外国為替市場で、海外のヘッジファンドなどが円売り・ドル買いを急速に膨らませている。米シカゴ市場の通貨先物取引で、投機資金による円の売越額が約2年半ぶりの大きさに膨らんだ。3月下旬から円安が進んだ要因の一つとみられる。
日銀の金融緩和が長引く観測が強まっているため、超低金利の円を借りて売り、ドルやほかの通貨を買う「円キャリー取引」が再び広がっているとの指摘もある。
「投機資金の円売り」は、米商品先物取引委員会(CFTC)が2日発表したシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物取引で鮮明だ。ヘッジファンドなど投機資金の売買動向を映すとされる「非商業部門」による円の対ドル取引は直近の3月30日時点で、1週間前の1270億円の買い越しから3800億円強の売り越しに転じた。売越額は2007年10月以来、約2年半ぶりの大きさとなった。
投機資金はユーロ売りも再び膨らませている。対ドルでの売越額は30日時点で2週連続で過去最大を更新した。その一方で、オーストラリアドルやカナダドルなど資源国通貨は買い越しとなっている。
国際金融市場では、米景気の回復期待が高まったことや、ギリシャの財政問題に対する不安が一服したことを背景に、株式や商品などリスクの高い資産に資金が再び流れ込んでいる。
こうした動きの一環として「高リスク通貨」とされる高金利の新興・資源国通貨などが買われやすくなり、その半面で円の下落も目立つ。日銀が昨年12月以降、金融緩和の強化に動き出したことで、円の先安観が強まっているからだ。
みずほ証券の野地慎氏は「利上げが遠いとみられる円やユーロ、ポンドなどを売って、高金利の新興国・資源国通貨を買うキャリー取引の動きが広がっている」と指摘する。00年代半ばには日銀の量的緩和政策を背景に円キャリー取引が急増し、円安が進んだ。
日銀の3月の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の10年度の想定為替レートは1ドル=91円ちょうど。5日の東京市場では、この水準よりも3円以上円安が進んでいる。円キャリー取引による円安がさらに進めば、国内輸出企業の収益改善を通じ、日本経済の持ち直しを下支えしそうだ。
ただ、過去の円キャリー取引は、海外に過剰な投機マネーをもたらし、米国の住宅バブルなどの遠因となったという指摘もある。現在でも、日銀は「主要国の金融緩和が新興国経済を刺激している」(幹部)と危惧している。円キャリー取引が再び膨らむようだと、新興国経済が一段と過熱するリスクもある。
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