県が重点に掲げる医師確保対策のうち、県外の医師を県職員として採用する「ドクタープール事業」の09年度の応募がゼロだったことが分かった。5年の勤務を条件に、うち研修に充てる1年間の給与を県が支給する。同事業は08年度の制度開始から応募がなく、「2年連続ゼロ」の事態に、県は見直しを含めて検討する。【井上大作】
医師免許の取得から5年を過ぎた60歳以下が対象。診療科を問わず、県内の市町立病院など公的医療機関に5年間勤務し、うち1年間は国内で自主研修ができる。08、09年度とも5人を募集したが応募はなかった。
県によると、地域医療に関心ある医師に事業を説明しており、過去2年間で4人の医師の県内就職につながった。しかしいずれも県職員としての採用には至らなかった。担当者は「県が人事権を持ち、医師がより不足している病院に派遣するつもりだった。だが医師にも勤務地の希望などがあり、受け入れられなかったようだ」と分析する。
全国的にも他地域からの医師確保は進んでいない。07年度までに12道県で同様事業を始めたが、秋田など5道県で応募がなかった。一方、医師不足は深刻さを増している。07年の調査では、県内の中心的な6病院で産科医は延べ20人、小児科医は18人不足していた。
県医師確保対策班は「臨床研修で新人医師が研修先を自由に選べるようになった影響が大きい。他県からの獲得に加え、臨床研修医を増やすための取り組みに重点を置きたい」と説明。就職説明会を県外で実施するなどの結果、09年度の臨床研修医は前年度より13人増の82人となった。
〔山口版〕
毎日新聞 2010年4月7日 地方版