【第164回】 2010年4月5日
レベルファイブを始めとする、ゲーム関連企業が福岡で成功している理由のひとつに、官(福岡市)と学(九州大学)の強力なバックアップが挙げられる。
福岡市は2006年、経済振興局産業制作部に福岡ゲーム産業振興機構を設置した。経済振興局産業制作部の関係者は、「レベルファイブがネーミングライツを購入し、地元に貢献できるほど成功してくれたことは、支援サイドとしては本当にうれしい」と喜びを隠さない。
「福岡は昔から新しい文化に寛容な土地のためか、ゲーム文化もすんなりと受け入れられている。ゲーム脳なんていうマイナスなイメージは全くない。ゲーム系企業が福岡の経済に寄与してくれるよう、市長も議会も、そして我々も前向きに支援してきたが、成功した一番の理由はゲーム業界人自身の熱意があったから。我々官は支援は出来るが、ゼロから何かを生み出すのは彼らの仕事。その熱意があったことが一番大きかった」(福岡市経済振興局)。
たしかに、福岡の業界人の熱意はすごい。前出の稲船敬二カプコン常務執行役員も「今の福岡の状況は本当にうらやましい。この熱気が業界全体に広がってほしい」と話すほどだ。
業界の数少ない女性社長として知られる山倉千賀子ガンバリオン社長は「絶対に福岡をゲームのハリウッドにしたい」と語る。この山倉社長らの熱意が官と学の関係者を動かしていったことは間違いがないようだ。
また、松山洋サイバーコネクトツー社長は「今は業界内で潰し合う時代じゃない。自分でがんばるべきところはがんばるけど、助け合うところは助け合う。そういうことが業界内でもう少し広がっていくといい。福岡はそれを先取りしただけ」と語る。
筆者は、大手でなくてもがんばり次第で中小のソフトハウスも成り上がれるのが、ゲーム業界の一番いいところだと考えている。つまり、階層が固定しない可塑性の高さこそがゲーム業界を活性化させるのだ。現在の福岡の状況は、その業界の可塑性の高さを証明していると言えるだろう。不況の影響で業界関係者は足がすくんでいる状況になっているようだが、この福岡の状況から学べることは多いはずだ。
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