないかと燈火会実行委員会代表の橋本征一さん(71)らが考えたのが始まりです。さらに、定年を迎えた人が増え、家に閉じこもりがちになっていることも気がかりで、地域の人たちの輪を広げたいとも考えたのです。
あんどんの組み立てなどは、地域の人たちが協力して作業します。橋本さんは、この時期が来るとその人たちが不思議なくらい生き生きとした顔になる、と感じるそうです。作業に集まることで会話をし、笑顔が生まれ、付き合いが始まるからだと考えています。
橋本さんはこんな話もしてくれました。あんどんの中には「供養のあんどん」もあるそうです。燈火会が始まって今年で11年。この間にご主人を亡くした女性が、夫の名前を記したあんどんを用意するのだそうです。いろいろな人の思いが連なって、燈火会もいつか「風物詩」と呼ばれるようになるのだと思いました。
燈火会は、最近まで大宮橋から佐保川小学校付近までの250メートルほどでしたが、今はJR佐保川鉄橋までの550メートルほどに広がりました。行政の援助ではなく、協力してくれる地元の会社やお店、参加する自治会などが少しずつ増えたのです。佐保川沿いの桜は、4~5キロにわたり約2000本あるそうですが、燈火会の範囲も、長い年月を経て、もっともっと広がることでしょう。
今年のあんどんに書かれたメッセージのテーマは「わたしの夢」。小学生からお年寄りまで約150人の作品が並んでいます。私が一番気に入ったのはこれです。
佐保堤二人で歩いた夢の日々
みなさんは、桜の下でどんな思いを抱かれましたか?
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支局に3人の仲間が加わりました。山田は地域面デスク・遊軍長、熊谷は王寺駐在、大久保は奈良市政を担当します。
バラバラ遺体遺棄、暴力団による銃撃--。福岡県警担当として引っ越し間際まで事件取材に追われながら、車で延べ9時間かけてやって参りました。出身もこれまでの勤務も九州。奈良は修学旅行でも来たことがなく、まさに新天地。どんな方々と出会えるのか楽しみです。新参者をよろしくお願いします。【山田宏太郎】
奈良での12年半ぶりの記者生活です。宿直勤務中だった早朝の阪神大震災の揺れ、小選挙区制初の衆院選(96年)3区で当選した奥野誠亮氏(自民)の言葉「新進党は必ず分裂する」は今でも鮮明です。「署名に記憶が」という方がいらしたら、ぜひ声をかけてください。地域の話題を丁寧に拾いたいと思います。【熊谷仁志】
高松市と兵庫県西脇市で記者生活を経験し、奈良が3カ所目。高松ではアスベスト(石綿)による健康被害、西脇では医師不足問題を重点的に取材してきました。奈良にはこうした経験を生かせる土壌があると思っています。一方で、遺跡や仏像などの奈良ならではの魅力もしっかりと発信したいと思っています。【大久保昂】
毎日新聞 2010年4月5日 地方版