やんちゃな少年のような笑顔の裏で、常にチームのことを考えた。木村コーチは、どのチームでも誰からも愛された。
公立の宮崎南高(宮崎)からドラフト外でプロ入り。現役時代は「生き残るために、できることを必死で考える」という日々を送った。日本ハム時代に捕手から外野に転向。広島に移籍後、二塁の練習を始め、両打ちも習得した。昨年、巨人で捕手が負傷でいなくなった時には、捕手で出場する準備を自ら始めた。小柄なキャッチャーは万能選手へと変身し、どのチームでも不可欠な戦力に。「最初からこうなろうと思っていたわけじゃないよ」と話す顔は誇らしげだった。自らの経験談を語った3月の新人研修会での講演は、雄星(西武)ら多くのルーキーに感銘を与えた。
人柄を示す話には事欠かない。広島から巨人への移籍が決まった日、寂しさをこらえ切れず、広島市民球場のグラウンドで泣いた。巨人移籍後、最初の広島での試合では球団職員や記者から拍手で迎えられ、親交のある先輩の引退試合には東京から駆けつけた。
今季からコーチに転身。キャンプではノックを打ち続け「慣れないから、手が痛くてさあ」と言いながら、まめだらけの手をうれしそうに見せてくれた。その笑顔はもう見ることができない。