「改革する保守」をキーワードに、政治・経済など幅広いテーマを扱う。
投資したい、消費したい人たちにお金が回らない日本
2010年04月06日10時06分 / 提供:フリーライター宮島理のプチ論壇 since1997
野田佳彦財務副大臣と民主党に移籍した田村耕太郎参議院議員の対談が興味深い。「問題は『貧困の世襲』か『老老相続』か」というテーマで話をしているのだが、投資の効率性という観点から内容を見てみたい。
まず、野田副大臣は立場的に民主党政権の再分配重視路線を代弁している。再分配政策として、来年度以降に相続税の増税が行われていくという(また、財政再建のための増税対象として相続税を考えているということもある)。
その前提となっているのが、格差拡大による「貧困の世襲」である。ただ、これは以前も書いたように、(所得)格差拡大という前提がそもそも間違っている。
日本では、資産格差は比較的小さいし、所得格差も拡大していない。小泉政権下ではむしろ所得格差は縮小した。解消されるべき格差は、結果の格差ではなく機会の格差である。それも、親の所得・資産によるものというよりは、教育機会や就労機会、起業機会に関する制度的な障壁が問題だ。
だからこそ、小泉政権ではさまざまな規制緩和が実施されたし、安倍政権では公教育の復権や再チャレンジ社会の実現が目指された。
もっとも、野田副大臣も本来は自由主義者だから、次のようなことも言っている。
「野田 本当はね、私は違うんです。自由主義の国が私有財産を否定するような動きは、本来はしてはいけないと思っていました。3代で、おじいちゃんやお父さんが作ってきた資産が全部なくなるなんて、私有財産の没収じゃないですか。
むしろ政府がお金を使うよりは、バカ息子かもしれないけど、継ぐ者がお金を使った方が、文化が起こったり、事業が起こったりする可能性があるという考え方でした。だから私は本来、極めて自由主義論者です」
野田副大臣が言うように、政府がお金を使うよりは、「バカ息子」だろうが何だろうが、民間で自由にお金を使うべきというのが自由主義的な考え方だ。どこでイノベーションが起きるかなんてことは、政府にはわかりようもないのだから、民間がリスクをとっていろんなことをやる方が結果的に正しい。政府は、失敗しても(そもそも失敗に気づかないこともある)、延々と他人のお金(税金)を注ぎ込み続けるから、「バカ息子」が事業に失敗するよりも相当タチが悪いのである。
大事なのは投資の効率性なのであって、民間がお金を使わないなら政府がかわりにお金を使えばいい、という話ではない。民間でリスクテイクできる人にお金が回るような環境を整え、政府は極力邪魔をしないことが重要だ。
その点で、田村氏が提起する生前贈与へのシフトは、今後ますます広がってほしい議論である。
「田村 日本経済が低迷している1つの原因は、お金がまったく回ってないということ。個人金融資産の3分の2を高齢者が持っていて、相続する人の平均年齢が60歳を超えています。つまり、『老老相続』になっているのです。
言い換えれば、金融資産が、『お金がいらない人』から『お金がいらない人』へ移動している。これを1世代超えて、2世代先に移転させていく必要があると思います。
30代から50代というのは、投資性向、消費性向が高い。住宅ローンや教育ローンを抱え、投資も一生懸命です。こういう世代への金融資産の移転を加速させれば、もっと世の中にお金が回って経済成長につながると思います」
田村氏の話を受けて野田副大臣が答えているように、2003年に生前贈与にシフトする税制が成功したという先例もある。もちろん、生前贈与だけでなく、お金を持っている世代が直接リスクテイクできるような投資環境も整備しなくてはならない。
投資の効率性という観点から、構造改革路線に復帰する流れが出てきてほしい。また、個人消費の観点では、(所得)格差拡大という間違った前提に立って再分配政策を進めるのではなく、規制緩和とセーフティネット拡充で就労機会を増やす政策を進めていくべきだ。
投資の効率性が高まり経済成長が進めば、就労機会も増えていく。実際に、「いざなぎ超え景気」では、新卒市場も中途市場も活発になり、非正規から正社員への登用も増えた。亀井大臣が日本郵政でやっているような不自然な形ではなく、純粋な労働需要によって正規化が進んだのである。
・記事をブログで読む
まず、野田副大臣は立場的に民主党政権の再分配重視路線を代弁している。再分配政策として、来年度以降に相続税の増税が行われていくという(また、財政再建のための増税対象として相続税を考えているということもある)。
その前提となっているのが、格差拡大による「貧困の世襲」である。ただ、これは以前も書いたように、(所得)格差拡大という前提がそもそも間違っている。
日本では、資産格差は比較的小さいし、所得格差も拡大していない。小泉政権下ではむしろ所得格差は縮小した。解消されるべき格差は、結果の格差ではなく機会の格差である。それも、親の所得・資産によるものというよりは、教育機会や就労機会、起業機会に関する制度的な障壁が問題だ。
だからこそ、小泉政権ではさまざまな規制緩和が実施されたし、安倍政権では公教育の復権や再チャレンジ社会の実現が目指された。
もっとも、野田副大臣も本来は自由主義者だから、次のようなことも言っている。
「野田 本当はね、私は違うんです。自由主義の国が私有財産を否定するような動きは、本来はしてはいけないと思っていました。3代で、おじいちゃんやお父さんが作ってきた資産が全部なくなるなんて、私有財産の没収じゃないですか。
むしろ政府がお金を使うよりは、バカ息子かもしれないけど、継ぐ者がお金を使った方が、文化が起こったり、事業が起こったりする可能性があるという考え方でした。だから私は本来、極めて自由主義論者です」
野田副大臣が言うように、政府がお金を使うよりは、「バカ息子」だろうが何だろうが、民間で自由にお金を使うべきというのが自由主義的な考え方だ。どこでイノベーションが起きるかなんてことは、政府にはわかりようもないのだから、民間がリスクをとっていろんなことをやる方が結果的に正しい。政府は、失敗しても(そもそも失敗に気づかないこともある)、延々と他人のお金(税金)を注ぎ込み続けるから、「バカ息子」が事業に失敗するよりも相当タチが悪いのである。
大事なのは投資の効率性なのであって、民間がお金を使わないなら政府がかわりにお金を使えばいい、という話ではない。民間でリスクテイクできる人にお金が回るような環境を整え、政府は極力邪魔をしないことが重要だ。
その点で、田村氏が提起する生前贈与へのシフトは、今後ますます広がってほしい議論である。
「田村 日本経済が低迷している1つの原因は、お金がまったく回ってないということ。個人金融資産の3分の2を高齢者が持っていて、相続する人の平均年齢が60歳を超えています。つまり、『老老相続』になっているのです。
言い換えれば、金融資産が、『お金がいらない人』から『お金がいらない人』へ移動している。これを1世代超えて、2世代先に移転させていく必要があると思います。
30代から50代というのは、投資性向、消費性向が高い。住宅ローンや教育ローンを抱え、投資も一生懸命です。こういう世代への金融資産の移転を加速させれば、もっと世の中にお金が回って経済成長につながると思います」
田村氏の話を受けて野田副大臣が答えているように、2003年に生前贈与にシフトする税制が成功したという先例もある。もちろん、生前贈与だけでなく、お金を持っている世代が直接リスクテイクできるような投資環境も整備しなくてはならない。
投資の効率性という観点から、構造改革路線に復帰する流れが出てきてほしい。また、個人消費の観点では、(所得)格差拡大という間違った前提に立って再分配政策を進めるのではなく、規制緩和とセーフティネット拡充で就労機会を増やす政策を進めていくべきだ。
投資の効率性が高まり経済成長が進めば、就労機会も増えていく。実際に、「いざなぎ超え景気」では、新卒市場も中途市場も活発になり、非正規から正社員への登用も増えた。亀井大臣が日本郵政でやっているような不自然な形ではなく、純粋な労働需要によって正規化が進んだのである。
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