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trend:韓国 「居酒屋」で近づく日本

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 日本の居酒屋スタイルの飲食店が韓国社会に定着しようとしている。かつて外国人駐在員が多く住む地域に目立った赤ちょうちんがソウル中心街にも増え、客の9割は韓国人が占める。歴史問題や領土問題で日韓関係がギクシャクしても、酒を片手に居酒屋メニューを楽しむ人々の姿は絶えない。

 韓国の「居酒屋ブーム」は金大中(キムデジュン)政権による98年の日本の大衆文化開放で始まった。それまで公の場所で日本の歌を歌ったり映画を上映することは禁じられていた。規制の緩和で日本文化への関心が高まり、ファッションや飲食文化が流れ込んだ。

 ソウル駅近くで居酒屋「つくし」を営む申応礼(シンウンレ)さん(44)は02年ごろ、客の日本人と韓国人が言い争い、果ては物が飛び交った光景を思い出す。「その後、同じような騒動はないが、『韓国でなぜ居酒屋をやるのか』と言うお客もいた」と振り返る。当時、韓国社会が日本の飲食文化を全面的に受け入れる環境は整っていなかった。

 外国人駐在員や観光客の多いソウル・梨泰院で00年から居酒屋「天翔」を経営する朴順任(パクスンイム)さん(49)は07年、ソウル中心街に2号店を出した。00年に120万人だった韓国人の日本訪問者は近年300万人に近づく急増ぶりだ。「日本を訪れ居酒屋を知った人が店に来るようになった。韓国人客中心のビジネス街でも店は成り立つと思った」

 狙いは当たり、周囲の会社員が詰めかけた。韓国社会の変化を観察する静岡県立大学の小針進教授は「若い世代が、すし、さしみ、そば、天ぷら以外の和食の良さを知った。日本の食をテーマにした漫画=『ミスターすし王』(日本での題名は『将太の寿司(すし)』)=がヒットしたのも大きい」と分析する。

 ソウル市内の居酒屋で生ビールを片手にコロッケをつまむ芸能プロ所属の男性マネジャー(25)は「居酒屋を特に日本の文化だとは意識していない」と語った。20~30代の男女は「日本人が東京でマッコリ(韓国の濁り酒)を飲み、私たちはソウルで日本酒を飲む。そういう時代」と乾杯を重ねた。

 かつて韓国の酒場では酒を手に政治談議に花が咲いた。だが、居酒屋ブーム以降「話題の大半は会社の上司や仕事」(居酒屋経営者)。店内で日本人を見つけると「日本の温泉は素晴らしい」「ディズニーランドにもう一度行きたい」と披露する。居酒屋ブーム定着は、韓国社会の本格的な「脱反日」「知日」時代の到来を象徴しているようだ。【ソウル大澤文護】

毎日新聞 2010年4月5日 東京朝刊

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