感謝の言葉のメモがすべてなくなったキンカ堂。1枚だけ張られているのは、商品券の還付手続きに関するお知らせ=6日、豊島区南池袋1丁目
感謝の言葉を記したメモがシャッターにたくさん張られていたキンカ堂本店=3月17日、豊島区南池袋1丁目
閉店した池袋駅東口の手芸用品店「キンカ堂」で、下ろされたシャッターを埋め尽くして張られていた「感謝のメモ」が消えた。店舗は現在、裁判所が選任した破産管財人の弁護士の管理下にあるが、当の弁護士事務所もメモがなくなっていたことは「知らなかった」。だれが、なぜ、いつはがしたのか。今のところはっきり分かっていない。
約60年にわたって営業し、布地や手芸用品が安く買える店として親しまれてきたキンカ堂。2月22日に自己破産を申請して閉店した直後から、思い出や感謝の言葉を記したメモがシャッターに張られ始めた。
最もたくさん張られていたのは3月下旬。大人の背の高さを超えるほど、メモがびっしり並んでいた。
「生地が豊富で、しかも安かったのでザンネンです」「母も私もお世話になっていて、夏休みの自由研究にも使わせていただきました」。張る場所がない人のためのノートも置かれ、池袋のちょっとした名所になりつつあった。
破産管財人の弁護士事務所は6日、「張ってあることは知っていたが、はがされたことは知らなかった」と話した。先月30日からキンカ堂が発行した商品券の還付手続きを受け付けている関東財務局も「手続きに関する告知を張ってもらうよう管財人に依頼はしたが、その他の張り紙のことは知らない」と話した。
キンカ堂のテナントとして約50年間、スカートのイージーオーダーの店を営んでいた東村山市の女性(80)も張り紙をした一人。なじみの客たちが「急に閉店しちゃって困っているだろうから」と連絡先を書いて張ったところ、数人と連絡がついた。「暗い話が多い中で、ほのぼのとしたいい話だと思っていたのに残念。なぜでしょうかね」(平嶋崇史)