自分の細胞だけからなる心臓の弁を体内で作り出させる方法を、国立循環器病センターと日本大のグループが開発した。体内で再生させた弁を自分に再移植すれば、拒絶反応が起きない。心臓の弁障害のある犬で臨床研究を重ね、人への応用を目指すという。
グループは、心臓の弁をかたどった直径約2センチのシリコーン製の「鋳型」を犬の背中の皮下組織に埋め込んだ。二つの円柱を組み合わせた形をしており、接続部が弁の形になるように設計されている。
埋めた鋳型の周囲を犬の皮下組織の細胞が覆うようになった1カ月後に摘出。シリコーンの円柱を抜くと、血管状の筒の中に弁の構造を持った組織ができていた。弁を再生させた2頭の犬自らに移植して、正常に働くことも確認した。国立循環器病センターの中山泰秀研究機器開発試験室長は、「体が培養器になることにより、安全で確実に作ることができる」と話す。
日本大学の上地正実教授(獣医循環器学)は「肺動脈に異常がある犬で、臨床応用の長期成績を確かめてから、人への応用も考えたい」と話している。(本多昭彦)