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名張毒ブドウ酒事件再審へ道

2010年04月07日

 「名張毒ブドウ酒事件」で死刑が確定した奥西勝死刑囚(84)の再審を認めるかどうかの判断を、最高裁が名古屋高裁へ差し戻す決定をした6日、昨年12月に再審が決まった「布川事件」の関係者からは今回の決定を評価する声があがった。一方で、「判断の先延ばしだ」などと、再審の早期実現を望む声も出ている。(目黒隆行、石倉徹也)

 「再審の道が生まれる可能性が出たことはよかった」

 1967年に利根町で発生した布川事件で、無罪を訴えながら強盗殺人罪で無期懲役刑を受けた杉山卓男さん(63)は朝日新聞の取材に対し、今回の決定をこう評価した。

 だが、不満もあるという。

 「最高裁は再審を確定してほしかった。再審をするかどうかの審理でまた数年がかかるだろう。判断を先に延ばしているようで責任逃れにみえる」と指摘した。

 杉山さんと同じく、強盗殺人罪で服役した桜井昌司さん(63)は「証拠に疑念を差し挟んで、(高裁に)差し戻したことは当然のことだ」と話す。

 桜井さんは67年、別件での逮捕後に事件への関与を「自白」。だがその後、一貫して無罪を訴え続けている。桜井さんが出所した96年当時、冤罪への社会の理解が薄く感じられたという。

 「一般の人の冤罪に対する理解は、それから格段に深まっている。裁判員裁判も始まって、一般の人も冤罪に無関係でいられなくなっている」と、冤罪に対する司法や社会の変化を好意的に受け止めているという。

 布川事件の捜査や裁判では、名張事件と同様に、容疑者の「自白」に重点が置かれ、有罪判決が出た。桜井さんは「自白は決定的な証拠にはならない。警察の取り調べがひどいと思う」という。

 2人は名張市にもこれまで数回足を運び、現場を視察したり、関係者から話を聞いたりするなどし、「奥西さんの無実を証明したい」と支援している。杉山さんは「もう少しがんばってくれ」、桜井さんは「社会に帰ってこられるまで一緒にがんばりましょう」と奥西さんに声をかけたいという。

 桜井さん、杉山さんを支援する会代表世話人の谷萩陽一弁護士は「疑わしきは被告人の利益に、ということを認識するべきだ。裁判所は勇気を持って見直すべきものは見直してほしい」と話した。

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