支配下選手に登録、ガッツポーズする矢地=名古屋市中区のクラブ東海で(小嶋明彦撮影)
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中日は5日、育成ドラフト1位入団の新人・矢地健人投手(22)=高岡法科大=を支配下登録した。育成ドラフトを経て入団した中日の選手が支配下登録されたのは初めて。入団時の支度金300万円、年俸400万円から契約金1000万円、年俸440万円にランクアップして新たに契約した。背番号は「212」から「59」になった。
初々しい記者会見だ。スーツ姿でひな壇に上がった矢地は張り切って言った。「背番号59にちなんでゴーキュー(剛球)投手になれるようにがんばりたいです!」。そして高岡第一高の“伝説”の先輩・高橋への熱い思いを語った。
「二けたの背番号で先輩の高橋聡文さんとリレーするのが夢でした。ずっとかっこいいなと思ってたあこがれの高橋先輩と一緒に投げたい」
支配下登録という一つの階段を上がった。そして次は高橋との継投。その夢、案外早く実現するかもしれない。前日(4日)に落合監督と話し合い、支配下登録を決めた井手峻取締役編成担当兼チーム運営部長兼渉外部長が説明した。
「今はリリーフが好調だけど、これから疲れが出てくるかもしれない。(2軍に)河原らもいるけど厚みを増しておきたい。使いたいときに使えるようにということ」
矢地が1軍昇格するなら中継ぎだ。今の1軍中継ぎ陣は平井、小林正、鈴木、高橋、清水昭、浅尾と6人いるが、全員が防御率0・00と盤石。逆に先発陣はいまひとつ。しわ寄せでリリーフは開幕からフル回転してきた。崩れる前に補強する。その候補に矢地が入った。これが今回の支配下登録の意味だ。
「大学時代は何も考えずにやってきたけど、(プロ生活で)この練習は何のためにやっているのか、ということが分かるようになった」
粗削りな右腕は急成長した。「自分の持ち味は真っすぐ」。MAXは149キロまで伸びた。「スライダー、カーブのキレは大学時代よりもよくなったと、自分の中では思います」。課題だった変化球も、2軍担当のコーチ陣の指導をどんどん吸収して磨いた。
素材の輝きは1軍首脳も確認済みだ。3月10日にはオープン戦に呼ばれた。結果は2イニングで4失点を喫したが、内容には光るものがあったようだ。開幕直前、森ヘッドコーチは矢地の素質について「いいからとってるんだ」と話した。ただ、開幕で1軍に入り込む余地はないと判断された。
本人はこの日の朝、練習開始前に2軍マネジャーから支配下登録を告げられたという。「ドキッとした感じです」。きっともっとドキッとする出場選手登録、そして1軍デビュー。今週実現しても不思議はない。 (生駒泰大)
◆中日で育成から支配下選手登録された選手
中日で育成選手から支配下登録された選手は過去3人。オリックスを自由契約となり07年に育成選手契約で中日に移籍してきた中村紀洋(現楽天)、06年の左ひじ手術のリハビリのため07年の1年間を育成選手として過ごしたチェン、07年のクルス投手(08年途中退団)がいるが、育成ドラフトを経て支配下選手登録されたのは中日では矢地が初めてだ。
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