みたま園譲渡会
「猫がまとわりついて困る」 みたま園の管理事務所に、そんな苦情が舞い込みました。 昨年の12月のことです。 捨て猫でした。 みたま園は、宮崎市が運営する広大な霊園です。 お彼岸の時期には、たくさんのお詣りの方々がお見えになります。 霊園を管理する会社は、実は「捨て猫問題」で、 ほとほと困り果てていました。 いつのころからか、猫が捨てられるようになり、 数も増え、苦情が入るようになったからです。 管理する側は、苦情には迅速に対応しなければなりません。 まず、まっさきに考えたのが、「捕獲」です。 しかし、捕獲した後が問題。 飼ってくれる方を探す手立てがない。 霊園で飼うわけにもいかない。 望まないことではあるが、保健所にお願いすることも検討されました。 しかし・・・・ ご先祖の御霊を敬い祀る場所である聖域で、 殺生につながるような行為はどうか・・・・ それ以前に、ノラ猫というものを、保健所は引き受けないのです。 では・・・・ 餌がなくなれば、どこかへ行ってくれるのではないか。 公園には、複数の餌やりさんたちがいました。 その中の一人、Mさん。 突然、餌やりの中止を勧告されます。 命に対して、とても真摯なMさん。 餌がなくなれば、寒くなるこの時期、 飢えに苛まれ死んでしまうことでしょう。 思いあまって、私の同志、Beatさんご夫妻に相談されます。 Beatさんは、すぐに私に連絡をくださり、 Mさんを交えて、対策を練ることになりました。 まずは、管理会社の意向を聞き、 根本の問題を探り当て、 なんとか猫たちを救う手立てを見いださなければなりません。 私たちは、管理会社との会談にのぞみました。 そこでわかったことは・・・・ みたま園は、遺棄される猫に対して、 何の恨みも抱いてはいないこと。 それどころか、できることなら、 なんとか助けたいと考えておられること。 ご先祖の御霊を祀る霊園である以上、 無益な殺生につながる行為は、はなはだよろしくないからです。 しかし、無秩序な餌やりを続ければ、 猫の数が増大し、糞やまとわりつきで苦情が増えることが予想され、 業務に支障をきたすおそれがあること。 つまり、餌やり中止の勧告は、苦渋の決断でしかなかったのです。 私たちは、勇気百倍しました。 管理会社と、根本の思いが同一であったからです。 これなら、なんとかできる! まずは、現時点でやり玉に挙がっている猫の捕獲です。 次に、無秩序な餌やりをやめさせること。 Mさんは、餌やりもしていましたが、 猫たちが繁殖しないよう、たった一人で、 避妊去勢手術をも、続けていたのです。 第三に、捨て猫を防止すること。 我々が、どんなに頑張っても、 いたちごっこになってしまっては元も子もありません。 そして、第四に、捨て猫に対する霊園の方針を明らかにすること。 私たちは、霊園の来園者に向けて掲示するポスター、 猫を遺棄する不届き者に対する警告文、 無秩序な餌やりの禁止をうたった掲示看板などの作製に取り掛かりました。 同時に・・・・ もっとも重要な、「猫の捕獲」です。 直ちに、Mさん・Beatさんご夫妻・私で、 「みたま園捨て猫捕獲隊」が結成され(全員じゃん (^_^;))、 昨年の12/11、捕獲に出動いたしました。 問題となっているのは、最近出没し始めた、 2頭のまとわりつき猫です。 来園者の足元に、誰かれ構わずまとわりつき、 離れないとのことでした。 霊園に着くなり、茶トラの一頭は、すぐに出てきました。 間違いなく、飼われていた子で、 呼べば飛んできました。 即、捕獲 (*^_^*) もう一頭の白猫は、その辺りには見当たりません。 管理の方に話を聞いて、出没場所とされるところを、 あちこち捜索しましたが、出てきませんでした。 時間も遅くなってきたので、また後日来ようということになり、 霊園を後にしようと、3台の車は出発しました。 しかし、私は、鹿児島から来ています。 猫捜索のために、何度もは出てこられません。 だから、Beatさん夫婦もMさんも揃っていて、 猫保護のためのケージもフードも持っている今日という日を、 逃したくありませんでした。 一縷の望みをかけて、お墓の間の小道に目を光らせながら、運転を続けました。 Beatさんを先頭に、私、Mさんという車の順序で、 霊園の出口につながる下りの坂道に差し掛かったときです。 まさに、通り過ぎようとした瞬間、 お墓の間に、白いものが見えました。 慌てて、急ブレーキを踏み、 パンチをフロントガラスにぶつけながら、 車を急停止させると・・・・ お墓とお墓の間を縫うように、 こっちに向かって駈けてくる、 一頭の白猫がいました。 餌を探している風でもなく、 なにやら、必死に駈けています。 私は、クラクションを鳴らし、Beatさんを足止めし、 同時に車を降りて、「おいでおいで」と声をかけながら、 猫の方へ歩き出しました。 白猫は「みゃごっ!みゃごっ!」と、 唸り声とも悲鳴ともつかない声を発しながら、 迷うことなく、一目散に、私の足元へ飛んできました。 そして、私の足にかぶりつき、這い上がろうとし、 脛にごしごしと身体をこすりつけてきます。 自分の感情を制御できなくて、 どうしていいか、わからない様子でした。 Beatさん夫婦とMさんがかけ寄ってきました。 まったく、警戒する様子もなく、 4人の足元を、行ったり来たり。 その間、鳴き声は止まず、ずっと何かを訴えかけています。 Beatさんの奥さんが、持っていたカリカリを与えました。 すぐに飛びつきましたが、ちょっと食べては、 また、4人にかわるがわるまとわりつきます。 奥さん「餌どころじゃ、ないっちゃね」 この子は、人と常に接触する環境で育てられていたに違いない、 と私は思いました。 また、相当、甘やかされて育てられてきたのだろうとも。 まったく、人を恐れる様子がなく、 餌よりも、人との接触の方を優先したからです。 ひとしきり暴れまわると、やっと安心したのか、 すごい勢いでフードを食べ始めていました。 こんなに甘えん坊で、可愛らしい子なのに・・・・ いったい、どんな理由があって、捨てたのか。。。。 そして、気付かされたことがあります。 それは、私が、猫捜索のために、 鹿児島から何度も来るのは大変だ、 という思いにかられたことです。 犬猫保護者を自認する者として、 あるまじき考えです (^_^;) しかし、その思いがあったればこそ、 今日の成果を一頭のみにしたくない、 なんとか、残りの白猫も捕獲して帰れないものか、 と考え、帰りの車中で、お墓の間に目を光らせたわけです。 Beatさんも、Mさんも近くなので、 何も、今日にこだわる必要はなく、 そういった考えは持たなかったのでしょうね。 偶然ではない、何らかの意思の働きを感じずにはいられませんでした。 みたま園の管理会社様のご厚意で、 譲渡会を開催できる運びとなりました。 Angel's Company としては、初の譲渡会、 霊園としても、開園以来、初の一般参加型のイベントです。 時間もなく、バタバタの中での開催でしたが、 多くの方々のご参加をいただき、 3/21、お彼岸の日、 盛況のうちに終了いたしました。 みたま園で捕獲・保護された白猫=クネオも、 素晴らしいご家庭に引き取られました。 こんなに可愛い子だったんですよ (*^_^*) そして・・・・ 開催に水を差す、哀れな事件もありました。 開催前日、管理人さんから私の携帯に電話が入りました。 「また、捨て猫がいる。怪我をしているようだ」 私は、Beatさんの奥さんに連絡を取り、 連れ帰ってくれるようお願いしました。 奥さんは、すぐに動いてくださり、 猫を保護に向かいました。 捨て猫は、段ボールに入れられていました。 水とフードが置いてあったそうです。 腰から下が動かず、ぐったりとしているとのことでした。 協力してくださる動物病院に担ぎ込むと、 「骨盤骨折」と診断されました。 手術しても、助かるかどうか・・・・ 助かっても、神経を断裂している可能性があり、 排便や排尿がままならず、おむつ猫になってしまうかも、とも。 尻尾も、断裂寸前で、 かろうじてつながっているような状態です。 それでも、私たちは迷わず手術を選択しました。 イベント開演前日に発見されたのも、 我々が助けるべくして現れた証拠だと思ったのです。 幸い、手術は成功し、元気に餌を食べています。 苦痛は、想像を絶するものがあるでしょう。 それでも、この子の健気さが胸を打ちます。 痛がる様子も見せず、ゴロゴロと甘えた声を出し、 神経の通っていない尻尾をぶらぶらさせながら、 不自由な下半身をずりずりと動かしながら、 懸命にすり寄ってきてくれます。 しかし、排便・排尿はままならず、 奥さんが病院に通い詰めています。 「みたま」と名付けられたこの猫は、 私たちの象徴です。 この子は・・・・ 人間のせいで、あなたに捨てられたせいで、 遭わなくともよい事故に遭い、 負わなくてもよい怪我を負い、 味わわなくてもよい苦痛を味わっています。 多くの方々に悲痛の思いを抱かせ、 命を救うために奔走している方々に、 さらなる負担を強いています。 救う気持ちがないなら、無視してください。 最後まで責任を持って、助ける気がないなら、 一時的な感情で、保護などしないでいただきたい。 手に余るからといって、 誰にも言わず、断りもせず、 霊園に捨てに来るようなことはしないでください。 管理人の方が発見しなかったら、 苦痛のうちに死んでしまったでしょう。 あなたが助けたのなら、 あなたが、最後まで看取るべきです。 なぜなら・・・・ 私たちは、見てしまったらほっておけないからです。
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