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榎下陽大君 473球、悔いなし 「目標は中迫監督」2006年08月20日 「今日は最高の試合ができました」。試合後、エースの目に涙はなかった。
小学4年生の時、日南学園(宮崎)に通ういとこが甲子園に出場した。応援に行き、大観衆の中でプレーしている姿を見た。「グラウンドに立ったらどんな感じだろう」。歓声の中で、「自分もいつか」と決意した。 鹿児島工に入学すると、迷わず野球部の門をたたいた。1年生の時からベンチ入りし、順風満帆だった。 2年生の5月にあったNHK旗争奪県選抜大会の準々決勝。れいめいを相手に、それまでになく打ち込まれてコールド負け。いつもは負けると悔しいのに、その日は違った。「こんなんじゃ甲子園に行けない。野球を辞めようか」と思った。 そのふがいなさに、中迫俊明監督(47)は激怒した。「おれが帰るまで走ってろ!」。学校近くの坂道を走っていると、今度は「ティーを打つぞ」。日が暮れるまで何時間も続いた。黙々とバットを振るうち、「監督を甲子園に連れて行きたい」と思い直した。 そしてつかんだ夢の舞台。調子の悪かった地方大会とはうって変わった好投を見せ、4強入りの原動力になった。「自分でもわからないけれど、『甲子園』が力以上のものを出させてくれた気がする」 この日、先発登板の下茂に代わって5回途中からマウンドに上がった。「0点に抑えてやる」と意気込んだが、1点を失った。それでも、「3年間で教わったことは全部出し切った」。 甲子園で投じたのは、4試合で473球。「悔いなんて全然ない」と白い歯を見せた。 将来は高校野球の指導者になりたいと思っている。目標は、自分を育ててくれた中迫監督だ。
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